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魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~

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2nd Episode:
夜天の主と雲の騎士
  Ep1冬空に来たるは襲撃者~Reunion~

†††Sideなのは†††

時刻は早朝。私とシャルちゃんは今、海鳴臨海公園内にある丘の休憩所近くの広場で、2人きりで魔法の練習をしてる。私の魔法の先生でもあるユーノ君は残念だけどこの場には居ない。クロノ君に呼ばれてアースラへ行っちゃったから。なんでも結界要員としての招集だっていう話。にゃはは、確かにユーノ君の結界は強いから。

「それじゃあ、シャルちゃん。いつものシュートコントロールで終わろっか」

「了解。それじゃ私から行くよ。ロイヒテン・プファイル」

シャルちゃんが空き缶を放り投げ、自分の周囲に作り出した真紅の魔力弾・・・というよりは矢尻の形をした魔力矢1発で、空き缶を空に打ち上げる。今度は私が空き缶へ「ディバインシューター、シュート!」を撃って、その空き缶をまた空高く打ち上げる。

「よしっ。追撃せよ(フェアフォルグンク)

シャルちゃんが魔力矢を操作して、空き缶をさらに打ち上げる。

「なのはっ♪」

「うんっ♪ シューット♪」

魔力弾1発だけで空き缶を200回打ち上げるという訓練方法だ。もともとはシャルちゃんが覚えたばかりで慣れない射撃魔法の正確性を高めるために始めたことなんだけど、これがなかなか難しいんだ。最初は2人でよく頭に落ちてきた空き缶の痛みに悶えていたけど、今はそんなことはない。

「これでラスト!」

200回に到達したから、私は空き缶をゴミ箱に入れるためにシューターを操作したんだけど、残念ながら空き缶はゴミ箱の縁に当たって弾かれちゃった。む~、残念。

「あ~惜しい。もう少しだったね、なのは」

シャルちゃんがゴミ箱に駆け寄って、落ちた空き缶をゴミ箱に入れながらそう言ってくれた。

「うん。でもシャルちゃんもこの半年ですごく上手になったよね。初めの頃は、シャルちゃんの誘導操作の軌道といったらすごかったもん」

あれは本当に酷かった。あっちへフラフラ、こっちへフラフラとして怖かった。最後にはシャルちゃんへ向かって行って自爆していたことが多かったし。あれは笑ったなぁ。

「む、仕方ないじゃない。あんなこと今までしたことなかったんだから。やっていたのは術式をキルシュブリューテに乗せて撃つ、っていうものだったし」

シャルちゃんは頬を膨らませながら、両手を腰に当てて拗ねちゃった。初めて会った時は、大人びていてクールでカッコいいって感じの印象だったシャルちゃん。だけど今は子供っぽい感じに変わっちゃった。私は今の方が親しみを感じるからこのままで良いと思ってる。だって可愛いんだもん、今のシャルちゃん。

「にゃはは♪ ごめんごめん。もう朝ご飯の時間だから帰ろっか」

「もうそんな時間か~。そうね、お腹も空いたし。うんっ、すぐ帰ろう」

私たちは家へ続く帰路にへとついた。

†††Sideなのは⇒シャルロッテ†††

なのはと2人だけの習慣となった魔法の早朝練習を終えて帰宅して、制服に着替えてから朝食の準備をしていると、恭也兄さんが郵便物が届いているとなのはに言った。なのはは嬉しそうに「ありがとう、お兄ちゃん!」と恭也兄さんの元へと駆け寄って、大きな封筒を受け取った。あの封筒はフェイトからのビデオメールね。

「いつものあの子たちからのだね。またビデオメール?」

「うん、きっとそう!」

美由希姉さんの質問にも嬉しそうに答えている。なのはは本当にフェイトのことが好きみたいね。

「その文通も、もう半年以上になるよな~」

「フェイトちゃんとルシリオン君、今度遊びに来てくれるのよね? 家に来てくれたらお母さん、う~んと歓迎しちゃう!」

士郎父さんも桃子母さんも、なのはの様子を見て嬉しそうな顔をしている。本当に良い家族だな~。こんな温かな人たちに囲まれて過ごせる私は、とても幸福な部類に入るんだろうね。

