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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜

作者:カエサル
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聖者の右腕篇
  01.吸血鬼

 
前書き
第一話投稿させていただきます。 

 
 

 真夏の街。
 その都市は絃神島と呼ばれていた。太平洋に浮かぶ小さな島。カーボンファイバーと樹脂と金属と、魔術によって作られた人工島。

 一部通常の街と異なることがあるがそんな街でも彼らの口からは、たわいもない噂を語る。

 “第四真祖”──不死にして不滅。一切の血族同胞を持たず、支配を望まず、災厄の化身たる十二体の眷獣を従える世界の理から外れた冷酷非常な吸血鬼。

 それと同時に囁かれるもう一つの噂。こちらは、第四真祖のように多く広まった噂ではない。

 その存在は実在したのかどうかすらもわからず、実態を誰も知らない。だが、その実力は真祖と互角であり、神々の眷獣を従える伝説上の最強の吸血鬼──“神意の暁(オリスブラッド)




 ほんのり赤く染まりかけた空が強烈な陽射しを降り注ぐ。

「熱い……焼ける。焦げる。灰になる……」

「死んでしまえ……太陽……」

 午後のファミレス。窓際のテーブル席でぐったりと突っ伏して、暁 古城(あかつき こじょう)緒河 彩斗(おが さいと)が呟いた。
 制服姿の高校生。古城の羽織ったパーカーを除けば特徴というべきものは特にないどこにでもいる高校生。パーカーから覗くやや色素の薄い髪の毛が少々目立つくらいだろうか。
 これといった特徴がない彩斗は、黒髪に少しだけ薄い茶髪が混じっているような感じだ。
 二人の眠たげに細められた目のせいで、不貞腐れたような雰囲気が漂う。

 八月最後の月曜日。天気は快晴。
 薄いブラインドから突き刺さる殺人光線を浴びながら、古城と彩斗は、テーブルに広げられた問題集を気怠く睨みつける。

「今、何時だ?」

「もうすぐ四時よ。あと三分二十二秒」

 古城の正面の席の友人が、返す。

「……もうそんな時間なのかよ。明日の追試って何時だっけ」

「……確か朝九時だ」

「今夜一睡もしなけりゃ、まだあと十七時間と三分あるぜ。間に合うか?」

 同じテーブルのもう一人が、他人事のような気軽な声で訊いてきた。

「なぁ……こないだから薄々気になってたんだが」

「ん?」

「なんで俺と彩斗だけこんなに大量に追試を受けなきゃなんねーんだろうな?」

「なんでなんだろうな、古城」

 目の前に置かれる教科書の数々。彩斗と古城が追試を命じされたのは、英語と数学二科目ずつを含む合計九科目。プラス、体育実技のハーフマラソン。夏休み最後の三日間で処理するというはめにあった。

「──ってか、この追試の出題範囲ってこれ、広すぎんだろ」

「しかも授業でやってない場所まであるしな。これはイジメ以外の何物でもねぇぞ」

 二人の悲痛な叫びに友人たちは互いに顔を見合わせて、なにを今さら、と言わんばかりに呆れている。

「いや……そりゃ、あるわな。恨み」

 シャーペンをくるくる回しながら答えたのは、短髪のツンツンに逆立てて、ヘッドフォンを首にかけた男子生徒、名を矢瀬基樹という。

「あんだけ毎日毎日、平然と授業をサボられたらねェ。舐められてるって思うわよね、フツー……おまけに夏休み前のテストも無断欠席だしィ?」

 爪を手入れなどをする華やかな髪型と、校則ギリギリまで飾り立てた制服の少女、藍羽浅葱が笑顔で言う。

「……だから、あれは不可抗力なんだって。いろいろ事情があったんだよ。だいたい今の俺の体質に朝イチのテストはつらいって、あれほど言ってんのにあの担任は……」

 苛ついた口調で古城が言い訳をする。

「体質ってなによ? 古城って花粉症かなんかだっけ?」

 浅葱が不思議そうに訊いてくる。古城が唇を歪める。

「このバカと俺は、夜型なんだよ。朝起きるのが苦手っつうかなんていうか」

「それって体質の問題? 吸血鬼でもあるまいし」

「だよな……はは」

 古城が引き攣った笑顔で言葉を濁す。
 この街に吸血鬼は珍しい存在ではない。

 “吸血鬼”──民話や伝説などに登場する存在で、生命の根源とも言われる血を吸い、栄養源とする蘇った死人または不死の存在。その存在や力には実態が無いとされる。

 はぁー、と内心ため息を洩らす彩斗。緒河彩斗は、暁古城の正体を知っている。
 世界の最強にして第四番目の存在しないはずの吸血鬼──“第四真祖”
 その力を継ぎしものが暁古城。

