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ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?

作者:あさつき
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
  百四十三話:大都会の二度目の夜

 ヘンリーにくっついてカジノを出て、夜の冷えた空気の中を歩くうちになんとか顔の火照りも収まって、オラクル屋に着いて。

「いらっしゃい!お、あんたは!馬車を買ってくれたお嬢さんだね!その後の調子はどうだい?」
「絶好調です!いいものを、ありがとうございました!」
「そうかい、そりゃあ良かった!そう言ってもらえるなら、商売人冥利に尽きるってもんだね!ところで、またいいものを仕入れたんだが。モンスター図鑑なんだが、負けに負けて千ゴールドでどうだい?」
「ください!是非、ください!」
「おお、また即決かい!相変わらず景気がいいね!それじゃ、どうぞ!また来てくれよな!」
「はい!絶対に、絶対にまた来ます!」

 無事にモンスター図鑑を購入できたわけですが。

 確かゲームでは、これはヘンリー離脱後のビスタからの出港前に既に買うことができて、このタイミングではオラクル屋の暖簾を買うこともできたはずなんですが。

 直後にまた来たら、売ってもらえる……なんてことはさすがに無いよね。
 現実的に考えて。

 ……まあ、ルーラを覚えて、またいつでも来られるわけだし。
 焦ることも無いか。

 ……だがしかし!
 他人の手に渡る可能性が僅かでもあるのを、手を(こまね)いて見ているわけにはいきません!

 視線に熱を込めて、オラクル屋のオヤジさんに訴えます。

「絶対に!絶対に、また来ますから!次も、期待してますからね!」

 だからその暖簾は私以外に売らないで、ちゃんと取っておいてくださいね!

「おう!そうまで期待されちゃ、応えないとオラクル屋の名が廃るってもんだね!気合い入れて準備しとくから、期待しててくれよな!」
「はい!」

 こうやって期待をかけておけば、次の商品はあの気合いの込められた暖簾以外にあり得ませんね!
 次こそあの暖簾を、間違いなくゲットしてみせます!!


 ひとまずの達成感と次への情熱を抱えつつ、ヘンリーに抱えられながらオラクル屋を出たところで。

 ヘンリーが口を開きます。

「なあ、それ。……何の役に立つんだ?」

 ……ゲームでなら、強いて言えばモンスターが仲間にできるかどうかとか。
 各モンスターから獲得できる経験値やゴールドが確認できたり、アイテムを落としたことがあればそれも確認できたり。
 そんなもんだったと思いますが。

「……落としたアイテムを確認できるなら、それは役に立つかもしれないよね?」

 ゲームやってる時なら、ネットで攻略情報でも検索したほうがよっぽど早かったですけれども。
 今そんなことできないので、狙ってるアイテムがある時なら、そこは役に立つかもしれない。

「……試しに見てみようぜ。なんかあれば、オヤジにすぐ聞けばいいんだし」
「……そうだね。見てみようか、試しに」

 ゲームだと、なぜか町の外に出ないと見られなかったんですけど。
 現実問題として町の中で見られない理由が思い付かないし、試すくらい試してみてもいいだろう。

 ということで、今しまった図鑑を取り出して、開いてみて。

「あ、開けた」
「お、動いてるな」
「ほんとだ。どういう仕組みかな?」
『どれどれ?……わー、おもしろーい!絵なのに、生きてるみたいだね!』

 覗き込んできたモモの言う通り、写真みたいなものではなく明らかに平面に描かれた絵なのに、描かれたモンスターが奥行きを感じさせるような生き生きとした動きを見せています。

 それと、ゲームよりも若干詳しい情報が。

「生息地も、わかるんだ」
「そうだな。……変わったら、どうなるんだろうな?」
「……変わるんじゃない?これも」
「……そうかもな」

 絵が動くとか、明らかに魔法的ななにかが施されてますし。

「……結局、何の役に立つんだ?」
「……狙ってるアイテムとか。……狙ってるモンスターがいる時には、役に立つかもしれないよね……」

 ゲームでもやり込み要素である割にやり込む甲斐も無い、完全なおまけ要素だったし。
 役に立つというよりは見て楽しむものじゃないかね、基本的には。

「……用は済んだし、もう夜だし。帰って、宿取ろうか。またルラフェンにルーラして」

 モンスター図鑑のことは、暖簾を手に入れるためのステップのようなものだから、役に立つことなんか初めから期待してなかったし。
 改めて確認したらなんだか微妙な気分になったが、いつまでも引きずってないでさっさと休もう。

