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【ネタ】 戦記風伝説のプリンセスバトル (伝説のオウガバトル)

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12 黒騎士と伝説 その一

 三千もの兵を島に上陸させる場合、その移動に大量の船が必要になる。
 そして、この世界にはその大量の船を襲う大海獣ユニットが存在する訳で。
 アヴァロン島上陸作戦は、それらを警戒しつつ、空より始められたのである。

「なるほど。
 こういう手段があるのか」

 ライアンが感心しながらグリフォンの背に乗る。
 足には結ばれた鎖があり、その先には籠がある。
 一羽では運びきれないが、三羽だとこの籠を浮かせる事ができる。
 そして、その籠には完全武装の兵士が10人乗っている。
 今回の作戦にはグリフォン30羽という大規模運用を行っているが、建国間もない新生ゼノビア王国軍が大枚はたいて確保した切り札の一つだったりする。
 ライアンとギルバルドという優れたビーストテイマーが居た事も大きかったのだが、まともに戦場に投入できるかといえば怪しい所らしい。
 で、このような運搬などに使って経験をためていく事に。
 とりあえず、魔獣系はギルバルドが育てて、ライアンが使う形で進んでいる。
 今回のグリフォンだが、100羽購入して残りは訓練中なのだ。
 一回の輸送で100人の兵が運べ、アヴァロン島ならば一日三往復できるので、その日の内に300人が到着できるのは大きい。
 ゼノビアからアヴァロン島まで船で一日かかる事を付け加えておくとこの凄さがよく分かるだろう。
 この空中騎兵(命名私)軍団は、新生ゼノビア王国の中核として戦場を駆ける事になるだろう。
 グリフォンの周りをカノープス率いるホークマン達がボウガンを持って警戒する。
 相手にも空中戦力があるからこそ、それに備える必要があるのだ。

「みんな!
 乗り心地はどう?」

 私はすっかりおなじみとなったワイアームのボイナの背に乗り、掴まれたぽちと共に空中を駆ける。
 飛行ユニットがあるので空がある程度なじみがあるとは言え、みんなその顔は青い。

「だだ、だいじょうぶさ。
 こんなのぜんぜんこわくないわよ」

 顔が真っ青になりながら強がりを言うスザンナを見て皆笑ってしまう。
 この空中輸送で運び込むのは私の軍勢の300。
 残りは明日到着の船団--10隻の帆船に100人ずつ--で1000人と、明日の空中輸送で300人。
 二日後の空中輸送で300人と、三日後の船団と空中輸送で3000人を運び込む予定になっている。
 3000の兵力を維持する為に食料などの連絡線は空中騎兵軍団に任せる。
 これは、大海獣ユニットよりも使い勝手の良い空中ユニットに予算を全部ぶち込んだ結果だったりする。
 向こうの大海獣ユニットが出てきたら、陸に上げさせて火樽で焼く予定。
 王国軍本拠地予定のバインゴインに到着すると、住民の歓迎と共に大神官ノルンとその護衛兼恋人のデボネア将軍と謁見する。

「はじめまして。
 私はノルン。
 流浪の姫君。貴方に会うのを楽しみにしていました」

 会ってゲームと違うのはその存在感。
 そりゃそうだ。
 失脚したとはいえ、神聖ゼテギネア帝国の元法皇として中央で権力を振るったバリバリのエリートがただのプリーストな訳無い。
 後で聞いて見たら、ホーリーという外伝のクラスになってやがった。
 ジハド・マジックミサイルという神聖系攻撃魔法にマルチヒーリング、プリースト転職だからリザレクション持ちというスーパーチートキャラが目の前に居る。
 もちろん、そんな事を本人の目の前で言うつもりは無いが。

「わたしたちは間違っていました。
 ハイランドが望んだ理想国家は、こんな帝国じゃない。
 わたしは神に仕える身でありながらラシュディの正体を見破ることができなかった……
 もっと早く気づいていれば……」

 その懺悔、全部知っているこっちからするとどんな顔をすればいいか分からないのですが。本気で。
 そんなこっちの事情なんて気にせず、笑顔でノルンは話を続ける。

「ラウニィー様のように反乱軍に身を投じることも考えました。
 ですが、請われてロシュフォル教会の大神官の座について、少しでも良い方向にと帝国を導こうと思っていたのです。
 それも徒労でしたが」

 さらりと混ぜるこちらへのいやみから政治レベルが高い事が伺える。
 で、さり気にラウニィーがこっち側に来るフラグ投げやがった。

「ラウニィー様ってもしかして……」

「はい。
 大将軍ピカシューの娘にて、帝国初の女性聖騎士になられたラウニィー様の事です」

 知ってる。
 知っているけど、驚かねばならないこのつらさ。
 笑顔が、私の笑顔が硬い自覚がある。

「どうなさいました?」

「い、いえ。
 そんな大物が離反するようだと、よほど闇の力が強くなっているなと」

 ごまかしながら、別のことを考える。
 さり気に情報を流して、こっちの行動を誘導する会話の巧みさに、彼女の実力を感じ取る事ができた。
 彼女ならば、ローディス教国と渡り合えるだろう。

