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蘇生してチート手に入れたのに執事になりました

作者:風林火山
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『聖火聖灯』流々乱舞

「クソッ!」

「・・・・・・・・・」

零は悪態をつき、後退する。
宏助はその様子を見て、自分の命が助かったことを悟った。
そして、その数秒後。遅れて多くの弾丸がやってくる。

「宏助さん・・・!逃げてッ!」

「・・・・・・ッ!」

後ろから麗の大きな声が聞こえ、宏助は反射的に素早く下がる。

ドガアアアアアアンンンンン!

宏助が下がった数瞬後、約数メートル前で無数の弾丸が闘技場の地面に激突する。
今更のことだが、宏助も直撃しなければ、ダメージはないし、それは相手も同じ。
室内で火器を使っているのも、別に今更なので突っ込まない。
問題は・・・・・・

「手を出さないでって、いったでしょうが!」

宏助は後退したことで距離が近くなった明たちの前に立ち、零を待ち構える姿勢で後ろに怒鳴る。
しかし、怒鳴られた当の本人たちは逆に怒鳴り返してきた。

「アンタ、今、俺らが手を出さなきゃ死んでたろ!」

「・・・・そりゃあ、そうだけど・・・・。」

確かに麗たちSPの援護はありがたかった。しかし、それとこれとは別問題だ。

「でも・・・・・」

宏助がそう言いかけたとき、明が、それを遮るように怒鳴った。

「貴方は一人で闘ってるんじゃないんですよッ!」

「あ・・・・・・」

思わず宏助は後ろを振り向いてしまう。
すると、後ろには笑顔の明や麗、SPどもが立っていた。中には親指を立てているものもいる。
笑顔のまま明は続ける。

「貴方はもう、勝手に死んでいいような存在じゃないんですよ!
 皆、宏助さんが生きることを望んでるんです!
 だから・・・必ず・・・・・」

 そこからはもう、言われなくても分かってる。

「生きて帰るッ!最初っからそのつもりですけどね!」

「・・・・・・・!」

「援護は任せて!」

明や麗の声を背中に聞きながら、再び来る敵の方へと顔を向ける。
今までおとなしくしていたと思ってはいたが、どうやら何かやっていたらしい。
零の声が宏助まで届く。

「話し合いはそれで終わりか・・・?そろそろこっちも終わりの時間だな」

「・・・・同感っ!」

宏助は真からもらった聖気をフルオープンさせ、零に向かっていく。
宏助の身体から黄金の光が漏れだす。敵も既に身体に冷気を纏っていた。

「うおおおおおおらぁッ!」

「フンッ!」

最初の激突。宏助の拳と鎌が激突し、離れ、それから何回も交錯する。

「オラらアアアアああ!」

「なッ・・・・・!なんだこの勢い!]

宏助の連打攻撃は確実に零の身体を浄化していっていた。
鎌など最早、聖気の的でしかない。
宏助優勢・・・・誰もがそう思ったとき。
零が一度、大きく後退した。それを逃さぬ宏助ではない。素早く追撃をしかけるが・・・

「・・・・チッ!」

なんと宏助の脚が氷によって固められていた。急いで、聖気で溶かすものの、流石に追撃は出来ない。
その間に零は、鎌からとてつもない量の冷気が漏れ出すほど、鎌に力を込めている。
なにやら、ヤバそうな雰囲気だ。

「てめえらが、お話してた時間で、これが出せるようになった。ありがとさん」

「・・・おいッ!まさかお前・・・!」

宏助が最悪の想像をしたときにはもう遅かった。

「オラァ!広域氷結技・・・・『絶対零度』!」

「・・・・・!ちくしょおおお!間に合えっ!」

宏助は急いで、鎌から出る巨大な冷気に向かう。
この規模では、この闘技場全体を呑み込んでしまう勢いだ。

「無駄アアああ!」

巨大な冷気の前に立ちはだかり、聖気で冷気を無効化しはじめるが、自分の身体の方が危ない。
聖気がなければ一瞬で全身氷漬けだ。
しかし、ここで退けば、宏助の後ろにいる、大切な人たちまでが巻き込まれる。
聖気を全開にして、宏助は冷気に立ち向かう。

「ここで退くわけには・・・・・・いかねぇんだよッ!」





「宏助・・・・さんッ!」

「・・・・・・・そんな・・・」

宏助は見事に冷気を押し止めた、ものの、自分は氷漬けになっていた。

「ふぅ・・・。正直焦ったぜ。だがまぁ、コイツがどうにかなれば、あとはどうとでもなる」

「・・・・・・・・!」

零が余裕の様子で明たちに語りかける。
だが、そのとき、明は宏助の魂の鼓動を感じる。
氷の中で、よく見なければ気付かないほどの小さな光が灯っていた。

(宏助さんッ!)

明が喜びを感じるのと、零が異変を感じたのはほぼ同タイミングだった。

「ん・・・・?離れない・・・だと・・・?」

そう。零の持つ鎌は宏助と氷の中にあったが、その鎌が離れないのだ。
よく見ると、宏助ががっしりと鎌を掴んでいる。

「全く・・・・往生際の悪い奴・・・・ッ!」

なんと、鎌を掴んでいる宏助が微笑んだ。

次の瞬間、すごい勢いで氷が、宏助から発せられる聖気で、溶け出した。

「・・・・・なんだとッ!離せ・・・・離せこの野郎!」

必死で零は鎌を宏助から離そうとするが、なかなかに離れない。
その間にも宏助を覆う氷はどんどん溶けていく。

「くッ!」

零は鎌は諦め、明たちの下へと向かう。真のように人質をとれば、勝機はある。
しかし、駆け出した瞬間、その肩をがっしりと掴む奴がいた。

「どうしてお前ら死神はそんな風にセコイのかねぇ?理解に苦しむぞ、全く」

「・・・・・・・!」

既に氷は全て溶け、水として地面にわかだまっている。鎌はその横に転がっていた。

「うわあああああああッ!」

「これで終わりだッ!・・・・・『聖火聖灯』・・・・流々乱舞ッ!」

聖気を纏った体で宏助は連続攻撃を繰り出す。
喰らった零はいとも呆気なく気絶し、吹飛ばされた。





宏助はドッと来た疲れに、闘技場の床に倒れこんでいた、

「終わった・・・・・・」

闘いの終わりを噛み締め、安堵する宏助のもとに明が一番に駆け寄ってくる。

「約束・・・護ってくれましたね」

明がはにかんだような笑顔でそう言ってくる。宏助も何気なくあっさりとそれに答える。

「・・・当たり前でしょ。俺だって死にたくない」

「・・・そうですね。あの、宏助さん・・・?」

「へ?」

急に明が横を向いて赤くなりモジモジしはじめる。が、倒れた宏助にかがんでいる状態なので、顔が良く見える。

「もし、よかったら私と・・・・・」

そこまで明が言ったところで、急に

『どう上げだッ・・・・!』

「えええええええ!」

「・・・・・・!」

宏助と明は驚愕の表情のまま、かつぎ上げられる。
そして、胴上げされた。

『ばんざーい!ばんざーい!』

そんな元気なSPたちの声が闘技場に響き渡る。

「うわあああああああ」

はじめての胴上げというものに混乱している宏助だったので、

「・・・・もうすぐで言えそうだったのに・・・」

赤くなったまま胴上げされた明の呟きなんて勿論聞こえる訳がなかった。

 
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