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とある星の力を使いし者

作者:wawa
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第116話

あの後、天草式に用意してもらった部屋に戻ろうとしていた麻生だったが、後ろから凄い勢いで走ってくる上条が来て、足を止める。
上条は麻生の目の前までやってくると、すぐに土下座をする。

「お願いします!
 どうか、私達を部屋に泊めてください!」

第一声がそれだった。
ちなみに、上条が土下座している最中は後ろでインデックスはその光景をただじっと見つめている。
首を傾げている所を見ると、上条がしている行為の意味が分かっていないようだ。
普段なら、即答して断るのだが、上条だけでなくインデックスもいるのですぐに断る事ができなかった。
深いため息の後、麻生は二人を部屋に泊める事を了承する。
それを聞いた上条は喜び、何が何だか分からないインデックスもとりあえず、麻生の部屋に泊まる事ができるというのが分かり、喜ぶ。

「そう言えば、とうま。
 さっきのとうまがしていたポーズには、どんな意味があるの?」

「聞くな、インデックス。
 あれの意味をお前は知る必要はないんだ。」

終始、首を傾げるインデックスなのだった。
少し歩いて、麻生の止まる部屋に到着する。
三人とも、疲れ切っているのかすぐに寝る事になった。
ベットは一つしかないので、インデックスがベットを使い、麻生がソファーで寝る事になり、上条は床で寝る事になった。
麻生は文句の一つ出るのかと思ったが、上条はあっさりと了承する。
そして、長い一日が終わるのであった。








場所は変わり、マチュ・ピチュの近くにあるコルディジラ・デ・ヴィルカノータと呼ばれる地下空洞。
此処は、もう一つのマチュ・ピチュと言われている巨大な遺跡が存在する。
峡谷の岩場に口を開けている石段を地下深く下ったところに存在し、数千人は収容可能な神殿がある。
この神殿にはインカ帝国で崇拝されていた神よりも遥かに旧い超自然的な存在を祀っていた。
そんな数千人は収容できる神殿の中を一人の女性が歩いていた。
足取りは早歩きのように早い。
焦っている足取りに見えるが、実際は憤慨しているのだ。
そのせいなのか、足音も荒々しく聞こえる。
彼女、フレアはアドリア海の様子を使い魔を通じて、観察していた。

「えらく機嫌悪いじゃねぇか。」

ふと、横から話しかけられる。
足を止め、声のする方に視線を送ると、そこには柱に背中を預けながら一人の男が立っていた。
男、ディーズはニヤニヤと笑みを浮かべながら、フレアに近づいてくる。

「機嫌悪い理由は言わなくていいぜ。
 どうせ、クラーケンが星の守護者にやられたんだろう?
 だから、俺が向かえば良かったんだ。
 お前、アレ結構気に入っていたから、相当悔しいんだろ?」

「・・・・・・ええ、そうです。
 私の大事なペットが一匹むざむざ殺させてしまった事に腹を立てているのです。
 もちろん、自分自身に。」

それだけ言って、先ほど変わらない速度で走り出す。
違いがあると言えば、足音が少し大きくなっていると言う所だろう。
それを見たディーズは、未だにニヤニヤしながらその後について行く。
柱が立ち並ぶ、広場を抜けた先にはさらに広い広場が見えてきた。
真ん中にはキャンプファイヤーのような大きな火が上がっており、それを中心に石段が上へと広がっている。
数千人は収容できる広場の中で、確認できる影は三つ。
一人は両手を組んで、壁に背中を預けている。
一人は石段の真ん中辺りで、座っている。
一人は一番低い石段に、腰を下ろしていた。
フレアとディーズがその広場に到着すると、それに気がついた一番下にいる少女、アンナは勢いよく石段を登ると、フレアに抱き着く。

「フレア~~、どこに行っていたの?」

「自室で少し用事があったので、それを済ませに行っていたのです。」

「む、何か機嫌悪い。」

フレア自身、機嫌が悪いように見せないでいたのだが、アンナは一発で看破する。
すると、ディーズが声をあげて笑いだす。
どうやら、さっきまで笑いを堪えていたみたいだが、耐え切れなくなったらしい。

