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ソードアート・オンライン~ニ人目の双剣使い~

作者:蕾姫
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剣と槍と銃と

 
前書き
この話はリン視点とシノン視点からなっていますのでご注意を

今回はリン視点です。つまりいつも通りです(笑) 

 
足元を生暖かい風が過ぎていく
ガンゲイル・オンラインで最強のプレイヤーを決めるバレット・オブ・バレッツであるが、もうすでに開始からかなりの時間が経っていて、太陽は沈みかけ、辺りは少しずつ薄暗くなり始めている
俺は洞穴から外に出てスキャンを待つ。洞穴の入り口でシノンは待機している
ザザやレオンには意味がないが第三、第四のプレイヤーに対する対策になるからだ

「時間か……」

定時と共に端末を見る。一番近いのは北一キロあたりにいる二人のプレイヤー。名前はステルベンとレオン
そして、東二キロあたりにいるプレイヤー、名前は闇風。前大会準優勝の実力者。確か敏捷重視のミドルレンジ型だったか
フィールドにそれ以外生きている点は存在しない
俺が見ている間に、俺以外の点が一斉に移動し始めた
三つの点はすべてこちらに向かって来ている
ステルベン、レオン組はゆっくりと。闇風は滑るように素早く
どうやら闇風は先にこちらを片付ける腹積もりらしい
やがて頭上を監視衛星が飛び去り、光の点が全て消えたのを確認すると俺は洞穴で待つシノンの元へ歩み寄った

「どうだった?」

「残っているのは俺とシノンを含めて五人以上。死んだ点をいちいち数えている暇はなかったからシノンと同じように洞穴に隠れている可能性は否定できない。肝心のステルベンとザザはゆっくりとこちらに移動中。光の点の速さから考えて接触は大体五分後。そして一番動きが速かったのは闇風。こっちの接触は大体二分後。もちろんスピードを落としたり早めたりすればその限りではないけどな」

「なら、私はこの洞穴の上から闇風を狙撃する。……信じてくれる?」

「愚問だな。信じるに決まってるだろ?」

闇風はシノンに任せて俺はステルベンとレオンに集中するとしよう

「じゃあ、シノン。俺の背中は任せた」

そう言うとシノンは武者震いなのか体を震わせた










そして、一発の銃声が辺りに響き渡る
おそらく闇風をシノンが狙撃した音だろう
結果は見るまでもない。俺の役目はもうすでに目に見える範囲に入ってきているステルベンとレオンの迎撃なのだから

「よお、リン。さっきはよくもまあ無様に逃げてくれたもんだねぇ」

「しょうがないだろ、レオン。背中に守るべきものを背負ってたんだ。……物理的にな」

「おい、レオン。早くしないとシノンがこっちを狙ってくるだろ」

俺とレオンが口調上は穏やかに話していると、苛立ったような擦り切れた声が割り込む

「やれやれ。君もせっかちだねぇ」

そう言いつつもレオンは銃剣を付けた狙撃銃を構え、重心を低く落とした
それを見たステルベンも持っていた狙撃銃を後ろに放り投げ、懐からエストックを取り出す

対する俺はFNとピースメーカーを取り出し、いつものように構える
すなわち、FNを前に突き出してピースメーカーを肩に担ぐような構え

「ッ!!」

戦闘はヘカートⅡの銃声で始まった。狙われたステルベンは大きく体を曲げ、体勢を崩す
それとほぼ同時に俺とレオンは走りだしていた

「なかなか粋な計らいだねぇ」

レオンの放った突きを上体を傾けることで回避する
そのまま脇に挟み込もうとする
レオンはそれを嫌い、突きの速度をそのままに蹴りを放ってくる

ピースメーカーをクッションに後ろに跳びながら受けとめる
咄嗟の蹴りだったのか威力が弱く全くダメージが無かった
後ろに跳びながらFNをレオンに向けて発砲。が、それはレオンが横凪ぎに振った狙撃銃に打ち落とされる
スコープの部分をもぎ取れたからよしとする

