| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百六十三話 スカウト

 
前書き
お待たせしました。

今回、テレーゼが下品です。 

 
帝国暦485年5月29日

■銀河帝国帝都オーディン 捕虜収容施設

ヴァンフリート星域会戦で捕虜になったローゼンリッターの面々は、裏切り者として処刑させる事も酷い尋問やリンチを受けることなく、のんべんだらりと虜囚生活を送っていた。

辛い尋問やリンチを受けるのであれば、嘗て帝国から受けた仕打ちを思い出し不屈の闘志で耐えきる事も出来たであろうが、この様な状態におかれてしまい、この時点では流石のローゼンリッターも捕虜に関して聞いていた事と実際の差の余りの違いに不安と心配で心細くなり、すっかり反抗的な態度が見えなくなっていた。

此処でも、看守や世話役は老人ばかりで、お袋の味が出るためなのか、ノスタルジックな雰囲気に包まれていた事も原因の一つと言えた。

二週間が経ったそんな時期、ローゼンリッター副連隊長ワルター・フォン・シェーンコップとカスパー・リンツは面会者が来たとの事で呼び出され、不思議がりながら談話室へと向かった。

「シェーンコップ中佐とリンツ大尉をお連れしました」
老看守がそう告げると、扉が開き中へと案内される。其処には同盟軍から忌み嫌われるミンチメーカーこと帝国軍装甲擲弾兵総監オフレッサー上級大将とヴァンフリートで自分達を捕虜にしたケスラー中将が待っていた。

「おう来たか」
二人を見たオフレッサーがニヤリとしながら野太い声をかけてくる。

「お二人とも調子は如何ですか?」
ケスラーはオフレッサーと違い爽やかに声をかけてくる。

「来たというか、来させられたという感じか、調子は良いが、お二人を倒し此処から逃げ出す程じゃ無いな」
ニヤリと不敵に笑いながらシェーンコップは答える。

「副連隊長」
リンツがシェーンコップの言いように驚きながら諫言しようとするが、其れはオフレッサーの笑い声で掻き消された。

「ガハハハハ、流石はローゼンリッターにその人有りと言われたシェーンコップだ、この状態でも毒付くとはな」

オフレッサーの受け答えにシェーンコップもニヤリとしながら応じる。
「帝国印の挽肉製造器(ミンチメーカー)にお会いできるとは恐悦ですな」
リンツは驚き目を見開くが、オフレッサーは怒る事もせずに頬の傷を触りながら“フン”と言った。

「両名とも、その辺で、止めておくが良かろう」
何とも言えない空気の中で扉が開き、鈴の音のような華麗な声が響き渡る。

シェーンコップが扉を見ると、身長160cm程で黒っぽい栗色髪で目の色はブルーの十代中盤の少女がにこやかに笑みを浮かべながら開け放った入り口に立っていた。

その少女をオフレッサーとケスラーは視線を動かし軽く頭を垂れた。しかし神経はシェーンコップ達の動向に向いているのが判った。

「オフレッサー、ケスラー御苦労」
「「御意」」

その少女は、シェーンコップとリンツを見て、スカートの裾をチョコンと摘んで貴婦人らしく挨拶を行った。

「ワルター・フォン・シェーンコップ、カスパー・リンツ、始めて会うが、妾はテレーゼ・フォン・ゴールデンバウム、銀河帝国皇帝フリードリヒ四世の娘を一応しているつもりよの」

テレーゼの言いようにシェーンコップでさえ驚く。ましてやリンツは驚愕しているのか目を見開いて何も言えない状態で有る。

「ガハハハ、流石は殿下ですな」
テレーゼの挨拶がツボに入ったのかオフレッサーが笑い始める。

「殿下、お戯れが過ぎますぞ」
ケスラーが右手で額を押さえながら渋い顔で諫言する。

そんな事は、何処吹く風とテレーゼはケスラーに話す。
「叛乱軍にこの人有りと言われた、ひねくれ者で有名なワルター・フォン・シェーンコップに会うのであれば、このぐらいの挨拶は必要であろう」

皇女らしからぬ余りの言いようにシェーンコップもリンツも影武者かと疑う。
「同盟軍ローゼンリッター副連隊長ワルター・フォン・シェーンコップ中佐」
シェーンコップは、取りあえず様子を見ようと官姓名だけ答える。

「同盟軍、ローゼンリッター連隊付きカスパー・リンツ大尉であります」
シェーンコップに比べリンツは当たり障りの無いように答える。

シェーンコップの目の奥にある観察しようとする光を感じながら、テレーゼはニヤッとしながら話しかける。
「判るぞシェーンコップ、妾が影武者ではないかと考えているので有ろう。しかしの残念ながら妾のような危ない人物の影武者なんぞになる奇特な御仁は生憎と帝国中探しても一人として居ないのでな」

自傷しながら毒を吐くテレーゼにシェーンコップも鼻白む。
「殿下」
ケスラーが再度苦言を述べるが其れを右手で止める。

「事実を言ったまでよ。銀河帝国皇女などと言う仕事は命が幾つあっても足らん物でな」
その言いように、シェーンコップは益々ニヤリとする。
「で、その皇女殿下が、小官の様なひねくれ者にいったい何の御用ですかな?」

シェーンコップの言いようにテレーゼニヤリとした後、腰に手を置いて踏ん反り返るような姿をし、恋姫○双の華淋の様な命令口調で話し始めた。
「シェーンコップ、そなた私の物に成りなさい」
いきなりの命令口調にシェーンコップは些か面食らいながらも、直ぐさま応える。
「だが断る!」

