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エターナルトラベラー

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番外 NARUTO編 その1

忍連合本部のとある部屋にて、テーブルを前に椅子に座る五代目火影である綱手に対峙するように幾人かの木ノ葉の忍びが集まっている。

その中には日向ヒナタとロック・リーの姿も有った。

「まったく、この世界がこれほどの緊迫状況にあってあの二人はまだ見つからんのか」

そう綱手が愚痴をこぼすように言葉を紡いだ。

「方々探し、暗部の協力を得てもかすかな痕跡すら見つかりません」

その問いに答えたのは奈良シカクだ。

「その二人は同期であった娘から聞いたことがありますが、少し優秀なくらいの中忍でしかないのでは?もう戦争が始まると言うこの時期に暗部を割いてまで探す価値のある人物だとは思えないのですが…」

苦言を呈したのは山中いのいちである。

「それがそうとも言い切れないんですよいのいちさん」

いのいちの反論に言葉を紡いだのははたけカカシだ。

「今回の相手は、まあ嘘か本当か分かりませんが、あの伝説の忍であるうちはマダラを名乗るやからです」

「ああ」

「そのマダラに対抗できた忍はそれこそ伝説にある初代火影様くらいなものでしょう」

「だが、初代様は既に亡くなられている。千手一族も混血が進み綱手様ですら初代様の血継限界を宿しておられない」

「はい。今はヤマトが幾らかの木遁を使えるのみになってしまっています。そのヤマトですら初代様には遠く及ばないでしょう。ならばどうするか。…うちはにはうちはをあてれば良い」

「それこそ不可能だ。うちはの生き残りはうちはイタチをうちはサスケが倒して以来生き残りはサスケとマダラだけ。そのサスケも未だ抜け忍として指名手配中なのだぞ。いまの木ノ葉の中で写輪眼を使えるのはカカシ、お前だけのはずだ」

「しかし、それが居るとすれば?マダラを名乗る男は恐らく写輪眼の上位瞳術である万華鏡写輪眼を開眼しているはず。万華鏡写輪眼に対抗するには万華鏡写輪眼しかない。だからこそ、今彼らの力が必要なのです」

「なっ!?うちはの生き残りが居たのか?」

驚愕の事実にいのいちは自然と視線をシカクへと向けると、シカクは頷いてみせた。

「それでその彼らは今?」

「ある日突然姿を消した」

ため息をつきつつ綱手が答えた。

「方々手を尽くしたが、結局手がかりになりそうなのはこの巻物だけだな」

そう言って綱手が広げて見せた一本の巻物には何やら仰々しい文字と図形の羅列が書き記されている。

「これは…口寄せの巻物ですか?」

シカクがそれを見て推察した。

「そのようだ。姿を消した彼らの部屋で見つけたものだ。調べてみた所どうやら特定人物の口寄せの術式ではないかと言う事だが、媒介は血液によるものであり、その血液が誰のものであるかわからんゆえ開封できておらんが、周りの物を整理していたようであるから、これは有事の際もっとも親しい者へあてた物である可能性が高い」

