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閃の軌跡~特異者の軌跡~

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入学~新しい生活~

 3月31日、白いライノの花弁が舞い散る季節。帝都近郊の都市『トリスタ』では各々の制服に身を包んだ学生たちが多く見られている。学生は一番多いのが緑の制服、次に白の制服・・・そして所々に見られる数名の『深紅』の制服を着た学生。そして、またこの地に深紅の制服を着た新入生が到着した。駅に降り立った彼はそのまま歩き外へと出て行く。周りにいた人々からの奇異の視線で見られながらも無視して。駅の扉を開けると真っ先に目に飛び込んできたのは白いライノの花弁と、穏やかでだが心地よい活気が溢れる町の光景だった。

「ここがトリスタ・・・良い町だ」

 ほんの少しこの光景に歩みを止めていた彼だったが再び歩き始める。歩きながら町を見回すと本屋や喫茶店、花屋にブティック、商店などの店やライノの木が植えられている公園に綺麗な水の川と言った自然。流石に帝都や公都の町と比べられると見劣りするだろうがそれでもこの穏やかな空気の流れる町はおそらく帝都や公都にはないものだろう。『貴族派』・『革新派』の対立が水面下でうごめく町ではここまで心は落ち着かないだろう。

「そしてココが『トールズ士官学院』か・・・デカイな」

 歩いて数分。辺りにはもう学生の影が殆ど見当たらず残っているのは彼と正門前に立っている2人だけだ。その2人は彼に気付きそして顔を引き攣らせ冷汗を額に滲ませる。

「え、えっとぉ・・・ジョルジュ君。彼・・・は学生でいいんだよね?」

「あ、あぁ。コートの下にちゃんと赤の制服を着ているみたいだし・・・。か、彼も僕達に気付いてるみたいだし、早く行こうか?」

「う、うん。そうだよね。私の方がおねぇちゃん何だからしっかりしないとダメだよね!」

 と、気合いを入れるのは緑の制服をきた茶髪で小柄な少女―『トワ・ハーシェル』。それに苦笑しながらついて行くのは黄色の作業着を着た少し太った少年―『ジョルジュ・ノーム』。2人は彼が丁度正門を通って来た時に意を決して声をかける。

「ご、ご入学おめでとーございますっ!」

「ン?」

 トワの声に歩みを止め声のした方を向く。真正面から対峙したことで「うっ」とたじろぐトワだったが頭を振り笑顔で彼に近づく。

「君が最後みたいだね。――ジル・E(エメラルド)・リュウドウ君・・・でいいんだよね?」

 少し自信なさげに確認するように上を向き尋ねるトワ。一般的な女子と比べても小柄な彼女は基本的に会話をする際は必然的に上目使いの形と成るが彼との場合は完全に上を見上げる形と成る。何故ならば男子であるそこまで背の低くないジョルジュも見上げる形と成っているからだ。長い時間このままだと確実に首を痛めるであろう。

「あぁ、そうですよ。先輩方は生徒会ですか?お疲れ様です。遅くなってスミマセン」

 そんな二人に予想と大分異なり丁寧で優しい声で労いと謝罪の言葉が掛けられ二人とも困惑していた。それは無理もないのだ。何せ彼は身長が190を超える長身なのだ。更に格好は深紅の制服を着崩しその上から漆黒のコートで全身を覆い両手には黒革のグローブ、目は黒のサングラス。コートと同じ色でやや長めの髪は目元に掛り表情が読み取り辛くなっている。そんな外見とのギャップに驚いた2人を慣れた、と言う風に苦笑しながら

「初めまして、今日からココに通うことになりましたジル・E・リュウドウです。ヨロシクお願いしますね、先輩方」

 軽くお辞儀をして名乗るジルに慌てながらトワもお辞儀をする。

「ここ、こちらこそ!ヨロシクね!あ、私はトワ・ハーシェルって言います!」

「僕はジョルジュ・ノーム。あ、ソレが申請した荷物だね?預からせて貰うよ」

 2人とも名乗り終えるとジョルジュは、ジルが手に持っていたアタッシュケースと肩に掛けていたかなり長めのケースを受け取る。と、そこで鐘の音が聞こえ3人ともハッとする。

「はわわわ!も、もう時間が!ジル君は先に講堂に行って!ジョルジュ君、私達も急ぐよ!」

「そうだね!じゃあ、ジル君また今度!」

 2人はそう言うと走っていった。それを眺めながらジルも講堂へと急ぎ足で向かう。こうして、新たな春が始まったのだった。 
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