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魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~

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Ep16旅立ち~Take a good journey~

†††Sideはやて†††

「ん・・・ん?・・・」

目が覚めると、そこはわたしの部屋のベッドの上。頭がボーっとして、どうして部屋で寝てるんかもも判らへん。えっと、わたし、いったい何があって・・・あっ、思い出した。みんなで“夜天の書”の防衛プログラムを倒した後、わたし倒れてしもうたんやった。気を失ってる間に送ってもらったみたいや。みんなには感謝せなアカンな。

「そういえば・・・シグナム? ヴィータ? シャマル? ザフィーラ?・・・リインフ――っ!?」

家の中のどこかに居るって思うて家族の名前を呼びながら体を起こした瞬間、胸が急に痛み出した。

「リイン・・・フォース?」

リインフォースと繋がってるからかな。今からリインフォースがやろうとしてることが頭に浮かんだ。わたしはベッドから車椅子に移って、「アカン・・・こんなの!!」部屋を飛び出す。
そのまま家の外へ出ると、薄着には辛い寒気がわたしを襲った。寒い。あまりに急いでた所為で防寒着とか忘れとった。時間もあらへんのに家の中へ引き返そうとした時・・・

「そんなカッコじゃ風邪ひくよ、はやて。・・・ルシル」

「ああ。ほら、これなら大丈夫だろ?」

まるでわたしを待ってたように家の外におったんは、シャルちゃんとルシリオン君の2人やった。ルシリオン君は自分の着てた黒いロングコートをわたしに差し出した。えっと、男の子のコートや。ちょう恥ずかしいけど、「あ、ありがとう。ルシリオン君・・・」お礼を言いつつ受け取って、コートに手を通して着た。

(なんや、ええ匂い・・・)

すごく温かくて、ほのかな香水の匂いが鼻をくすぐった。ルシリオン君が着とったコートをわたしが着たから、ルシリオン君はどうするんやろ?と思うて見てみると、ルシリオン君はバリアジャケットってゆう魔法の服に着替えとった。

「あっ、そうや! シャルちゃん! ルシリオン君! わたしをリインフォースのトコまで連れてってくれへんか!?」

それより今はリインフォースのことが心配や。わたしに黙って、勝手にあんなことをしようとしてる新しい家族のことが。

「うん。そのために待ってたから。ルシル、マスター命令。車椅子よろしく」

「・・・ひゃぁ!?」

いきなりシャルちゃんがわたしを横に抱えた。俗に言うお姫様抱っこってやつや。ルシリオン君は「了解。さっさと切っておけばよかったな・・・契約」って、わたしの座ってた車椅子を畳んで、軽々持ち上げて肩に担いだ。

「文句は聞かない。蒐集されていたことを黙っていた罰、1発殴るの代わり。しばらく私の命令に従え」

シャルちゃんの言葉を聞いたルシリオン君は「はい、喜んで」と泣く泣く言う。

「それじゃ飛ばすからしっかり掴まっててよ、はやて」

「あ、うんっ!」

――真紅の片翼(アインス・ルビーン・フリューゲル)――

一瞬の浮遊感。シャルちゃんは綺麗な赤い翼を羽ばたかせて、空に上がった。そしてリインフォースやみんなの居る海鳴公園へと空を翔る。そやけど早朝とは言え、「人も疎らに歩いとるのに飛んでもいいん?」って聞いてみたら・・・

