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真剣で清楚に恋しなさい!

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一部 高校一年
川神一子の師範代ロード
  3話 試練の始まり

 
前書き
続けて3話です。
 

 
 川神院


「せい、はぁ、てい!!」

勢いよくワン子の薙刀から鋭い三つの斬撃が放たれる。

「ふん!」

しかし、相手の男は棒で二つを受け止め、最後の一つを薙刀の側面を滑らせるように受け流し、ワン子の懐へ潜り込んだ。

「閃突!!」

「うぐっ!!――っく」

男の鋭い一撃が入った。ワン子も咄嗟に飛び退いただが、ダメージが大きいようだ。

「まだ、まだ・・・ふん!!」

ワンコはすぐに立ち上がり体勢を立て直した。

既に戦いを終えた百代は厳しい表情でそれを眺めていた。あの程度の相手にここまで苦戦するか・・・。これではな、

「 はぁああ!!」

ワン子は薙刀を回転させ、様々な角度から斬撃に打撃を混ぜながら攻撃を始めた。
男はこの試合初めての薙刀の打撃に意表を突かれ、構えが乱れた。

「そこ! 川神流 大車輪!!」

ワン子の渾身の一撃が放たれた。が、

「はっ!!」

棒使いの男はそれすら防いでしまった。
するとワン子は突然、薙刀から手を離し棒使いの男に肉薄した。

「川神流奥義 蠍撃ち!!」

ワン子の放った拳は男のみぞうちに刺さった。男は倒れないまでも、ダメージは大きいらしく、足がふらつき、肩で息をしている。だが、ワン子の一撃が決まっても、百代の表情は厳しいままだ。…蠍打ちは決まれば、相手が倒れる一撃必殺の技。それで倒れないということは、さっき程度のダメージで技が乱れてしまったか・・・。

「せい!!」

ワン子がふらついている相手にとどめの一撃を入れた。

「そこまデ、勝負あり!、勝者 川神一子!!」

審判を務めていたルー師範代が一子の勝利を宣言した。

「オス!!ありがとうございました!!」

ワン子は相手に一礼してこちらに走ってきた。百代はすぐいつもの表情に戻り、ワン子を抱きしめた。

「よくやったな、いい試合だったぞ。ワン子」

嘘ではない。実際、格上の相手によくやったものだ。だが、これでは・・・。

「おめでとウ、一子、よく頑張ったネ」

「ありがとう、お姉様、ルー師範代。あたし、もっともっと強くなるわ」

「さぁ、ワン子、今日はもう疲れただろ。一緒にお風呂に入ろう」

「うん!! あ、でも先に行ってて、もう少しだけ素振りしてから行くわ」

「ワン子は、本当に修行熱心だな」
「川神院の師範代になるんだもの、休んでなんかいられないわ!!」

 師範代、か・・・。その言葉が百代に鉛のように重くのしかかった。

「一子、あまりオーバーワークはダメだヨ、休むことも修行だからネ」

「はーい」

 まったく、本当にあの努力には感心させられっぱなしだな、川神院に来たばかりの頃、修行をつけてもらう試験に根性で合格し、才のあるものでも厳しい川神院の修行に、血反吐はきながらついていき、今では自分でそれ以上の修行をこなして、誰よりも多くの時間を修行に費やしている。勇往邁進か、誰よりも努力してるワン子にぴったりの言葉だな。
だが、そんなワン子に私は厳しい判断を下さなければならない。何度思ったことだろう、どうしてワン子には武術の才能がないのだろうと、どうしてもワン子は報われないのだろうか。たった一人の最愛の妹の夢を、自分が誇りたいと思うたった一つのものを、どうして奪わないといけないんだ・・・どうして・・・。百代はやりきれない気持ちを胸に抱きながら、夕日に照らされながら懸命に薙刀を振るう少女を見ていた。

 川神院 鉄心の自室


「さて、まずはルーの意見を聞こうかの」
長いヒゲを蓄えた老人が禿げ上がった頭を掻きながら切り出した。この老人は川神鉄心。川神院の総代にして、かつてヒューム・ヘルシングや橘兄弟と世界最強の座を争っていた猛者である。ヒュームとは違い、現役を引退し、老いてなおその実力は世界でもトップクラスであり、壁を越えた者の一人である。

