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魔法少女リリカルなのは~その者の行く末は…………~

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Chapter-3 Third Story~Originally , meeting of those who that you meet does not come ture~
  number-31 storage of Rinya

 
前書き



燐夜の記憶。


この場合は、三桜燐夜。高町なのは。フェイト・テスタロッサ。


 

 


燐夜君とあの女の子が戦っているときに巻き起こされている衝撃に飛ばされて気を失ったの。そしてフェイトちゃんが起こしてくれけど、景色に色がなかったの。そして、起きた周りの景色はどこかの家の中。誰の家だろうと疑問に思ったけどそれはすぐに分かったの。


燐夜君が幼いころにお母さんと二人で住んでいた家。私は燐夜君からお父さんのことは聞いたことはなかったけど、お母さんのことは聞いたことがあった。二十歳で燐夜君を産んで、お父さんとは別れて女手一つで燐夜君を育てた立派な人。今、私の目の前で燐夜君とそのお母さんはご飯を食べている。とても和気藹々としていて、お父さんが居なくても十分に楽しそうだった。


「なのは……っ!」


そんな仄々としている二人を見て心が和んでしまっていると、フェイトちゃんが私を呼んだ。その声は、今ご飯を食べている二人に聞こえるかも……と思ったが、それは心配し過ぎで聞こえてなかったみたいだった。


そのことにほっとした気持ちと、ちょっぴり残念な気持ちが生まれた。ふうと一息つくとフェイトちゃんのもとへ駆け寄る。フェイトちゃんは、カレンダーの前でびっくりした様子でただ立っていた。私は、フェイトちゃんと同じようにカレンダーを見てみたけど、特に不思議に思うところはない。ただフェイトちゃんが、私を呼んだだけなのかなと思って、フェイトちゃんを見るけど何も言わないフェイトちゃん。まだカレンダーを見ていることにどうして? という気持ちが湧きあがる。
それから少しして、フェイトちゃんがカレンダーのある一点を指差した。それを辿るようにして目で追う私。――――そして、目を疑った。


カレンダーには、ちゃんと今日の月日がのっている。それは当たり前のこと。というよりそれが曖昧だったらカレンダーじゃない。私が、見ているのは西暦。
私――――高町なのはが生まれたのは、1996年。3月ということもあって、みんなよりは遅めの方だけど、それでも9歳。そして、燐夜君は11、12歳なはず。だって今、まだ小学五年生だから。でも、それだと計算が合わない。カレンダーに載せられている西暦は、1990年。どうして?
それなら、燐夜君は私より5年ほど早く生まれている。1993年ではなくてはおかしいのに。


私は、他にも何かないかとまだ燐夜君とそのお母さんが食事している中リビングを回ってみた。すると、もう一つ。ここが地球ならない筈のものがある。管理局からの表彰状。


『表彰――――第2教導隊所属ミサ・アラカワ一等空佐』


フェイトちゃんって声を出す前にぐにゃって視界が歪んで違う風景になった。
今度はどこかの町。少なくとも海鳴町ではなかった。海鳴町はこんなに雪は積もらない。でも、私もフェイトちゃんもここまで積もった雪を見るのは初めてなの。実際に触れなかったけど色もなかったけど、とてもきれいに感じた。


「なのは、大丈夫? さっきので具合悪くなったりしてない?」
「うん、大丈夫。でも、どうしてこんなところに?」
「それは……あそこに燐夜とそのお母さんがいるからだと思うな」


そう言ってフェイトちゃんは、モノクロの中の景色の先を指差した。確かにその先にはあの二人がいる。そういえば――――


「フェイトちゃん、燐夜君は最初は名字が違ってたんだ」
「……どういうこと」
「さっきの部屋の中で見たの。あのお母さんが管理局から表彰を受けてたのを。その名前は、ミサ・アラカワ」
「……アラカワ」
「うん、多分荒い川って書いて荒川だと思うんだ。だけど――――」


私の話は最後まで続かなかった。フェイトちゃんがいきなり大声を上げたからだった。私もその声につられて、フェイトちゃんから目を離してフェイトちゃんが見ている方を向く。そして、私は声を失った。
いきなり、燐夜君のお母さんが倒れていくのだ。でも病気ってわけじゃなかった。頭を固いもので殴られて意識を失ったようだ。その隣では、燐夜君が襲ってきた人たちを睨みつけていた。でもまだ幼い子供。すぐにあしらわれてそのままどこかに連れ去られていった。
しかも、車ではなくて魔法陣で。転移だ。


さらには信じられないことに襲った人たちの中にプレシアさんがいた。不安に思ってフェイトちゃんを見るけど、案の定ショックを受けていた。でも、その場に崩れ落ちるようなことはなかった。後で謝るんだって申し訳なさそうにしてたけど、大丈夫そうだったの。


そしてまたぐにゃって視界が歪む。二回目ということもあって慣れたのか問題はなかった。


今度はどこかの研究所みたいなところだった。病院でよく見るような手術台の上に燐夜君は寝かせられて、黒いベルトで体を台に固定されていた。
燐夜君の体は傷だらけで目の焦点も定まっていなかった。見ていられなかった。
フェイトちゃんは、手を握りしめて何かに耐えるように歯を食いしばっていた。ここで私は思い出した。今いるところは、夢みたいなところの中だということを。だから、今周りにいる研究員に攻撃しても当たることなくすり抜けるだけだ。


でも、でも、燐夜君の苦しむ姿は見たくなかった。周りの人たちが燐夜君に次々と何かを注射して、体を切り裂いて何かを組み込んで……ダメ、体が震えてきた。いつも私たちの前に笑いこそはしなかったけど、優しくいてくれていた燐夜君がこんな目に遭っていたなんて信じられなかった。
どうすればいい? 一体どうしたらいい? 私は何をすればいいの? 
……いや、来ないでっ! 私を覆わないで! 私は逃げない! 燐夜君がひどい目に遭ってたなら、私もその苦しみを共有するんだ。だから、来ないでっ!


