| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

XANIS

作者:パッセロ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
< 前ページ 目次
 

イタリアのどこかの森に、私はいた。

三つ時前から雨がずっと降っている。

森の中には、雨音と私の鳴き声だけが響いていた。

私は歩けない。

喋ることもできない。

こうして泣くことしか、私はできない。

長い間雨にさらされ続けた私の意識は、朦朧としていた。

冷たくなる体を包むのは、薄く古びた毛布一枚だけ。

身の危険を感じているのに、私は自分では何もできない。

ただただ泣くことでしか、私の生を知らしめる術はなかった。

やがて、体は完全に冷えきって、声も枯れ果て、目の前も真っ暗になった。

いつまでも聞こえ続けていた雨の音も、終には聞こえなくなった。





ⅩⅠⅩⅠⅩⅠⅩⅠⅩⅠ





3時間前に降り始めた雨は、止むどころかさらに強くなっていた。

「チッ。天気予報外れやがって」

午後から晴れる、何て言っていた朝のニュースを思い出して、故意に舌打ちをした。

ガチャッ

「おや? 出掛けるのかい? 外はどしゃ降りだよ」

「散歩。中にいるよりマシだ」

「そうか。風邪を引かないようにね」

バタン

外に出ると、雨の音は一層(やかま)しくなった。

さっき、誰かの泣き声が聞こえた。

この雨だ、何かの聞き間違えだろう。

他人にそう言えば絶対にそう返されるはずだ。

けど、確かに聞こえた。

音が邪魔で、傘も差さないで外を歩く。

「この辺りだよな」

たどり着いたのは近くの森。

目の前にあるのは所謂獣道。

自分の感覚を信じながら、その道を奥へ奥へと進んだ。

「いた」

そこで見つけたのは、毛布にくるまれた赤ん坊だった。

抱き上げると、ぐったりとしていて意識はなかった。

それどころか、この雨の中身に纏っているのは古ぼけた薄い毛布一枚。

こいつだ。

こいつがずっと、身の危険を知らせるために泣き続けていたんだ。

周りを見ても人気(ひとけ)はない。

恐らくこの赤ん坊は、捨て子だ。

「息はまだある。父さんに……頼むしかねぇな」

赤ん坊をしっかりと抱きかかえて、来た道を全力で走った。

雨はより一層強くなった。

ガチャンッ

「父さん!」

帰るなり真っ先に父さんの部屋に駆け込んだ。

「父さん、外にこいつが捨てられてた」

赤ん坊を見せると、父さんの顔が険しくなった。

「怪しからん輩がいるものだ」

「息はあるが意識がない。それにこのどしゃ降りの中、薄い毛布一枚しか着てなかった」

「!? 急いで医務室に連れていきなさい! そこにいる人にちゃんと説明するんだ」

「う、うん」

父さんの剣幕から、これはただ事じゃないと悟った。

急いで医務室に走る。

バンッ

勢いに任せてドアを開けると、中にいた大人が一斉にこっちを見た。

大人「坊っちゃん、どうなされました?」

「実は――」

彼らに事の経緯を話す。

父さんと同じように、彼らもまた険しい顔になった。

大人「A班はすぐに赤ん坊の状態確認! B班は体を暖めるものを早急に用意! C班は――」

一気に騒がしくなる医務室。

大人「坊っちゃんは自室にお戻りください。状態がわかり次第、報告させていただきます」

「……分かった」

~自室~

こんこん

『入るよ』

ガチャリ

「元気がないね」

「だってそれは、あの赤ん坊が心配だから……」

しばらく沈黙が流れる。

「私の見解だが、あの子は元気にはなれない」

「!? 何でそんなこと言えるんだ」

「お前があの子を持って私の部屋に来たとき、呼吸がとても浅くて、回数も少なかった」

それだけで……たったそれだけで元気になれないって決めつけられちまうのかよ。

チクショウ……。

『坊っちゃん、失礼します』

ガチャッ

大人「先程の赤ん坊ですが、かなり長い間雨の中にいたのでしょう。衰弱しきっていて、回復の見込みはないかと思われます。もちろん、我々も最善を尽くしますが――」

嘘だろ……?

こいつらまで父さんと同じこと言うのかよ……。

だったら……

「オレに任せろ」

大人「え?」

「あの赤ん坊の世話、オレに任せてくれ」

大人「し、しかし」

ポン

父さんの手がそいつの肩に置かれた。

大人「!?」

「この子が自ら進んで言ってるんだ。任せてやりなさい」

大人「よろしいのですか? 9代目」

9代目「ああ。できるね、XANXUS」

XANXUS「できるさ。次期ボンゴレボスの名に懸けてな」 
< 前ページ 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