「私ハ、まだ伸びしろもあると思いますシ、一子の努力を見ていると、まだ決め付けるのは早いんじゃないかト」

同じく壁を越えた者で、川神院の師範代でもある。一子を直接教えている師匠でもあるので、一子の努力を誰よりも見てきており、自分も努力で師範代まで登り詰めたので、前向きな意見だった。

「ふむ、百代はどうじゃ?」

「わたしは、今日の試合を見ていたが、あれではおそらく無理だろう。これ以上判断を伸ばすのはワン子の為にもしたくない。」

「わしも同意見じゃな」

「ですガ、いきなりそんなことを言われてハ、一子も受け入れられないと思いマス。もう一度、最後のチャンスを与えてはどうでしょう」

「そうじゃのう、格上の相手に試合で勝ったことも考慮して、夏休み前に最後に百代と組手を行ってもらう。その時に百夜に判断してもらう、よいな?」

「ああ」「ハイ」二人共頷いた。

「すまんのう、モモ、お主には辛い役目を負わせる」

「気にするなじじい、次期総代としてやらなければいけないことだ」

百代は表情を変えずにそう返すと部屋から出ていった。

「一子が川神院に来たばかりの頃、少しでもわし達と近づきたくて、武術を始め、姉に憧れ、師範代を目指した。川神院という場所が一子に過酷な道を歩ませてしまったのかもしれんのう」

「そうかもしれませんネ」

 百代の部屋

・・・ワン子のためにも早く伝えるべきなのに、判断を下すのが伸びて安心している自分が嫌になる。もし、あの時、自分に武術以外の力があればワン子に、ほかの道を選ばせることもできたんじゃないか? 今更こんなことを考えても仕方がないのは分かっているが、そう思わずにはいられない百代だった。

ワン子に決断が下るまで、あと一ヶ月。


 秘密基地

「「「おめでとう、ワン子」」」

「やるじゃねーか、ワン子」

「頑張ったな、一子」

「ありがとう、皆。あたし、これからも頑張るわ!!」

試合の後日、ワン子の勝利が報告された。

「格上の相手に大したものだったぞ、ワン子」

モモ先輩が優しい表情でそう言った。

「ありがとう、お姉様。これからも師範代目指して勇往邁進よ!」

「ワン子、お前にもう一つ、試合の話があるんだ」

モモ先輩があらたまって話しだした。何だか嫌な予感がするな。

「まだ二ヶ月も先の夏休み前の話なんだが」
「本当? 今度はどんな人とやるの?」

「私とだ」・・・そういうことか。

「お姉様と!?」

「おいおい、いくらなんでもそりゃ無茶じゃねーか?」

ガクトを始めとした他のみんなも驚いている。

「何、今のワン子の実力を測るためだ」

「・・・・・・!!」

その言葉で京はなにか勘づいたようだ。

「詳しいことは、今日の夜に川神院で話す。私はこの後、用事があるからこれで帰る。またな」

「分かったわ、お姉様、またあとでね」

「じゃあね、モモ先輩。また明日」みんな口々に別れの挨拶を口にした。

・・・これでもう、引き延ばすことはできない。私も覚悟を決めないとな
モモ先輩は少しの間目をつぶって立っていたが、しばらくするとまた目を開き、歩き出した。

秘密基地では

「お姉様との試合が決まったんだもの、こうしちゃいられないわ!! 修行に行ってくる!!」

そう言ってワン子が秘密基地を飛び出し、それに当然のようにゲンさんがついていった。 この二人最近やたらと一緒にいるな、ようやくゲンさんも覚悟を決めたかな。でも、ワン子はまだ気づいてないみたいだな。もう少しかかるかな。などと思いつつ、龍斗は京を屋上に呼び出した。

