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ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
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SAO編
  第64話 罪の茨



 さて、色々と話は脱線してしまったが、再び鑑定の話へと戻る事が出来た。
 否、キリトが元に戻したのだ。

「……それで、話を戻すけど、鑑定スキル。フレンドとかに当てはあるか?」

 キリトがアスナとレイナ、2人にそう聞いた。

「ん~……そーだね……。私の心当たりは、武具店のリズさんくらい、かな?……だけど……」
「そうだね、でもリズは今は一番忙しい時間帯だし……。直ぐには頼めないかな……」

 現時刻を確認し、時間的には無理そうだ、と2人は判断をしていた。昼間に狩りを行い、武器の研磨や防具のメンテ。溜まったコルで買い物等。
 今の時間帯は推測するだけでわかる。猫の手もかりたくなるほどに忙しそうなのがよく判るのだ。となれば、もう1つしかないだろう。

「ならエギルしか、いないか……」

 リュウキはそう言っていた。よく考えたら、それが妥当だと思えたのだ。……何より、そんなに忙しそうに思えないプレイヤーだから。

「そうだな。知り合いの雑貨屋だ。そいつに頼むとする」

 リュウキとキリトの言葉にアスナとレイナは頷いた。彼の事は知っている。攻略会議でもよく顔を合わせるからだ。流石に持っているスキルまでは知らなかったようだ。

 そして、一行は 彼の店がある第50層のアルケードへと向かった。



~第50層・アルケード~


 この層はキリトのホームでもある。殆ど時間がかからず、アルケードのエギルの店の前に到着した。
 そこを通りかかったら、1人のプレイヤーが肩をがっくし落としながら、出て行っていったのを目撃する。そして、僅かに開かれた扉の中から、『まいどー、またよろしくー!』と野太い声が聞こえてくる。

「……まあ、多分想像通りだろうな」

 リュウキはそのプレイヤーを見て、ため息を吐きながら呟いた。中で何があったのか、正直 考えるまでもないからだ。

「……だな」

 キリトも同様だった。まるで以心伝心しているかのようだった。
 そして、その問題の店の中へ、一行は入っていった。

「……相変わらず、あこぎな商売しているようだな」

 キリトは店の中へ入り、挨拶も置いといて 第一声、辛辣に声かけた。

「……まったくだ。随分儲けているようだが……? アルゴといい勝負だ」

 キリトにリュウキも続いた。その場でいたのは、スキンヘッドの大男。始まりは第1層BOSS攻略を共にした男。エギルが出している店だ。

「よぉ! キリトにリュウキか。何言っている、安く仕入れて安く提供するのがウチのモットーなんでね? それに、アルゴとは比べないでくれ。あいつ程じゃない」

 その言葉、それは非常に胡散臭い。
 と言うより、色々と見てきているからその言葉を信じろ……といわれても無理な相談だ。

「違和感有り過ぎだ……。最後の部分が特に。ま、アルゴの部分だけは信じられる」
「違いないな。アルゴに関しても同感」


 2人して同意見だった。

「お前らな……2人揃って人聞きの悪い事言うなって」

 最後には拳を合わせあっていた。
 なんだかんだと言っているが、彼の人成はとても良い。エギルは、数少ない信頼できるプレイヤーの内の1人。頼りになる男なのだから。

「って!!!」

 突然、エギルは何かに気づいた様で驚愕の表情をしていた。

「??」

 リュウキはそんな顔をする理由がよく判らない。どうしたんだ、と聞こうとしたその時だった。訳がわからぬままに、素早くエギルはリュウキとキリト、2人共を店のカウンター内に引きずりこまれたのだ。

「ちょ、ちょっとまて! どどどど、どうしたお前ら! 希にお前らが組むコンビ以外は大概がソロなのに、今日は女連れ?? しかも、アスナとレイナ!?双・閃光の2人と4人パーティ?? それにキリト! お前とアスナはそれに仲が悪かったんじゃないか!!」

