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『八神はやて』は舞い降りた

作者:羽田京
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第1章 悪魔のような聖女のような悪魔
  第6話 乙女はボクに恋してる

 
前書き
・原作開始
・主人公勢はリリカルなのはのベルカ式の魔法のみ。
・ハーレム系ラブコメの世界に、ごんぶとビームが飛び交います。 

 
 ボクが使用する魔法――――行使できる魔法は、リリカルなのは世界の魔法だけだが――――の中に、探査魔法というものがある。
 サーチャーという情報収集用の小型スフィアを通じて、映像を術者に届けるという、使い勝手のいい優れた魔法である。


 原作が始まったからと言って、学校がなくなるわけではない。
 いつも通り授業が終了し、放課後の教室で、クラスメイトと雑談していた。
 一見、雑談に興じているだけに思えるだろう。
 だがしかし、実際は、サーチャーから送信されてくる映像を、マルチタスクを使って覗いていた。
 今は、兵藤一誠と天野夕麻――――堕天使レイナーレの変装した姿だ――――が、笑顔で会話する映像が流れている。

 
(主よ。対象は、女子高生に扮した堕天使と合流したようです)

(ありがとう、ザフィーラ。こっちでも確認したよ)

 
 わんこモードのザフィーラにも、兵藤一誠の尾行をさせてある。
 彼とも、念話でリアルタイムに会話できていた。
 つまり、クラスメイトとの雑談。サーチャーによる監視。ザフィーラとの念話通信。
 最低でも3種類の行為を同時並行して、行っているのである。
 マルチタスクとは、つくづく便利である。


(それにしても、兵藤君は、張り切っているなあ)

(フン。エロ魔人のあいつのことだ。いまごろ頭の中は桃色一色だろうよ。下心が見え見えだぜ)

(まあまあ、落ち着いてヴィータちゃん。エロ魔人には同意するけれど)


 他のメンバーは自宅で待機している。
 彼女たちも、サーチャーの映像をみながら、不測の事態に備えているはずだ。
 普段は自宅警備に忙しいザフィーラが大活躍している。
 立派になりやがって、とほろりとしてしまう。


(いつも私の胸をじろじろ見てくるからな。主はやてに止められなければ、とっくにレヴァンテインの錆にしている) 

(あはは、彼は、おっぱい星人だもんね)

(マスターも人のことを言えないと思いますよ)

(ケッ)


 この世界では、「魔法」とは、悪魔が行使する技術を指すことが多い。
 人間にも魔法使いはいるが、悪魔式の魔法を人間用に改良して行使しているにすぎない。
 したがって、異世界の魔法体系など思いもよらないだろう。


(あらあら、気に病まないでヴィータちゃん。女は胸の大きさじゃないわよ?)

(シャマル。おまえ後で覚えていろよ)

(ヴィータ姉には、ヴィータ姉のよさがある。気にしてはだめだよ)

(……とかいって、はやてもあたしの仲間じゃねーか)

(な、なんのことかな?いまのボクは、ナイスバディでございますことよ)


 聡いものならば、サーチャーに、感づかれる可能性はある。
 しかしながら、未知の魔法に対して常に身構えることは、難しい。
 すなわち、ボクたちが秘匿する限りにおいて、リカルなのは世界の魔法は、重要なファクターとなりえる。


(おい、それくらいにしておけ。我々が為すべきことを忘れるな)

(先ほどから、蒼き狼が、居心地悪そうにしていますね)

(……気にするな)
 

 さて、原作通りなら、兵藤一誠は、このまま神器狩りに巻き込まれるはずだ。
 デートの帰り、神器を狙うレイナーレに攻撃され、彼は瀕死の状態になる。
 死にかけながら、偶然にも悪魔契約用のチラシを握りしめ――――召喚されたリアス・グレモリーに救出され、悪魔に転生する。
 ザフィーラをつけたのは、もしもの場合、兵藤一誠を救助するためである。
 この世界は現実であり、必ずしも物語通りに運ぶとは限らないのだから。
 ボクたちなど、イレギュラーの最たるものだろう。


(他人のデートを覗きみるなんて、われながら趣味が悪いよな)


 と、内心つぶやきつつ監視を続ける。
 正体を知っているとはいえ、天野夕麻は美人である。
 兵藤一誠も原作主人公なだけあって、外見は整っている。
 なかなか絵になるカップルといえよう。
 彼の場合、普段の言動がすべてを台無しにしていると思う。


「――さま、明日のご予定は空いていらっしゃいますか?」

「ん?ああ、明日の予定だったか。ちょっと、これから忙しくなりそうなんだ。しばらくは付き合えなくなると思う。ごめんね」


(原作が始まって忙しくなるだろうし)

(主はやてが自ら動かずとも、私たちにお任せくだされば――)

(ううん、いいんだ。これはボクなりのけじめだから)

(承知しました。我ら守護騎士一同、ヴォルケンリッターの名にかけて、主はやてに尽くします)

(期待しているよ、我が騎士たち――もちろん、リインフォースも、ね)

(ハッ。マスターのお望みのままに)


 話は変わるが、ボクの通う私立駒王学園は、そこそこ偏差値の高い女子高「だった」。
 つまり、昨今の少子化の流れに逆らえず、数年前から共学化したのである。
 とはいえ、なまじ地元では知名度があるせいで、「駒王学園=女子高」という認識を、覆すことは困難だった。
 あの手この手で――――入試でさえ男子を優遇した――――やっと、現在男子が3割近くを占めるに至る。
 とはいえ、やはり男子の肩身はせまい。