「そう言えば、ルシリオン君はシャルちゃんのお友達、だったんだよね? やっぱり久しぶりに会えるとなると嬉しい?」

美由希姉さんが今度は私に矛先を向けてきて、ルシルとの関係についてそう聞いてきた。むぅ、微妙に難しい感情が心を占めている。

「ええと、そうですね。嬉しいと言えば嬉しいような、といったところでしょうか」

だから思ったことを素直に口にする。曖昧な答えになのはや桃子母さん、美由希姉さんの女性陣が難しい顔をしてしまった。

(え? なに? 私って変なことを言った? 言っちゃったの?)

私が戸惑ってしまっていると、桃子母さんがニコッと笑みを浮かべる。

「あらあらシャルちゃん。もしかして好きな男の子をフェイトちゃんに取られちゃったから、とか?」

「なっ!? はっ!? あ、ありません! 有り得ません! ルシルとはそんな関係じゃなかったですし! へ、変なことを言わないでください桃子母さん!」

桃子母さんのそんな突飛な話に動揺してしまう自分が悔しい。ルシルへ恋愛感情。それは無いと断言できるはずだ。生前は復讐心でいっぱいで、今では仲間だという感情だけだと思う。それに好きになったところで結ばれることは絶対にない。私たちはそういう存在なんだから。

「うふふ、ごめんなさいね。そんなに照れなくてもいいのよ?」

「ですから違いますって!」

なのは達はユーノのことばかり話していて、私を助ける素振りが見られない。うぅ、覚えていなさいよ、なのは。ジーっと半眼で睨む。それでもなのはは変わらず笑みだった。

†††Sideシャルロッテ⇒フェイト†††

「さて、じゃあ最終確認だ。被告席のフェイトとルシルは、裁判長の問いに対してソレに記された内容通りに受け答えをすること。あぁ、それとルシル。一応、魔術に関しては魔法と称して上に通しているからそのつもりで頼む。それで今回は、アルフも被告人席に入ってもらうことになるから。しっかりな」

私とアルフとルシル、そしてユーノの4人は、クロノに向かい合うように座って明日の裁判の話を聞いている。明日の裁判で決着する。大事な大事なことだ。絶対にミスは許されない。

「うん」

「了解した」

「判ったよ」

クロノは私とアルフとルシルについての話をした後、自身とユーノについて話を始める。

「そして僕とそこのフェレットもどきは証人席となる。質問の回答はそこにある通りだから、忘れないように」

「判った・・・っておい! 誰がフェレットもどきだ!? 誰が!」

「ん? 何を言っているんだ、君に決まっているだろ?」

ユーノがテーブルに手を叩きつけながら怒鳴り散らしている。けどクロノはそんなこと聞くまでもないという態度で返すものだから、さらにユーノが怒りに燃えてしまった。

「確かに動物形態でいることも多いけど、僕にはユーノ・スクライアという立派な名前がちゃんとあるんだ! しかも人間!」

「とりあえず落ち着こうユーノ。いつものクロノの軽いジョークだよ。いちいち反応していると精神がもたないぞ」

「ユーノ、まあまあ」

「クロノ、あんまり意地悪言っちゃダメだよ」

ユーノの後ろから両肩を掴んで座らせながら宥めるルシル。私とアルフもそれに続いて宥める。それで何とか落ち着いたようだけど、機嫌が悪いのは判る。そんなユーノを無視しているかのように、クロノが話を進めていく。もう。どうしてクロノはユーノばかりからかっちゃうんだろう?と思っていたら・・・

「クロノ。いくらユーノが、君の気になっているシャルやなのはと仲が良いからと言って、ユーノにアタるのは良くないぞ?」

ルシルがなんかすごいことを言っちゃった・・・?

