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ドリトル先生の来日

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第三幕 日本に来てその十二

「美味しいお茶がある筈だから」
「日本でも飲めるね」
「そう思うわ、セットだって」
 そのティーセットもだというのです。
「楽しめるわよ」
「王子もそう言ってたね」
「これからはじまる日本での生活」
 今度は老馬が言ってきました。
「皆で一緒に楽しもう」
「そうだね、僕達は一人じゃないからね」
 先生もここで言います。
「楽しくやろうね」
「皆でね」
 こうしたお話をしているとです、不意に。
 皆左手に見ました、それまで青い世界しかなかったのですが。
 緑です、緑の世界が小さいですがそこにあります。その緑を見てチーチーが言いました。
「あれが日本かな」
「沖縄かな」
 先生はこの地名を出しました。
「あそこかな」
「沖縄?」
「日本の島だよ、諸島だよ」
 島が一杯集まっている場所だというのです。
「日本の一番南の場所だよ」
「ふうん、そうなんだ」
「あと少しだね」
 先生はその緑の場所を見つつ笑顔で言いました。
「神戸までね」
「あと少しだね」
「日本まで」
「そう、いよいよだよ」
 自分達のあらたなお家までだというのです。
「もう家は王子に用意してもらってるからね」
「そこに入ってだよね」
「それから」
「はじめよう、僕達の新しい暮らしをね」
 日本でのだというのです。
「そうしよう」
「そうだね、日本に入ってね」
「そうしてね」
 皆も先生の言葉に笑顔で応えてです、そうして。
 今は皆でその緑の島を遠くに見ていよいよはじまる日本での暮らしのことも思うのでした。その島を見てすぐでした。
 船は左右に小舟や網が一杯ある海に入りました、先生達はこの時もお外で紅茶を飲んでいますがその時にです。
 船員さんが来てです、こう言ってきました。
「ここは瀬戸内海といいます」
「海峡ですか?」
「そう言うには広いですが」
 こう先生に答えるのでした。
「日本では昔から船の行き来が盛んな場所です」
「確かに多いですね」
「小舟だけでなく島や潮流も多くて」
「航海が難しいですか」
「はい、ここは」
「成程、小舟にぶつからない様に注意しないといけないですね」
「そうです、ここは難所です」
 船員さんはカフェテラスの様な場所に座ってティーセットを前にして紅茶を飲んでいる先生達の傍に立ってお話をします。
「これまでとは違ってです」
「よく注意して進んでいますか」
「そうしています」
 こう先生達にお話してくれるのです。
「いつもです」
「そうですか」
「そうです、もうすぐ神戸ですが」
 目指すそこは間も無くです、しかしだというのです。
「最後の最後で一番の難所です」
「そうですね」
「そうです、しかし本当にもうすぐですから」
「はい、楽しみにしています」
 先生は船員さんににこりと笑って応えます。
「日本を」
「それでは」
 先生達は今も海、船の周りの小舟や網のヴイ、それに小島達を見つつ航海の最後の時を観ていました、その次の日でした。
 先生は後ろに高い緑の山が見える白い街に着きました、青い海から出てその街の入口である港に降り立ったのです。
 そこで、です。先生は皆に言いました。
「もう家の場所は書いてあるからね」
「ここだね」
 ポリネシアは先生の左肩にいます、そこから先生が開いている地図を覗き込んで言います。
「そこのバッテンのところだね」
「うん、ここだよ」
「じゃあ今から行こうね」
「最初にお家に入ってからだよ」
 先生は港から神戸の白い町並みを見つつ言います。
「僕達の新しい暮らしがはじまるんだ」
「これからどうするかは」
 チープサイドは先生の右肩から言いました、家族も皆一緒です。
「私達次第ね」
「そうだよ、僕達がそうしていくんだよ」
「日本でもね」
「皆楽しくやろう」
 先生はここでもこう言います。
「皆でね」
「そうしよう、日本でも」
「僕達でね」
 まずは先生が一歩踏み出して皆もそうします、先生と皆の日本での生活が今はじまります。


ドリトル先生の来日   完


                      2013・10・17 
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