そう綱手が言った。

「つまり…それでボクたちが呼ばれたって事ですね」

ようやくここに来て会話に混ざったのはロック・リーだ。

「そう言う事だ。おそらくこれはヒナタとリーにあてたものであると推察される」

「そうですか…つまり私達のどちらかがその巻物であの二人を呼べと言うことでしょうか」

と、ヒナタ。

「そうだ。これは命令だ。戦争が始まる前に戦力増強、もしくは後顧の憂いを絶っておかなければならん」

うちはの末裔であるのなら、その彼らがマダラに付いていると言う可能性もあるのだ。

その場合、力ずくで取り押え無力化するためにこの部屋にはカカシをはじめ、てだれの忍が綱手の命令で集まっているのだ。

「分かりました。私がやります…」

「ヒナタさん…」

ヒナタが一歩前に出て巻物を受け取り、その様子をリーが少し心配そうに見つめていた。

ヒナタは巻物を床に広げると、その巻物に記されている印を読むと、カカシからクナイを借り右手の平を切裂くと、巻物に真一文字に塗りたくる。

その後、書かれてあった印を組上げ、再度右手を巻物の上に押し当てる。

「口寄せ、蒼空(そうくう)招来」

巻物から這い出るように文字が床に散らばると、召喚陣をくみ上げるが如く整列し、その場に何処からか何者かを呼び寄せる。

ボワンッ

軽い爆発音のような物の後、その巻物の上に突如として人影が現れた。

「誰だっ!貴様達はっ!」

綱手の言葉で目的の人物では無いと悟った忍者達が各々に戦闘態勢を整え身構える。

「ここは…?」

その人影は彼らが予想していた人物などではなく、何故か、猫のような耳と尻尾が付いていた。









その日、俺は久しぶりに久遠、クゥを連れてピクニックに出かけ、日陰で昼寝をしていた。

最近、リオやヴィヴィオがこのフロニャルドに来たり、なのはなんかは平行世界の過去へと跳び、闇の書事件に関わってきたりとなかなかに騒動に絶えない。

「アオ」

「…ん?」

木陰でまどろんでいた所に俺を呼ぶ声が聞こえる。ソラの声だ。

「ソラ…?」

「そんな所に居ると風邪を引くよ、そろそろ日も落ちてきて気温も下がってきたしね」

とは言え、俺達はここ何年も風邪を引いた記憶は無いけれど…

「ん、そうだね。そろそろ戻るよ。久遠、クゥ、起きて」

「くぅん…っ」
「なぅ…っ」

そう言って二人をおこそうとした時、突如として歪む空間。

「アオっ!?」
「ソラっ!?」

抵抗しようとする暇もなく、俺達は一瞬で飲み込まれ、一瞬後には何処か知らない部屋の中へ転移させられていた。

すると、行き成り怒声が奔る。

「誰だっ!?貴様達はっ!」

「ここは…?」

飛ばされる殺気に体は条件反射の如く反応し、戦闘態勢へと移行する。

オーラを纏い、目は油断無く写輪眼へと変貌する。

俺と一緒に転移してきたのはソラと俺の回りに居た久遠とクゥ。…つまりあの時一緒に居た全員だ。

目の前を見れば、黒のロングの髪が美しい一人の女性。彼女が恐らく俺達の召喚者だろう。

その虹彩は殆ど白に近い薄紫色をしていた。

「なっ!?写輪眼っ!?」

と、動揺した後、その声を荒げた男は続いて慌てたように言葉を続けた。

「目を閉じろっ!彼らの目を直接見てはダメだっ!」

その男の言葉を聞き、そこに居た複数名の人達は一斉にその目を伏せた。

そう言った後、その彼は自身の左目を隠していた何かをたくし上げると、その瞳を現す。

む?

この瞳の事を知っている?それに対処法も?

それにあの瞳は写輪眼だ。

どういう事かと考えをめぐらせているとソラから念話が入る。

『アオ、ここって…』

『まさか木ノ葉なのか?』

写輪眼の名を知っている存在など限られる。世界を跨げば知る存在などそうそういないだろう。

『場所まではまだ分からないけれど、この()…』

かなり昔の事なのでもはや記憶が曖昧になってきているが、おそらく…

「ヒナタ…なのか?」

「え?」

俺の言葉に戸惑いの言葉と同時にその閉じられた瞳が開かれる。

一瞬何かを考えた後、目の前の彼女は声を発した。

「アオくん…なの?本当に?」

「…そうだね」

ようやく記憶の奥底から引っ張り出して見てみれば、写輪眼でこちらを警戒しているのはカカシさんで、テーブ越しに椅子に座っているのは綱手様か。あの濃い独特の雰囲気をかもし出しているのはリーさんだね。

「じゃあ、そっちは…」

遠慮がちに目を開けたリーさんが会話に混ざろうと一歩前に出てそう問いかけた。

「ソラ…ちゃん?」

「そう」

ヒナタの言葉にソラが簡潔に答えた。

そう言えば、かなり昔、ヒナタ達と別れると悟ったときに召喚口寄せの巻物をつくって置いていったっけ?