「はぁっ!? ちょっ、はぁっ!? 何を馬鹿な――はぁっ? ルシル!」

クロノは顔を真っ赤にして勢いよく立ち上がって、さっきのユーノみたいにルシルを怒鳴る。するとユーノが「へぇ、そうだったんだ。ごめんクロノ」って笑うのを必死に我慢してる顔で謝った。

「だから違うと言うに! ぼ、ぼぼ僕が、シャルとなのはのことが好きなわけないだろっ! ルシルっ、妙な勘違いもほどほどにしてくれ!」

「ん? 俺は気になっていると言っただけで、好きなんだろ、なんて言ってないぞ」

「んなっ!」

クロノの顔がさらに真っ赤になって、恥辱に顔を歪ませてる。うわぁ。聞いてるこっちが恥ずかしくなるような話になっちゃってる。

「違っ、僕は、そんなんじゃない! ルシル! 君は、君というやつは!」

「判った。すまない。とりあえず声量を下げろ。視線が集中しているぞ」

「クロノ! 言っちゃったらまずいことを言ってるって!」

なのはとシャルが好きだとか、それが間違いだとしてもこんな人の居る場所で大声で言うなんて。ユーノとアルフはテーブルに突っ伏して、思いっきり肩を震わせてる。笑い声を上げるのを我慢してるんだね。2人は面白いのかもしれないけど、私はちょっと恥ずかしいよ。こんなに視線が集まって。クロノは「はぁ~~」って大きく溜息を吐きながら座り直した。

「とにかく! 事実上、判決は無罪。数年間の保護観察という結果は確実と言っていいんだが、一応受け答えはしっかりと頭に入れておくように。いいな!?」

「はい」「ああ」

「ぷふ、うん」「あいよ、ぷぷ」

私とルシルは揃って返事をしたけど、ユーノとアルフだけは遅れて返事をした。クロノは笑うのを堪えているアルフとユーノに「もう勝手に笑ってろ」って呻いて、テーブルに突っ伏した。

†††Sideフェイト⇒なのは†††
 
≪警告、緊急事態です≫

夜、私が自室で勉強をしていると“レイジングハート”がそう告げてきた。その瞬間、私は結界が張られたことに気付いた。

「結界!? どうしよう・・・。えっと、シャルちゃんって、まだお父さん達と出かけたままだよね・・・?」

シャルちゃんは前にも増してお父さん達と裏山まで行って、剣術の特訓に付き合うようになっていた。何か魔法の感覚を掴むためには良い方法だって言ってたし。

≪対象、高速で接近中≫

「近付いて来てる? こっちに!?」

狙いはどうやら私みたいなので、万が一戦いになったらまずいから場所を移して、近付いてくる人を待ち構えることにした。

†††Sideなのは⇒シャルロッテ†††

最近は夜の鍛錬まで付き合うようになってる私は、今は士郎父さん達と裏山に来ていた。そして鍛錬も終わり家路に着いている途中、直感が働いた。

(何かが来ている・・・?)

感覚を研ぎ澄まして周囲を探査。やっぱりかなりの魔力を持った何かが近付いて来てる。

「士郎父さん、恭也兄さん。どうやら忘れ物をしちゃったみたいで。取りに行ってきますね」

「そうなのかい? 一緒に行こう」

「あ、いえ。1人でも大丈夫ですから」

「でも女の子1人で行かせるのは・・・」

「大丈夫ですよ、恭也兄さん。私、強いですから♪」

そう言って右手に持つ木刀を振って見せた。すると士郎父さんと恭也兄さんは微苦笑を浮かべた。あはっ♪ 恭也さんと互角に戦えてちゃうんだからね~、私(けど未だに完勝できないんだけど)。やっぱこの背丈や膂力と言った身体能力がまんま子供だからね。

「それじゃ行ってきま~~すっ♪」

士郎父さんと恭也兄さんの返事を聞かないまま踵を返して裏山へ走り出す。最初の角を曲がった直後、この周囲一帯に結界が張られたのが判った。

「なのは・・・じゃないよね?」

この結界。ミッドチルダ式じゃない。私の知らない別の術式だ。

「・・・蒼い狼・・? 私に何か用でもあるの?」

なのはに念話を送ろうとした時、蒼い毛並みを持つ狼がスッと私の前に現れた。その光景にはかる~く既視感を覚える。そう、アルフの時みたい。もしアルフと同じように使い魔なら話すことが出来ると思い、声を掛けてみるけど返事はなかった。

「用がないのならもう帰るけど、いいよね?」

「恨みはないが、お前の魔力をいただいていく」

私はわざと狼に背を向けて帰る素振りを見せてみた。するとようやく狼が言葉を発したんだけど、それが結構危ない発言で。私は振り向き、狼の目をしっかりと見て今の言葉の真偽を確かめる。

(魔力をいただだくって。そんな鮮血姫じゃあるまいし、血でも吸おうというのかな?)

