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ソードアート・オンライン 〜槍剣使いの能力共有〜

作者:カエサル
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GGO編ーファントム・バレット編ー
  61.決着

 
前書き
第61話投稿!!

死銃との戦いがついに決着!
全ての思いを込めて過去の亡霊を振り払え!! 

 


「《赤眼のザザ》。それがお前の名前だ」

直後。
俺の後方から飛来した一条の赤いラインが、死銃のフードの中央を音もなく突き刺した。
実弾....ではなく、照準予測線。シノンだ。その瞬間、俺は彼女の真意を悟る。これは予測線の攻撃。彼女の経験と閃き、そして闘志がつぎ込まれ放ったアタック。幻影の一弾(ファントム・バレット)。

死銃は本能的に後ろへと跳んだ。
奴もすぐに気づくだろう。シノンが俺を誤射する危険まで犯して撃つはずがないことに。だが、名前を呼ばれたことで動揺し、回避行動を取った。

これがラストチャンス。シノンが作ってくれたこのチャンスを無駄にしなため、地を蹴り、死銃を追う。
だが、奴の姿は消えていく。《光歪曲迷彩》。足跡で見失うことはない。だが、クリティカルポイントがわからない。

その時、俺の左手が、何者かに操られているように動く。冷え切った手を、誰かが.....よく知った誰かの手が包み、温め、導く。左の腰。自分でも忘れていた、二つ目の武器。ハンドガン。《ファイブセブン》。ホルスターから引き抜かれたその途端、記憶がよみがえる。

「う.....おおおおーーッ!!」

咆哮。踏み込み。一度強く左に捻った全身を、弾丸のように螺旋回転させつつ突進する。
行く手で消えかける死銃の揺らめくシルエットに向け、大きく左手を振り出す。

本来のこの二刀剣技なら、最初に左手の剣が地面すれすれから跳ね上がり敵の防御を崩すのだが、いま俺の手に握られているのは剣ではなく拳銃だ。しかし、ソードスキルに銃を使ってはいけないと誰が決めた?
左の剣で切り上げるイメージのままに、トリガーを立てて続けて引き絞る。

宙にラインが描かれ弾丸が、不可視の何かに命中し、死銃が姿を再出現する。光迷彩が破られたアバターめがけて、時計回りに旋転する体に重量をありったけ乗せて右手の光剣を、左上から叩きつける。

二刀流重突進技《ダブル・サーキュラー》

エネルギーの刃が、死銃の右肩を切り裂き、そのまま胴へと斜めに断ち割り、左脇へと抜ける。ホルスターに装着されていた《黒い拳銃》も切断され、鮮やかなオレンジの閃光を放ち爆発。
分断されたアバターと、引きちぎられたボロマントが宙を舞う。

死銃の上半身と下半身は少し離れた場所に落下した。わずかに遅れて、二つのアバターの中央に、細長い金属針......エストックが突き立った。




右腕を前へと突き出し過去の亡霊へと漆黒の刃を突き立てる。

「《虚言のライア》。決着をつけるぞ!」

右手に伝わる温かな感触。優しいよく知る感覚が俺に力をくれる。

「うおぉぉぉっ!!」

叫ぶ。地を蹴り、死銃との距離を一気に詰める。幻影が体を突き刺し、その後、弾丸が無数に飛んでくるが、右手が勝手に動くように弾丸を次々と撃ち落としていく。それは過去の自分が操っているように。
死銃も名前を呼ばれた動揺か、先ほどまで正確の狙いだったが今は、当たればいいと言わんばかりの乱雑に撃っているように感じる。

この一瞬を逃すな。奴を倒すこのチャンスを逃すな。
地を蹴り上げ、宙へと飛翔する。疾駆の勢いでかなりの距離を舞い上がる。左手のデザートイーグルのトリガーを引き絞る。真下に向けて放たれた鷲は、死銃の少し手前に命中する。これは牽制攻撃。敵の注意を一瞬でも逸らさせる本命は今からだ。
体を空中で捻りその体勢のまま重力任せに落下する。その間、無数の弾丸が地上から降り注ぐ。通常状態のこいつにこんなことをすれば自殺行為だが今のこいつに俺を狙える余裕がないのは見えている。当たっても数発くらいだ。

この技は、本来ならこの時間に受けたダメージの分こちらの与えるダメージも増えるのだが、この世界にソードスキルはない。
だからこの世界では威力が落ちてしまうが、こいつを倒すのにはこの技がちょうどいい。自らも傷を受けて相手にも叩き込むこの剣技。

