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アマガミという現実を楽しもう!

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第1話:目を醒ませばアマガミ

仕事を終えて電車で帰宅する際に居眠り。
いきなり目が覚めてみたら、眩しい光に小さな手にでっかい女性の顔。
ふと映った鏡を見てみたら、あら可愛い赤ん坊。
ってこれ俺か?何で?


え?何これ?俺、赤ん坊なの?
そんなトンデモ現象、誰が信じられるか!
と声を出してみても、「あうあう」とひぐらしが鳴くどこかの村の神様みたいな声しか出ない。


最初は何かの事故か急病で死んでしまって、結果的に生まれ変わったのか、と思ったが
どうやらそうではないらしい。
カレンダーを見てみると、どうやら今年は1980年。
そしてそれを裏付けるかのように、旧い型のブラウン管テレビに、女性の髪形や服装の様子。
新聞には、昔(といっても平成であるため今から10年以上先であるが)お袋がファンだと言ってた
あのアイドルの引退宣言の記事が一面にあった。


ということは、過去に転生したのか、それとも平行世界へと転生したのか・・・。
昔読んだタイムスリップ系の小説の設定を思い起こして、
様々なパターンを現状に当てはめてみようとするが、合致するものは見つからなかった。
いずれにしても、この際、俺は別の人間に転生したと考えたほうがいいだろう。。


不思議なことは未だある。
そもそも言語能力はおろか、思考能力も無い赤ん坊の身なのに
こうやって物事を考えられるのは何故だろうか。
鏡を見たが脳が異常発達しているような状況ではなかった。
身体機能も、兄貴の息子と比較するにおそらく乳幼児としての標準であろう。
てことは、自分の精神とこの乳幼児がリンクしていると考えていいのだろうか・・・。


まぁ、きっと夢を見ているんだ!
時間がたてば、きっと元に戻るんだ!
そうだ、そうに決まっている!
それなら、醒めるまでこの生活を楽しんでしまったほうが得ってもんだ!

























・・・戻れませんでしたorz


「戻れる、戻れる」と言っているうちに、
小学生になってしまい、元号が変わってしまった。
しかも時間感覚は現実(既に前世となりかけている)と同じで。


ちなみに、俺の現在の名前は「遠野拓」。あだ名は「タク」や「たっくん」である。
在籍する小学校は、タコの滑り台が印象的な「輝日南小学校」。
前世(現実へは戻れないと悟り、それは過去のものだと諦めた、以下「前世」に統一)
の記憶の影響からか、
同年代の友人は残念ながら多く出来なかった。
け、決してぼっちだったわけじゃないぞ!?


だ、だって、一度社会人生活まで体験したわけだぞ!?
一度社会人になって、足し算引き算をやり直すことを喜んでやれる人間はいるか?
感情を発散して会話をする子ども相手に社会人が同等に接することが出来るか?
・・・つまり、小学生にそぐわない奇行が目立ったわけだよ。


「気に入らない先生の意見に対して、理詰めで反論を行い閉口させる」
「読書感想文に選ぶ本にあの100年の難題を提案した位相幾何学の数学者の本「科学と方法」を選び、レポート形式で提出して、先生を唖然とさせる」


など、正直きりが無い。
まぁ、所謂ドン引きされた訳だ。
小学校低学年の時が、ドン引き最高潮だったな。一人寂しく図書室さ!


それでも、クラスの塚原響って子は仲良くなってくれたな。



塚原響と俺は、小学2年の頃にクラスメイトになり、1年間共に図書委員を務めていた。
俺は、図書室の本が少しでも読める機会が得られると思って志望し、
塚原響も同様に本が好きだったようだ。
最初は会話もしてくれなかったがな。流石にあんな素行じゃ話しかける気にならなかっただろう。
だが流石に1年間、無言で作業をする環境はなるべく避けたい。
うなれ!俺の社会人スキル!新人研修や営業、度重なる宴会での培った技術を見るがいい!


え~っと、ソウルオリンピック(1988.9.17-10.2)が終わったけど見ていたかな?
そうだ、鈴木○地が100m背泳ぎで金を取ったっけ、あとは女子選手ではジャ○ット・エ○ンスが
金を総なめにしていたな。前世では小さすぎて見れなかったから貴重だったなぁ。
そこ、ボキャブラリー少ないとか言うな!○リーグはまだ発足してもいないんだぞ!
さて・・・、競泳の話だけど伝わるか?
それでも、この子なら水泳の話が伝わりそうだ。何故だろう、証拠も無いのに確信している俺がいる。


「なぁ、そういえばソウル五輪の背泳ぎ見た?鈴木○地の泳ぎ、凄かったよな!」
「うん、凄かった!」


反射的だったのであろう。塚原響は、俺の問いに対して即答した。
俺は、黙々と作業していた隣の女の子が身を乗り出してきたのに驚いたが、
俺は反応してくれたことに喜び、会話を進めていった。


俺も、前世では学生時代に水泳を生きがいにし、社会人でもマスターズ選手として活動するほど、
好きだった。泳法やトレーニングの本を読み込み、メニューに応用することも多々あった。
そういった経験から、俺は彼女と話を弾ませていった。





ソウル五輪の話で水泳のことを思い出し、とたんに俺は
現世でもやりたいと思い、親に行きたいという意思を伝えた結果、
響と同じスイミングスクールや水泳クラブに所属することになった。
もちろん、専門種目は前世と同じ自由形!
やっぱり、あの有名漫画家が描いて映画化されたマンガには影響されるよね!?


・・・流石にブーメランパンツは昔過ぎて、なかなかなじめなかったが。
股に食い込むぜ・・・、超食い込むぜぇ・・・!





そこで、同学年の川田知子と仲良くなったな。
響の顔を見ても感じたのだが、彼女の顔を見た際、違和感を感じた。
どこかで彼女たちを見たことがあるんだが・・・はて、どこだったか。


「拓君、どうかしたの?」
「たっくん、帰り遅くなっちゃうよ?ダッシュダッシュ!」
「はいはい、今行くよ~。知子、走ると転ぶぞ。」


とまぁ、こんな感じで二人に引っ張られながら過ごしていたなぁ。
精神的にはこちらのほうが二周り以上年上のはずが、主体権が完璧に取られている。
オマセさんなのか、いずれにしても女の子は強いなぁ・・・。
あ、知子が転んだ。いきなり走り出して石に足を取られたようだ。
俺の世話を焼くくらい人の動向をよく見てたり、占い好きな真面目な子なのに、
どこか抜けているんだよな~。
響が、知子の近くに寄る。
アカデミーのバックから消毒薬と絆創膏を取り出し、知子の擦り剥いたヒザに適切な処置を行う。
あいつはいい医者になりそうだなぁ。
実際あいつは医者になるし、・・・ん?なんでそう思ったんだ?








このデジャブの正体は、4年生に上がって迎えた夏、スイミングスクールに顔を出したある女の子の登場によって判明した。

「今日から一緒に泳ぐ七咲逢ちゃんです。皆さん、仲良くしてあげてください。」
「な、ななさきあいです。よろしくおねがいします。」

先生の紹介の後に、緊張しながら紹介する少女。
・・・ああ、ようやくこのデジャブの正体が分かった。

















この世界は、「キミキス」「アマガミ」の世界なのだ、ということが。 
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