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聖戦のデルタ

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『第五次世界大戦』の部
レクエムの章
  第一話『小鳥遊 翔馬という少年』

 
前書き
聖戦のデルタ 第一話です!

第一話故、まだまだ不思議だらけですが、
これから徐々に明かしていきます!

よろしくお願いします! 

 
物語は、緑の豊かな森で始まる。

緑が生い茂る森の中、息遣いを荒くして走っている少年がいた。
「クソッ!」
少年の名は、小鳥遊(たかなし) 翔馬(しょうま)。15歳である。
少年・小鳥遊は、学生服を着ている。一見して、タダの学生に見えるかもしれない。だが、彼は普通ではない。
何故なら、彼の右手には一丁のアサルトライフルが握られていたからである。
「……?」
小鳥遊は、ふと何かに気づき、走るのを止めた。
そして、
サッ! と近くの木々の影に身を潜めた。

10秒程待って、先程まで小鳥遊がいた場所を、武装した兵士2人が通った。小鳥遊は兵士達の動きを注視している。
……その時!

「噂通りだな……」
突如、背後から若い男の声がした。
「ッ!?」
小鳥遊は背後からの声に驚き、咄嗟に振り返った。
振り返った先には、やはり若い男と女が、薄い笑みを浮かべて立っていた。20(はたち)そこそこだろう。
「”気配が分かる”ようだな…」
男が言った。
男も女も武装していたが、女は、身体のラインがハッキリ分かるライダースーツのような物を着ていた。
(こいつら、武装してやがる!【ディヌア】の兵士か!)
小鳥遊は咄嗟に真横に飛び退いた!
だが男も女も笑みを浮かべたままだ。
小鳥遊は2人から攻撃が来ないと見て、会話の余地があると判断した。
「何故、俺を知っている?お前達は、ディヌアの連中か?」
「おや、坊や、よく分かるねぇ。お姉さん達はディヌアの兵士さ……」
女の方が口を開けた。
「坊や、じゃねぇよ……」
小鳥遊が睨んだ。
「そうだったね。じゃあ、
”小鳥遊 翔馬”君かな?」
小鳥遊は「あぁ」と頷き、
「じゃあ、何で俺を知ってる?」
「うんうん、不思議だねぇ…」
女が小馬鹿にした態度を取るが、
小鳥遊は
「馬鹿にしてんのか?」
と聞いた。
それに対して女は、
「馬鹿に……というか」
一度息を吸い、

「”ブチ殺したいんだ”なぁ」

女の目は鋭く、血走って、顔は狂気に満ちて歪んでいる。
小鳥遊の顔を冷や汗が一滴、流れた。
その一滴が地面に落ちたのを合図に、『戦闘』が始まった!

小鳥遊と女との距離は、およそ3m。
(周りには兵士達がうろついている。出来れば戦闘は避けたいが……)
と、小鳥遊の思考を遮るように女が動いた。
女は、あり得ないことに、3mの距離を一歩で詰めてきた!
小鳥遊は持ち前の運動能力を使って、右足で女の脇腹を蹴ーーろうとした。
だが、脇腹に当たる数cm手前で見えない壁に遮られた!
(こいつ、能力者か!!今のは何だ!?)
女は、ほくそ笑むと同時に両手を胸の前に構えた。
小鳥遊は腕を交差させて防御の姿勢をとる。
直後、女の両手のひらによる掌打が放たれた!
掌打は真っ直ぐ進み、小鳥遊は防御に成功した……筈だった。
だが現実には掌打が小鳥遊の腕の盾を突き破り、小鳥遊の胸に衝撃を与えた。
(どうなっている……?)
小鳥遊は、自分の腕に目をやる。
(今、俺の手は奴の掌打に触れる直前に弾かれた。なんでだ…?)
突きによって、小鳥遊の身体は僅かに空中に浮いた。
と次の瞬間、小鳥遊の身体が吹っ飛んだ!約5m宙を舞い、地面に落ちてからも2、3回転して止まった。
小鳥遊はそれでもアサルトライフルを手放さなかった。
小鳥遊はガハゴホと咳き込み、立ち上がると、アサルトライフルを構えた。
(今のは衝撃で吹っ飛ばされたんじゃねぇ。風みたいな”何か”だった……。
確かめたい事がある。やってみるか!)
アサルトライフル(こいつ)の使い方はわかんねーけど、やるっきゃないぜ」
「あらーん。アサルトライフル(そんなもの)じゃ、お姉さんは倒せないぞー?」
一瞬、女の身体と周辺の空気が揺らいだ様に見えた。
「へっ、どーだか!」
小鳥遊はそう言って、女に鉛玉を撃ち込む。
連続した銃声が響いた。
鉛玉は、女の身体を貫いた!
(おかしい……)
鉛玉は確かに女の身体を貫いた筈だが、女の身体に変化は無い。
次の瞬間、女の姿が揺らぎ、虚空に消えた。
(消えた……!?まさか!)
と、思った時には女が小鳥遊のすぐそばにいた!
(”蜃気楼”!!)
女は素早く左足の蹴りを放つ!
小鳥遊はアサルトライフルを盾にした。
だがアサルトライフルは女の左足に当たる直前に途端に大きく弾かれる!
(そして、”風”!)
そして小鳥遊は大きく仰け反る。
「終わりよ。た・か・な・し・く・ん♪」
女の顔が狂気に歪み、攻撃の体勢になる。
(防御が間に合わないッ!だったら……)
小鳥遊は、仰け反ったままの体勢でアサルトライフルの銃口を女に向けた。そして、思い切り引き金を引いた!
無数の弾丸が銃口から放たれた!
「何度やっても同じよ〜」
やはり弾丸は、女の身体に当たる直前に弾かれる!
(だろうな……)
女は右手で握り拳をつくり、小鳥遊の腹部にせいけんづきを放った!
「ぐあっ!」
小鳥遊の口から赤い液体が吐き出された!
と同時に小鳥遊の身体が後方へ大きく飛ぶ!小鳥遊が数m空中を舞い、木の幹へと叩きつけられた!
そのままずるずると地面に落ちた。