 と思って話を変えると、ヘンリーが提案してきます。

「ルーラがあるんだし、この町に泊まってもいいんじゃないか?みんなはこの町をほとんど見てないんだし、見たいだろ」
「……うーん。でも、先生をあんまり待たせるのも。観光なら、またいつでもできるし……」

 モモと既に合流できた現在、こちら側の事情としては、そこまで闇雲に急ぐことも無いんですけど。
 協力を依頼したベネット先生を放っておいて、のんびり観光とか。

「しっかり観光しなくても、宿に泊まって飯食うだけでも違うだろ。どうせあの町にはしばらくいるんだろうから、今日くらいはここに泊まってもいいんじゃないか?それだけなら、先生を待たせる時間も大して変わらないし」
「うーん……」

 大陸も違うし、調理の仕方も味付けも結構違うし。
 言われてみれば、そうかもしれない。
 ルーラの一回でどうこうなるほど私もヘンリーも魔力は少なくないし、そう言われるとそうしたほうがいい気もする。

「……わかった。なら、今日はこの町で宿取ろうか」
「よし。なら、行くか」

 私も納得したところで、改めて宿を目指して歩き出します。

 なんだかヘンリーの足取りが軽いというか、嬉しそうに見える気がするんだけど。

「……ヘンリー。……もしかしてこの町、気に入ってるの?」
「いや?特にそんなことは無いが、何でだ?」
「いや……なんていうか……」

 町じゃなければ、食事だろうか。
 ラインハットに近い分、味付けも比較的近いかもしれないけど。
 どっちにしても城の食事とは違いすぎるだろうから、あんまり関係無い気もするが。

 ……うん、まあ気のせいかもしれないし。
 考えても仕方ないか。



 そんな引っ掛かりを感じつつ、またしっかりと腰を抱かれて夜の町を歩いて、宿に着いて。

 ルラフェンの宿と違って全員で泊まれる大部屋があるので、一部屋を取って全員で入ります。

『みんなでお泊まりも、楽しいんだけど。今日はドーラちゃんのネグリジェ、見られないのかー』
「そうだね。でも明日はまた、ルラフェンに泊まるから。そしたらまた、着るからね」
『うん!楽しみにしてるね!今日も一緒にお風呂、入ろうね!』

 そんな話をしてたらヘンリーがピクリと反応してましたが、何も言われなかったからそこもまあいいだろう。


 そしてまたいつものように食堂に降りて、夕食を取って。
 賑やかな町ゆえに集める視線も多く、またヘンリーの警戒が高まってましたが。

 そういう意味では、ルラフェンのほうが安全だっただろうに。
 ヘンリーとピエールとモモのお蔭で実際になにかがあるわけじゃないから、私としては別にどっちでもいいけど。
 そんなに警戒するなら何でここに泊まろうとか、……って、みんなのためだったか。

 ……なんかいちいち引っ掛かるんだけど、きっと考え過ぎだよね!



 土地ごとの味の違いなんかを話しつつ、仲間内の関係に限って言えば和やかに夕食を終え。

 またガッチリと抱き寄せられて守られながら部屋に戻って、同じくガッチリとガードされながらお風呂に向かって、入浴も済ませて。

 私とモモに続いて入浴を済ませたヘンリーたち三人が部屋に戻ってきて、入れ替わりにピエールがお風呂に向かい。

 大活躍だったスラリンと、そのスラリンを張り切って応援し続けていたコドランとモモもすぐに眠りに落ちて、ヘンリーと二人になって髪を乾かし終えたところで。


「ドーラ。……ちょっと、抱き締めてもいいか?」
「……は?なに、いきなり」

 抱き締められることも聞かれることも別に珍しくも無いが、ちょっと脈絡が無さすぎないか。

「……昨日も一昨日も、別で寝たし。明日からもしばらく、別の部屋になるし。……ドーラが、足りない。気力が、足りない」
「……さっきまで、あんなにくっついてたじゃない。昨日も抱き締められたし、それに……」

 ……その前は、キスとかされそうになったし!

 ……しまった、思い出したらまた顔が赤く……!!

 目の前で赤くなって俯いた私の様子に気付かないわけも無いだろうに、そこには触れずに切実な様子でヘンリーが言葉を続けます。

「それはそれって言うか、とにかく足りない。絶対に妙なことはしないから、頼む。充電させてくれ」
「…………充電…………」

 …………それはそれで、また思い出すものがあるっていうか!!

 あの時もそうだけどそれで充電できるとか、ちょっと離れてたくらいで気力が萎えるとか!
 なんなのコイツ、私のこと好き過ぎじゃね?