かつての同僚、第三騎士ドリット・リッターの鮮血姫シリアみたいに、相手の血液を吸収することによって対象の魔力を自らの魔力に融合させて扱うという方法でも取る、とでも言うのかしら・・・。

「理由も判らないまま魔力を奪われるなんてイヤなんだけど?」

そう返すけど、もうあの狼からは何も言ってこない。話す必要がないということらしい。初めから力ずくってわけなのね。だったらこっちも・・・手加減なしでいくよ。

「そう。なら力ずくで聞かせてもらうから!」

“トロイメライ”を起動させて、戦闘甲冑と同じデザインのバリアジャケットへと変身する。白いフレアーワンピース。裾が波打ったようなやつね。前立てのラインが青い、白を基調としたインナースーツ。アウターは前立てのない白いショートジャケット。両肩部分、背中部分にフライハイト家の紋章であるFの両側に翼竜といった紋が刺繍されている。

「よしっ。良い着心地♪」

指環型の待機モードだった“トロイメライ”が、ラピスラズリ色に輝く長刀となる。エイミィとその知り合いの技術者マリエルさんの話によると、これはなのは達の使っているインテリジェントデバイスとは違い、アームドデバイスと呼ばれている物らしい。ミッドチルダでは使い手が少ないとされていて、ベルカ式と呼ばれている術式を扱う魔導師のデバイスとのことだった。

(以前ユーノに教わった、ベルカの騎士が扱うデバイスね)

魔力の籠められた弾丸を使用することで一時的に爆発的な魔力が扱えるという優れもの。本当はインテリジェントデバイスが良かったな、と思っていたけど相性が悪くて断念。でも使い慣れると、こちらの方が手にしっくりと来た。私はやっぱり接近戦タイプだ。

「それはアームドデバイス!? まさかお前は、騎士なのか・・・?」

私のデバイスを見た蒼い狼が驚きながらそう聞いてきた。確かに生前は騎士だったし、今でも騎士だと思ってる。私は「ええ、一応は」とそう返事をすると、蒼い狼は深く考える素振りを見せる。そして顔を上げて私をじっと見て、口を開いた。

「よもや敵対するのが同郷の騎士とは。こうなれば我とて手加減はせぬ」

同郷の騎士? 意味は解からないけど、そう呟いた狼が筋骨隆々な大男へと変身した。けど私は男の頭についた犬耳に少し笑いがこみ上げてしまう。だけど何とか耐える。アルフなら可愛いんだけど、筋肉質な大男が犬耳尻尾ってどうなのよ。それはともかく私の騎士発言でさらに闘志を燃やしてしまったようね。困ったものだけど仕方ない。相手が言うように手加減なしで戦うだけよ。

「ならこっちだって手加減しないから。騎士シャルロッテ・フライハイト、参ります」

「名乗られたのであれば名乗り返すのが礼儀、か。ヴォルケンリッター、盾の守護獣ザフィーラだ」

さぁ、お互い名乗りを上げた。決して後には引かない決意を固めた決闘の開始だ。

†††Sideシャルロッテ⇒なのは†††

家から遠く離れて、とあるビルの屋上へと来た。周囲を見回して私に向かって来ている人を待ち構える。

≪来ます≫

“レイジングハート”の警告に、私は身構えていつでも行動に移れるようにする。そして夜空の向こうに一点の閃光。それはよく見ると・・・

≪誘導弾です≫

そう、“レイジングハート”の言うとおりそれは赤い魔力弾。私は直撃直前にシールドを張って防ぐけど、それに気を取られすぎて後ろから迫って来ていた女の子にギリギリまで気付かなかった。