「ディーズ、此処は神聖な場所。
 その馬鹿笑いを止めなさい。」

もう隠す必要はないのか、不機嫌な雰囲気を出しながらディーズを注意する。
二刀の刀を持った男、アンファルは黙って眼を閉じている。
真ん中辺りに座っている男、サイキはじっと中心にある炎を見続けている。
その時だった。
中心の炎が大きく燃え上がると、炎の前に赤いローブも纏った人が立っていた。
それを見た瞬間、フレアは姿勢を正し、一礼をする。
ディーズも笑い声を止め、その人に視線を送る。
アンナはフレアに抱き着いたままだ。
その人は頭に被さっているローブを降ろす。
髪は黒髪だが、一部が白髪になっている。
顔には少し皴があり、これを見た限り歳は六〇歳以降である事が分かる。
集まっている五人の顔をそれぞれ視線を送る。

「報告を聞こう。」

その一言を聞いた、フレアは淡々と報告を開始する。

「私達、四名はこの星の地脈、霊脈が強い場所を調べました。
 特に教皇様が指示した例の場所、三咲市、冬木市の霊脈に私達の魔力を混入させましたが、星に動きはありませんでした。」

「ふむ、そうか。
 ご苦労であった。」

「教皇様、これは星の機能がほとんど停止しているのではないでしょうか?
 奴らは私達の存在をしれば、最大勢力で迎え撃つはずです。
 それなのに、星の核ともいえる霊脈に私達の魔力を混入させたのに、全く動きがありませんでした。
 これを機に仕掛けるべきではないでしょうか?」

フレアの言葉を聞いた教皇は顎に指を当てて、考える。
少しした後、こう答えた。

「いや、まだ様子を見よう。
 奴らはとてもずる賢い、今でも息を潜めて私達が行動するのを待っている可能性がある。
 星の守護者も存在する以上、まだ意思は残っていると考えても良いだろう。
 少しずつ、調査の幅を増やしていく。
 もし、星が私達の脅威の存在ではないと確認できた場合、この星の侵略を開始する。」

その言葉に誰もが一瞬だけ反応する。
それを見た、バルズ=ロメルトはうっすらと笑みを浮かべる。

「もう一つの報告を聞こう。」

それまで、ずっと眼を閉じていたアンファルは眼を開けて、報告する。

「主が調べろと言った二人の裏切り者(・・・・・・・)の捜査について報告する。
 まず、フレアの報告にもあったあの猫について。
 あれは学園都市で出会って以来、一向に足取りがつかめないでいる。
 もう一人の裏切者に関しても同じだ。」

「そうか、あの裏切り者達はまだ見つからないか。」

「猫に関しては星側に寝返ったと見て、間違いないだろう。
 あの時、裏切り者である事を知っていたら首を落していたのだがな。」

「仕方あるまい。
 もう一人の方とは違い、猫の方はお前達がまだ教団に入ってくる前に寝返ったのだからな。
 私の方こそ、報告をしなかった事がいけなかった。
 引き続き、捜査の方を頼む。」

「御意。」

「そう言えば、教皇様。
 以前、入団してきたあの男。
 火野神作という、男でしたか?
 あの者はどうなっているのですか?」

ふと、思い出したのか。
フレアがそう聞くと、バルズはニヤリ、と笑みを浮かべた。

「あの者か。
 奴はいい素質を持っている。
 直に良い魔術師になるだろう。」

それを聞いたフレアは満足したのか、もう一度一礼する。
他に質問がない事を確認したバルスは告げる。

「さて、各々の仕事に戻るとしようか。
 我らの勝利の為に。」









キオッジアのとある屋根。
その屋根に一人の男が立っている。
その男は麻生達が寝ている部屋を見つめていた。

「あいつが星の守護者。」

そう呟くと、男は視線を夜空に向ける。
夜空には星と満月が輝いていた。
それを見て、男はもう一度、麻生達がいる部屋に視線を向ける。

「どれほどの者か、見せてもらおうじゃねぇか。」

その言葉を最後に、男は闇の中に消えて行った。 
 

 
後書き
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