二人の受け答えを聞いて、ケスラーとリンツはギョッとした顔をするが、オフレッサーはニヤリとしているだけである。

シェーンコップの返答を聞いてもテレーゼは怒りもせずに急に笑い出した。

「フフフフアッハハハ、そう言うと思っていたわ、やるわね。ひねくれ者のシェーンコップが頭ごなしに命令されて言う事を聞くわけが無いと判っていたから、態と言ってみたけど、見事に想像通りの返答だったわ」

テレーゼの笑いに、シェーンコップも苦笑いをはじめる。
「成るほど、やけに立体TVでアニメをやると思ったら、此を見せる為だった訳ですな」

なぜか、捕虜収容船や収容所において散々立体TVでアニメが流されていたのは、テレーゼ監修の三国志アニメ恋○無双の華淋のセリフを言うためだったのである。シェーンコップも偶に暇つぶしで見ていたので判ったので、そのアニメのセリフで返したのである。

「そう言う事、どうだったかしら、私の迷演技は」
すっかりテレーゼのペースに乗せられたシェーンコップ達。
「フハハハ、見事な物ですな。助演女優賞ぐらいは取れますな」

「あら、主演じゃないのね」
「溜が大きすぎますからな」
「なら良いわ」

「それが殿下の地ですかな?」
「フフフ、そうよ此が私の地なのよ。全く品行方正な皇女を演ずるのは肩がこるわ」
テレーゼの言動にリンツは完全に唖然とし、ケスラーは益々頭を抱え、オフレッサーは“”ガハハハ”と笑っていた。

「其れはお気の毒様ですな」
「まあ、仕方が無い事なのよ、銀河帝国皇女に生まれたからには二百五十億の臣民を護る義務が有るのだから、臣民の生活なんぞ関係無く贅沢しまくる連中なんぞクソ喰らえよ」

余りの柄の悪さにさしものシェーンコップも驚愕する。
「殿下は、小官等に愚痴を言いに来たのですかな?」
「ああ、まあ愚痴と言えば愚痴ね。ねえケスラー、オフレッサー、今の話が外に漏れたら、私は明日にもヴァルハラ行きよね」

テレーゼからいきなり話を振られたケスラーがギョッとしながら否定する。
「殿下を危険な目にお合わせするわけございません」
「殿下、いざとなれば、小官と装甲擲弾兵全軍が御護り致しますぞ」
オフレッサーは真面目な顔で応対する。

「二人ともありがとう、シェーンコップ私には共に進む事の出来る沢山の仲間がいるのよ。貴方達にも仲間はいるけど、向こうに心を落ち着かせられる仲間がいるのかしら?」

テレーゼの問いかけに、シェーンコップは答えられなかった。何故なら同盟では帝国からの亡命者を蔑み、信用しない風潮が強いからである。事実シェーンコップ自身も幼少時、祖父母に連れられ同盟へ亡命したが、その際に汚い物でも見るような入国管理官の目を今でも在り在りと覚えており、その後も何かにつけて差別されてきた記憶があるのであるから。

シェーンコップが葛藤している姿を見て、テレーゼはリンツに話しかけた。
「カスパー・リンツ、貴方は絵画や歌などの芸術が得意なそうね」
リンツは自分の事を知っているテレーゼに驚く。

「はあ」
驚きで生返事になる。
「私の知り合いで、芸術に詳しい姐さんがいるんだけど、リンツならきっと気に入られるわね」
テレーゼは、ニヤニヤとしながら、ヴェストパーレ男爵夫人の話をする。
それを聞く、リンツ。


その後、テレーゼは、話題を変えて、シェーンコップに話しかける。

「シェーンコップ、今度は二人っきりで話したいわね」
テレーゼがニヤリとしながら話す。

「殿下一人では私が殿下を人質にするやも知れませんぞ」
シェーンコップがそう言いながら不敵な笑みを浮かべる。

「あら、ワルター・フォン・シェーンコップと言う男は、か弱き美少女の頸をねじ切る程のろくでなしなのかしら?」
其れには、シェーンコップも苦笑いする。
「参りましたな」

シェーンコップの受け答えにテレーゼはニヤニヤしながら話す。
「シェーンコップ、貴方に関しては、二人きりでも命の心配は無いと保証できるわ、尤も処女膜を取られる可能性は有るけどね。それで“死ぬ死ぬ!”って嬌声上げる可能性は否定できないのが怖いのだけどね」


この言葉に、完全に毒を抜かれたシェーンコップ達であった。
結局この日はそう言った雑談で終わった。

テレーゼが帰り、ケスラー四人は“ハーッ”と息を吐いていた。
「シェーンコップ中佐、殿下の事は他言無用に願いたい」
ケスラーの話しに、シェーンコップも答える。

「銀河帝国皇女殿下が、あんな性格だなんて、誰も信じちゃくれないし、俺達が殿下に会った事さえ信じて貰えんだろうな」

「ガハハハ、シェーンコップよ、殿下は素直な方だ。それに我等のような者にも分け隔て無く対して下さる。卿等の境遇を心より考えて下さったのは嘘偽りがないぞ」

シェーンコップとリンツには野生の感覚のオフレッサーが言う言葉がやに耳に残った。 
 

 
後書き
今回は未だ、スカウトできません。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