まさか今頃になってそれで召ばれるとは思いもよらなかった。

「神咲アオと神咲ソラで合っているのか?」

「綱手様っ!」

目を開けて、俺に確認を取る綱手に、それを危険と止めに入るカカシ。

しかし、それを片手で制して「どうなんだ?」と問いかけた。

「お久しぶり?になるのですかね。確かに俺達はその名で呼ばれていたことがありますよ」

「どういう事だ?」

「詳しくは話せませんけれどね。いろいろあったと言う事だけです」

「いろいろって…」

「それで、わざわざ俺達を口寄せしたと言う事は何か用事があるのですか?」

「用事もなにも、私達の認識ではお前らが勝手に里から消えてしまい大事な戦力が消えてしまったと言う事なのだが…」

ふむ…

「それもそうですね。とは言え、勝手ではありますが、今の俺達は木ノ葉に戻れる状況じゃないのでね。用事が無いなら挨拶だけをして帰らせてもらえないかと思うのですが…」

「すまんがそれは無理だ。我々も今この時期に大事な戦力をみすみす逃すわけにはいかん」

この切羽詰った感じはどういう事だろうか。

それから聞いた話をまとめると、どうやら今まさに暁と言う組織と全面戦争が始まる前らしい。

各里の忍者は結束し、この組織との戦いに挑むそうだ。

敵のボスは悪名名高きうちはマダラといい、初代火影と共にその伝説は有名との事。その実力はおとぎ話級らしい。

この戦いに負けは人類の永遠の幽閉を意味し、今までの過程を全て否定される結果になるとの事。

なるほど、これは彼ら忍者達には負けられない戦いで、彼らに繋がり育て、守ってもらっていた俺達の戦いになるのか。

『アオ、どうする?これは私達の過去の因果。言い方を変えれば絆かな』

と、ソラからの念話が入る。

『絆、か』

『命の危険は確かにあるよね。戦争だもの。自分だけは死なないなんて事は絶対にない』

うん、それはそうだ。命を賭した戦い、戦争になる以上、自分の命もベットされるのは当然だろう。いつもなら避けて通るはずの懸案だ。だが…

『この世界があって、俺達の今が有る。彼らとの繋がりがあって、あの時を生きてきたという実感を今こうして感じさせてくれている。…なら…』

『うん、そうだね。それじゃあ返そう。今の私達なら、いっぱい返せる物も有るはずだよ』

『それが結局武力の行使と言う事なのはこれはもう俺達の(ごう)であると言う事なのだろうけどね』

『だねぇ』

俺の言葉にソラはくすりと笑った。

答えは決まった。この選択を過去の自分なら後悔するだろう。だが…

『俺達が関わった事。その全てが現実だ』

『うん』

綱手に協力の意を伝えると、忍連合の額宛を頂いた。

部隊への編入などは追って知らせるとの事なので、空いた時間でヒナタとリーと会話する時間が取れた。

「あの、…これっ」

そう言ってヒナタから渡されたのは木ノ葉のマークが入った額宛。

「これは…」

「アオくんとソラちゃんが居なくなってからずっと私があずかっていたの」

「懐かしいな」

「うん」

「懐かしい物なのですか?と言うか、オーラの感じは確かにお二人に間違いないのですが、その密度が半端無いのですが」

と、リーさん。

「俺達にしてみれば、あれから数百年の時間が経っているからね」

「数百…嘘を言っているようには見えませんし、本当の事なのでしょうね」

現実離れした話だが、どうやら二人は信じたらしい。どうにもそう言った部分の信頼は有るようだった。

確かに、念なんていう汎用性の高い、しかしこの世界では使われていない技術を持っていた過去があるからねぇ。

「それで、あの…そっちの二尾と九尾は…」

「変な言い方をするね。いや、いいけれど。彼女達は俺の使い魔達だよ…」

ヒナタの言葉に答える。

「使い魔…ですか?」

「口寄せ動物と言った方がこの世界ではなじみ深いかな?俺達をいろいろと助けてくれるパートナーだよ」

「そうなんですか…」

「久遠、クゥ、挨拶」

「…よろしく」
「…なぅ」

久遠もクゥも人見知りが激しいからね。挨拶も初対面ではそっけない物だった。

「き、嫌われているのでしょうか…」

「そんな事は無いと思うけれど」

そうソラがフォローした。と、そんな時、部屋の入り口から声が掛かる。