 随分と随分熱心に近況を聴いてくるエギル。何もそんなに驚くような事じゃないと思うが……リュウキはこの時強く思った。それよりも、もっと思った事はある。

「汚い唾飛ばすな……」

 顔が異常に近いという事だ。頬が接触する程近接している。
 気持ちが悪い以外に形容できないから、リュウキはグイッ、っとエギルの顔をキリトの方へと押し込んだ。

「ってコラ! だからって、オレの方に擦り付けるな!!」

 キリトも必死に拒否して、エギルの顔を押さえる。だから、結果的に2人の手でサンドイッチされた状態のエギル。
 その顔は見事に縦にへしゃげていた。 

「あ……はははは」

 アスナは、そのやり取りを見て顔を引きつらせていた。

「ほんと仲いいね~……。あははは………」

 レイナは、3人を見て笑顔だった。……だけど、じゃ~~っかん アスナ同様に引いてたけようだ。


 そしてその後エギルに、これまでの経緯を説明した。……エギルはその事実に驚きを隠せない。

「何だと!? 圏内でHPが0に!?」

 エギルの反応は当然だろう。この世界でのプレイヤーの命は通常圏内ではシステム的に保護されているはずなのにだ。

「決闘での全損じゃないのか?」

 エギルはまず初めにそれを聞く。それじゃないと……HPが減るわけがないと思っているからだ。

「……あたり周辺を確認した。決闘ならあるべき表示がなかったんだ」

 リュウキはそう答えた。その言葉に、場の皆も頷いた。
 事実……あの場で出来る範囲では確認したが、勝利者の目撃者すらいなかったんだ。

「……それに直前まで、ヨルコさんと歩いていたなら……睡眠PKじゃないよね」

 それも間違いないだろう。
 だが、『決闘じゃない』と100%言えるか?と言われればいえない部分もある。

「あの後も、ある程度は周囲を警戒していたが……、やはり 見つけられなかった。駆けつける前かもしれないな。……だが、あの短期間で 姿を消すのは転移結晶でも無い限りは無理だ。それに、使ったとしても目撃証言が出てくる筈だろう。あのエフェクトを見逃すとは思えない」

 リュウキもそう説明する。転移結晶を使えば、青白い光に包まれ、そして身体が上方へと消えていく。使用すると、比較的目立つアイテムなのだ。

「それに、突発的なデュエルでもありえない。やり口が複雑すぎるからな。事前に計画されていたPKなのは、間違いないといっていい、そして 《こいつ》だ」

 キリトはテーブルに出したその槍を見てそう言っていた。エギルが、そのスピアをとり、右手でウィンドウを呼び出した。
 エギルが所持しているスキルである、鑑定スキルを使い、武器の詳細を確認したのだ。
 そして、ある事が判明した。

