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ハイスクールD×D ~ 元聖女の幼なじみはエクソシスト ~

作者:ラドゥ
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第二話『交渉。そして激突!!』



駒王学園生徒会長、支取蒼那。いや、駒王学園に通うもう1人の魔王の妹である『ソーナ・シトリー』と接触し、このあたりの縄張りの主である『リアス・グレモリー』との交渉の席を設けることに成功した俺たちは、彼女の根城であるという『オカルト研究部』の部室の前に来ていた。


「しかし、悪魔がオカルト研究部とはね。まあそれらしいといえばそれらしいが…」

「なんか安直ね」


2人が呆れたように部室の扉にかけてある『オカルト研究部』とかかれたプレートを見ていた。


いやたぶんそういう狙いじゃないと思うが。


「おそらく悪魔の活動をカモフラージュする一種の擬態だろう」


もしくはリアス・グレモリーのただの趣味か。

まあ、俺たちには関係ないか。

「それでは入るぞ」

そして俺は扉を拳で軽く叩く。

「教会の者だが、リアス・グレモリー殿の部室はこちらでいいだろうか?」

すると中から女性の声が聞こえてきた。おそらくこの声の主がリアス・グレモリー本人なのだろう。

「ええ、あってるわ。入ってちょうだい」

「失礼する」

相手方の許可がでたので俺たちは扉を開け、部屋へと入る。


部屋のなかには紅の髪を持つ女性を護るように数名の男女がその女性の後ろに控えていた。恐らく彼らがグレモリー眷属のメンバーなのだろう。…1人やたらと殺気が漏れ出ているやつがいるが、まあ気にしなくても良いだろう。教会が悪魔を疎むように、悪魔も我々教会の者を嫌うのが自然なのだから。


とりあえず、自己紹介といこうか。いくら勢力的に敵対している相手でも最低限の礼儀は守らなければ。


「お初にお目にかかるリアス・グレモリー。私は今回教会より派遣された、特務部隊小隊長。名は「シオン君・・ですか?」なに?」

途中、女性の声に俺の言葉は遮られた。

先程は横にいる男の眷属の影に隠れてよくわからなかったが、そこには未だに幼さの残る少女がいた。

どこかで見たことがあるような…。

その時呼び起されたのは遠い昔、彼女とまだ孤児院で生活していた時の記憶。彼女の顔と目の前にいる少女との顔が重なる。


……まさかっ。


「アーシア…なのか?」

その俺の言葉に彼女はどこか嬉しそうな、…どこか悲しそうな表情でほほ笑む


「はい、お久しぶりです。シオン君」

それが、俺と彼女、アーシア・アルジェントとの数年越しの再会であった。









現在、私たちオカルト研究部の部室には、普段なら絶対にやっとこないような客人が、目の前にいる。


目の前のソファーに座っているのは教会のローブを着た3人。
そう、私たちの天敵である教会の関係者たちだ。先程3人に自己紹介をされた。


ソファーの右に座っているのが『紫藤しどうイリナ』。先日、イッセーの家にやってきた教会関係者で、イッセーの幼なじみだという。天敵である悪魔たる私たちを目の前ににこやかに笑みを浮かべている。

ソファーの右側に座っているの目つきの悪いのが『ゼノヴィア』。青い髪に緑色のメッシュが入っており、自然体でいるようで、隙がない。

そして中央に座るこの男。『シオン・ラザフォード』。

まさか、彼がアーシアの幼なじみだったなんてね。


「まさか十三機関のメンバーがでてくるとはね、『天剣』。驚きだわ」

私の言葉に彼はぴくりと体を震わせる。

「……それだけ厄介事が起こったということだよ、リアス・グレモリー」

厄介事…ね。

そこでイッセーが申し訳なさそうに手をあげる

「あの、部長。『十三機関』ってなんですか?それに『天剣』って…」

見ればアーシアもわかっていないのか、首を傾げている。


「悪魔に成りたてのあなたたちが知らないのも無理はないわね」


アーシアは元シスターといってもそういうこととは無縁だったみたいだし。

「十三イスカリオテ機関。通称十三じゅうさん機関。ヴァチカンのトップである教皇の呼びかけによって結成された、カトリック、プロテスタント、正教会それぞれから派閥を問わず選出された最強の十三人で構成された集団のことよ。――――――――そしてシオン・ラザフォード。彼は若干十五歳にその十三機関に選出された天才悪魔払い(エクソシスト)。『銀シルバー鴉レイヴン』のシオン。『天剣』は彼の二つ名よ」