「おう。お前ら、ちょっとつきあってちょうだい」

振り返るとカカシさんが立っていた。

「何をですか?」

「戦争前に二人の実力を確かめて来いとさ」

なるほどねぇ。







演習場へと移動し、俺とソラはカカシさん、とヒナタ、リーさんと対峙する。

久遠とクゥは見学だ。

「お二人が居なくなってからもボクは一生懸命努力したつもりです。その努力を今此処で見せましょう」

「私も手加減はしません。したら二人に失礼ですし」

と、リーさんとヒナタ。

「どちらかのチームの参ったで決着をつけよう。その辺りの良し悪しはお互い素人じゃないし、分かるでしょう」

「写輪眼は使っても?」

「これはマダラとの想定もかねている。俺も使うから遠慮しないでばんばん使ってちょうだい」

と、カカシさんの言葉で模擬戦が始まる。

「「錬」」

ヒナタとリーさんのオーラが膨れ上がる。

二人はなかなか錬度の分かる綺麗な錬だ。

「写輪眼っ」

カカシさんも左目の写輪眼を発動させる。

俺とソラは地面を蹴って後ろへと距離を取ると、一人突出したリーさんがオーラを右拳に集めて振りかぶって近づいてきた。

「はやいっ!」

忍者が使う瞬身の術なんて比じゃないくらいの速さでかけてくる。良く見れば幾らか脚力強化にまわしている。

速いはずだ。

「木ノ葉っダイナマイトっ!」

振り下ろされる右拳はどうにかかわしたが、穿った地面には大きなクレーターが出来上がり、粉塵で視界が遮られた。

しまった今の攻撃でソラと分断されてしまった。

リーさんと入れ替わるようにカカシさんが肉薄し、俺に肉弾戦で襲い掛かる。

気配を辿ればどうやらソラはヒナタと近接戦闘に入ったようだ。

こっちも写輪眼を発動し、相手の幻術、催眠に対抗すると共に動きを見切るり、カカシさんの攻撃で大きく一歩下がった所で印を組み、大きく息を吸い込んだ。

「「火遁・豪火球の術っ!」」

ボウッと吐き出された火球に、写輪眼で印をコピーしたのか同じく豪火球の術をぶつけるカカシさん。

「今っ!」

「ダイナミックエントリー」

カカシさんの言葉に反応するように頭上からリーさんが現れた。

「くっ…」

間一髪でリーさんの攻撃を避けるついでにリーさんに対して写輪眼で行使できるもっとも簡易的な幻術をかけようと試みるが、両目に集めたオーラにより弾かれてしまった。

「瞳術への対策も怠っていませんよっ!」

やるね。

確かに凝ならばそう易々と幻術には嵌らないか。なかなか厄介な物だよね、忍者と違って念能力者は。

大技を繰り出したリーさんの一撃からまたカカシさんが前に出てくる。

「万華鏡写輪眼は使わないのかな?」

「っ!?」

俺が万華鏡写輪眼を使えることを知っている?そういえば万華鏡を使ったことがあったような?

俺はカカシさんの攻撃をいなしながら答える。

「万華鏡は使うとシャレにならないですからね。人が対抗出来るような能力じゃないんですよね…」

まつろわぬ神やサーヴァントなら対抗出来なくはないだろうが、特殊な力を使うとは言え、人間の域を脱していない彼らには強力すぎる。

「へぇ…舐められたものだねっ」

おれの言葉を聞いたカカシさんはすぐにリーさんとスイッチして後ろに下がった。

「木ノ葉旋風っ!」

「っ!?威力が上がっているっ!?」

バシッバシッとリーさんの流で威力を上げた攻撃を流を使って受け止める。

「八門遁甲、それも傷門まで開いているんですが…やりますねっ!昔のアオさんとはやはり桁が違います」

なるほど。八門を開いて無理やりオーラの総量を増やしているのかっ!普通ならもっと体に負担が掛かるはずなのだが、筋繊維の負担は念で強化して抑えていると。でなければ筋肉だ断裂してもおかしくは無いほどの攻撃だ。

これは厄介だな。

もともと体術が達人クラスのリーさんが使うとその効果が半端ない。

と、リーさんだけに集中は出来ない。リーさんの後ろのカカシさんを覗き見れば高速で印を組み、チャクラを練りこんでいる。

「雷切っ!」

リーさんの猛攻で邪魔する事叶わず。バチバチと放電する雷を右手に纏わせて術が発動してしまった。

再びカカシさんはリーさんとスイッチ。

高速で近づくと右手に纏わせた雷切を一直線に突き立てる。

ちょっ!?

