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Fate/magic girl-錬鉄の弓兵と魔法少女-

作者:セリカ
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A's編
  第八十二話 闇を祓う

 互いの覚悟を胸に闇の球体を見つめる中

「暴走開始まであと二分」

 刻限の時間を知らせるエイミィからの通信が入る。
 その時

「あ、なのはちゃん、フェイトちゃん、士郎君」

 三人を見つめるはやて。

「シャマル」
「はい。三人の治療ですね。
 クラールヴィント、本領発揮よ」
「ja.」
「静かなる風よ、癒しの恵みを運んで」

 士郎達三人を光が優しく包み、葉が舞う様に踊る。

 外傷の治癒と服の破れや汚れまで元に戻っており、魔力回復もされている。

「湖の騎士シャマルと風のリング、クラールヴィント。
 癒しと補助が本領です」
「すごいです」
「さすがだな」
「ありがとうございます。シャマルさん」

 シャマルの技にフェイト、士郎、なのはは驚きつつ体の感触を確かめる。

「私達はサポート班だ。
 あのウザいバリケードをうまく止めるよ」
「うん」
「ああ」

 アルフ、ユーノ、ザフィーラも自身の出来る事をやるべく覚悟を決める。


 そして、その時はやってきた。

 闇の球体の周りに闇の光が柱となって現れる。

「夜天の魔導書を呪われた闇の書と呼ばせたプログラム。
 闇の書の闇」

 はやての言葉に応えるように闇の光は弾け、その中から闇が産声をあげた。

 その姿はもはや生物の域を超えている。
 シグナム達が蒐集してきたあらゆる要素をもつ巨大な化け物であった。

 あまりの異形になのは達は気がついていないが、士郎は気がついている事があった。

(背中や尾なんかに鱗のように生えたアレは……剣か。
 俺のリンカーコアを蒐集した影響か、それとも取り込まれた影響か)

 闇の書の闇として現れたモノが士郎の剣の浸食の様に至る所から角や鱗の様に剣を生やしているのだ。

 勿論、魔術回路とリンカーコアでは全く別物のため魔術を再現しているわけではない。
 それでも

(俺の力が影響は与えたのは事実だ。
 マイナスに働かなければいいが)

 その事で何かなければいいとわずかな不安を抱えながらも、自分の役目を果たすために意識を切り替える。

 瞳を閉じた士郎の前に浮かぶのは撃鉄。
 その奥に鎖に縛られた撃鉄が並んでいる。

封印(トレース)―――解除(オフ)

 それが鍵。
 鎖は砕け、撃鉄は縛りから解放される。

「―――I am the bone of my sword.(体は剣で出来ている)
 
 士郎の呼び声に応え、封印されていた魔術回路264本は一斉に撃鉄を起こした。

 ゆっくりと士郎が瞳を開ける。
 その瞳は金色に染まり、全身からは眼に見えて赤い魔力が吹きあがる。

 その姿に、初めて目にする者達は異質ともいえる魔力に目を丸くしていた。

 そして、半年前にその姿を目にし、代償を知るなのは達は士郎を心配する表情で見つめる。
 士郎の視線がぶれることなく暴走体を見つめ続けながら

「視線を外すな。
 ここで終わらせるんだろ」

 放たれた言葉に、全員が暴走体に視線を戻し、意識を戦闘に切り替える。

「ケージングサークル!」
「チェーンバインド!」

 ユーノの放ったケージングサークルが檻となり、アルフの放ったチェーンバイドが暴走体の全身を縛りつける。

「囲え、鋼の軛!!」

 さらにザフィーラが放った白銀の軛が空より降り注ぎ、貫き動きを止める。

 三人がかりの拘束。
 それでもその巨体ゆえに鈍いのか、痛覚というものがないのか力任せに拘束を引き千切り、砲撃を放つ。

 狙いも甘い砲撃が当たるはずもない。
 かわすように散開する士郎達。

 この中で最後の一撃であり、飛行が得意でない士郎の傍にはシャマルが足場を展開し、空中移動の補助を行うためにいた。

「―――投影、開始(トレース・オン)