「我らがゼノビアの復興のみを求め、神聖ゼテギネア帝国の下で臣下にとどまる。
 そんな妥協を今の帝国は飲めますか?」

 あえて極論を投げた私の言葉にノルンは力なく首を横に振った。
 
「ハイランドは武力によって統治を行った国家ではありますが、今の帝国ほどむやみに血を好む 野蛮な集団ではなく、エンドラ陛下も今のように冷酷な女王ではありませんでした。
 しかし、黒騎士ガレス殿下をはじめ、今の帝国中枢には悪霊や死神がとりついており、まるで伝説のオウガのよう。
 どうしてハイランドがゼノビアを落としてまでゼテギネア帝国を建設する必要があったのか。
 私はゼノビア侵攻に反対し、魔導師ラシュディによって失脚させられたのです」

 出てきたのは明確な否定。
 ノルンのため息は深く、そして重たい。
 そりゃそうだ。
 何でもできる全知全能の力なんて持ったら、わざわざ自制する必要なんて無い。
 ノルンの隣でデボネア将軍が視線でノルンを支えているのを見て、この二人は相思相愛なんだなといやでも分かってしまう。

「アヴァロン島はロシュフォル教の総本山、つまり聖地です。
 そのため島民のほとんどが僧侶で、ゼノビア王朝時代もこの帝国時代もつねに中立を保ってきました。
 新生ゼノビア王国は、その慣例を守りたいとのトリスタン陛下の言伝を頂いてまいりました」

 私の言葉に、今まで黙っていたデボネア将軍が口を開く。
 穏やかな言葉の端に警戒感を滲ませるのを忘れていない。

「それは、君達以上の援軍は望めないという意味かな?」

「いえ。
 大将軍デスティン・ファローダ率いる3000がこの島にやってくる予定です。
 黒騎士ガレスの軍勢からこの島を守るには十分かと」

 アヴァロン島の兵力は、デボネア将軍直轄のアヴァロン騎士団が1000、アヴァロン島の抵抗運動を中核にした義勇兵が1000の合計2000。
 これに我々の3000が加われば、上陸作戦かつ防衛戦という事を考えて、黒騎士ガレスの10000の兵を迎え撃つ事は可能なはずだ。
 ちょっとしたからくりも用意しているし。

「神聖都市ラゾンと宗教都市ゲルゼは放棄します。
 それぞれの住民は、バインゴインと島の中心都市アムドにて受け入れるようにしてください。
 アムドと宗教都市ガルヤルサにて敵を迎え撃ちます」

 この手の防衛戦は何処を守りきればいいかがポイントになる。
 攻め手より兵の少ない守り手は守る場所を決めておく事は絶対条件なのだ。
 私のすらすらと答えた防衛計画に、デボネア将軍も頷く。

「大神殿のある中心都市アムドは我らが守ろう。
 ガルヤルサの守りをお願いしていいだろうか?」

「喜んで」



 バインゴインから宗教都市ガルヤルサに向けて兵を移動させないといけないが、さすがにそれは徒歩となる。
 まぁ、一日でいける距離で街道も走っているからたいした事ではないのだが。
 その為、空中騎兵で運んだ連中をまとめて移動させる為に、今日はバインゴインに留まる事になっている。
 で、時間が空いたので私はふらふらとお散歩中。
 護衛には付き合いが長くなった、スザンナとオデットが。
 デボネア将軍からも案内役と監視の為だろう。一人来る事になっている。
 アヴァロン島は戦いで死んだ戦士たちの魂が集まるところと伝説にある。
 戦士達は、暗黒の力から正義を守るためにこの島で永遠の眠りにつくのだという。
 死者蘇生も輪廻転生もあるこの世界、本当に戦士達の魂がこの島で眠っているかは疑問だったりするが。

「先に、このアヴァロン島にハイランドの皇子、黒騎士ガレスが来ていました。
 ガレスは島の僧侶たちに対して帝国に従うように要求しています。
 教会は敵対していますから。
 しかし、神にのみ従う僧侶たちはガレスの要求をのんだりしないでしょう。
 たとえ、1人になったとしても帝国に従うよりは死を選ぶに違いありません」

 待っている時に適当に捕まえた義勇兵の話を聞いていたのだが、その構成要因がクレリックやエンジェル、エクソシストという直接攻撃に弱い連中ばかり。
 どうしてくれようかと頭を抱えた時に、デボネア将軍の案内役がこっちにやってくる。

「わお。
 テンプルナイトじゃないの」

「何それ?」

 次の便でやってきたオデットがたずねたので、私は返事を返す。
 デボネア将軍の覚悟をはっきりと感じながら。

「神に仕える騎士団というよりこう言った方がいいかしら。
 ローディス教国の中核を担う連中」

 私の言葉に、オデットだけでなく乗り物酔いが治っていないスザンナすら顔をこわばらせる。
 ローディス教国の脅威はしっかりと轟いているらしい。

「ローディス教はロシュフォル教と元は同じでね。
 だから、作れない訳ではないのよ。テンプルナイト。
 こいつを作ったという事は、デボネア将軍最後まで裏切らないわよ」