リーさんの猛攻で体勢を崩されていた今の俺では流石にこれをかわすのは難しいか?

今の俺はマダラの仮想敵と言う事だし、ここは…

「スサノオっ!」

俺を守るように大きな肋骨のような物が現れ、カカシさんの雷切をガードするが、突きの威力に皹が入ってしまった。

が、しかし。なんとか防御には成功した。

「これが噂に聞くスサノオか…サスケが使ったと聞いたが、やっぱり君も使えたのね」

更に現れたスサノオの右手でカカシさんを掴もうと振るうが…

「木ノ葉インパクトっ!」

再度攻撃を仕掛けてきたリーさんのコブシで弾かれてしまった。

再びカカシさんが雷切での突き攻撃。

今度もスサノオの肋骨を盾に攻撃を防ぎ、こちらの番と回し蹴りをお見舞いすると、自ら威力を殺すように後ろに飛んでいった。

それと同時に俺も二人から距離を取る。

「雷切ですら攻撃が通らないとか、硬すぎでしょっ!何か弱点は無いの?」

「それを聞きますか…」

本来なら自分の技の弱点なんてわざわざ教えはしないのだが…相手にスサノオを使えるかもしれない敵が居るのならしょうがないか…

「弱点としては、燃費が悪いから使うのが結構しんどい。俺達が以前居たときだと確か10分くらいしかチャクラがもたなかったし、反動で体が締め付けられるような痛さがある」

「10分…」

とは言え、今の俺達にはその二つの弱点は殆ど存在しない。カンピオーネに成って以降操れるオーラ量が桁違いに上がったおかげだ。

体もすこぶる頑丈になったしね。

「スサノオの体はチャクラで出来ているから、チャクラを吸い取るような攻撃にも弱いかもしれない」

とは言っても、そう言う攻撃を扱える人は稀だけれど…

「あと、凄く頑丈だけど、何をしても壊れないとかじゃないから、ものすごい威力のある攻撃なら意外と何とかなる」

どんなに硬かろうが、絶対ではないと言う事だ。それで翠蓮お姉さまには普通に破壊されたからね…

「なるほど」

と納得したリーは更に八門を開ける。

「傷門・杜門…開っ!行きますよっ!本来なら第七の門・驚門を開けなければ成らないほどの体術ですが、念での強化でボクは第五の門までで使うことができるようになったガイ先生にしても禁じ手の…」

リーさんがその両手を組んで動物の顔のように組んだ。

「ちょっと、リーっ!それはっ…!」

と、止めるカカシさんを余所にリーさんは技を放った。

昼虎(ひるどら)っっっ!」

放たれたそれは一瞬虎の頭を幻視させ、俺へと突き刺さる。

ヤバイッ…さすがにこの状態(肋骨と右手)では受け切れられないっ!

俺は直ぐに左手を現し、ヤタノカガミを前面に押し出して防御するが、リーさんの放ったソレは空圧を伴う一点集中の正拳突き。

性質変化への絶対防御であるヤタノカガミを弾き飛ばし、胸部へと食らいついたそれは、一気にその空圧を拡散させる。

暴風が過ぎ去っあと、俺のスサノオは胸部を破壊され、本体がむき出しの状態まで壊されてしまっていた。

「はぁ…はぁ…この技を持ってしても完全破壊とはいきませんか…」

「いや、良くやったぞ、リー。これでスサノオが絶対防御では無いという証明が出来たのだからな」

今にも崩れ落ちそうなくらい消耗しているリーさんとそれを労うカカシさん。

「アオっ!」
「アオくん」

余りの風圧に、ソラとヒナタも戦闘を中断して此方にやって来た。

「そっちは終わり?」

「うん。いくらスサノオと言えど、ヒナタの柔歩双獅拳での柔拳攻撃には相性が悪かった…」

「あはは…ソラちゃんも手加減してくれてたんだと思うけれどね…」

なるほど、的確にスサノオの弱いところにヒナタのオーラを挟み込まれ、内部破壊されたのね…流石は白眼の血継限界と柔拳の組み合わせは相性が良い。日向は木ノ葉にて最強も頷けるかもしれない。