「…まじすか」

アーシアとイッセーが驚いているようだけど、それもしょうがないかもね。彼の事を知らない人間(イッセーの場合は悪魔だけど)から見たら、ただの少年にしか見えないもの。アーシアなんかは、久しぶりにあった幼なじみがそうなっていたのだから、なおさらだろう。

シオン・ラザフォード。通称、『天剣』のシオンと呼ばれる悪魔払いの名前は私たち悪魔、おそらく堕天使の勢力にも名が知られている。もっともそれなりに情報に通じてる者ぐらいだろうけど。


若干15歳にしてヴァチカン法王庁に存在する最強の悪魔払い(エクソシスト)機関。『十三イスカリオテ機関』の1人に選ばれた天才悪魔払い。


十三イスカリオテ機関。通称十三じゅうさん機関と呼ばれるその集団は、ヴァチカンから独自の行動権を与えられた13人の最強の悪魔払い(エクソシスト)たちで、最低条件として上級悪魔、または上級堕天使の討伐に成功した者にのみ入団が許される機関。

つまりは、目の前の彼は、少なくとも私たちを敵に回して十分な勝算を持つことのできるほどの実力者ということ。

「それで?あなたほどの悪魔払い(エクソシスト)がわざわざ出てくるなんて、いったい何事かしら」


彼ら十三機関は単独での行動権を与えられている代わりに、各派閥からの依頼は必ずうけなくてはならない規則がある。そしてその依頼された任務は殆どの場合が、上級堕天使、上級悪魔が関わっており、それ以外の任務でもその危険度は他の悪魔払い(エクソシスト)の任務よりも比較にならない難易度だと聞く。

つまりは十三機関の彼がこの町に来たというだけで、かなりの厄介事がこの町で起こってることが推測できる。

私の言葉に彼、シオン・ラザフォードは口を開いた。

「先日、カトリック教会本部ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会側に保管、管理されていた聖剣エクスカリバーが奪われた」



…ああ、やっぱり厄介事だった。それもとびっきりの。









「先日、カトリック教会本部ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会側に保管、管理されていた聖剣エクスカリバーが奪われた」


エクスカリバーが奪われた?しかもカトリック、プロテスタントって……。


そういや、キリスト教にも派閥があるって学校で習ったような。


でもエクスカリバーがなんでカトリック、プロテスタント、正教会から盗まれるんだ?


一箇所にあるんじゃないのか?

そんな俺の疑問に答えてくれたのは我らの主。部長であった。

「聖剣エクスカリバーそのものは現存しないわ」

俺の心の声が聞こえたのは部長だった。あれ?なんで聞こえたんだろう

悪魔になりたての俺を気遣って、部長たちはエクスカリバーの説明を含めて話を進めていった。

エクスカリバーはかつて起きた大戦により砕け散り、いくつかの欠片へと分散していったらしく、緑のメッシュをいれた彼女、ゼノヴィアの言葉によれば、今のエクスカリバーは大昔の大戦で四散したエクスカリバーの刃の破片を拾い集め、錬金術によって新たな姿となって、七本に生まれ変わった物で、それを、それぞれの派閥の教会が管理しているという。

ちなみにゼノヴィアの持っているのは、『破壊の聖剣エクスカリバー・デストラクション』。カトリック側が管理しており、イリナが懐から取りだした長い紐。それが変化して現れた日本刀は、『擬態の聖剣エクスカリバー・ミミック』。後者は変幻自在にカタチを自由自在にできる能力を持っており、このように、エクスカリバーはそれぞれ特殊な力を有しているらしい。