小鳥遊は起き上がると、ふと男の方に目をやった。
男は、両手を女の方にかざして、念じる様にブツブツいっている。
よく聞こえないが、
(大体、何を言っているかは分かる!)
小鳥遊は、50mを4.69秒で駆け抜ける速さで男へ走る!
(さっきのヤツのカラクリは分かった。”蜃気楼”と”風”この2つに共通する物は……)
「終いだァッ!」
小鳥遊はアサルトライフルを構え、10発程の銃弾を打ち込む!
銃弾は男の胸元に吸い込まれるように突き進んだ!
男は胸元に10発の銃弾を浴びて崩れ落ちた。男はうつ伏せになって倒れた。
その様子を見た小鳥遊は、女に向き直った。
小鳥遊は、初めてその女の困惑した表情を見た。オドオドしている訳ではない。
「…………」
女は黙って眉間に皺を寄せる。
それに対して小鳥遊は
「美人の顔が勿体無いぜ!」
少し余裕が出てきた。
女は無理矢理、笑顔をつくり
「あら、嬉しい事を言ってくれるわね」
と言った。
小鳥遊は片手で銃を持ち、女に銃口を向けると言った。
「もうアンタの能力は分かった。降参しとけよ」
「ホラ吹きも程々になさい」
女は鼻で笑った。
だが小鳥遊は確信していた。
(勝てる……奴にもう手はない)
「俺の一言がホラかどうかは置いといて…」
小鳥遊は人呼吸置いて、
「アンタ、もうまともに能力は使えないハズだ」
一瞬だが、女の顔が引き攣る。
「何を言っているのか、サッパリだわ…」
「今すぐこっから立ち去るなら、見逃す……」
小鳥遊はアサルトライフルを握る力を強める。
「そうね、立ち去る気は……微塵もないわ!」
女が地面を蹴り、疾風の如く走る!
7、8mあった距離はあっという間に縮まる。
(馬鹿野郎が…)
小鳥遊が銃の引き金を引いた。
ダンッズガァンッ!
2発。
2発の銃弾が女の右足と左足を貫いた。
ドサッ!
女が、前方に身体を投げ出すように倒れた。

「アンタ……空気を操る能力者なんだろ…最初の”風”といい、次の”蜃気楼”といい、どちらも空気を操る事で発生する」
女は倒れたまま、
「完敗ね……君の言うとおりよ……蜃気楼は、密度の異なる大気の中で光が屈折し、視界が歪み、見え方が変化する現象。空気を操る能力があれば、造作もないわ……」
「銃弾が弾かれた。いや、押し退けられたのは、アンタが高圧の空気を纏っていたからだ」
「ふふふ……素晴らしいわね。でも、」
女は、倒れている男を指差した。
「あいつが私の能力をサポートしている事に気付いたのは、なんで?」
「気付いた、というより既知の情報だった」
「既に知っていた……ね」
「…………」
女は今もなお笑顔だ。
「お姉さんを殺しなさい。」
「…………」
小鳥遊は何も言わず、じっと女を見下ろす。
「情けを掛けられるくらいなら、死んだ方がマシよ」
女の口調は穏やかだ。
「殺すのは本望じゃねぇ。これに懲りて、静かに余生を過ごしやがれ」
小鳥遊は、そう吐き捨てると、その場を去った。


(少しハシャギ過ごしたな。早いとこここを離れねぇと)
小鳥遊は腕時計を見つめた。多機能腕時計は、デジタルで4月6日 午前 10時4分 を示していた。
(今から森を抜けるとすると、かなり時間がかかる)
小鳥遊は休憩のため、ひょいと木に登った。

その後、少しボーッとすると、物思いに耽り始めた。
(なんで こうなったんだ……)

時は2日前に遡る……






 
 

 
後書き
第一話です!
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