それでも、念能力で自在にオーラを操れるヒナタだからスサノオを破壊するまでに至ったのだろうが、さすがに普通の日向一族じゃスサノオは抜けないと信じたいところだ。

じゃないとスサノオに新たな弱点が…

「さて、ここらで模擬戦も終わらせよう。俺はこの戦闘データを火影さまに提出しなければならないから、そろそろ失礼するよ」

そう言うとカカシさんは瞬身の術でドロンと姿を消した。

「それにしても、リーさん強くなったね。まさかスサノオが破壊されるとは思わなかったな」

スサノオも全力ではなかったにしろ、あそこまで破壊されるとはね。

「はい。お二人が居なくなってからもガイ先生の下で修行してましたから」

「ヒナタもね」

ソラがヒナタを褒めるとテレながらヒナタも答えた。

「うん…私も、お父様から稽古をつけてもらってたし…」

「思い出話に花を咲かせたい所だけど…時間も無いね。一度戻って手当てと回復をしてきてもらった方が良い」

医療忍者なんかがその辺はうまくやってくれるだろう。

「あ、うん…アオくん達は?」

「そんなに消耗してないから全然平気だ」

「うん。私達の事は気にしないで先ずは回復してきなさい」

「はい…」
「わかりました…」

アレだけやってと驚かれたけれど、食没により蓄えられているエネルギーはまだまだ余裕がある。いざとなれば兵糧丸でなんとかなるだろう。

しばらくすると、俺達の配属先が決定されたようだ。

俺とソラは別々の班に組み込めれる事になった。

これは俺達を完全には信用していないために戦力を分散しようと言う意図も含まれているのかもしれない。

まぁ、写輪眼を使える俺とソラを分散させる事は友好な手段では有るのは確かなのだけれど。

そして戦争が始める。

ソラと久遠に一緒に行ってもらい、俺はクゥと一緒に戦場を駆ける。

念話を繋げてみれば、どうやら一足先にソラの方が戦闘を開始したようである。




忍の一連隊が森の中を駆けている。

その中にはソラやカカシ、マイト・ガイなんかの姿が見えた。

「それじゃ、万華鏡写輪眼の威力を見せてもらいますかね」

とソラと並走するカカシが呟く。戦場はすぐそこだった。

「万華鏡だと!?そいつはうちは一族なのか?」

ガイが驚きの声で問い返した。

「本物のうちはの万華鏡…俺以上の瞳力の使い手なのは間違いないでしょ。敵は穢土転生で蘇ったゾンビたちだ。こいつらは封印するか身動きを止め続ける以外に止める術が無い」