「テートリヒ・・・シュラーク!」

「っく!」

――ラウンドシールド――

ハンマーのようなもので殴りつけてきた赤い女の子の攻撃を、私は右手にシールドを作り出して防ぐ。けど、そのあまりの威力に完全には防ぎきれなくて、ビルの屋上から吹き飛ばされてしまった。落下しながら私は“レイジングハート”を起動させる。

「レイジングハート! お願い!」

≪Standby, ready, setup≫

変身を終えると同時にディバインシューター2発を発射。追撃して来るあの赤い子の攻撃を回避しながら話し掛けてみる。

「いきなり襲いかかられる覚えはないんだけど!? なんでこんなことをするの!?」

でもその子は私の質問に答えなくて、左手の指の間に鉄球のようなものを2つ挟んだ。

「教えてくれないきゃ判らないってば!」

私は変身後に放っておいたディバインシューター2発を操作して、あの子の背後から奇襲を仕掛ける。咄嗟にそれに気付いたあの子は1発は避けて、もう1発はハンマーのようなデバイスで弾き返した。それにしても、あの子の使ってるデバイスって、シャルちゃんの蒼い刀のデバイス、“トロイメライ”に少し似た感じ。なんだっけ。えっと・・・ベルカ式、だったかな。なんとなくだけど・・・。

「この野郎ぉぉぉ!」

女の子が使うようなものじゃない言葉を叫びながら突っ込んできた。それに私は女の子だから野郎じゃないもん。そんな一直線な攻撃には当たってあげるつもりはないよ。

≪Flash Move≫

まずは避けて、砲撃の準備に入る。

≪Shooting Mode≫

「話を・・・」

≪Divine≫

「聴いてってば!」

≪Buster≫

ディバインバスターの威嚇攻撃であの子の戦闘行動停止を狙う。あの子は私の砲撃に驚いているのかどうかは知らないけど、完全に動きを止めた。私の狙い通り、直撃ではなくあの子を掠めるようにディバインバスターは通りすぎた。

「っ! 帽子・・・!」

「え・・・?」

その衝撃で被っていた帽子がボロボロになりながら落ちていったのを見たあの子の目に、ハッキリと怒りの色が浮かぶ。デバイスを横に振り、足元には赤いベルカ魔法陣が浮かび上がった。

「テメェ、やりやがったな・・・。アイゼン! カートリッジロード!」

柄の半ばから弾丸の薬莢のような物が排出された。やっぱりシャルちゃんの“トロイメライ”と同じだ。シャルちゃんの“トロイメライ”にもあの機能がある。魔力の籠められた弾丸を装填することで、一時的に魔力が上がるっていう、カートリッジシステム・・・。

≪Explosion. Raketen form≫

あの子のデバイスがその言葉を合図として変形を始める。変形後、片方に黄色い四角錐の突起、もう片方にはロケットようなものが付いている物になった。

「ラケーテン・・・!」

あの子が魔法陣の上でデバイスを振り回しながら回転してる。よく見ると、あのロケットのようなところから炎が噴射していた。たぶんあれの力を借りて回っているんだと思うけど。回転を終えたとほぼ同時、私へと突っ込んできた。

「っ・・・!」

1撃目はなんとか避けることが出来た。あのブースターによる突撃力がすごくて、避けるのだけでも精一杯。

≪Master !≫

“レイジングハート”からの警告。2撃目は避けることが出来ないと判断。プロテクションを張ると同時、あの子のハンマーが衝突する。だけどまるでプロテクションなんて初めからないと言うような勢いで「え!?」簡単に砕け散った。勢いを殺すことも出来ずに、ハンマーの突起は“レイジングハート”の柄にぶつかり、そして少しずつだけど砕いていく。

「ハンマァァーーーーッ!」

「きゃぁぁぁぁぁーーーーー!」

私はその衝撃に耐えられず、向かいのビルまで吹き飛ばされてしまった。

†††Sideなのは⇒シャルロッテ†††

「このぉぉぉッ!」

「くっ、うおおおおおお」

私の斬撃を紙一重で躱し、カウンターの拳打を撃ってくるザフィーラとかいう人狼。私の“トロイメライ”とザフィーラの籠手が衝突しては火花を激しく散らす。盾の守護獣という二つ名は伊達ではないらしく、防御力が異常に高い。ならばと思い、間合いの外から魔力刃を放つけど、それすら防御されてしまう。