「どうやら、これはプレイヤーメイドだ」

 そう説明した。
 NPC武器屋やモンスタードロップではなく、一般プレイヤー、鍛冶職人プレイヤー。恐らくは≪マスター・スミス≫が作ったものだと。

「それは本当か!」
「作った人は誰ですか!?」

 武器の作成者から犯人の手がかりになる。そう思い聞いていた。

「グリムロック……。オレは聞いたこと無いな。店を扱ってるオレが知らないとなると……少なくとも一戦級の刀匠じゃねえ。それに武器自体も特に変わったことは無い……」

 その言葉を聞き、リュウキは考えこむ。そしてある仮説が浮かび上がってきた。

「……武器が重要な手がかり、だな」

 そして、リュウキはそう言っていた。

《変わったところの無い武器》《大した能力も無い武器》

 だが、それが使われた。そこから、考えられるのは。

「……その武器が犯行のメッセージの可能性もある、な」

 リュウキは、武器を手に取りそう呟いた。

「どう言う事だ……?」

 キリトは解らないからリュウキに聞いた。他の皆も同様だった。

「エギル。まず、固有名を教えてくれ。……オレの勘が正しかったら……、この武器にある筈だ」

 リュウキは武器をエギルに返し、聞いた。

「ああ……。確かにあるな。《ギルティー・ソーン》……意味は罪の茨と言った所か」

 それを聞いて……、リュウキは更に確信が持てた。腕を組み、続けた。

「……今回の事件。これだけで終わらない可能性が高いな」
「え、な……なんで?」

 レイナは驚きながらそう聞く。あの恐ろしい事件が続くと言うのだから、不安も隠せられないだろう。

「……考えてみてくれ。あの槍がプレイヤーメイドであり、その武器自身、特殊能力も無い。そして、固有名は《罪の茨》。茨。連想になるが、《罪からは逃れられない》と暗示させているように感じた。……そして、何よりあの目立った圏内殺人と言う恐ろしい犯行。それが……誰かへの見せしめだという可能性が高い。となれば、次に狙われる可能性があるのは……」
「ッッ!」

 全員が驚愕の表情。そして……リュウキの言う《誰か》。それが誰なのか直ぐに連想させられた。《罪の茨》よりも、もっと簡単に連想出来る。
 だけど、したくは無かった、此処まで言えば、皆が判った。

「ヨルコ……さんが……?」

 レイナも、心配している顔だ。彼女に危険が迫っている可能性があるんだ。

「……罪の茨か。リュウキの言う事、確かに間違いないかもしれないな。固有名にそんな意味深な言葉をつければ。……だが、彼女は宿へ送った。とりあえず今日は大丈夫だろう」

 キリトも頷いていた、そしてエギルから武器を受け取り見つめる。

「あともう一つ……試してみるか」

 その後にキリトは、槍を構えた。自分の腕を狙って貫くこうとしたのだ。
 だが。

「ばかっ!!」

 アスナが、キリトのその行為を止めた。

「……何だよ?」

 キリトは何故止めた?と言わんばかりに聞く。

「『何だよ!』じゃないでしょ!馬鹿なのっ!実際にその武器で実際に死んだ人がいるのよ!!」

 アスナはキリトの事を凄い剣幕で怒鳴りつけた!

「いや……でも 試してみないことには……」
「駄目なのッ!!」

 レイナも声を上げる。そして、キリトの方に一歩、近づくと指をつきつけながら。
 
「キリト君はもっと考えて行動して! お姉ちゃんを心配させちゃ駄目だからねっ!」
「はぁッ//!」

 レイナの言葉を訊いて、アスナは一瞬赤くなった。
 今は真面目な話をしている筈なのに。だが、レイナは別に巫山戯て言ったわけではなく、大真面目だった。

「そ……そんなんじゃないけどっ! そんな無茶はやめて! この武器はエギルさんが預かっててください」

 アスナは、直ぐに表情を戻すと、武器をエギルに渡した。

「………オレも見たところ……エギルほど確証は無いが、武器に違和感は感じない。……だから 圏内ではHPは減らないと思うが?」

 リュウキもそこまで止める必要があるのか?と思ったが。

「駄目なものは駄目っ!」

 レイナは今度はリュウキの方へと怒っていた。それは先ほどアスナがキリトに怒鳴りつけた時の様な剣幕だった。

「あ……ああ。わかった。なら、それでいい。違和感が感じないのは事実だから」

 リュウキもレイナに気圧されたようでそれ以上言わずに押し黙った。

「リュウキ君もだよ。レイを心配させたら駄目だからね! 私の大切な妹なんだからっ! 泣かせでもしたら承知しませんからっ!」
「……へぁっ おっ……お姉ちゃん……///」

 お返しと言わんばかりの表情でアスナはそういった。この時、レイナは自分が思わず言った事の意味を思い出した様だ。だけど、アスナもその奥底の瞳は真剣そのものだった。
 つまりは、アスナもレイナも同じ気持ちの様だった。


「……互いに注意した方が良いな。キリト」
「右に同じだ……。2人とも目が座ってるし……」

 男性陣は女性二人に完全に気圧されていた。

「ははは……。なるほどな。納得した。お前らそう言うことだったか。2人揃って尻に敷かれやがってよ……」

 何やら言い合っている4人を見てエギルは合点が言ったようだ。
 そして、悪態ついているように見えてこいつらは、本当に心底仲良く見えるから。

 横で見ていたら、判る事はまだある。


 互いに、お似合いの相手だと言う事を。
 
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