「私とルシルの周囲に認識阻害の結界が張ってあるから大丈夫。視覚で捉えていても脳が認識していない。つまり実際には目に入っていても見えていない、というわけ」

とゆうことみたいや。透明人間のようなものやとわたしは思うことにした。

「・・・なんで・・・なんでリインフォースはこんなこと・・・」

「彼女が優しいから、でしょ。はやてとの別れで、あなたを悲しませたくないって」

「いやや、そんなん。わたし・・・わたし、あの子に何もしてあげてへん。それに絶対にお別れなんてさせへん・・・!」

これからもずっと一緒に生きていける。そう思っとる。だからお別れなんて認めへん。そう決意すると「・・・そう・・・だね」ってシャルちゃんが悲しそうに呟いた。

「まずい。もう準備が出来ている。はやて、彼女の名前を呼んであげてくれ」

それからしてすぐ、公園が見えてきたところでルシル君がわたしに言った。

「え? うん! リインフォースぅぅーーーーッ!」

わたしの今出せる一番の声。力いっぱい家族(リインフォース)の名前を呼んだ。みんな、空から降りてきたわたし達を見て驚いてる。先に降り立ってくれてたルシリオン君が置いてくれた車椅子へ、シャルちゃんが優しく座らせてくれた。

「はやて!!」

「動くな! 儀式が止まってしまうから動かないでくれ」

わたしに駆け寄ろうとしたヴィータをリインフォースが止める。そしてリインフォースは、わたしの後ろに居るシャルちゃんとルシリオン君を見た。

「お前たちが居なかったのは、主はやてをここに連れてくるため・・・だったのだな」
 
「そう。初めからはやてをここに連れてくるって、医務室であなたと話し終えた時からルシルと決めてた。ねぇ、リインフォース。あなたは別れを告げるとはやてが悲しむと思ったから、こうして黙って逝こうとしたんでしょ? でも目を覚まして、そこにあなたがもういないと知ったら、はやてが余計に悲しむって解からなかった? それとも考えなかった?」

「それは・・・」

シャルちゃんの言葉を聞いたリインフォースは押し黙った。今や、今すぐリインフォースを止めなアカン。

「リインフォース! 絶対にわたしがちゃんと抑えるから、だから破壊なんてしてもらわんでもええッ!」

リインフォースは困ったような、悲しんでるような苦い顔をした。わたしのことを考えて、想ってくれたから、リインフォースはひとりで逝こうとしてる。それが辛い。そんな選択をさせたことが悔しい。そやけどリインフォースは「よいのです。これで、よいのですよ」って笑った。

「なにが・・・なにがええんや! そんな悲しそうな、辛そうな顔をしとって、納得できひん!」

あんな悲しそうな微笑みを浮かべても何も納得できひんよ、リインフォース。

「私、夜天の魔導書は・・・自分の始まりすら思い出せない程に長い時を生きてきました。ですが、最後の最後で私は、心優しきあなたに出逢えたのです。祝福の風リインフォース。とても綺麗な名前を、家族を想うことの出来る温かな心を頂くことが出来たのです。これほどの幸福。他を探せと言われても決して見つけることなど出来ません。えぇ、2度と、です」

「そんな・・・リインフォース・・・。アカン・・・アカンよ・・・。そんな顔・・・」

精一杯、悲しみやなくて嬉しそうな微笑みを浮かべるリインフォースに、わたしは涙が止まらへん。

「それに。ご安心を、主はやて。確かに私は逝きますが、主が独りになることはありません。騎士たちが、これからもずっとあなたの側にいます。ですから・・・」

リインフォースが後ろに居るシグナム達を見てそう言うた。わたしはその言葉を素直に受け入れるわけにはいかへん。コードの袖で涙を拭って、わたしも精一杯の説得を試みる。

「違うっ! わたしはそんなんが言いたいのと、聞きたいのとちゃう! わたしとシグナムとヴィータとシャマルとザフィーラ。そこにリインフォースが居って、はじめてホンマの家族になるんや! リインフォースひとり居らんかったら・・・なんの意味もないやんか!」

「・・・そう仰って貰えただけで、私はもう充分です。悔い無く笑って逝けます」

「嘘つきは嫌いや! 駄々っ子過ぎや、ホンマに分からず屋やな、リインフォース!」

なのはちゃん達の言う通りや。リインフォースは話を全然聴こうとせえへん。でも諦めへん。諦めて、堪るか。なんとか説得しようって考える。そうや、約束。リインフォースとの約束してたアレを言えば、きっと・・・。