「むぅ。やっぱり・・・」

魔力斬撃を防がれるのを見て、やっぱりという気持ちが心を占めていくのが判る。私は固有魔術を、非殺傷設定が出来る魔法へと組み直した。そのおかげで下手に相手に傷つけることはなくなった。それに他の恩恵として魔法に関しては“界律”から何も干渉してこないから、魔術より扱いやすい。

(でもね~・・・。扱いやすくなった分、ちょこっと困ったことになったのよね~)

けれどその所為かは知らないけど、魔力から神秘性が無くなってしまい、魔法でも容易く防がれるようになってしまった。実際、なのはのシールドに攻撃が防がれたのを見て、しばらくショックで立ち直れなかったのを覚えてる。
でもそれが魔法を使う代償だというのなら、私はそれを甘んじて受けよう。私は魔法となった術式でまた最強を目指す。だからこんなところで躓いているわけにはいかない。“トロイメライ”の刀身に真紅の雷光を纏わせる。

雷牙閃衝刃(ブリッツランツェ)!」

距離が開いているけど“トロイメライ”の刺突を繰り出す。と、ザフィーラ目掛けて雷撃の槍が刀身から放たれた。だけどそれもまた回避されて、私の術後の隙を突いて接近してきた。繰り出されるのはザフィーラの強烈な右ストレート。

――守護の拳――

≪Hartriegel Schild≫

私はそれに対して左手を向けて、対物障壁ハルトリーゲル・シルトを発動して拳打を防ぐ。なんとか受け止められたけど、「無駄なことだ。はああッ!」間髪いれずに左拳を叩きつけてきた。

「ぐっ!? がはっ・・・!」

障壁は破壊されなかったけど、その衝撃に抗いきれなかった私は吹き飛ばされて、塀に叩きつけられた。

「いっつぅ、まだまだいける。トロイメライ!」

≪Leuchten Pfeil≫

誘導弾ロイヒテン・プファイルを8発、次の攻撃への布石として放つ。なのはのように事細かな制御はまだ出来ないけど、今はこれで十分だ。生前から苦手としていた術式発動後の操作を、デバイスの力を借りることによって使えるようになったのは嬉しいことだと思っている。だって操作して、狙った標的に当てたときの快感は忘れられないから。

「大人しくしてもらおう・・・!」

私の放った誘導弾をザフィーラは拳で弾いては回避を繰り返しながら、また私に向かって来る。

風牙烈風刃(ヴィントシュトゥース)!」

≪Windstoβ≫

魔法へと変化したこの風圧の壁を叩きつける術式でザフィーラを吹き飛ばそうとしたけど、その巨体の所為で少しの距離しか離すことが出来なかった。

「トロイメライ、カートリッジロード」

≪Explosion≫

カートリッジ1発を消費して、いつでも砲撃を放てるようにしておく。さらにザフィーラとの間合いを開けさせるためにさらに誘導弾を使う。

「ロイヒテン・プファイル・・・発射(フォイア)!」

≪Jawohl≫

足元に集中して放つけど、ザフィーラは物凄い勢いで前進しての回避という行動を取って、そのままタックルしてきた。もちろん馬鹿みたいに受けるつもりなんてないから横っ飛びで回避して、振り向きざまに一撃与えようと行動に移そうとした時・・・

「しまっ・・・!?」

ここに来て馬鹿なミス。路に転がっていた小石を踏んづけてしまい、バランスを崩してしまった。その一瞬の隙を見逃すはずもないザフィーラは、さらに勢いをつけたタックルを私へと直撃させた。

「あ゛・・・っ!?」

バリアジャケット越しに伝わるシャレにならない衝撃。そのまま吹き飛ばされながらも、距離が開いたことで砲撃を放つ準備。意識が飛びそうだけど、詰めは誤らない。

「グランツ・・・フォーゲル!」

“トロイメライ”を横一線に振り抜き発動するのは、真紅に輝く鳥の形をした砲撃魔法。ザフィーラはそれに驚き、防御か回避かに移ろうとするけれど間に合わず直撃した。私は着地して、念のために魔法の発動準備をしておく。“トロイメライ”から使用済のカートリッジが排出されて、キンと地面に落ちた音が響く。土煙が次第に晴れていき、そこにいるはずのザフィーラの様子を見ようとするけど・・・。