 その魔法陣の上で最後の一撃のために自身が作りだせる最高の剣の投影を開始する士郎。

「先陣突破、なのはちゃん、ヴィータちゃん」

 自身が展開した魔法陣の上に士郎が無事着地した事を確認し、なのはとヴィータに攻撃の指示を出すシャマル。

「ちゃんとあわせろよ、高町なのは」
「ヴィータちゃんもね」

 わずかに頬を染めながらなのはの名を呼ぶヴィータ。
 そして、ちゃんと名前を呼んでもらった喜びに満面の笑みを浮かべて応えるなのは。

「鉄槌の騎士ヴィータと鉄の伯爵グラーフアイゼン」

 ヴィータの掲げた言葉に応え、カートリッジがロードされ

「Gigantform.」

 槌が一回り以上大きくなる。
 だがそれはほんの始まり

「轟天爆砕!―――」

 ヴィータがグラーフアイゼンを振りかぶると同時に槌のサイズは暴走体とほぼ同じ大きさまで巨大化する。

「―――ギガントシュラーク!!!」

 振り下ろされた魔力が込められた大質量の攻撃に一層目の紫の障壁は砕け散った。

「高町なのはとレイジングハート・エクセリオン、いきます!」
「Load cartridge.」

 4発のカートリッジがロードされ、桃色の羽を広げるレイジングハート。

「エクセリオンバスター!」

 レイジングハートの先端に集まる魔力。
 それを阻むかのようになのはに伸びる触手。

「Barrel shot.」

 その触手を弾き飛ばし、二層目の赤の障壁に叩きこまれる衝撃波。

「ブレイク―――」

 衝撃波に続く様に放たれる四つの砲撃。
 それは障壁と拮抗する。

「―――シュート!!!」

 先に放たれた砲撃を呑みこまんとする、さらに大きな一撃が放たれる。
 障壁と拮抗するもそれはわずかな時間であり、赤の障壁は砕け散る。

「シグナム、フェイトちゃん」

 シャマルの声に頷く様に二人は並んで暴走体に接近を開始する。

 二層の障壁を破壊された焦りか、さらに触手を増やし手当たり次第に砲撃を放つが、二人は危なげなくかわしていく。

「いくぞ、テスタロッサ」
「はい、シグナム」

 それを合図にシグナムを残してさらに加速するフェイト。

「フェイト・テスタロッサ、バルディッシュ・ザンバー、いきます」

 その声に三発のカートリッジがロードされ

「はあ!!」

 体を一回転させながら、斬撃の衝撃波を飛ばす。
 それは触手を叩き斬り、黄の障壁に叩きこまれ、障壁にダメージを与える。

 それを確認すると同時に一気に飛びあがり、暴走体を挟んでシグナムとフェイトが向かい合う。

 それと同時にシグナムは鞘に収めたままだった愛剣を抜き放つ。

「剣の騎士シグナム、炎の魔剣レヴァンティン。
 刃と連結刃に続くもう一つの姿」

 愛剣の柄と鞘をつけるとカートリッジが一発ロードされ

「Bogenform.」

 一つの弓となる。

 弓の弦を引くと共に一本の矢が弓に番えられる。
 そのタイミングにあわせるようにフェイトはバルディッシュを振りあげる。

「翔けよ、隼!」
「Sturmfalken.」

 矢は膨大な魔力を纏い

「撃ち抜け、雷神!」
「Jet Zamber.」

 バルディッシュは雷を纏う。

 矢は解き放たれ、炎の隼となり、一直線に暴走体を目指し突き進む。
 そして、二層の障壁を突き破り暴走体にダメージを与える。

 それにあわせるように振り下ろされた雷の刃は大穴があき、亀裂が入った二層の障壁を暴走体と共に切り裂いた。

 シグナムとフェイト。
 互いに呼吸を合わせ、第三と第四の障壁を打ち破るだけなく暴走体までダメージを与えていた。

 だがそれも意に介さないとその巨体を空にあげ、障壁を張る暴走体。
 その時、明らかに士郎に向かって咆哮した。

 士郎の手にあるのは黒い剣。

 闇よりさらに暗い光を秘めた西洋剣。
 その剣の存在感に本能なのか、脅威を感じ咆哮したのだ。
 そして、その剣の形状は半年前の事件を眼にした者達にとっては忘れる事のない形であった。
 半年前との違いは剣に描かれた模様とその闇色のみ。