「リインフォース。夜天の書の主はわたしや。そやから言うことを聴いて。わたしはリインフォースを、夜天の書を絶対に暴走させへん。そう約束した、憶え――」

「もちろん憶えていますよ。私を抑え、決して暴走させない、と。その約束は、守っていただきました。ですから私はあなたを喪うことなく、こうして存在しているのですから」

「リインフォースは全然解かってへん! その約束は、あの時だけやのうてこれからもずっとって意味や! だからわたしは守ってない、守りきってない!」
 
「ご理解ください。・・・私は夜天の魔導書。主に害なす全てを打ち払い、そして主を守りぬくのが魔導の器たる私の務め。あなたを守るために、私は、この最も優れた道を選びたいのです」

「アカン・・・そんなん理解できひんよ! やっと、やっとリインフォースは救われたんよ・・・。それやのに、こんなんあんまりや!」

「私は居なくなるわけではありません。体は失いますが、この魂と、皆を守るという意志は、主はやての魔導と騎士たちの魂に残るのですから」

「リインフォース! わたしは――っあ?」

リインフォースのところへと行こうと車椅子を進めるんやけど、何かに引っ掛かって車椅子ごと転倒してしまった。

「「はやて!」」

シャルちゃんとルシリオン君がわたしを抱え起こしてくれた。わたしは2人に感謝の目を向けてから、リインフォースに向き直る。

「これからやんか。全部、これからやんか・・・。わたしが、今度こそみんなが笑っていられるように、みんなを幸せに思ってくれるようにしてあげなアカンのに・・・!」

「・・・はやて」

シャルちゃんが強く手を握ってくれる。リインフォースはゆっくりとわたしのところへと歩いてきた。わたしの前で片膝をついて、そっとわたしの頬に手を添えてくれた。わたしがリインフォースにしてあげたように。

「主はやて。私はもう大丈夫です。なにせ私は、この広い世界で最も幸福な魔導書なのですから」

リインフォースの綺麗な微笑み。解かってしもうた。リインフォースはもう・・・止まらへん、止められへん。

「主はやて、1つお願いがあります。私は消えて、無力な欠片へと変わるでしょう。“祝福の風リインフォース”。その名は、その欠片にではなく、いずれ主はやてが手にするであろう魔導の器に贈って頂きたいのです。よろしければ、その願いを果たしてもらいたく思います。駄々っ子で分からず屋な私の最後の願いですが・・・叶えて頂けますでしょうか」

「リイン・・・、うん・・・リインフォース・・・。きっと、わたしは・・・」

「ありがとうございます、主はやて。きっと私の魂は、その者に宿ります。・・・フライハイト、セインテスト。お前たちもありがとう。主はやてとの別れの時間を与えてくれたこと、心より感謝する」

「いつまでもはやてを見守ってあげて」

「ああ」

“リインフォース”を受け継ぐ子。それがリインフォースの願いなら、わたしは・・・。リインフォースが魔法陣の中央に戻っていった。これで本当にお別れになるんや。

「これで私は心置きなく、笑って旅立って逝ける。主はやて、守護騎士たち、そして心優しき勇者たち・・・ありがとう・・・・」

リインフォースは最後にとても綺麗な笑顔で、その長い長い旅路を終えた。天に上る光の先、その空から何かがゆっくりと降ってきた。わたしはシャルちゃんとルシル君に支えてもらいながら、それをしっかりと手にする。