「・・・っ!? いない! 一体どこに・・・!?」

周囲を見渡すけどどこにもいない。ふと空に気配を感じて、見上げてみる。そこには狼形態に戻っていたザフィーラが居た。

「あのタイミングで避けられた・・・?」

いや違う、きちんと入っているみたい。直撃だけは避けられたみたいだけど、それなりのダメージは与えられた。ま、あのタイミングでの砲撃で、無傷で済まされたとあってはヘコんでしまうけど。
ザフィーラは少し私を見たままだったけど、何も言わずに去って行ってしまった。その行動に妙な胸騒ぎをして、なのはに念話を通してみる。だけど、なのはからは一切返事がない。

「しまった。何で早く気付かなかったわけ私!? なのはの方にも、アイツの仲間が襲いに行ってるってこともあるじゃない!」

私はすぐさま追撃をかけるために、飛翔術式である真紅の片翼アインス・ルビーン・フリューゲルを出す。

≪Eins Rubin Flügel≫

背中から魔力翼を展開して私は空高く飛び、ザフィーラの向かった方向を目指そうとした。だけど上がった直後、私の背後に気配がした。だから振り向きざまに“トロイメライ”の剣先を背後の相手へと向ける。
そこに居たのは・・・・

†††Sideシャルロッテ⇒なのは†††

あの子の一撃で向かいのビルまで吹き飛ばされた私は、その部屋の中で咽ていた。だけどそんなことはお構いなし、という風にあの子がまた突撃を仕掛けてきた。

≪Protection≫

“レイジングハート”は私を守るためにプロテクションを張ってくれた。なんとか拮抗しているけど・・・

――ラケーテンハンマー――

「ぶち貫けぇぇぇッ!」

≪Jawohl≫

プロテクションを少しずつだけど貫けてきて、最後は完全に破壊されていまった。また吹き飛ばされてしまう私。もしかして今日はそういう日なのかもしれない。痛みで意識が朦朧とする中、あの子が近付いてくるのが判ったから、力を振り絞ってボロボロになってしまっている“レイジングハート”をあの子へと向ける。でもどうすることも出来ないことは、自分が1番判ってる。

「こいつで終わりだ」

あの子が私に向けてハンマーのようなデバイスを振り上げる。

(こんなので終わり? イヤだ、シャルちゃん、ユーノ君、クロノ君、ルシル君・・・)

私はみんなの心の中で名前を呼ぶ。このままお別れだなんて絶対にイヤだよ。前に言ってくれたよね。だから私は呼ぶよ、あなたの名前を・・・。

(フェイトちゃん!)

振り降ろされたあの子のデバイスは、私に当たることはなかった。恐る恐る目を開けてみる。

「ごめん、なのは。遅くなった」

「ユ、ユーノ君・・・?」

私の側にはユーノ君。そして私を庇うように立って、あの子のデバイスを受け止めているのは、やっぱり「フェイトちゃん・・・!」だ。マントをはためかせて、“バルディッシュを構えているフェイトちゃん。

「チッ、仲間か?」

赤い子がそう不機嫌丸出しに聞いて、フェイトちゃんから距離を取る。

≪Scythe Form≫

それを聞いたフェイトちゃんは一言告げる。それは私にとってとても大切で嬉しい一言。


「友達だ」


・―・―・シャルシル先生の魔法術講座・―・―・


シャル
「やっほーっ♪ この、シャル先生の魔術講座改めシャルシル先生の魔法術講座の先生、シャルだよ♪ えっと、今回は残念ながらなのはとユーノは居ないの。ごめんね~」