穢土転生はその強力な効果で不死の体、無限のチャクラをもって召喚者に意のままに操られてしまう術なのだ。

この術の攻略法は分かっている限りはカカシの言った二つだけだ。

「不死の敵と言う事ですね…なら」

と言ったソラは右手にアンリミテッドディクショナリーを現してページをめくる。

「ロード、ハルペー」

ソラがそう呟くと右手に長柄の鎌が現れた。

この武器は以前ギルガメッシュの宝物庫から放たれた宝具の一つであり、効果は不死殺しである。

「口寄せ忍具か…」

そろそろ敵が見えてきた。

ソラの装備は両手に構えたハルペーと、バリアジャケットは籠手と具足の二つのみで、今は防御よりも速さを重視している。

「奇襲部隊がマズイ事になっている。加勢するぞっ。ガイとソラは俺に続いてくれ」

カカシの言葉に二人は頷くと、後ろに着いてきている部隊員を一時引き離す勢いで加速し、一気に目標へと駆ける。

交戦に備え発動された写輪眼。しかしソラの右目に浮かぶその模様はいつものそれとは違い、赤と黒の色彩が逆転していた。

覚えているだろうか。以前アオがカカシに使った万華鏡写輪眼を。

裏・万華鏡写輪眼。

その名を『桜守姫(おうすき)』と言う。

これは生まれながらに三つの写輪眼を持っていたアオとソラが開眼した三つ目の能力である。

このNARUTOの世界に転生するにあたり再構築されたときに消えずに溶け込んだ移植された写輪眼が得た能力で、その能力は極限まで鋭敏化された観察眼と洞察眼。

その眼はこの世の真理すら見抜くといわれている。

どの写輪眼をも上回る観察眼、洞察眼を得られるが、他の万華鏡写輪眼のように戦闘に対して大きな効力を持つ能力では無いし、これの発動中はスサノオと右目に宿った万華鏡写輪眼の能力を使えないと言うデメリットは存在するが、接近戦等には大いに有効であろう。

視界には突出した三人の敵の穢土転生が見え、右二人はガイとカカシに任せ、左二人へと向かい脚力を強化して突進。その柄に対して鎌の小さい穂先で先ず爆遁使いにガリと呼ばれた忍びの首に引っ掛け力任せに引っ張り、久遠の落雷の援護で感電して身動きの取れなくなっていた隣の灼遁使いのパクラを巻き込んだ後に念でハルペーの切れ味を強化し二人の首を切り落とした。

「今のうちのそっちの二人を封印しろっ!」

再不斬の攻撃を凌いでいたカカシが遅れてきた封印班に叫ぶ。

が、しかし。首を絶たれた二人は完全に絶命し穢土転生に使われた生贄の素体へと戻ってしまっている。

それを見てカカシも、再不斬も驚愕の表情だ。

それはそうだろう。

不死と思われていた穢土転生の体がただの一撃で再び死に戻ってしまったのだから。

再不斬とガイと鍔迫り合いをしていた白は一端二人から距離を取ると、何かに操られるように印を組んでいる。

しかし、その隙を見逃すソラではない。

再び地面を蹴ると二人に向かって駆ける。

ハルペーを振りかぶり、今まさに再不斬に迫ろうといった時、それを遮るように割って入ったのは白だ。

「ふっ!」

術での迎撃は間に合わないとふんだのか、自身の体をなげうったものだったが、ソラは構わずとハルペーをなぎ払い、白の胴体を真っ二つに切裂く。

白は死体に戻ったが、再不斬の口寄せまでは止める事かなわず、あらたに六体もの穢土転生の口寄せを許してしまった。

しかし、口寄せの隙と、召喚直後の隙をを突き、再不斬と新たな口寄せ一体の首を刎ねるが…

「くっ…」

残りの五体に総攻撃を受け、たまらずソラも後退する。

「あれは霧隠れ忍刀七人衆の前任者達だっ!」

と誰かが叫ぶ。

隙を見逃すなっ!が基本のアオと同様にソラには動揺は無い。

後ろで動揺におののいている忍達を余所に一人素早く印を組んでいる。

「火遁・豪火滅却っ」
「「水遁・水陣壁」」

幾つ物火の玉が連なり大きな火球を形成し襲い掛かるが、相手もさるもの。直ぐに相殺の忍術をぶつけてきた。

その隙に敵は口寄せの巻物を開き、忍具を召喚する。相性の問題で押されたソラは技を中断し、距離を取った。

(らい)っ」

久遠が極大の落雷を落とし、援護が決まったと思いきや、その雷は相手の持つ二本の刀に吸い寄せられるように曲がり落ちた。

「あれは雷刀”牙”。その武器事態が雷を帯びている。あの刀の前では生半可な雷遁は通用しない」

と、忍の誰かが解説する。

「なるほど…俺の雷切のようなものなのね…」

そうカカシがこぼす。

「霧隠れの術」

スゥっと白い霧が立ち込め、辺りを覆い始める…前にソラも印を組んでいた。

「風遁・大突破っ!」

吹き荒れる暴風は霧が立ち込めるのを許さない。写輪眼で印を先読みし、対抗する術を行使したのだ。

どうやら、防御には成功したようで、忍刀七人衆には傷一つ付いていないが、それでも視界が奪われる窮地には陥られずに済んだ。

だが、それでも自身の愛刀の武器を持ってからの忍刀七人衆は鬼に金棒と言う感じで暴れまわる。周りに引き連れてきた忍達なんて物の数では無いと蹴散らされ、命を散らしていく。