 私の言葉に二人とも納得していないらしい。
 とはいえ、否定する材料もないみたいなので保留というあたりか。
 という事で、案内役のテンプルナイトに話を聞いてみる事に。

「おおっ、あなたがたがゼノビアから帝国を追い出した王国軍の方々ですな。
 ウワサはかねがね聞いております。
 ぜひとも、我らと共にこの大陸のためにがんばりましょう」

 ディエゴという彼はこの島のエクソシストだったが、ガレスへの怒りの為にテンプルナイトに志願したという。
 彼の言葉に怒りと、それでも隠せない恐怖がにじみ出る。

「黒騎士ガレスのねらいはこのアヴァロン島を制圧し、大陸各地にちらばるロシュフォル教会を掌握しようというものでした。
 アヴァロンの大神官は代々女性がつとめ、大神官は暗黒の力から正義を守るために、慈愛の心をもって内なる戦いを続けていたのです。
 しかし、あの呪われた騎士は、教会が帝国に従わないと知ると、大神官のフォーリス様を捕らえ、見せしめとして殺してしまいました。
 おお、なんということでしょう……」

 ディエゴの言葉に二人の疑念も氷解する。
 ここまで分かりやすい敵意と動機で、こちら側を裏切るとは思えないからだ。 

「あなたはガレスを見たの?」

 オデットの質問に、ディエゴは口を開くがその顔には恐怖がありありと映っていた。

「はい。
 黒騎士ガレスを見ましたがあんなに恐ろしい戦士を私は今までみたこともありません。
 全身をまっ黒なヨロイでつつんだその姿は、伝説のオウガのように思えました。
 思い出しただけでも身がちぢむ思いです」

 そんな彼が恐怖に抵抗しつつテンプルナイトに志願する。
 ディエゴの怒りをもうガレスは気づけない。
 それを踏み潰せる力を得てしまったのだから。

「オウガか。
 一体何なんでしょうね」

 当たり障りの無い私のつぶやきに、ディエゴが返事を返す。
 しまった。
 元エクソシストなんてやっていたから説教好きなんだろう。

「オウガとは伝説に登場する悪鬼のことです。
 人間とはまた別の生き物で、光よりは闇を好み、愛や正義よりも力と戦いを好む野蛮なやつらだったそうです。
 もちろん本当に存在するのかどうか私にはわかりません。
 しかし、神や悪魔は目に見えなくとも人の心の中に実在します。
 ですからオウガもまた、悪魔に心を奪われた人間なのかもしれません」

 実に深い意見ありがとう。

(だとしたら、私もオウガなのかもしれないわね。
 飛ばされたイレギュラーをこの世界がどう定義づけるのか分からないけど)

「エリーどうした?
 考え事か?」

「なんでもないわ。
 行きましょ」

 スザンナの声に我に返った私は港のほうに向かって歩き出す。
 目的が無い訳ではない。
 この先、帝国に入るには2つのルートがある。
 1つは北のカストラート海からドヌーブ地方へ進むルート。
 もう一つは西へ下ってホーライへ進むルート。
 どっちを通っても、その先にあるアラムートの城塞に当たるのだが、今回の目的はカストラート海ルートにある。
 港には防衛戦の為に大量の物資が集められているだけでなく、聖地防衛の為にゼノビアやカストラード海沿岸都市から義勇兵志願者がぞくぞくと来ているらしい。
 義勇兵はもう少し増えるかもしれないが、烏合の衆をどうやって指揮するのかデボネア将軍のお手並み拝見という所か。
 港は島という事もあってオクトパスが周回し、それをマーメイドが指揮して警戒していた。
 このアヴァロン島は聖地という事もあり、住民も聖職者ばかりなので海が綺麗なのだ。
 その為にマーメイド達も多く、各地で頻発するマーメイドと人間の環境問題がまだ発生していないらしい。

「おーい。
 そこのマーメイドさん。ちょっといいかしら?」

「何?
 私にはケートーって立派な名前があるんですけど?」

 仕事を邪魔されたマーメイドのケートーは上半身を水の上から出して私を見下ろす。
 その顔に不信感が現れているのはある意味仕方ない。

「よかったら繋ぎをとってもらいたいのよ。
 カストラート海の海の女王ポルキュスに」
 
 

 
後書き
オリキャラメモ

テンプルナイト ディエゴ
 タクティクスオウガ時代から使いたかったので、出したかったクラス。
 連絡役将校として参加。
 ローディスとロシュフォルの宗教対立はかなりこの話の軸になる予定なので色々考えていたり。

マーメイド ケートー
 ポルキュスの元ネタ関連から名前を拝借。
 マーメイド救済も実はこの話を作った理由だったり。
 だって本気で救い無いし。彼女ら…… 
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