「しかし、君は僕のことばかり気に掛けていてもいいのかい?」

「くっ!?」

シノンのいる方をみるとステルベンが滑るように近づいている
シノンもヘカートで応戦してはいるが、ステルベンは幽霊の様な動きで全てを回避している

「よそ見していてもいいのか?」

「この野郎っ!!」

突き出された銃剣を手で払って反らす
その衝撃でFNを取り落としてしまう

「いいねぇ。その表情。大切な物を失いかけた時の憤怒の表情。やっぱり君はそうでないと」

多少の距離を空けて向かいあっているが、踵を返してシノンの方へ行こうとすれば狙撃銃で撃ち抜かれるだろう。この距離ならスコープなんて関係ない

「リン、こっちは俺に任せてそいつを倒せ!」

「ペイルライダーか!?」

「おまえがそいつを倒すまでの間、俺が持ちこたえてやる!」

その後は声ではなく断続的な銃声が響いた

「倒してしまっても構わんのだろうぐらい言えよ、バカ野郎」

ペイルライダーも命を狙われているはずなのに、初対面であるはずの俺たちのために戦いに身を投じてくれた。ありがたいが、バカだ

「というわけで俺はあのバカ野郎の命も助けたいんでな。覚悟はいいか?」

「もちろん、望むところだよ」

そう言ってレオンは唇を舐める
単純な悪意がない分質が悪い

「勝負なら後でも受ける。だからここは引いてくれないか?」

ナックルのように構えた拳銃で突いてくる銃剣を打ち払い、空いている片手で無理矢理軌道を変える
即席のもので完全にはダメージを防ぐことはできないが、致命傷は避けている

「笑止! 僕は何かを賭けているときの鬼神のような君と戦い、そして切り刻みたいのさ! そして今! そんな戦いができている。仕切りなおせだなんて生殺し……ナンセンスさ!」

「……なら、押して進むまでだ!」

俺はピースメーカーで強くレオンの銃を思いっきり叩く。それによりできたわずかな隙に懐から光剣を取り出した

「っ!!」

刃を伸長させる時間ももどかしく電源を入れながら光剣を振る

しかし、レオンは当たらない。崩れていた体勢を立て直し、空中で一回転。バック宙の着地と同時にこちらに突いてくる
俺はその切っ先をピースメーカーで撃つことで銃剣の速度をわずかだが緩める
その隙に体をひねり、少しでもダメージを減らす
その結果、銃剣は俺の脇腹をかするにとどまった

「実にいい! 実に素晴らしい!」

この一撃に全体重を賭けていたのか銃剣と一緒にレオンの体が俺の構えた光剣へと倒れこんでくる

「そうだねぇ……君相手に様子見(・・・)なんて必要なかったんだ」

嫌な予感を感じたのでとっさに俺はレオンの狙撃銃を切り裂くと後ろに下がる
冷たいものが頬を撫でた感触が残る
もちろん幻覚である
レオンの持つ二本の短刀に切りつけられたからってそんな感覚は生まれない
仮想空間なのだから

「これが僕の本当の武器。双短刀だよ。アインクラッドにおいて君が二刀流スキルを用いて敵をほふっているのを目にしてね。憧れたんだ。でも、同じなものはつまらない。そうだろう?何事も二番煎じはよくはない。大勢いる使い手のうちの一人に成ったって輝かない。だから短刀にしただけの話さ。まあ、気休め程度なんだけど……」

辺りに金属音が響き渡る

「僕はまだ話している途中なんだけど……不意打ちなんて正義の英雄様には似合わないと思うよ?」

俺の握ったピースメーカーから立ち上っていた煙が風に消える

「悪いが俺は正義の英雄様なんてお行儀の良いものになった覚えはないな。生憎だが、お前の演説を聞いてるほど暇じゃなくてな。卑怯者の罵られようとも、俺を信頼してくれているやつの意に己の意志で応える。そのためならいかなる手段を用いても成し遂げる。それが俺だ」 
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