手刀重突進技《肉切骨断》

死銃が刃が届く領域に入った瞬間、漆黒の刃を体の捻りを加えて振り下ろす。
漆黒の刃は、左肩をとらえ、そのまま右斜め下へと切断し、腰を抜ける。上半身が宙を舞う。

どさっ、という音が二回響く。
力を使い果たした俺はその場に膝から倒れこむ。そこにかすかな囁き声を捉える。

「........まだ、終わら......ない。終わらせ.......ない......。あいつが......お前を.......」

分断されたアバターに浮き上がった【DEAD】の表示が俺に戦いの終わりを告げる。
体をゆっくりと起こし、横たわる死銃に低く声を出す。

「終わりだ、何もかもな。共犯者もすぐに割り出す。《ラフィン・コフィン》はこれで終わりだ」

重い体をひきづりながら、共に戦った親友と恐怖しながらも助けてくれた少女の元へと足を運ぶ。




眩しい。まず思ったことがそれだった。シュウは集也へとその意識を戻す。その体はさっきまでの緊張感を残しているかのように汗ばんでおり心地悪い。
第三回バレット・オブ・バレッツ本大会バトルロワイヤル。優勝【Sinon】及び【Kirito】及び【Siu】同時優勝。
これはシノンが闇風から拝借したプラズマグレネードを転がしたせいでこんなことになった。

「集也くん!」

その聞き覚えのある声に顔だけを動かして声のした方を見る。そこには、今にも泣き出しそうな表情をする一番会いたかった少女がいた。その少女は俺の右手をしっかりと握っててくれた。

なにを言っていいかわからず俺は軽く返事を返してしまう。

「ただいま、スグ」

軽く返してしまったせいか少し怒ったような表情をしたと思ったら柔らかな表情になり、そこからいつもの笑顔に変わる。

「おかえり、集也くん」

重い体を起こし、辺りを見渡す。そこには、ダイブした時と変わらない光景が広がっている。違う点といえば明日奈とスグ、玲那が病室にいるくらいだ。

「あっ、そうだ!」

ふと思い出したように寝ているベットの上に置かれたスマホを手に取りすぐさまある人物に電話をかける。
ツーコール後にそいつはいつもみたいな何を考えているのかわからないような声が耳に届く。

『もしもし?』

「菊岡、死銃のプレイヤーネームがわかった。すぐに認証してくれないか?」

『あ、はい。でもそんな急にすぐに電話して来るなんて』

「いや......。なんか嫌な予感がして仕方ねぇんだ」

あいつが最後に残したセリフ。あれがまだ脳内に巡る。シノン......いや、朝田詩乃は信用できる友達がいると言ったが相手は死銃だ。下手のことをすればシノンもその友達も殺されかねない。

菊岡に二人の死銃のプレイヤーネーム。元《ラフィン・コフィン》メンバー、《ザザ》と《ライア》の名を告げる。すると菊岡からすぐにその名が告げられる。

『《ザザ》の名前が新川昌一、《ライア》の名前が石井行人』

「.......新川昌一と石井行人」

つぶやくようにその言葉を吐く。
この二人が死銃であり、SAOで殺人を犯していた奴らの名。

「それじゃあ、また何かあったら連絡する」

通話を切る。これであとは共犯者を炙り出せば全てが終わるはず。なのに俺の違和感はまだ消えない。何かがまだ引っかかっている。何が引っかかっているんだ。
死銃の正体はわかった、殺人方法もわかっている、奴らの名前も、なら何が引っかかっているんだ。

思いつく単語を次々と口にしていく。

「......死銃.....ザザ.....ライア....新川昌一......石井行人.....朝田詩乃....」

「えっ?」

その言葉に誰かが反応した。その声の方向に視線を向けるとそこには、少し驚いた表情をしている玲那。

「どうしたんだ、玲那?」

「いや、朝田詩乃ってあたしが通ってる高校の一コ下の後輩で.....たしか、人殺しとかっていう噂が流れてる娘だよ」

間違いなくシノンのことだ。
その時、不意にあることを口にしてしまった。ほとんど無意識的に口走った。

「それじゃあ、シノ....じゃなくて朝田が仲良くしてる友達の名前ってわかるか?」

「え?」

不思議がった声を出す玲那だったが答えてくれる。

「確か......今は不登校になってる......。え〜っと.....し、新川....?確かそんな名前だったような」

その言葉を聞いた瞬間、俺の中のわけもわからない違和感が形になる。それが形になったと同時に俺はベットから飛び起きる。体についていた電極を無理やり外し、スグの手を振り払い、スマホと上着を手に持ち、玲那の近くの椅子の上に置かれていたバイクの鍵を半ば強引に奪い取り病室から飛び出す。

「どうしたんだ、シュウ!」

後方からキリトの声がする。

「シノンがこのままじゃ、あぶねぇ!」

上着を上半身裸の上から着込み病院の廊下を全力で駆ける。受付を過ぎると夜間面会用の小さな扉から外へと飛び出る。駐車場に一台止まっているバイク。それに迷わず向かう。
それに飛び乗り、キーを差し込みエンジンをかけ病院の駐車場を飛び出した。

(間に合え!頼む間に合ってくれ!) 
 

 
後書き
次回、シノンに迫る危機。

現実の死銃が牙を向く。 
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