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弓兵さんの狩人生活

作者:ねむたい
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1日目

日記なぞ久々に書くものだからちゃんとした書き方は忘れたが、書き始めはとりあえず経過日数を記載していけば良かっただろうか?
それとも今日の日付を書いた方が良いのだろうか―――といっても現在の正確な日付は私自信知らないが・・・。
まあいい、とりあえず今の自分が置かれている状況を整理したかっただけなので、メモだけでも良かったのだが、日記という形で情報を残しておいた方が追々何か役に立ちそうなので、とりあえず日記を付けてみる事にした。

日記を書こうと思った経緯はこれくらいにして次は分かっている情報を整理していこう。

まず、私自身について分かっている事とこれまでの経緯を箇条書き程度に少々。

真名はエミヤシロウ。
冬木の第五次聖杯戦争に弓兵のサーヴァントとして呼ばれた。
私自信に聖杯に願う大層な望みは微塵も無かった―――というより冬木の聖杯が“この世全ての悪”に汚染されているのを記録していたこともあるので願っても仕方がなかったというのもある。

マスターの名前は遠坂凛。
冬木の聖杯の御三家の一つトオサカのご令嬢だ。
人としてもマスターとしても申し分ないほどの実力を持っているがいかんせん優しすぎる気がある。
そのためか、偶然参加した小僧に対し聖杯戦争について色々な情報を与え、なおかつ素人相手に同盟を組もうともちかける始末。
確かに最優のサーヴァントであるセイバーは使えるかもしれないが、中途半端な解析と強化しか使えん魔術師と言っていいかもわからんような奴と同盟を組んで本当にこのマスターは聖杯戦争を勝ちにいくつもりなのかとあの時は本気で考えたものだ。

前述では私が聖杯に願う望みなぞ微塵も無いと表記したが願う望みはなくとも叶えたかった願望ならあった。
その願望自体、今思えばただの八つ当たり以外何物でもなかったし、別段それが叶ったとしても何かあるという保証はなかったので叶おうが叶わまいがどちらでもよかったが。

聖杯戦争の道中で私が凛を裏切ったり、セイバーのマスターと間桐桜がすったもんだありいつの間にか恋仲になっていたり、本来存在しないはずの八組目が現れたり、ランサーの死に様がカッコよかったり、セイバーが大食いだったり、ライダーの戦闘服が無駄に露出が高かったり、八人目が金ぴかだったりと色々と本当に色々とあったが無事聖杯戦争も終結した。最終的に“この世全ての悪”に汚染されていた聖杯を破壊するという形で。まあ、今回はこれが最善の手だったと思っている。たぶんだが、聖杯をあのままにしておいたら守護者が召喚されるような事態になっていただろう。





結局、聖杯も破壊され私の体を形成する魔力も無くなり、体の一部分が透け始めた。前方から凛が駆け寄って来ている。
ああ、別れの時が近づいてきているのだなと、死んだ身でありながらしみじみと思う。凛が私に再契約をもちかけてきた。
それを私はやんわりと断った。とうとう、腹辺りまでは完全に消え残るは胸から上になった。凛が最後に言い残すことはないかと聞いてきたので、では、と前置きを言い聖杯戦争中ずっと考えていた事を言ってやった。

「凛。君はまずその“うっかり”をなおしたまえ。遠坂の遺伝だとしても君のはかなり酷いぞ。そもそも何だね、私を召喚した理由がうっかりによる“事故”とは。しかも召喚場所が召喚陣の上ではなく、遥か上空とは流石の私も肝が冷えたぞ。そこにいるセイバーとそのマスターに聞いてみたまえ、そうすれば分かるだろう君のうっかりがどれほど重症かと。君のそのうっかりのおかげで私が生前どれだけ苦労したか分かるか君は?分からないだろう?ああ、そうに決まっている。君はいつもここ一番という大事な局面に絶対に何かしらのうっかりをする。毎回それを手助けするこちらの身にもなってほしい。あの時計塔を壊したときだってそうだ。自分は壊すだけ壊したあと、士郎、後はよろしくだと?ふざけるな。何もしていないのに直すこちらの身にもなれ。しかも、しかもだぞ、壊した理由がケンカだぞケンカ。何処の世界にケンカ如きで建物、しかも魔術師の総本山を破壊す奴がいる。あの時、私はあきれてものも言えなかったよ。そういえば君も不思議に思わなかったかね?私はエミヤシロウなのに何故髪の毛が白髪なのか?と。ああ、先に言っておくがこれは別に年のせいではないぞ。サーヴァントというものは、君も知っての通りその元となった人物が最も強かった最盛期の姿で呼び出されるのだから。魔術の使いすぎが原因じゃないかって?残念ながらそれも無い。もし、魔術の使い過ぎで髪の毛の色素がぬけ落ちたら君をはじめとする魔術師たちは全員白髪じゃないとおかしいからな。オレの髪が白いのはね遠坂。君のそのうっかりによる、ストレスかららしいんだ。だから、一刻も早くそれを直してくれ。あと、衛宮士郎。お前が間桐桜を選んだことは決して間違いじゃない。そこにいる、食っちゃ寝セイバーやうっか凛よりはよっぽどましな選択だったと言える。ただ、背中にだけは気を付けろ。彼女はどうやらヤンデレという奴らしいのでな。下手をしたら刺されかねんぞ。ちなみに私のお勧めは、三枝由紀香だ。もしくは氷室鐘、あと美綴綾子もいい。少なからず彼女達はお前に好意を持っているだろうからな。彼女たちならきっと平凡で幸せな家庭が気付けるだろう。そして、これだけは覚えておけ。触らぬ遠坂に祟りなしと。別に大げさでも何でもないぞ。この言葉は私の実体験から生まれた言葉だからな。強く生きろよ衛宮士郎。決して私のようになるな。それが私の最後の望みだ」