「そうでしたか。もし、ご都合がよろしい日があれば教えてくださいね。いいお店を見つけたんですよ。ねえ?」

「うん。イタリアンでね。洒落た感じで料理もおいしいんだけれど、値段がすごく安いんだよ!」

「そうなんだ。楽しみにしているね」


 女性になってしまったボクは、毎日こうして綺麗どころに囲まれた日々を過ごしている。
 学校では先輩や友人、後輩たちと。自宅では、リインフォースたちと。
 きっと、前世のボクでは考えられないような生活を送っているだろう。
 そんなボクの最近の悩みは――――


「はい!わたしたちも、楽しみに待っていますからね!!」

「みんな大げさだなあ」

「とんでもないです!駒王学園『三大』お姉さまとご一緒できる機会なんて、滅多にありませんから」


 ――――『三大お姉さま』という称号である。 


 原作では、リアス・グレモリーと姫島朱乃の二人が、駒王学園の二大お姉さまを構成していた。
 しかし、この世界では、八神はやてが、ちゃっかりと加わっている。
 こんなことで原作ブレイクするとは、予想外だった。
 ボクは、特別なことをした覚えはない……ないのだが、

 『凛々しい』
 『かっこいい』
 『男らしい』

 といった風評が、中学校時代には既に流れていた。
 いつの間にか『お姉さま』と呼ばれ、当時は生徒会長を務めていた。
 駒王学園に入り、一時は鳴りを潜めたものの進級したことで、再燃したようである。
 なんとも百合百合しい青春を送っているものだ。
 嬉しいかどうかといえば、慕われるのは純粋にうれしい。
 では、恋愛対象としてみられるかといえば、否だ。だが、男と付き合う気もない。
 我ながら枯れているなあ、と苦笑してしまう。
 後輩から呼ばれるだけならまだいい。しかし、


 ――――困ったことに、同級生にまで、お姉さまと慕われているようなのだ。 


 たしかに、おそらく男だったであろう前世の性別やら精神年齢やらを考えれば、お姉さま呼ばわりは、妥当な評価なのかもしれないが……。
 バレンタインデーは大変だった。
 下駄箱いっぱいのチョコレートとか、創作物の世界だけのものだと思っていた。
 というか、下駄箱に入っていたチョコレートを食べるのは抵抗がある――衛生面的に考えて。
 次の年からは、「机の中に入れてください」と張り紙をした次第である。
 机の中どころか、机の上にチョコレートタワーができていて卒倒しそうになったが。


 ボク?ボクは義理チョコ、家族チョコと友チョコだけだよ。
 前回は、シャマルのチョコレートテロ事件なんかもあったな。
 と、まあ、益体もないことを考えつつも、兵藤一誠とレイナーレのデートを覗き続けていた。


(結局、原作通りになったか)

(そのようです。リアス・グレモリーに感づかれる前に、帰宅します)

(ありがとう、ザフィーラ)


「――――よし。これで一安心だな」

「はやてお姉さま、何が一安心なんですか?」

「ん?ああ、冷蔵庫の中身を思い出していてね。今晩は、豪華にしようと思っているんだよ」

「まあ、そうでしたの。お姉さまの料理は絶品ですものね」


(ククク。人気だな、お・姉・さ・ま)

(からかわないでくれよ、ヴィータ姉)


 ちなみに、おっぱい好きなのは、「八神はやて」だから仕方ないね。
 不可抗力というやつである。





 ――守護騎士とは、主に仕える騎士である


 主を守り、主のために戦い、主のために死ぬ。
 このことに、疑問を持つことはなかったし、いまでも思いは同じだ。


 ――しかし、仕えるに値する主であるか否かを考えたことはなかった


 主を盲信し、敵はすべて薙ぎ払い、将として指揮し、感情を殺し命令に従う。
 忠義といえば聞こえはいいが、自ら考えることを放棄し、感情のない機械の如く言われた通りに動く。


 ――まるで、道具のようだった


 たしかに、歴代の主達の多くは、我々を道具として扱った。
 しかし、全ての主が、初めから我々を、道具としてみなしていたわけではない。
 むしろ、我々の方が、機械であろう、道具であろうと頑なになっていたのではないか。
 永遠ともいえる期間、仕える主を選ぶことができなかった我々は、
 ときに、理不尽な命令をうけた。
 ときに、モノとして、扱われた。


 ――だからこそ、感情を廃し、「道具」たらんとしていたのではないか


 心優しい主と出会い、感情を思い出した現在だからこそ、そのように思うのだ。
 我々は、主はやてと出会い変わった。
 しかし、本当は、「変わった」のではなく、「戻った」というのが正しいのかもしれない。


 ――守護騎士は、仕える主を選ぶことはできなかった。


 けれども、運命は、私が真に忠義を捧げるべき主と巡り合わせてくれた。
 主はやて――――幼い身でありながら、誰よりも強い輝きをもつ少女――――を守ることこそ、我々守護騎士の、ヴォルケンリッターの使命である。
 誇りを持って私は誓おう。


 ――烈火の将の名にかけて


 
 

 
後書き
・主人公はおっぱい好き。だって、はやてだし。でも本人は……
・臨時保険医なシャマルさん、バレンタインテロを決行。チョコレートテロリスト。
・ボーイッシュな主人公はクールビューティー(笑)なので人気があります。
・ヴィータもロリ姉御として人気がありました。

 
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