ちなみに、2人の持っているエクスカリバーを実際に見せてもらったが、…あれはヤバい。悪魔歴の浅い俺でもわかるほどの強力さだ。

やはり聖剣は俺たち悪魔にとっては相当危険な代物のようだ。


ん?そういえば、


俺は気になったことを、彼らのリーダーである、シオン・ラザフォードに問いかける。


「なあ、あんたは彼女たちみたいにエクスカリバーを持ってないのか?」


これは、俺としたら当然の疑問だと思う。なにせ、エクスカリバーの所有者2人を従えているんだ。彼も持っていたとしても不思議ではない。


しかし、そんな俺の質問に彼、シオンは苦笑しながら首を横に振る。


「生憎、俺はエクスカリバーは持っていないよ。元々教会にとっては貴重な物だしな」


ああ、まあそうだよな。そう簡単に持たせられる物じゃないよなぁ。

…ん?エクスカリバーは(・)?

「……それで、奪われたエクスカリバーがどうしてこんな極東の国にある地方都市に関係あるのかしら?」

おっと!シオンの言い回しが少し気になったが、部長が話を進めていたので意識をそちらに戻すとしよう。


「カトリック教会の本部に残っているのは私のを含めて二本だった。プロテスタントのもとにも二本。聖剣にも二本。残る一本は神、悪魔、堕天使の三つどもえ戦争の折に行方不明。そのうち、各陣営にあるエクスカリバーが一本ずつ奪われた。奪った連中は難を逃れ、この地に持ち運んだって話なのさ」


部長の問いにゼノヴィアがそう答える。


その返答に、部長は額に手をあて、息を吐いた。


「私の縄張りは出来事が豊富ね。それでエクスカリバーを奪ったのは?」


部長のその問いにはシオンが答えた。


「奪ったのは堕天使の組織、『神の子を見張る者グリゴリ』だよ」


「それも主犯は大物だ。ーーーーーーーーコカビエル。古の戦いから生き残る堕天使の幹部といえばわかるだろう?」



シオンとゼノヴィアが続けて部長の問いに答えた。

2人のその言葉に、部長は驚いたような、呆れたような、そんな表情を浮かべた。


「堕天使の組織に奪われるなんて、とんでもない失態ね。――――――しかし、コカビエル。聖書にも乗っている堕天使の幹部がでてくるなんてね」


おいおい、エクスカリバーに堕天使の幹部って!?どんどん話が大きくなってきやがったぞ!

シオンは深刻そうな顔で話を続ける。

「先日からやつらの動向を探るためにこの町に神父ーーーーーー悪魔払い(エクソシスト)を秘密裏に潜り込ませていたんだが、ことごとくそれを始末されてしまった」


おいおい。俺たちのしらないところでそんなことが起こってたのかよ……。


じゃあ、こいつらが今日きたのはそれの協力の要請か?魔王の妹であり、上級悪魔である部長に力を借りに来たってところか?


しかしシオンの発した言葉は俺の想像とは大分違っていた。



「俺たちの依頼はただ一つ。俺たちと私たちと堕天使のエクスカリバー争奪の戦いにこの町に巣くう悪魔が一切介入しないこと。それだけだ」

そんなシオンの言葉に、部長は眉根を寄せる。


あれ、部長怒ってる…?


「……つまり、あなた達は私を、いえ、私たちを疑ってるわけね。ーーーーーー私たちが堕天使と手を組んで聖剣をどうにかすると」

「そういうことになるかな」

部長の苛立つ声にシオンは苦笑しながら、しかし悪びれずに答える。


なるほど、先程のシオンの言葉の裏にはそんな意味があったのか…。そりゃあ、部長でも起こるよな。痛くもない腹を探られてるんだから。


「そう思っても仕方ないだろう。実際、神側から聖剣を取り除ければ、堕天使だけではない。悪魔側にも喜ばしいことのはずだ。なにせ我らは戦争こそしていないが、基本的には敵対者なのだから」

そういうシオンの口元が不敵に歪む。

「上からはこうもいわれている。―――――もし、君たちが堕天使と手を組んだとしたら、堕天使ごとグレモリー眷属を消滅させろと。それがたとえ魔王の妹であるリアス・グレモリー。あなたでさえも変わりはしない」


ぞわっ。

肌が恐怖で粟立つ。


いつの間にか、部屋の空気を、目の前の男、シオン・ラザフォードが支配していた。

やつの幼なじみであるアーシアも、教会に怨みがある木場も、そして俺も、シオンの放つ空気に完全に飲まれていた。

これが俺と同年代のだせる空気なのか?