「――――なのはっ!」


大きな声に自分の名前を呼ばれたと思ったら、私を覆おうとしていた何かが一気に霧散していった。そして、体に締め付けられるような圧迫感を少し感じた。彼方に飛んでしまった意識を現実に戻すと、目の前には綺麗な金の髪があった。
ようやく理解した。私はフェイトちゃんに抱きしめられているんだって。


段々震えが無くなって来ていた。これもフェイトちゃんのおかげだと思う。もしフェイトちゃんが居なかったら、私はあれに飲み込まれていたに違いない。


私が落ち着いたのを感じ取ったのか、フェイトちゃんはゆっくり私から離れていくけど、私はまだ不安だった。だから思わず離れて行こうとするフェイトちゃんの手を握っていた。初めは驚いていたフェイトちゃんだったけど、優しく私に微笑んでくれたフェイトちゃんは、その手を握り返してくれた。ここ強いと感じたの。


苦しんでいる燐夜君から目を逸らさないけど、やっぱり見たいとは思えなかった。いつまで燐夜君が苦しむ姿を見せられるんだろうと思った瞬間、燐夜君が淡く光り出してすでに私たちより高かった身長が縮んだ。フェイトちゃんも目を見開いておどいていたけど、私も驚いた。でも、ようやく納得がいった。燐夜君はこの悪法な実験のせいで若返ったということらしかった。
そして感じる、もう慣れた視界の歪み。


今度は暗い所に出てきた。今まで明るい所にいたせいか、目が暗い所に慣れていなくて何も見えない。でも、何か男の人と誰かが話しているのが聞こえる。隣でフェイトちゃんがいきなり暗い所に来た成果パニックになっていたけど、私が名前を呼んで手を握ってあげると安心したように息をついていた。
暗い所を歩いていくとぼやっと明かりが見えてきた。


「これが君のお母さんだ。君がずっと会いたがってきたお母さんだよ?」


男の人がそう鎖に繋がれている燐夜君に見せたのが、もはや人ではない何かだったの。声も出せなかった。フェイトちゃんの受けた衝撃が大きい。頭の中が真っ白になっている。
鎖から解き放たれた燐夜君がその人ではない何かに近づいて話し始めた。今いる位置からでは、若干遠くて聞こえにくかった。


何回か会話を交わした後、燐夜君が蒼い炎を体から噴き出して剣を作った。そしてそれをお母さんだった何かに振り下ろした。その瞬間私たちの口から引き攣った声が漏れる。フェイトちゃんも目の前でお母さんをなくしているけど、燐夜君も悲しい。自分の手でお母さんを殺めたのだから。


男の人は高笑いをしている。でも、その人を燐夜君はお母さんを斬った蒼い炎の剣で切り裂いた。男の人は高笑いをした表情のまま命を落とした。
そして感情が抑えきれなくなった燐夜君は、蒼い炎を多く出して体を覆ったかと思うと姿を見る見るうちに変えて黒い大きなドラゴンになってしまったの。私はそれが何なのか分からなかった。でも、そのドラゴンの名前をフェイトちゃんが知っていた。


「……アルダーヴァレリオン。リニスに教えてもらったことがある。古代ベルカ時代に覇王を殺し、イクスヴェリアと呼ばれる王も窮地にまで追い込み、聖王に深手を与えるも、聖王に殺された。最強にして唯一無二の存在、それがアルダーヴァレリオン。でも、あのドラゴンは、その強さ上に子供を作ることがなかった。その力は、もう無くなったものと思われていたのに……」


最後まで聞かなくても分かった。私も話しだけは聞いたことのある王様たちを追い込んだとても強いドラゴン。多分、管理局総当たりで当たっても勝てるかどうかわからない、そんな強さを持つドラゴン。
目の前で研究所が壊れていく。ときどき、咆哮が轟音を立ててあたりの空気を震わせているけど、私にはそれが悲しんでいる様にしか聞こえなかった。


とても、とても悲しい。ものすごく悲しい。


もう私には耐えられない。幼いころにお父さんが重傷を負って、家族に迷惑をかけない様に自分の感情を押し殺していたころよりもつらい。フェイトちゃんのお母さんであるプレシアさんが、目の前でいなくなってしまったことよりもつらい。リインフォースさんを助けるために燐夜君が闇の書の影響を全部自らの体に押し込めて、私たちの前からいなくなってしまったことよりもつらい。


そうして私は……ううん、私とフェイトちゃんは、その場に泣き崩れてしまった。


辺りの景色がだんだん白く埋められていく。モノクロで表現されていた世界が、ただの白い空間になりつつある。私たちが覗き見た燐夜君の過去は壮絶だった。でも、私たちは燐夜君と向き合う。スケールは違うけど、似通った心の傷を負った仲間として。好きな人として。


私たちは燐夜君と向き合っていく。


フェイトちゃんと手を握って、ちゃんと立ち上がって前を強い意思の篭もった瞳で見つめる私とフェイトちゃん。
その瞬間、白い空間は音もなく崩れていき、私たちも意識を失った。


 
 

 
後書き


回想的なものを書いていると、胸が痛くなってくるんです。色々とあるんです。例えば私が書く小説って基本的にシリアスなので重く重くって考えたり。過去と今の摺合せが上手くいってるかな?とか。
それで……どうだったでしょうか。うーん、自分が考えていることをうまく言葉にできないのはつらいですね。
個人的にはまだシリアスが続く予定です。はい。

 
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