「リイン・・・フォース・・・」

両の手の平の上で輝く十字架。わたしはそっと胸に抱いた。

†††Sideはやて⇒ルシリオン†††

リインフォースを送り、みんなと別れた俺とシャルはアースラへと戻って来た。そしてトレーニングルームで向き合う俺とシャル。

「ねぇ、もうこのままでいいんじゃないの? 毎回毎回、状況の悪いときに契約(メンタルリンク)なんてしてられないよ? その都度に口づけって、その、恥ずかしいし」

「イヤだ。どんな命令を下されるか判ったものじゃない。君が滅茶苦茶な命令を下す前に、なんとしても契約を・・・切る!!」

それだけは絶対に阻止。俺はフェイトから、海鳴市に引越したその日、シャルとアリサの話の内容を教えてもらっている。生まれてくる性別が間違ってるだの、女装させれば面白いだの、それは恐ろしい内容だった。

(そんなこと、絶対にさせてなるものか!!)

今更それを思い出した俺は、すぐさま契約破棄の儀式を行うことにした。だが、それをさらりと拒否したシャル。もしこのままシャルがマスターとなれば、俺の男としての尊厳が粉々に砕かれる日が来るかもしれない。いや、絶対に来る。

「チッ。そんなに私と口づけをしたいようね」

「ふざけろ馬鹿。そんなわけあるか。これから先、そのような事態に陥ることは絶対にない!」

わざとらしく恥じらいを見せるシャル。というか真っ先に舌打ちした意味が解からん。

「判った。なら戦って決めよう。私が勝ったら契約続行、ルシルが勝ったら契約破棄、これでいいよね?」

「受けて立つ!!」

こうなると薄々思っていたからこそのアースラだが。戦うとなるとやっぱり激しく面倒だ。

「トロイメライ」

≪Jawohl, Meister≫

「さてと、いくよルシル」

魔導師として俺と戦うか。なら俺もそれに付き合わないといけないだろう。

「勝敗はギブアップ、もしくは気絶させた方が勝利。戦闘中にお互いの魔力を引き出すのはアウト、もちろん俺に命令するのもアウト」

「判ってるって。そんなことしたら瞬殺になっちゃうじゃん♪」

その天使のようで、実は悪魔のごとき笑みが激しく恐ろしい。“トロイメライ”を軽く振っているシャルは余裕で満ちている。

「その余裕、粉々にしてやる!!」

「返り討ちだよルシル!!」

――雷牙閃衝刃(ブリッツ・ランツェ)――

――燃え焼け汝の火拳(コード・セラティエル)――

結局、このあと昼まで戦い続けたが、お互いの魔力切れということで勝敗は着かなかった。
残った結果は、もうしばらくは現状維持という、俺にとっては最悪な展開だけだった。やばい、泣きそうだ。
そんな俺を置いて、シャルは海鳴市へと戻っていった。今日、なのは達がご家族と友人のアリサ、すずかに真実を明かすからだそうだ。あとで聞いた話だと、やっぱり最初はみんなが驚いていたが、受け入れてもらったようだ。これでもうフェイト達は大丈夫だろう。ならば、あとは俺とシャルの今後についてだが・・・。

