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銀河転生伝説 ~新たなる星々~

作者:使徒
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第18話 第三次ダレダン星域会戦


宇宙暦808年/帝国暦499年 8月13日。
ロアキア・ティオジア連合軍がレンヴァレル星域にて散々に叩きのめされている頃、エルデタミア共和国ダレダン星域でも戦端が開かれていた。

エルデタミアの防衛に赴いていたルフェール共和国第七艦隊と侵攻してきた銀河帝国ドロッセルマイヤー艦隊の会戦である。

ドロッセルマイヤー上級大将率いる15000隻の艦隊に対し、エリザ・ウィッカム中将率いる第七艦隊の兵力は12000隻。

数において劣る第七艦隊は当初から劣勢に立たされていたが、それでもなんとか持ち堪えていた。

「右翼が敵に侵食されつつあります、至急援軍を!」

「……いや、敵の陣形からして狙いは中央突破だろう。本隊からこれ以上艦を減らすわけにはいかない。予備兵力2000の内1000を割いて補強するのだ」

ウィッカム中将の予想通り、ドロッセツマイヤーが狙っていたのはまさしく中央突破であった。
第七艦隊右翼への浸食は中央を薄くする布石だったのだが、それも予備兵力の投入で失敗に終わった。

「ちっ、そう上手くはいかないか……いったん左翼を後退させろ。無駄に損害を出す必要は無い」

目論見が失敗したと見るや、ドロッセルマイヤーは即座に兵を引く。

「しかし敵も粘りますな」

「ああ、良い指揮官だ。ルフェールの艦隊は本物の戦闘経験が少ないと聞いていたが……そうは見えんな」

「確かに……ですが、そこら辺が限界のようです。如何に善戦しようと戦局を覆すまでは至っておりません。ですので、このまま敵に消耗を強いていくのがよろしいかと」

「……そうだな。右翼と左翼は陣形を左右に展開、密着して敵両翼の戦力を削り取れ!」

この戦法により第七艦隊の両翼はじわりじわりと消耗していく。
元々兵力に劣る第七艦隊にとって消耗戦は望むものではなかった。

「くっ、一番嫌な戦法でこられたか」

「どうしますか?」

「今は耐えるしかない。敵としてもいつまでも消耗戦に興じているわけにもいかないだろう。どこかで何らかのアクションを起こすはずだ」

・・・・・

消耗戦に移行してから3時間が経過した。

「よし、前進を開始せよ」

「前進ですか?」

「ここらで一つ仕掛けてみようと思う。もし敵が乗ってくるのなら……」

ドロッセルマイヤーの命に従い、中央が前進を始める。
これに、第七艦隊は慌てふためいた。

「敵中央が前進してきます!」

「迎撃! 迎撃!」

「閣下、敵の意図は先程断念した中央突破にあると考えられます。このまま突破されれば分断された我が軍は各個に撃破されかねません」

「……そうか、残りの予備兵力1000隻を本隊に合流させろ。ここで敵を食い止めるのだ!」

参謀の進言を聞き入れたウィッカムは、直ちに予備兵力の投入を決定した。
しかし、それこそがドロッセルマイヤーの狙いであった。

「敵は残りの予備兵力全てを中央に注ぎ込んだか……後方で待機しているザムレス、シュラートの分艦隊に命令。敵両翼を外側から叩け……とな」

「はっ!」

ドロッセルマイヤーの命により、これまで予備兵力として後方に待機していた部隊が両翼のさらに外側から襲い掛かる。
この一撃に第七艦隊の両翼は耐えられない。

「右翼、左翼共に被害甚大!」

「既に戦線崩壊が始まっています!」

「……参謀長、両翼を中央まで戻せるか?」

「損害を無視すれば出来なくはありませんが……」

「かまわん、どのみちこのままでは両翼が崩壊するだけだ! 全軍に命令、中央に集結して突形陣をとれ」

「閣下!」

「上手くいけば最小の損害で切り抜けられる。もっとも、勝敗は既に決したがな……それに、私の進退も……」

第七艦隊の各部隊は後退しつつも次第に中央に集結し、陣形を整える。
ドロッセルマイヤーはそれを目聡く見つけた。

「ん! 待て、全艦進撃中止!」

「どうされました?」

「見ろ、敵の陣形を。いつの間にか突形陣をとりつつある。中央部に突撃されたら現状では防ぎきれないだろう」

「大きな損害を出しながらも両翼を引っ込めたのはこのためでしたか……」

「敵の意図が分かった以上、それに乗ることはない。中央を固めてから改めて仕掛ければ良いだけのことだ」

ドロッセルマイヤーは敵の突撃に備えて中央を固めさせる。
が、ドロッセルマイヤー艦隊の進撃が停止した隙に、第七艦隊はこれ幸いと撤退していった。

「…………やられたな。損害が致命的にならない内に撤退する……、良い判断だ」

「追撃はどうされますか?」

「我々の任務はエルダテミアの制圧。深追いは無用だ」


こうして、第三次ダレダン星域の会戦は銀河帝国の勝利に終わった。

勝利したドロッセルマイヤー艦隊はダレダン、テルジント、アーミア、エルテピアとエルデタミア共和国所属の星系を順次制圧していった。
これにより、先のロムウェ占領と合わせて銀河帝国は遂に旧ロアキア領のすべてをその手中に収めることに成功したのであった。





==今日のアドルフ==

「く、くくっ、くくく……遂に、遂に『回想シーン強制流し装置』の復元に成功したぞ!」

「おめでとう御座います陛下。しかし、あのメイド……いや冥土に見つかれば今度()ただでは済みませんぞ」

「もちろん、それに関しては抜かりない。この第二次製造計画は水面下の更に下の下、マリアナ海溝の奥深くで行ったからな。今度こそ大丈夫だ」

そう言って、アドルフは不敵な笑みを浮かべる。
これは……アドルフ初勝利…か?

― つづく ―
 
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