 彼をかばう彩斗だが、暁古城は、緒河彩斗の真の正体を知っているわけではない。古城が知っているのは、彩斗が吸血鬼ということだけだ。朝に弱く、陽射しに弱いということだけしか知らない。




 “絃神島”──太平洋のど真ん中、東京の南方海上三百三十キロ付近に浮かぶ人工島。ギガフロートと呼ばれる超大型浮体構造物を連結して造られた、完全な人工の都市。総面積は約八十平方キロメートル。総人口は約五十六万人。
 暖流の影響を受け、気候は穏やかで、冬でも平均二十度を超える。
 いわゆる常夏の島。
 学究都市である絃神市は、製薬、精密機械、ハイテク素材産業などの、大企業や有名大学の研究機関がひしめき合っている。
 この島は、少々特殊なところもある。

 魔族特区。
 それがこの絃神市のもう一つの名。
 獣人、精霊、半妖半魔、人工生命体、そして吸血鬼……この島にはそれらの人類によって数を減らした魔族たちの存在が公認され、保護されている。

「──にしても、この暑いのだけは勘弁してくんねぇかな、くそっ」

「全くその通りだな」

 パーカーのフードを目深に被って、陽射しを遮る古城。それに対して何も被らない彩斗は今にも死にそうな顔をしている。

「彩斗もなんか被りゃいいじゃねぇか?」

「まぁ……そうだんだけど」

 ファミレスから古城と彩斗の自宅までは、市内を走るモノレールで十五分ほどの距離。だが、少ない金を消費しないために歩くという選択肢を選んだ。じりじりと肌を焦がす夕日を浴びながら、海沿いのショッピングモールを歩いている。
 そして何気ない仕草で背後を確認。

「尾けられてる.……んだよな?」

「そうみてぇだな」

 二人から十五メートルほど離れた後方を、一人の少女が歩いている。ファミレスから出た時に見かけた、ベースギターのギターケースを背負った少女。
 彼女の制服は、浅葱のものと似ているが彩海学園の女子の制服。襟元がネクタイではなくリボンになっているという事は、中等部の生徒ということだ。

 彼女の目的はわからない。どちらかを尾行しているならば、彩斗か古城の正体を知っていることになる。それがどちらもなら最悪の状況になる。

「……凪沙の知り合いか?」

 古城の言葉のすぐ後ろに少し早口で言葉を走らせる。

「悪りぃな、古城。ちょっと寄りたい場所があるから今日はここで……。じゃ!」

 そして早足で古城に振り向き、その場を後にする。後方から古城の声が聞こえるがそんなこと御構い無しに彩斗は駆けた。
 後方を再び確認する。彼女は少し動揺したような動きを見せるが俺を追わず、その場にとどまり古城の尾行している。

 かなり離れた位置から古城と彼女が見えるように建物の間に入り込む。
 そこで彩斗は、右のポケットに入っているスマートフォンを取り出し、電話をかける。
 ツーコールの後に聞き覚えのある声が聞こえる。

『もしもし。なんだ、彩斗?』

「単刀直入に聞く。古城を尾けてるあの女は誰だ?」

 電話越しに少しの間が空いたあと、答えが返ってくる。

『獅子王機関の“剣巫”だな。そいつは.....』

「獅子王機関だと!?」

 “獅子王機関”──政府の国家公安委員会に設置された特務機関。魔導災害や魔導テロを阻止するための情報収集、工作を行う機関。

「つまり、古城の正体がバレたってことか」

『まぁ、そうなるな』

「そうか……サンキュウな……じゃ」

 切る寸前に向こうから聞こえる声。

『お前も気をつけろよ』

 スマートフォンをポケットにしまい込み、再び二人を確認する。

「……獅子王機関の“剣巫”……か」


 
 

 
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