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『曹徳の奮闘記』改訂版

作者:零戦
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第四話






「………ぅ……」

 俺は目を開けると、そこは天幕の中にいた。

「……知らない天井や………」

 天幕なんだけど、俺自身は俯せのような状態(コナンの映画で負傷した阿笠博士みたいな格好)で寝ていた。それとここは天井や。これ重要な。

「………ん?」

 左手が何か掴まれているな。

「……張遼………」

 張遼が俺の左手を握りながら眠っていた。

「おやおや。目が覚めたようじゃな」

 医師が入ってきた。

「ホッホッホ。お熱いのぅ」

「い、いやこれは……」

 張遼から手を離そうにもガッチリと掴まれている。

「張遼将軍はお主の手をずっと握っておったわい。先程まで華雄将軍もいたが戦の後処理をしておる」

「……戦はどうなったんすか?」

「意外にも姜族は強かったが、辛勝と言ったところかのぅ。死傷者も約三千名を数えておるからしばらく滞在してから帰還するみたいじゃ」

 激戦と言ったところやろか。

「……ん……」

 あ、張遼が目を覚ました。

「……王双っちッ!!」

「うわッ!?」

 張遼が俺が起きてるのを見ると、いきなり抱き着いてきた。

「よかった……ほんまよかったわ王双っ ち……」

「……これはどういう事だ?」

 俺は思わず医師に助けを求めた。

「お主が当たった矢には毒が塗られていたん じゃよ」

「………マジ?」

「本気と書いてマジじゃ」

 まさか毒矢とはな……。

「ほんまに心配してんからな」

 よく見ると、張遼の目元に涙の跡があった。

「……悪いな張遼……」

「やっと後処理が終わった。張遼、王双は目 を……王双ッ!!」

 天幕に華雄が入ってきて、起きてる俺に驚 く。

「目を覚ましたんだな」

「あぁ。大分迷惑をかけたみたいだな」

「全くだ。張遼隊の業務もやらされたんだ」

「それはスマン……」

「それに貴様が死んだら、また貴様と戦えないからな」

 ……それが狙いかよ。

「それはちゃんとしてやるから」

「うむ。約束だ」

 ………何か華雄の死亡フラグが立ったような気が……。

「そろそろ診察したいからいいかの?」

 医師の言葉に張遼が慌てて俺から離れた。

 それから三日間は部隊の休息を兼ねて、付近の村々の治安維持をして帰還した。

 それから数日後、俺は董卓軍の兵士を辞め た。

「何で辞めんねん王双っちッ!!」

 賈クに辞表を提出して部屋の整理をしていたら張遼と華雄が入り込んできた。

「いやだって……元々軍に入ったのは路銀を貯める事だったからさ。二人かて知ってるだ ろ?」

「そ、そりゃあそうやけど………」

「しかしな………」

 何か釈然としない二人。

「大丈夫だって。二人に何かあったら直ぐに飛 んで帰ってくるな」

「「………はぁ……」」

 二人は溜め息を吐いた。

「分かった分かった。んじゃぁウチらが危な かったら助けにきぃや?」

「あぁ。そうそう、二人に真名を預けるよ」

「……いいのか?」

「いいよいいよ。俺の真名は長門だ」

 本当は真名を貰われなかったけど、長門は前世の名前だったからな。

「ウチの真名は霞や」

「私の真名は桜花だ」

 ……え?華雄に真名ってあったのか?

「私が真名を預ける条件は私より強い奴なん だ。一度だけとはいえ、王双……長門は私を倒したんだ。だから真名を預ける」

 そうだったのか………。

「あぁ。預からせてもらうわ桜花、霞」

「次会ったら飲むで」

「それもええな」

 そして、霞と桜花と分かれて涼州を後にし た。






―――霞SIDE―――

「……行ってもうたな……」

「あぁ……そうだな」

 ウチの言葉に華雄―――桜花が答えた。

「けど、桜花の真名を聞いたん初めてやな。いつも華雄で呼んでたけど」

「当たり前だ。さっきも言ったように、真名は私より強い奴に預ける事にしているんだ」

「でも、ウチは桜花より強いやん。何回も勝ってるし」

「男限定にしているんだッ!!」

 桜花が顔を真っ赤にしながら叫んだ。

 てか、顔を真っ赤にしたんも初めて見たな。

「男狙いか?」

「違うッ!!は、母上が「強い男と結婚したら幸せになれる」といつも言っていたからな。それだけだ」

「ふぅん。桜花も意外と可愛いとかあるんや な」

「か、可愛いだとッ!?」

 あ、桜花の頭から湯気が出た。

「???。私は兵士の訓練するからなッ!!」

「はいはい」

 桜花は大股で訓練所に向かった。

「……それにしてもなぁ……」

 長門の意識が無くなった時に大分騒いだけ ど……まさか長門に惚れた?

「ハハハ。んなわけあるかいな」

 ウチはそう否定した……でも。

「………初めて男に抱き着かれたよな……」

 ……あかん。あの事を思い出してたら顔が赤くなるわ……。

「これが………恋というやつなんか?」

 ウチの言葉に誰も答える者はいなかった。







―――長門SIDE―――

「さて、次は何処に行こうかな………」

 巨乳が多い呉に行こうか。確か周瑜は病気があったな。

「あれはどうやって治すか……」

 ま、今考えて仕方ないな。

「とりあえず、行き先は呉に決定だな」






「……はぁ……しんど……」

 俺は今、馬に乗っていた。

 流石に馬無しでは足が持たないから途中の町で、馬商人から馬を一頭購入した。

「馬だとやっぱ楽だなぁ……」

ビュンビュンッ!!

ドスドスッ!!

「ヒヒィーンッ!?」

「うわッ!?」

 な、何やッ!? 馬がいきなり暴れだした…… て、尻のところに矢が二本だと?

「ヒヒィーンッ!!」

「うわッ!?」

 俺は投げ出されたけど、咄嗟に受け身をとっていたせいで傷はなかった。

「へっへっへ………」

 すると、草むらから十数人の山賊か盗賊と思わしき奴らが現れて、俺の周りを囲んだ。

「兄ちゃんよ。有り金と服は置いてってもらおうか?」

「……フッフッフ。だが断るッ!!」

 こらそこ、ジョジョとか言うな。

「なら死んでから奪うまでよッ!!」

 盗賊達はそう言って俺に襲い掛かる。

「お前らが死ねッ!! 目潰しッ!!」

『ギャアァァーーーッ!!』

 一斉に襲い掛かろうとしていた盗賊を砂を投げて、慌てている隙に倒していく。

「な、何だコイツはッ!!」

「お頭を呼んでこいッ!!」

「まだ終わってないぞッ!!」

「グェッ!!」

 俺は袈裟斬りで盗賊を倒す。

「何をやっているッ!!」

 その時、正面に大金棒を持った女性が現れ た。

 ………あれって確か……。

「私は魏延、(あざな)は文長だッ!! 潔く死ねッ!!」

 魏延は俺にそう言った。







 
 

 
後書き
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