ルシル
「だからと言って、どうして俺を無理やり引っ張ってくるのか意味が解からない。そもそも何だ、シャルシル先生の魔法術講座、とは?」

シャル
「判らない? 私シャル先生と、あなたルシル先生による魔法と魔術の講座。略してシャルシル先生の魔法術講座。我ながら良い略し方じゃない? シャルシル」

ルシル
「いや、微妙。あと、どうしてそんなにテンションが高いんだ? 君はそういうキャラではなかったよな」

シャル
「私としてもこんな子供っぽくなるなんて予想外だったけどね。なのはやアリサ、すずかと過ごしていたら自然とこうなっちゃったんだよ。なのはも、今の子供らしい私の方が好きだって言ってくれるし。私としてもこの方が楽なんだよね」

ルシル
「(生前を知る俺としては目が飛び出るぞ、今の君は)そういうものか。それで? 俺は何をすればいい?」

シャル
「適当に」

ルシル
「適と・・・、了解。生前と合わせて6千年以上の付き合いだ。ある程度は応えてやる」

シャル
「よしっ。それじゃ始めよっか。今回から私は魔法を使うことになったんだけどね」

ルシル
「そうだな。デバイスを持ち、魔()式を魔()式に変換したらしいじゃないか」

シャル
「めっちゃ苦労したけどね。魔法って、かなり頭が良くないと扱えないってことが良く解あった」

ルシル
「そうらしいな。魔術も魔法も大して変わらないと思っていたんだが、それなりに演算能力が無いと駄目だというのはフェイトとクロノから教わった。俺としては、魔術の方が複雑だと思うんだが」

シャル
「まぁそれは人それぞれよね。私の魔術の術式はほとんど感覚だけで組んだものだから、それを魔法っていう計算式に変換するのが泣きたくなるほど面倒だったよ。だから魔法の方が私は難しいとかってね。っと、それじゃ本題に行くけど」

ルシル
「おう、来い」

シャル
「今回から始まった第二章、その第一話で使われた私の魔法は、

――雷牙閃衝刃(ブリッツ・ランツェ)――

――堅固なる盾(ハルトリーゲル・シルト)――

――ロイヒテン・プファイル――

――グランツ・フォーゲル――

の4つなんだけど」

ルシル
「閃衝刃と盾は魔術から魔法へ変換した術式だな。真紅の雷槍を放つという雷撃系攻性術式、雷牙閃衝刃ブリッツ・ランツェ。ブリッツは雷光。ランツェは槍という意味だな。
そして、4重の六角形で構成された対物理障壁の真紅の盾である、堅固なる盾ハルトリーゲル・シルト。ハルトリーゲルは、花水木のドイツ語読みだ。堅固とは花言葉のうちの1つだ。シルトは盾という意味だな」

シャル
「お、おお。すごいすごい。そうゆう感じで良いんだよルシル先生♪
次は私が紹介するよ。まずは魔術から変換したんじゃなくて、一から魔法として組んだ魔法の第一弾ロイヒテン・プファイル。ロイヒテンは光る、輝く。プファイルは矢っていう意味なの。
術式名の通り矢尻の形をした射撃魔法で、誘導操作弾だから対象を追撃することが出来るの」

ルシル
「射撃か。剣騎士としての君が持つことになるとはな」

シャル
「だね~。この魔法、なのは直伝なんだよ。いやぁ、なのははもう射撃魔法の師だね。で、初めて使った時、それはもう苦労したよ。軌道がハッキリしないし、自爆もしたし。心が折れそうだったけど、なのはが励ましてくれたから実戦でも使えるようになった」

ルシル
「そうか。良い関係を築いているようで良かった」

シャル
「うんっ。んで次は、翼を広げた鳥の形をした砲撃グランツ・フォーゲル。グランツは輝き、光沢。フォーゲルは鳥という意味なの。鳥ということで軌道変更が出来るんだけど・・・まず使わないかな」

ルシル
「諦めているのか。まぁ君の場合は、敵に近付いて剣で斬る。それだけで十分強いぞ」

シャル
「ちょっと馬鹿にしてない?」

ルシル
「まさか。褒め言葉だよ」

シャル
「むぅ。だといいんだけどさ。とまぁこんな感じなんだけど」

ルシル
「大体は解かった。毎回こういうやり取りをしていけばいいんだな」

シャル
「そういうこと♪ それじゃあ今回はここまでっ。まったね~~~~♪」

ルシル
「またな」
 
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