「どうしたの?龍斗」

京は不思議そうにしている。

「今回の試合のこと、どう思った?」

俺はいきなり話の核心を突いた。

「!!、どうして私に聞くの?」

自分が何かしらのことを勘づいていると悟られて驚いているようだ。

「分かってるんだろ、この間のモモ先輩の表情の変化にも気づいていたみたいだったしな」

「今回の試合で、もしかしたらワン子の師範代への道が・・・。」

京にしては珍しく言いよどんだ。代わりに俺がその言葉を引き継いで答えた。

「閉ざされるかもな」

「・・・やっぱり」
京の表情は暗い。

「100%ではないだろうが、今のワン子には厳しいだろうな。」

「何とかしてあげたいけど・・・、でも」

「あぁ、こればっかりは俺たちが何とかできる問題じゃないし、していい問題じゃない」

「決断が下されるとしたら、下すのはモモ先輩だよね」

「次期総代だし、あの表情を見る限りそうだろうな」

「つらいね、どっちも」

京が悲しそうに呟いた。

「そうだな、だけどこれも次期総代としての責務でもある、今日言ったってことは覚悟を決めたんだろう」

「これで関係が崩れたりしないよね?」

風間ファミリーを誰よりも大切にする京らしい発言だ。

「大丈夫さ、そんなに儚い絆じゃないってことを俺に教えてくれたのはお前だろう? 京」

俺はニッと笑ってみせた

「うん、そうだね」

京もやっと明るい表情を見せた。

「おーい、二人共何話してるんだ?」

大和が屋上へ来た。

「あ、大和!!」

京の表情が、さっきとは比べ物にならない満面の笑みに変わる。

「な、京。来ただろ? 押してダメなら引いてみるんだ。そして引き寄せられたところで作戦Tだ!!」

龍斗はニヤニヤしながらそう言い放った。

「ラジャー!! さぁ、覚悟するんだ大和、抑えきれぬ愛で切る!!」

京は素早く大和の後ろに周り、押し倒そうとした。が、ギリギリのところで大和はそれを回避した。・・・やっぱり、回避能力は大したものだな。

「おい、龍斗!! 作戦Tってなんなんだ!!」

大和が必死に避けながら叫ぶ

「うん? 作戦TのTは力ずくのTだ」

「いつもと変わってねー!!」
この日、川神市で男性の悲鳴が聞こえたとか聞こえなかったとか

 夜 川神院

「ワン子、現段階でお前が師範代になれる可能性があるかどうかの試験を行う、それが私との試合だ。私が合格と判断した場合は師範代になるための新しい修行をお前に課す。だが、もし私が不合格とみなした場合は、師範代への道は諦めてもらう」

「え!?」

百代からの説明を聞いてワン子は衝撃を受けていた。・・・もし、お姉様に認められなかったら、師範代を諦める?

「いきなりと思うかもしれないが、前々から話し合っていたことだ。川神院の師範代は武の道でも最難関と言っても差し支えないほどだ。それを目指すだけの力があるかどうか、見極めさせてもらう。」

「わかったわ、お姉様。あたし、必ず受かってみせます!!」

ワン子ははっきりとそう答えた。

「そうか、期待している」

それだけ言うと、百代は道場から出て行った。道場では、ワン子とルー師範代がこれからの修行について話していた。

「一子、百代との試合に向けテ、新技を教えるヨ。技の名は顎、薙刀を振り上げてから振り下ろすという動作を超高速で行う技ダ。」

「基本を極めに極めたってかんじね」

「そう、真に強力な技は、どれもシンプルなものだヨ。相手には上下同時に二本の斬撃が襲うように見える。まずは、私がやってみよウ」

「ハァ!!」

ルー師範代が素早く薙刀を振るう。すると下段と上段から同時に鋭い斬撃が飛び、中心でそれらがぶつかり合い、激しい衝撃波がおきた。

「百代ハ、この技を一子が知らないと思っているからネ、初見で出せば百代といえど、手傷を負わせることができるだろウ」

「オッス!! 早速修行ね!!」

「ダメー!! 修行は明日からだヨ、ただでさえきつい修行になるんだからネ」

「はーい」

ワン子は渋々納得したようだ。

こうしてワン子の師範代への道をかけた修行が始まる。
 
 

 
後書き
地の文「(´・ω・`)」
 
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