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とある星の力を使いし者

作者:wawa
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第139話

ようやくやってきた麻生に美琴は睨みつつも、麻生の質問に答える。

「何って、見て分からない?
 初春さんにバイオリンの弾き方を教えているのよ。」

「どうしてそうなったんだ?」

「別にあんたに説明する必要はないでしょう。」

「お前、怒ってないか?」

「怒ってないわよ!!」

口ではそう言っているが、傍から見ても明らかに怒っている。
おそらく、この場に麻生しかいなければ電撃の槍が飛んできていただろう。
しかし、初春や佐天がいるので何とか堪えているようだ。

「こんにちは、麻生さん。」

「御無沙汰しています。」

「それで、どうしてこんな人だかりができているんだ?」

「それはですね・・・・・」

美琴が素直に教えてくれなさそうなので、麻生は初春に説明を求める。
初春から簡単な説明を受けた後、麻生は美琴に視線を向けた。

「どうやら、俺が遅れて来たのがそもそもの原因らしいな。」

「自覚があるのなら、もう少し早く来なさい。
 かれこれ一時間もボケーッと突っ立たされたんだからね。
 待っている途中で変な男どもに声かけられるし、いちいち電撃の槍で丁寧に追い払うのもとっても面倒臭かったのよー?」

「へぇ~・・・」

ふと、二人の会話を聞いていた佐天がにやにやしながら言った。

「美琴さんって、実はこの待ち合わせ結構楽しみにしていたでしょう?」

「へぇ!?
 な、ななな、何を言っているの!?」

「だって、一時間前からずっと待っていたんでしょう?
 普通の待ち合わせなら早くても二〇分前とかなのに、一時間前には待っていた。」

「違っ・・・・ば、馬鹿ね。
 大雑把に言っているだけよ。
 別にきっちり六〇分前からここにいた訳じゃないわよ。
 だ、だから、変な妄想膨らまさないで。」

そう言うが、顔を真っ赤にしているので説得力が全くない。
それを見た佐天はさらににやにやと笑みを浮かべる。
それを見た麻生は軽くため息を吐く。

「何にせよ、俺が遅れた事実は変わらないな。」

麻生は初春が持っているバイオリンに視線を向ける。

「初春、そのバイオリンを貸してくれないか?」

「えっ?
 でも、これは美琴さんのですよ。」

「いいか、美琴?」

「・・・・・・別にいいわよ。」

美琴の了承を得て、麻生は初春からバイオリンを受け取る。
美琴は眉をひそめて、麻生に言う。

「一体、何をするつもりなのよ?」

「遅れてしまったからな。
 短いが、一曲だけお前の為に弾くよ。」

バイオリンを構えて、恥ずかしがることなく言う。
その言葉を聞いた美琴はさらに顔を赤くする。
右手で本体を持ち、弓を左手で持つ。
軽く弓でバイオリンの弦を弾き、調律をする。
そして、眼を閉じ麻生の演奏が始まった。
それは優しい音色だった。
そのバイオリンからは信じられないような優しくて、柔らかい、そんな音色を奏でていた。
美琴や初春や佐天、そして周りにできていた人だかりや通行人も麻生の奏でる音に聞き惚れていた。
数分による、短い演奏だったが麻生が目を開けると周りにはものすごい数の人が集まっていた。
次の瞬間には周りから拍手が送られる。

「す、凄いです!麻生さん!!」

「私、バイオリンなんて一度も聞いた事なかったですけど、何だかとても優しい感じの音色でした!
 何だかもう、とにかく凄かったです!!」

拍手と共に初春や佐天は麻生の演奏を聞いて興奮しながら、感想を述べた。
麻生は手に持っているバイオリンを美琴に手渡す。

「良いバイオリンだな。
 大切に扱えよ。
 それと、遅れて悪かったな。」

「べ、別に・・・・そこまで怒ってないわよ。」

「そうか。
 なら、場所を移動するか。
 人が集まりすぎだ。」

「美琴さん、頑張ってください。」

「白井さんには私の方から伝えておきますね。」

「ありがとう。
 助かるわ。」

「それじゃあ、行くぞ。」

「あっ・・・・」

麻生は開いている美琴の手を掴んで、人だかりの中を掻き分けてその場所から離れていく。
人だかりの中ではぐれないように麻生は美琴の手を強く握りしめる。
それを感じた美琴は頭の中で考える。

(何なのよ。
 急に優しくなって。)

麻生自身、愛穂や桔梗たちと久しぶりに一緒にご飯を食べたので機嫌がいいのもある。
そんな事があった事を美琴が知る訳がなく、顔をさらに赤くしながら麻生に引っ張られていく。












学園都市のとあるオープンカフェ。
そこのテーブルに数人の常盤台の生徒がお茶をしていた。
その一人が学園都市第五位の超能力者(レベル5)であり、能力『心理掌握(メンタルアウト)』を持ち、常盤台中学における最大派閥を率いる少女、食蜂操祈である。
星の入った瞳、背に伸びるほどの長い金髪、長身痩躯、あまつさえ巨乳である。
そんな彼女は今、ぼ~っと外の風景を見つめていた。
目の前にはエクレアが置いてあるのに見向きもしない。
彼女の周りにいるのは、同じ派閥の生徒だ。
よく一緒にいるので操祈の事は少しばかり知っている。
彼女は普段、自分達の静止を聞かずにエクレアを好んで食べている。
それなのに、大覇星祭が終わってからの操祈は何かおかしい。
現に目の前にエクレアがあるのに、全く見向きもしない。
女王に何かあったのでは?、と取り巻き以外でも学園内でも噂になっている。

(恭介さん、どこにいるのかな。)

そんな取り巻き達の心配など全く気にしていない操祈は最近はずっとそんな事を考えている。
彼女は麻生が常盤台に一時編入した時、麻生の頭の中を覗こうとした。
その際にこの世の地獄を目の当たりにして精神が崩壊しかけた。
しかし、麻生が助けに入る事で何とか自我を保つ事ができ、それ以来麻生に好意を寄せていた。
だが、あの時は今ほど思いを寄せていなかった。
大覇星祭である事件が起こり、そこで麻生に助けられた。
それがきっかけで、操祈は麻生に本当に恋心を抱いてしまった。
それもかなり麻生の事を好いている。
ここ最近、操祈の様子がおかしいのは麻生の事をずっと考えていたからだ。

(恭介さん、どこにいるのかな?)

何度目になるであろう、ため息を吐く。

「よし。」

何か決心したのか、急に立ち上がり店を出て行こうとする。
それを見て、取り巻き達が慌てながらも操祈に聞く。

「じ、女王!?
 どこに行くおつもりですか!?」

「どこって、恭介さんを探しに行くんだぞぉ。」

「えっ!?
 ちょ、ちょっと!女王!?
 待ってください!!」

ロクに理由を説明せずに操祈はお金を払って店を出て行く。

(さてさて、恭介さんはどこにいるのかな~♪)

操祈は麻生に会う事だけを考えると自然と笑みがこぼれる。
今にもスキップしそうなくらい、楽しそうな雰囲気を出しながら操祈は麻生を探しに行くのだった。 
 

 
後書き
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