「どうするかな~」

まぁ、何とかなるだろう。これまでもそうだったように、ただ流れる水のごとくこの身を委ねるとしよう。世界が界律の守護神(オレとシャル)に求めるその願いのままに。


・―・―・シャルシル先生の魔法術講座・―・―・


シャル
「ほい、第2章の最後で始まる、シャルシル先生の魔法術講座❤」

ルシル
「なぁ、シャル。逃げるつもりはないのだからバインドで拘束しないでくれ」

なのは
「あー、ごめんねぇ、ルシル君。シャルちゃんがどうしてもルシルを縛って連れて来いって」

フェイト
「私たちもそこまでしなくていいんじゃないかなぁ~って思うんだけど、シャルになんか逆らえなくて」

ルシル
「アルフとユーノもそう言った口か?」

ユールフ
「まぁそんな感じ」

シャル
「まぁまぁ、ルシルもそう不機嫌にならないでよ。さてと、早速本題に行くよ。何せ溜まってるからねぇ、紹介しないといけない魔術や魔法が」

なのは
「でもどうしてこんなに溜まっちゃったの?」

シャル
「良い質問だよ、なのは。まず第一。ルシルと守護騎士による戦闘が行われていたことを知らなかったから」

フェイト
「そ、そうだよっ。ルシル、どうしてあんな無茶をしたの!? 私たちに話してくれなかったし!」

アルフ
「確かにそいつはちょっと看過できないねぇ。ルシル。あんた、散々迷惑をかけておいて謝りも無いのかい?」

ルシル
「い、いや、謝っただろ。確かに」

ユーノ
「あれ? 謝ってないよ確か。シャルから罰を言い渡されて、それでうやむやに」

ルシル
「ユーノ・・・。余計なことを」ボソッ

アルフ
「あ、今ルシルの奴、余計なことを、って言った!」

ルシル
「アルフ・・・」

なのは
「ルシル君、それはさすがにダメだよ」

フェイト
「う、嘘を吐いてたことに対して、私たちはルシルに謝罪を求めます・・・!」

シャル
「あはっ。なのはとフェイトが敵に回ったらもうダメだね。潔くこうべを深々と垂れて謝るが良い。そして、これからはずっと私の奴隷となると誓え」

ユールフ
「いや、最後のは要らないでしょ」

ルシル
「シャルの話はともかくとして。そう、だな。ああ、判った。みんな、黙っていてすまなかった」

なのフェイ&ユールフ
「うんっ」

シャル
「まぁ、それで良しとしておこっか」

フェイト
「でもルシル。どうして教えてくれなかったの?」

なのは
「そうだよね。隠しておく意味ってあったの・・・?」

ルシル
「いや・・・、まぁなんだ。心配をかけたくなかったんだよ。解かるだろ? それに、なのははもちろん。フェイトもシャルも、大切な学校の最中だった。それを、戦いということで邪魔したくなかった」

なのフェイ
「あ・・・」

シャル
「・・・はぁ。そんなこと言われたらもう責めれないじゃん」

アルフ
「気遣いは嬉しいんだけどさ。心配くらいしてもいいだろ?」

ルシル
「でもやっぱり心配をさせたくないって気持ちは汲んでくれ」

シャル
「ま、それがルシルだもんね。それじゃあ、この話は終わりしによっか。んで、第2になんだけど。それは、このコーナーの主である私がシグナムとの決闘に負けて、その回でのコーナーが出来なかったわけなんだけど」

ユーノ
「あー、やられちゃったからか」

なのは
「これは私が謝らないとダメだよね。ごめんね、シャルちゃん」

フェイト
「私も。何も出来なかった。ごめん」

アルフ
「だったらあたしもだよ。もう少し早く駆けつけてれば、蒐集されなかったかもしんなかった。ごめんよ」

シャル
「ストップスト~~ップ! あれは私の責任なんだから、なのは達が謝ることじゃないって」

ルシル
「そうだぞ。シャルが魔法ではなく魔術を使えばどうにでもなったんだ。意地になって魔術を使わなかったシャルの責任。それ以外なしっ! だから謝る必要なんて――あいたぁぁーーッ!?」