かなり、長かったがノンブレスで言いきってやった。それにしても皆、かなりおもしろい顔をしている。とくに目の前にいる凛なんて開いた口が塞がらないようだ。

「答えは得た。大丈夫だよ遠坂。オレもこれから頑張っていくから」

最後に私は今できる満面の笑みを顔に浮かべた。だから、そんなに肩を震わせてまで泣かないでくれ凛。

「……う……い……」
「ん?何だね凛?」
「うるさーーーーーーーい!!!!」
「ぐはっ!!」

努号とともに飛んできた黄金の右ストレート。消滅間近というより、下半身は既に消えているので避けたくても避けれなかった私はもろに彼女の右ストレートを食らった。

「い、いきなり人を殴るとは君の了見は一体どうなっているのだね?」
「な、なによ!!人がせっかく黙って最後の言葉を聞いてやろうと思ったのに出てくるのは小言ばかりじゃない!!もっと言うことはないの他に」
「他にとは?」
「ほ、ほら。君は最高のマスターだったとか、私に召喚されて良かったとか、いろいろあるじゃないの」

彼女は自分で言っていて恥ずかしくはないのだろうか?そもそも、そんなに顔を真っ赤にするぐらいならば別に言わなくても良いだろうに。だが、ここは素直に言葉を残しておいても悪くはないだろう。

「凛。君は本当に最高のマスターだったよ」
「今更、世辞を言ったって遅いわよ」
「いや、世辞ではないさ」
「え?」
「君は私にとって本当に最高のマスターだった。いや、違うな。私は君だからこそ召喚に応じたとでも言っておこう。そう、生前愛していた君だから…」
「それって、どういう…」
「ふむ、凛そろそろ時間のようだ。この世界の私の事を頼む。くれぐれも私のようにならないように見張っといてくれ」
「ちょ、まだ話の途中でしょ!!」
「では、達者でな」
「まちなさーーーーい!!絶対、絶対にあんたの所へ行って一発ぶん殴ってやるんだから首を洗って待っていなさい」

その言葉を最後に私は消滅したはずだった………そう、はずだったのだ。
だが実際は、この場に存在している。しかも、受肉して。さらに若返ってだ。正直言って訳が分からない。
最初は座に帰ってから即、守護者として呼ばれたと思ったがそうでは無いらしかった。
そもそも、もし守護者として呼ばれていたら自我がないはずだから。
とりあえず現状確認のため辺りを散策(この時に肉体の状態を確認)し、何故か張ってあるテントを発見。外も日が沈み始め、まだ地理に詳しくないため薄暗い森を歩くのは危険。周りにはテントを張ったと思われる人物がいなかったため、失礼と知りつつ今日は使わせてもらったのである。





上記のような過程を得て今に至るわけだが、正直、理解できない点が多すぎる。
まず始めに何故、消滅したはずの私が今現在ここに存在しているというより召喚されたのか。次にどうして若返っているのか、なぜ受肉しているのか。
そして、ここは一体どこなのか。など、挙げていけばキリがないだろう。
しかし、それらは追々考えていこう。
とりあえず、今日は夜も遅いので睡眠をとる事にしようと思う。




















では、未来の私へ一言

受肉し、小僧のような肉体になってしまったが強く生きてくれ。おやすみ。
 
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