 その脅威に向かって砲撃を放とうとする暴走体。
 だがそれを見てなお、士郎は防御の体勢をとらない。
 ただここにいる皆を信じているのだ。

 それに応えるように 

「盾の守護獣、ザフィーラ。
 そのようなモノ撃たせん、オオオオッ!!!」

 魔力を込めた拳の右の一撃を暴走体の障壁に叩き込む。
 その一撃は暴走体が急ごしらえとはいえ展開した障壁を突き破り士郎を狙う砲門を打ち砕く。

「うおおりゃあああっ!!!!」

 さらに左の一撃で障壁を粉砕する。

 その中で士郎は戦いを見つめながら、完成した剣にさらに魔力を流していく。
 それは魔力を込めるモノではなく、変化させるためのモノ。

 だがそれは異端中の異端。
 剣は紫電を帯び、士郎の右腕を焼く。
 そんな事を気にしないと士郎は魔力を流し続ける。

 ゆっくりと緩やかな曲線を描く鍔は直線的に、柄は細く長く、同じように刀身も刃幅を細くしてわずかに長くなる。

 その光景に固まる思考を必死に動かし

「はやてちゃん!」

 主の名を呼ぶシャマル。

 はやて自身、士郎が心配ではあるが、そこまでして夜天の書を救おうとする士郎を止められるはずがない。

 暴走体に改めて視線を向け、夜天の書を手に杖を掲げる。

「彼方より来たれ、やどりぎの枝」
「銀月の槍となりて、撃ち貫け」

 はやてと共にリインフォースが詠う。
 白銀ベルカの魔法陣を囲むように展開される八つの魔力。

「石化の槍」
「「ミストルティン!」」

 振りそそぐ八つの白銀の槍が暴走体を貫き、暴走体の身体を石と変え、海へと叩き落とした。

 衝撃で砕けていく暴走体。
 だがそれよりも早く肉体を復活させていく。
 しかしその光景があまりに異常であった。

 欠損した個所を埋めるように現れる剣、剣、剣、剣、剣。
 それはまるで巨大な剣の塊の様であった。

 ここにきて、なのは達は士郎と暴走体の共通点を感じ始めていた。
 だが戦いの最中に尋ねる様な真似はしない。
 それでもただ心配そうに士郎を見つめていた。

 そして、士郎も

(まいったな。ほとんど同じか)

 重傷を負った時に剣となり、修復する自身の身体との共通点に頭を悩ませていた。

 士郎はまだ失ったところや傷を剣で覆う様に修復する光景をなのは達には見せた事はない。
 だが封印回路を使用して剣が突き破った光景をみたなのは達が薄々感づいていることも視線で気がついていた。

(この戦いが終わった後、話す事が増えそうだ)

 そんな予感をしながら、こちらを見つめるクロノに頷いて見せる。

 クロノも戦いの中尋ねる気はない。
 ただ後でという士郎の思いを正確に受け取り、瞳を閉じデュランダルに魔力を込めていく。

「悠久なる凍土 凍てつく棺のうちにて 永遠の眠りを与えよ」

 その言葉と共にデュランダルが秘める魔力は増え、空気は静かに冷たくなっていく。

「クロノ君、やっちゃえ!!」

 エイミィからの激励。
 それと共に瞳を開ける。

 その時には既にクロノの息は白くなるほど、周囲の空気は冷え切っていた。

「凍てつけ!」
「Eternal Coffin.」

 デュランダルから放たれた一撃は海を凍らせながら突き進み、暴走体を呑みこむ。

 圧倒的な一撃により暴走体を周囲の海ごと氷の彫像とする。

 その冷気は凄まじく攻撃したクロノ自身、服や髪の一部が凍りついていた。

「なのは、フェイト、はやて、士郎」

 クロノの呼ぶ声に

「Starlight Breaker.」
「全力全開、スターライト―――」

 なのはの前に星が集めるように魔力が集まり巨大な球体を作っていく。

「Plasma Zamber.」
「雷光一閃、プラズマザンバー―――」

 バルディッシュに雷が落ち、その魔力を飛躍的に高めていく。

「ごめんな、おやすみな。
 響け終焉の笛、ラグナロク―――」

 切り捨てる事になってしまった夜天の書の闇、謝罪と別れの言葉を告げ、杖を掲げる。
 展開されるベルカの魔法陣の角に集める魔力。

 そして、士郎は最後の一撃に備えて矢とした剣を弓に番え、魔力を剣に叩き込んでいく。

 黒き剣は闇より暗い暗黒の光を放ちながら紫電を放つ。
 それは絶望を与える圧倒的な力にして闇。

 それぞれの準備が出来た時、引き金は引かれた。

「「「―――ブレイカー!!!!」」」

 星達の集いから放たれる桃色の砲撃。
 振り下ろされる金色の斬撃。
 絡み合い巨大な一となる白銀の砲撃。

 三つの光が暴走体の肉体を呑みこみ、凍てついた海を砕いていく。
 その中で暴走体は最後の雄叫びをあげながらその肉体を失った。

 そして、シャマルはその閃光の中で神経を張り巡らせ、コアを探していた。
 その中で壊れた肉体の中から零れ落ちたコアを捕捉する。

「捕まえた! 士郎君!」

 シャマルの呼び声に士郎は眼を凝らして、光の中を見つめる。

 番えられた剣は膨大な魔力を込められ、刀身の傍にある左手も焼かれているというのに一切の迷いもなく、ただ眼を凝らす。

 光の中にある闇の固まり。
 それを正確に捉え、静かに息を吐く。

 イメージは問題ない。
 放つこの一撃は間違いなくあの闇を呑みこむ。

「往け―――約束された勝利の極光(エクスカリバー)