シャル
「ちょっと黙ってて。でも、うん、まぁそんな感じだからさ、気にしなくたっていいんだよ。というわけで、そんなこんなで溜まっちゃったわけ」

なのは
「ここでまた謝って、シャルちゃんの責任を勝手に背負うのはダメだよね」

フェイト
「そっか。うん、じゃあ、もう謝らない。シャルの気持ちのために」

アルフ
「そういうことならしゃあないね。あいよ」

シャル
「うん、オッケー。じゃ、始めようか。まずは私の魔法からね。

――ゲシュウィンディヒカイト・アオフシュティーク――

――光牙十紋刃(タオフェ・クロイツ)――

――牢刃・弧舞八閃――

この3つなんだけど。
ゲシュウィンディヒカイト・アオフシュティークは魔法で、片翼を大きく羽ばたかせて飛行速度を一時的に上昇させる魔法なの。意味はそのまま速度上昇。
閃光系魔力の斬撃を十字型に放つ光牙十紋刃タオフェ・クロイツ。タオフェは洗礼、クロイツは十字架って意味ね。
最後は、私の持つ2つの真技の1つ、牢刃・弧舞八閃。
えっと、居合い抜きによって加速された“キルシュブリューテ”の直接斬撃に加えて、魔力で構成された刃をさらに同時に七太刀放つ、計八太刀同時斬撃の剣技なんだ。
んで、作戦会議のときに説明したとおり、キルシュブリューテの能力・絶対切断が刀身・魔力刃に付加されているから、どんなものでも斬っちゃうことが出来るの」

ユーノ
「アレ、すごかったよね。まさか防衛プログラムのコアを斬るなんて。魔導師じゃ絶対に出来ないことだよ」

なのは
「うん。魔法じゃなくて魔術なんだよね。すごいなぁ。シャルちゃん」

フェイト
「ねぇ、シャル。真技ってどういう意味なの? 魔術とは別のやつとか? それとも魔術の中での特別なってこと?」

シャル
「そっ♪ フェイトの言う後者の方ね。真技っていうのは、魔術師が持つ固有魔術の中で、最強・最高の効果を持つ術式のことなんだ。私の場合、キルシュブリューテの能力と自分の剣技を合わせたものね」

アルフ
「魔術師はってことは、ルシルも持ってんの?」

ルシル
「ああ、持ってるぞ。2つな」

フェイト
「そうなんだ。ルシルのはどんなの?」

シャル
「ルシルのは極悪だよ~。必中必殺のやつと、アルカンシェル以上の破壊力を持ってるやつ」

なのは
「ア、アルカンシェル以上って、うそだよね・・・?」

ユーノ
「でも、ルシルならアリかも」

フェイト
「えっと・・・そうなの?」

ルシル
「まぁそうだな。アルカンシェルの効果を聞いたから言えることだが、確かに俺の最強の真技は、アルカンシェル以上の被害をもたらすことが出来るだろうな。具体的な被害としては、なのはとフェイトは判るかな? カナダという国を丸ごと消し飛ばせるだけの威力を誇るよ」

なのフェイ
「カナダ?・・・ええええーーーーッ!?」

なのは
「カナダ!? 今カナダって言ったのルシル君!?」

フェイト
「えっとえっと、カナダって確か、この世界で2番目に大きな国だよね!」

なのは
「どんだけスゴイの魔術って!! 日本が消えちゃうよ! アルカンシェルなんて目じゃないよ!」

フェイト
「なんでそんな魔術を作るの!? というか使ってもないのに何で威力とか被害が――」

ルシル
「ふふ、これでも物心つくより魔術とともに生きてきたんだ。どういう術式を組めば、どれだけの効果を生み出せるか、簡単にイメージが出来る。まぁ作ったところで使う日は来ないと思うが、用心に越したことはい、ということだ」

