| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

炎の王様と女王様

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
次ページ > 目次
 

第三章

 普段よりもその炎の力をずっと弱くしていました、すると燃える様な赤い髪の毛も今は落ち着いていて。
 とても綺麗ですが気が強く厳しそうなお顔も穏やかに見えます。そのお顔を見て王様は笑顔でこう言いました。
「おお今の后は」
「王様もですよ」
 お妃様も言ってきます、それも笑顔で。
「とても優しい感じですよ」
「そうなのか」
「普段よりお力を弱めているせいか」
「后もだ」
 王様も言うのです。
「久しぶりに会えたしな」
「しかもですね」
「普段より優しく見える、そしてそれはわしもか」
「そうです」
「いいことだ」
 王様はここまで聞いて実際に笑顔で微笑みました。
「とてもな。ではな」
「それではですね」
「これからはいつも一緒にいられるな」
「そうですね、お互いの力を弱めていれば」
「こうすればよかったのか」
 王様は笑顔で言うのでした。
「これでな」
「そうですね、では」
「うむ、長老にな」
 その彼にだというのです。こうしてすぐに二人のところに長老が呼ばれました。
 王様とお妃様は自分達の前に控える長老にこう言いました。
「約束だ、何でも欲しいものを言うがいい」
「褒美は何ですか?」
「それはもう頂きました」 
 長老は穏やかな笑顔で二人に答えます。
「既に」
「何っ、もう貰っているのか」
「そうなのですか?」
「そうです、笑顔を」
 貰ったのはそれだというのです。
「お二人が一緒にいられる様になった笑顔です」
「何と、それがか」
「私達が貴方にあげた褒美ですか」
「そうです。お二人は一緒にいられる様になってとても幸せですね」
「うむ、その通りだ」
「これ以上幸せなことはありません」
 その通りだとです、二人も長老に答えます。
「こんなに嬉しいことはない」
「ずっと会いたくとも会えず悲しかったですから」
 だからこそだというのです、一緒にいられて幸せだというのです。
「こうして一緒にいられる様になってな」
「ずっとこうしていたいです」
「そう思われるからです」
 だからだというのです。
「お二人は笑顔になられていますね」
「そしてその笑顔がか」
「貴方への褒美になっているのですか」
「私はもう長く生きました、望みはもうありません」
 既にです、それだけ長く生きているからこそ。
「笑顔が見たいのです」
「そうか、ではな」
「私達はこれからもですね」
「笑顔でいて欲しいです」
 長老も笑顔で二人に述べます。
「そうしてくれますか」
「わかった、それではな」
「そうさせてもらいます」
 長老は二人にこう笑顔で述べてです、そのうえで。
 二人の前から去り自分の家に帰っていきます、そうして。
 王様とお妃様はお互いの力を弱めながらずっと一緒にいるのでした。二人は一緒にいていつも笑顔でいました、長老が見て笑顔になったそれに。


炎の王様と女王様   完


                              2013・7・21 
次ページ > 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