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とある星の力を使いし者

作者:wawa
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第122話

「うう~、お腹減った・・・・」

既に日は落ち、街灯が照らす道を麻生達は歩いていた。
そんな時、インデックスはお腹を抱えながらそう言った。

「そう言えば、俺も腹が減った。
 まぁ、昼ご飯も食べてないし、部屋に戻ったら何か食べないとな。」

「どこかのお店で食べるって選択はないの?」

「ない。
 財布は戻ってきたけど、節約できるところは節約しないとな。」

「ケチ。」

「じゃあ、インデックスは恭介の作ったご飯を食べたくないんだな。」

「うっ・・・それは・・・・食べたいです。」

「なら、我慢しろ。」

隣で上条達の話を聞いた麻生は面倒くさそうな顔をする。

(まぁ、部屋には五和が戻っているだろうし、五和に任せれば問題ないか。)

五和と麻生の料理の腕はそれほど変わらない。
なので、二人も文句は言わないだろう。
上条達は明日はどこを観光するか、話し合い。
麻生は欠伸をしながら、歩いている。

「ま、待ってください!!」

後ろから、そんな言葉が聞こえた。
三人は振り替える。
イタリア語なので、上条は何を言っているのか分からないが、その声には聞き覚えがあった。
そこには、ユミナを肩で支えながら走ってくるナタリアの姿があった。
それを見た、上条とインデックスは急いで駆け寄る。

「どうしたの!?」

「それが、お母さんが・・・お母さんが!?」

「落ち着け、まずは状況を説明しろ。」

少し遅れて麻生もやってきて、肩で抱えているユミナをとりあえず、地面に寝転がせる。
麻生に言われたナタリアは、小さく深呼吸をすると、落ち着きを取り戻したのかユミナについて説明をする。

「皆さんが帰った後、部屋に男の人が訪ねてきたんです。
 私はその人に突然突き飛ばされて、気を失ってしまいました。
 目が覚めて、お母さんの部屋に向かったら、お母さんが倒れていたんです。」

「どうして、病院に連絡をしなかった?」

「貴方はお母さんの病気を治してくれたから、だから・・・・」

麻生なら、ユミナを助ける事ができると思い、わざわざ追いかけてきたのだろう。

「それで、部屋を荒らされたとかの形跡はなかった?」

麻生がユミナを診ているので、代わりにインデックスがナタリアに事情を聞く。

「部屋は荒らされた形跡は一切ありませんでした。
 お母さんも血を流している訳でもなかったけど、何回呼びかけても、反応してくれないの。」

眼に涙を溜めながら、泣き声でそう言った。
上条はインデックスから、事情を説明してもらうと、ユミナを診ている麻生に視線を向ける。

(脈拍、呼吸、共に異常はない。
 目立った外傷もない。
 となると、外ではなく中か。)

ユミナの額に左手を乗せて、麻生は目を閉じる。
能力を使い、ユミナの中を調べた瞬間だった。
麻生の眼が何か信じられないようなものを見るかのように大きく見開く。
すぐさま、額から手を離して、ナタリアに詰め寄る。

「おい、ユミナさんが倒れていた時、何か周りに変化はなかったか!?」

「えっ・・・・」

「答えろ、魔法陣や薬、何でもいい。
 何か小さな変化でも、何かなかったか!?」

「わ、分かりません・・・・倒れているお母さんを見て、急いで部屋を出たから。」

「おい、恭介。
 何か悪い所があったのか!?」

「・・・・・・・」

麻生が何を話しているのか分からないが、何か異常事態が起こっている事を知った上条は麻生に聞く。
上条の問いかけに麻生は何も答えない。
その時、意識を失っていたユミナがゆっくりと目を開ける。

「う~ん、此処は一体・・・」

そのまま、周りを見渡しながら起き上がる。
ナタリアはユミナが目を覚ました事に喜び、駆け寄ろうとしたが麻生に止められる。
なぜ止められたのか分からないナタリアは、麻生に視線を向ける。

「どうしたんですか?」

「それ以上は近づくな。」

「どうしてですか?」

危険(・・)だからだ。」

ユミナは麻生達の声が聞こえたのか、こちらに振り向いてくる。
そして、ユミナの姿を見た瞬間、ナタリアは息を呑んだ。
ユミナの眼の色は茶色だったのだが、今は血の色のような真っ赤な色に変わっていた。
その変化に上条達も気がついているようだ。
麻生は告げる。

「お前の母親はもう人間じゃない。
 死徒という、化け物だ。」




「どういう事ですか?
 お母さんが人間じゃない?」

麻生の言葉が信じられないのか、ナタリアは言葉を洩らす。

「きょうすけ、どういう事?
 事情を説明して!」

「教えてもいいが、その前に・・・」

ナタリアを後ろに移動させると、麻生は能力を使い、剣を創り出し、剣先をユミナに向けた。
シンプルな柄に刃渡り八〇~九〇センチほどの剣だ。
麻生の行動にその場にいた全員が驚く。

「ちょ、何してんだ恭介!」

話の内容が全く分からない上条は、ユミナを庇うかのように麻生とユミナの間に入り込む。
その行動を見て、麻生は特に表情を変える事無く言う。

「どけ、そいつはもう人間じゃない。」

「人間じゃないって、どういう事だよ!」

「言葉通りだ。
 そいつの身体は人間ではなく、死徒と呼ばれる吸血鬼の身体だ。」

「吸血鬼・・・」

上条はその単語に聞き覚えがあった。
依然、三沢塾でステイルが話した話の中に、それは出てきた。
姫神秋沙が持っている能力、「吸血殺し(ディープブラット)」という能力がある為、吸血鬼が存在するのは確かだ。