なのフェイ&ユールフ
「用心って・・・」

シャル
「ま、この話はもう終わり。そんじゃ次行ってみようか。今度はルシルの魔術ね」

ルシル
「ああ、判った。

――その身に焼きつけよ(フェニックス)――

――流麗なる乙女(ウンディーネ)――

――風音よ広きに渡れ(シルフィード)――

――災厄より護る盾となれ(ルフークリエ)――

――輝き流れる瞬星(ルーザー)――

――吹き荒べ汝の轟嵐(コード・ラシエル)――

――畏怖させよ汝の地顎(コード・トゥアル)――

――噛み砕け汝の凍牙(コード・マトリエル)――

――舞い降るは汝の麗雪(コード・シャルギエル)――

――舞い降るは汝の無矛(コード・パディエル)――

――殲滅せよ汝の軍勢(コード・カマエル)――

――崇め讃えよ汝の其の御名を(コード・ミカエル)――

――瞬神の飛翔(コード・ヘルモーズ)――

――光神の調停(コード・バルドル)――

この14個だな。
自動追尾型の火炎の鳥を放つ、その身に焼きつけよフェニックス。
水柱を自分の周囲に噴き上げさせて、高水圧による障壁とする、流麗なる乙女ウンディーネ。
相手に強烈な突風をぶつけるシルフィード。
五角形の魔力シールドを最大5つまで展開し、自動機動で攻撃を防ぐルフークリエ。
複数の高速レーザーを放つルーザー。
竜巻を自分の周囲に発生させ、攻防一体の障壁とするコード・ラシエル。
土石で構築された龍を突撃させるコード・トゥアル。
氷で構築された龍を突撃させるコード・マトリエル。
氷の槍を射出するコード・シャルギエル。
なんら属性が付加されていない、ただの魔力槍のコード・パディエル。
あらゆる属性の槍を最大2千本射出し、敵軍を殲滅し蹂躙するコード・カマエル。
蒼翼22枚で全方位から敵へ集中砲火するコード・ミカエル。
空戦能力を爆発的に上昇させるコード・ヘルモーズ。
全方位に向けて複数の砲撃を無差別に連続して放ち続けるコード・バルドル」

アルフ
「あたし、思ったこと言っていいかい? ルシル、あんたさ、もう人間じゃないよね?」

ユーノ
「4ケタの槍を一気に展開して好きなように射出・・・? どれだけの魔力と制御能力があれば出来るんだ?」

なのは
「私じゃ考えられないよ。絶対できないもん」

フェイト
「うん、そうだよね。ルシルってデバイスの演算処理以上の早さだし」

なのは
「にゃはは、すごいよね~。あ、でもルシル君。ちょっと質問いいかな?」

ルシル
「ん? 俺に答えられるのなら」

なのは
「フェニックスとウンディーネとかって、他の魔術と違って、コード、って付いてないよね。だからなんでかなぁ?って」

ルシル
「あぁそれは、その2つが下級術式だからだな。正確には未完成品だ」

ユールフ
「未完成品?」

ルシル
「ああ。下級術式というのは、幼い頃に組んだ術式で、その所為もあって術式に綻びがあるんだ。だから、完成された術式を意味するコードを付けることの出来ない未完成というわけだ」

フェイト
「よくそれを実戦で使ったねルシル。シグナムとヴィータとザフィーラを相手にしてる場面で・・・」

ルシル
「綻びがある半面、消費魔力も少ないし、暴発・炸裂することで本来以上の威力が生まれたりする。だからあの場面で使ってみた。結局は役に立っていなかったけどな」

シャル
「ルシルってギャンブル好きだったっけ?」

ルシル
「ん? いや、別にギャンブルをやったわけじゃないんだが」

フェイト
「ルシル、あんまり危ないことしちゃダメだよ? 暴発なんて、ホントに危ないから」

アルフ
「そうだよ。あんたの魔術って強力なんだから、至近で暴発してあんたが吹っ飛ぶなんて嫌だからね」

ルシル
「ああ、判ったよ。気を付ける。それと、もう下級術式は使わない。フェイト達に心労をかけるのは良くないからな」

フェイト
「あ、うん。そうしてくれると嬉しい・・かも」

アルフ
「その約束、破ったら承知しないよ」

ルシル
「了解だ」

シャル
「んっ。話も纏まったことで、今回はここまでにしておこうか。それじゃ今回はここまで! 第三章でまたお会いしましょー!」

なのは
「また次回で会おうねー!」

フェイト
「えっと、ばいばい!」

ユーノ
「次章からも僕出れるのかなぁ~・・・?」

アルフ
「あたしだって次章から出番が一気に減るしねぇ~」

ルシル
(アルフも切実だなぁ~) 
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