 放たれた剣は音速を超え、空気を切り裂きコアに突き刺さるのを見届け

壊れた幻想(ブロークンファンタズム)

 エクスカリバーという膨大な魔力が込められた魔剣はその魔力を糧に全てを破壊しつくした。




side 士郎

 残心しながら、闇の閃光を見届ける。

 これで終わった。
 弓を持つ左腕を降ろしながら、弓を霧散させる。

 しかし、エクスカリバーより無茶だな、これは
 修復されていく手の感触を感じながら内心でため息を吐く。

 これを思いついたのは偶然。

 吸血鬼になった後、とある戦いでエクスカリバーと同等、対城宝具クラスの一撃が必要かつ、相手との距離が三キロ離れている時があった。

 いくら必要でも射線上の全てを薙ぎ払うわけにもいかず、思い付きでやってみたのだが何とか形になったモノである。

 とはいえ完璧とはいえない。

 まず黄金のエクスカリバー、カリバーンは俺のセイバーの意識が強過ぎたのか、出来ない事はないが、闇色のエクスカリバーより負荷が凄まじく高い。
 まあ、負荷が軽いと言っても改造の際に右手から腕にかけては結構焼かれる上に封印回路を使わないと出来ないという厄介なところがある。

 そして、あまりの魔力とランクの高さから大きく形状を変える事が出来ず、カラドボルグやフルンディングのように込めた魔力で手を焼かない様な調整が出来ない。

 結果としてエクスカリバーより威力は下がるものの一点突破と周囲の影響という意味では使い勝手がいい。
 その代り、使えば右手は投影で、左手は刀身の魔力でボロボロになるのだが。

 そんな時、周りから何やらちくちくと視線が痛い。

 振りかえって見ると耳を抑えている面々。

「士郎、大きな爆発がするならするで言ってくれ。
 さすがに今のは」

 そういえば言ってなかったな。

「ああ、すまなかったな。
 それで闇の書の暴走プログラムは?」
「今、エイミィが周囲を調べてるから少し待ってくれ」
「了解した」

 クロノの言葉に頷きながらコアを撃ち抜いた箇所を見つめる。
 なにかおかしなところがあった時に見逃さないように

 それから数分して全員宛にエイミィさんから通信が来た。

「現場の皆、お疲れ様でした。
 状況、無事に終了しました。
 このあと残骸の回収とか市街地の修復とか色々あるんだけど、皆はアースラに戻って一休みしてって」

 うれしそうなエイミィさんの言葉にそれぞれが互いに笑い合ったり、終わったと大きく息を吐いたりそれぞれだが、なにはともあれ一安心だ。

 俺もなのはとフェイト、はやてと笑みを浮かべてハイタッチをしたりと無事に終わった事に安堵していた。

「あのアリサちゃんとすずかちゃんは」

 なのはの言葉に、そういえばと思う。

「被害が酷い場所以外は結界の解除をしてるから、もう元いた場所に戻ってるよ」
「そうですか、良かった」

 二人も無事で俺も安心だがすずかは別にしても、アリサにも教える事になるとはな。
 それに二人に関しては少し気になるところもある。

 その時、はやてとリインフォースの融合が解かれる。

「主はやて、まだユニゾンを解除されては」

 リインフォースの言葉も終わらないうちに意識を失ったように力なく落ちかけるはやてを支える。

「はやて!」
「はやてちゃん!」

 その様子に守護騎士達も集まって来る。

「クロノ、救護班を頼む。
 それと俺の部屋もだ」
「ああ、わかった」

 俺の言葉の意味を理解したクロノは頷き、俺達は皆、一度アースラに向かう事になった。

 はやてとリインフォース、二人に不安を残しながら 
 

 
後書き
なんとか終わりました。

フルボッコ……もとい、袋叩き、じゃなくて闇を祓う。

闇の書の暴走体の剣の所は無限の剣製も出さないので削除しようかと思いましたが、士郎の魔導特性にも関わって来るので残しました。

そして、半オリジナル宝具。
ゼロワン様と挿絵でおなじみ貫咲賢希様から案を頂いた物にアレンジを加えたモノになります。
真名開放は貫咲賢希様の案です。

宝具設定一覧にも近いうちに追加します。

ちなみにA's編は年内中にアニメ13話まで頑張りたいと思っているので久々に来週も更新しようと思います。

それでは次回は来週に

ではでは 
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