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晴ればかりじゃない

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第六章

 それで僕達は今晴れだった、そしてそれは僕達だけではなかった。
 僕達の席の近くの二人用の席に彼等がいた、僕は彼等を見て知人に言った。
「あっ、あの二人は」
「ミスタードーナツで話していた二人かな」
「うん、あの二人だよ」
 こう知人にも話した。
「あの喧嘩をしていてね」
「雨で店に入って出ていたら仲直りしていたカップルだね」
「この店に来ていたんだ」
「あの二人か」
 知人もカップルの方に顔を向けた、そのうえでこう言った。
「そういえばあのカップルも球場の観戦に来ていたね」
「そうだったよ」
「成程ね、それじゃあね」
「嬉しそうだね。ということは」
「阪神を応援していたんだね」
「そんなことを話していたよ、ミスタードーナツを出る時に」
 僕はその時のことを覚えている、二人共阪神が勝てばいいといったことを話していた。このことからだった。
 僕は彼等は喜んでいるのを見てだ、こう知人に言った。
「だからね、あの二人もね」
「喜んでいるんだね」
「そうみたいだよ、よかったよ」
 彼等にとってもだとだ、僕は思った。そして彼等も実際に勝利の美酒と肴を楽しみながらこんなことを話していた。
「勝ってよかったね」
「全くよ」
「九回まで一対零でどうなるかって思ったけれど」
「勝ってよかったわ」
 僕達と同じ様なことを話していた、カップルで。
「今日は楽しいデートだったね」
「喧嘩もしたし雨も降ったけれどね」
「試合も負けそうだったけれどね」
「よかったわね」
 仲直りが出来て試合も勝った、確かに彼等にとってもいいこと尽くめだ。
 そしてそうなったのはどうしてかというと。
「雨が降って喧嘩も収まって仲直り出来て」
「逆転サヨナラ勝ちも途中まで負けてたからね」
「いや、嫌なことがあってもね」
「それがいいことに変わるのね」
 このことを二人で話していた、そしてだった。
 僕達もそう思っていた、それで知人に肴の烏賊の姿焼きを食べながら話した。
「世の中雨があるから晴れが有り難いんだね」
「そしてその雨もだよ」
「うん、悪いこととは限らない」
「世の中はそういうものだよ」
 晴ればかりじゃないし晴れでなくともいいこともある、僕達は勝利の美酒を味わいながらこのことを知った、今日のことから。そのことがわかってさらにl気持ちを晴れ晴れとさせて飲んでいった。


晴ればかりじゃない   完


                    2013・7・24 
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