 ていうか、だからここに泊まりたがったのか!
 ここなら、同室になれるから!
 同室になるにもずっともっともらしい理由を付けてたし今日だって一応そうだったのに、この態度は隠さな過ぎじゃないか!?
 はっきり言っても無いくせに!

 ……もう、言えよ!
 いや、やっぱり言わないでください!!
 覚悟というか理性というか、妙なタイミングでそんなこと言われたら振り切る自信がありません!!

 くそう、結論は決まってるのにこんなに揺さぶってくるとは、これだからイケメンってヤツは!!

 内心で大混乱に陥りつつ拳を握り締め、真っ赤な顔は隠しようがなくともせめて妙なことは口走らないようにと堪えていると、ヘンリーが懇願するようにまた口を開きます。

「……ドーラ。……ダメ、か?」
「…………いいよ!!」

 だから、そんな熱の籠った目で見るな!!
 勿体ぶらずに、さっさと来い!!
 するなら早くして、早く落ち着かせて!!

 この状況で目を瞑ったら誘ってる感じになるとか言われたのが脳裏を過ったけれどもそれどころでは無いので、またぎゅっと目を閉じて待ってると、またたっぷりと時間をかけて、そっと抱き締められます。

 …………だから、それもやめろ!!

 焦らされ過ぎて動揺が憤りに変わり、強く抱き締められるのを待たずにこちらから抱き付きます。

「ど!?ドー、ラ!?」

 ヘンリーがなんか動揺してるが、知るか。

 私のほうが、よっぽど動揺した!
 こっちの動揺をわかってて、そんなに待たせるのが悪い!
 自業自得です!!

 ヘンリーの胸にしっかりとしがみ付いて、顔を伏せたままで呟きます。

「……抱き締めるんでしょ?ピエールが帰ってくるし、するなら早く」
「お、おう」

 背中でわたわたと彷徨っていた手が改めてしっかりと回されて、強く抱き締められて。

 ……はあ、落ち着いてきた。

 微妙な距離感だと動揺するのに、これだけくっつけば落ち着くってどういうことだ。

 ……いつも、抱き付いてればいいのか?

 ……さすがに無理か。
 物理的に。

「……ピエールが、帰ってくるまで。このままで、いればいいよね?」

 そのほうが、私の精神的に安全そうだし。

「……え?……あー、充電って意味ではそうしたいんだが……別の意味で、ちょっと不味いってか……」
「なに?やめるの?」

 ……そうしたいって、そっちが言ったのに!
 私をあれだけ動揺させておいてここでやめるとか言いやがったら、もう永遠にやめてやりますけどね!!

「…………いや。このままでいてくれ」
「わかった」



 私の心の声を読み取ったのかどうなのか、ともかくそのままガッチリと抱き合って、ピエールの帰りを待って。



「ドーラ様、只今戻り申した。開けても?」
「お帰り、ピエール!大丈夫、開けていいよ!」
「……」

 ピエールが帰ってくる頃には私の動揺はすっかり落ち着き、ヘンリーはなんだかすっかり静かになって。

 私と離れた後はピエールの顔を見ることもなく、無言でのそのそとベッドに潜り込んでいきました。
 アルカパ名産、安眠枕を抱えて。

「む?ヘンリー殿は、お休みにござりますか?ドーラ様より先に休まれるとは、珍しいこともあるものですな」
「昨日は結構遅かったし、今朝も先に起きて色々やってくれたからね!やっぱり、疲れてたんじゃない?」
「左様にござりますか。ふむ、我ら武骨なスライムナイトとは違い、人とは繊細なものと聞き及びますからな。そのような時も、あるのでござりましょうな」
「スライムナイトって凄いね!私もちょっと疲れたから、もう寝るね!おやすみ、ピエール」
「お休みなされませ、ドーラ様」

 ピエールに断って私もベッドに入り、すっかり落ち着いた安らかな気持ちで、一日ぶりのベッドで心地よい疲労感を感じながら、すぐに眠りに落ちます。


 大都会オラクルベリーをみんなにしっかりと楽しんでもらえないのは申し訳ないけど、明日はひとまずルラフェンに戻って。
 ベネット先生にルーラの成功をきちんと報告して、それから次の話を進めるとしましょう!

 と、明日からの予定をぼんやりと思い描きながら。 
 

 
後書き
 ちょっと間違ったような気がしたので、一部描写を変更しました。
 適当ですみません。
 大したことでは無いので、さらっと流してください。 
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