「分かったか?
 なら、そこをどけ。
 今の内に殺しておかないと、後になって面倒な事態になる。」

「分かる訳ねぇだろ!
 それに殺す必要があるのかよ!」

「あるからこそ、こうやって剣を向けているんだ。」

「きょうすけ、事情を説明して!
 あの親子にも分かるように!」

ふと、後ろに視線を向けると、ナタリアは未だに状況を掴めないでいる。
ユミナも何がどうなっているのか、状況について行けず、その場を動けないでいた。
それらを確認すると、麻生は説明をし始める。

「分かった。
 インデックス、当間の通訳は任せたぞ。」

その言葉にインデックスは頷く。

「まず、吸血鬼について話すか。
 ナタリアも名前は聞いた事がある筈だ。
 人間の血を吸って、吸った人間を吸血鬼にする化け物の名前を。
 吸血鬼の中にも色々種類があってな、あそこにいるのは死徒と呼ばれる部類の吸血鬼だ。」

「死徒?」

「通常の吸血鬼は不老不死で、吸血した人間を吸血鬼に変化させる。
 だが、奴らは別に人間の血を吸わなくても生きて行くことができる。
 だが、死徒は違う。
 死徒は吸血鬼の中でも厄介な存在だ。
 死徒は吸血鬼でありながら、完全な不老不死を持っていないからだ。」

麻生は言葉を続ける。

「そもそも、死徒というのは人間から吸血鬼になった元人間の事を指す。
 だから、奴らの身体は人間の身体のままなんだ。
 吸血鬼の不老不死は人間の身体の器では再現する事はできない。
 故に彼らの肉体は急速に劣化していく。
 それを補うために、他人の血液を吸って、肉体を固定させている。
 言い方を変えるならば「エネルギーを補給し続ける必要がある不老不死」だ。
 奴らは生きるために人間の血を吸い、吸った人間は死徒、そいつの同じ吸血鬼になる。
 そうしていく事で、どんどん増えていき、やがてこの街を・・・いや、この国の人間全てを吸血鬼にしてしまう可能性がある。
 分かるか?そこにいる奴がどれだけ危険な存在なのか?」

麻生は説明を追える。
ユミナはようやく自分の置かれている状況に気がついた。
ナタリアは未だに信じられないのか、困惑の表情をしながら、ユミナに視線を向ける。

「だから、今すぐ殺すのかよ。
 まだ何か方法がある筈だ。
 何もしてないのに、すぐ殺すのはおかしいだろ!」

インデックスが訳してもらったので、ユミナがどれだけ危険な存在であるのか理解している。
それでも上条はユミナをすぐに殺すという判断を認めるわけにはいかなかった。

「これが普通の死徒なら、俺の能力を使って元に人間に戻す事はできた。
 だが、身体を調べた時、その身体には俺の知らない魔術が使用されていた。
 身体を元に戻すにも、干渉する事もできなかった。
 できたのは、身体を調べる程度とそいつが死徒だという事が分かっただけだ。」
 
「だからって、だからって殺すなんてあんまりすぎるだろ!
 やっと病気も治って、ようやく元の生活に戻る筈だったのに!」

「だが、ここで見逃せば多くの人間が死ぬかもしれない。
 割り切れとは言わない。
 無理に理解する必要もないが、俺の邪魔するな。」

そう言って、上条の隣を素通りする。
麻生はユミナに近づくと、剣を振り上げる。

「知らない仲でもない。
 何か言い残す事はあるか?」

最後の情けなのか、ユミナに聞く。
すると、ユミナはいつもと変わらない笑みを浮かべて言う。

「あの子を、ナタリアをお願いします。」

それだけ言って、目を瞑る。
それを見た麻生は剣をユミナに向かって、一気に振り下ろす。
しかし、剣がユミナの身体を斬り裂く事はなかった。
なぜなら、上条が直前にユミナの身体を突き飛ばしたからだ。
麻生は殺意の籠った目で地面に倒れている上条を見つめる。

「何の真似だ、当麻。」

上条は左手でユミナの身体を起き上がらせる。
そして、麻生の視線を真正面から受け止め、言った。

「やっぱり、割り切れねえよ。
 俺はこの人を見殺しにする事はできない。」

「自分が何をしているのか、分かっているのか?」

「ああ、分かっている。
 でも、理屈じゃねぇんだよ。
 俺は諦めない、何か方法がきっとある筈だ。
 きっと、何かが。」

その言葉を聞いて、麻生は眼を閉じてため息を吐く。
そのため息はいつものとは違った。
余計な手間が増える事を、面倒と思うものだ。
ゆっくりと目を開け、麻生は言う。

「なら、お前を倒して、そいつを殺すまでだ。」

「ッ!?」

上条は左手でユミナの手を掴むと、そのまま走り去って行く。
ナタリアは一瞬、どうするか迷うが、上条達に着いて行く。
インデックスも追いかけるが、途中で止まり、少しだけ麻生に視線を送ると、そのまま上条達を追いかけに行った。 
 

 
後書き
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