「誰かっ!一瞬でもいいから動きを止めてっ!」

ソラが叫ぶ。

「っ!分かりました。私にお任せくださいっ」

と言った誰かはホルダーからクナイと取り出し、雷刀”牙”を持つ忍に投げつけるが余裕でかわされてしまう。

「影真似手裏剣の術っ」

しかし、地面に突き刺さったクナイは相手を一瞬その地面に縫い止め動きを止める。

どうやらあのクナイは特殊な物のようで、自身のチャクラ性質を流し込め、同様の効果を生み出せるようだった。

「ナイス援護ですっ!」

ソラはそう言うとすぐさま相手の首を刎ね、地面に刺さったクナイを回収し、援護をしてくれた忍に投げ返す。

「次、行きましょう」

「はいっ!とは言え、この技では一、二秒止めるのが精一杯ですが…」

「十分よっ」

穢土転生体である彼らは本来殺す事は出来ない。しかし、ソラのもつハルペーは不死殺しである。屈折延命の効果で斬りつけられた傷は決して復元されない。つまり落とされた首は再生されないので不死である彼らも死して黄泉へと戻るのである。

「雷(らいっ!)」

雷刀”牙”の使い手を葬り去り、厄介な牙はソラがすぐさま回収。妨げる物の無くなった久遠は落雷の術で残りの忍刀七人衆を分断する。

「今っ!」

「はいっ!」

後は一瞬でも影真似手裏剣で動きが止められれば相手を倒す事は容易い。

ソラは横一文字にハルペーを振るい、鈍刀”兜割”の使い手を葬り去る。

捕縛と一撃必殺のコンボはこの戦場において見事な成果を上げていた。…ように見えた。

ソラが兜割を持ち上げて後ろの忍へと放り投げて隔離してもらった頃、再び現れる穢土転生の口寄せの棺。

中からは先ほどソラが倒したはずのガリやパクラ、他の忍刀七人衆の二人が現れる。

「っ!?…なるほど。やっぱり殺すだけじゃ駄目って事ね…」

彼らは再び穢土転生で冥府から呼ばれてしまったのだろう。魂が浄土にある以上再度呼ばれてしまうと言う事か。

「出来れば封印なんて手段は取りたくなかったけれど…」

なんて考えているうちにも再び呼ばれたガリとパクラが多くの忍を殺している。その光景をみてソラも覚悟を決めた。

「久遠、手伝って」

「…わかった」

ソラの期待に応えようと力を込めると、久遠の体を雷が覆い、その爪、牙に形態変化させた雷が纏わり付く。

「くぉーーーんっ!」

咆哮と共に獣にのみ許された四肢をふんだんに使って地面を蹴り、相手の目にもとまらぬ速度で地面を駆け、戦場をかく乱する。

まず、再び現れたガリを閃光をも思わせる速度で近づくと鋭い爪で切裂き、打ち上げるとパクラに近づきそのアギトで噛み砕いた後にガリに向かって放り投げた。

二人は空中で形成を整える事には成功するが、久遠が印を組む腕を重点的に破壊していたので術の発動までは出来ない。そこを真下から行き成り現れた巨大な剣で二人まとめて突き刺した。

そう、ソラがスサノオを陰で気配を絶って地面に潜らせていたのだ。あとは隙をみて地面から穿ち急襲したのだ。

突き刺された二人はスサノオの封印剣に吸収され、消えていった。

「よし、まず二人…」

ソラの戦いはまだ続く。
 
 

 
後書き
この作品のNARUTO編を読み返していたら、裏・万華鏡写輪眼なるものをアオが使っていました…
おそらく初期はあの時点でもっとチートっぽい能力設定だったので、一度書いたあと大幅にパワーダウンさせて修正していたのですが…修正しきれず残っていたらしいです。しかもそのまま掲載してしまっていました…
と言う事なので、その設定をもう一度再利用。能力を変更して今の形になりました。
彼らのチート具合は今更なので、いいかな…と。
今回から戦争編ですね。とは言え、この作品は話を途中でぶった切って完結させるので、そこまで長くならないと思いますが、楽しんでいただければ幸いです。 
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