「俺たちは依頼に来たのではない。警告に来たんだ。だからこそ、俺はここにいる。君たちへの牽制として…ね?」


“邪魔をしたら消す”


そう俺たちにいい放ったシオンの言葉は、絶対の自信に満ち溢れていた。









シオンの放つ雰囲気に、若干緊張した空気となったが、部長がグレモリーの家名にかけて堕天使とは手を組まないということをシオンたちに明言すると、緊張した空気は元へと戻った。


まったく、生きた心地がしなかったぜ。

シオンは部長の言葉を聞いて、満足そうにほほ笑む。そこには先程俺たちを圧倒していた迫力は、もうどこにもなかった。


「それだけ聞ければ結構だ。まあいちおう、この町にコカビエルがエクスカリバーを三本持ち込んで潜んでいることをいっておかなければ、俺、いや俺たち教会側が様々な勢力に恨まれるからな。ーーーーーーさて、俺たちはそろそろお暇するとしよう。君たちもいつまでも教会の人間に居座られては迷惑だろうし。いくぞ2人とも」

そういってシオンと残り2人は席を立つ。


「あら?お茶ぐらい飲んで行ったら?お菓子も振舞わせてもらうけど?」

「いや、けっこう」

緊張がとれた部長がシオンをお茶に誘おうとするが、あいつはそれをそっけなく断り、部室から退出しようとした。


そこへ、

「待ってください、シオン君!」


今まで沈黙していたアーシアが意を決したように俺たちに背をむけているシオンを呼びとめる。


そういえば、シオンはアーシアの例の幼なじみなんだっけ。いままで話しかけたいのを我慢してたのかな?

シオンはアーシアの声に足を止める。


「……なんだ」


その静かな声は、どこか冷たい物だったが、それとともに、いろいろな感情を押し込めたような声だった。

その声音に一瞬躊躇ったアーシアであったが、それでもシオンに再び話しかけようと口を開くが、それは他の人物の声に遮られる。


「さっきから思ってたんだが、君はもしや『魔女』、アーシア・アルジェントか?まさかこのような地にいるとは」


遮ったのは『破壊の聖剣』の持ち主、ゼノヴィアだった。


アーシアはゼノヴィアの言葉に体をびくりと震わせる。


『魔女』


その言葉はアーシアにとってはつらい言葉だった。

その言葉を聞いて、先程シオンに話しかけた時のような決意を秘めた顔は、もうなりを潜めていた。


そのゼノヴィアの言葉でイリナもアーシアの存在に気付いたのか、彼女を珍しい物を見るような目で見つめた。

「あなたが一時期教会内部で噂になっていた『魔女』になった元『聖女』さん?悪魔や堕天使をも癒す能力を持っていたらしいわね?追放され、どこかに流れたと聞いていたけれど、悪魔になっているとは思わなかったわ」

「……あ、あの……私は……」


二人に言い寄られ、対応に困るアーシア。しかし、次のイリナの言葉に目を見開いた。


「それにしても、あなたがラザ君と顔見知りだったとはね。通りであなたの行方を気にしていたはずだわ」

「え……?」


そのイリナの言葉を、しかしアーシアは信じられないというような顔をした。。


「あなたが追放された話をゼノヴィアと一緒にラザ君に話したら、ラザ君ったら怖い顔して詰め寄ってきて。私たちが知っていることを全部話した後にはすぐにどこかに飛んで行ったのよ。後で聞いたらあなたがどうしてそんなことになったのか、どこにいったのか情報をかき集めていたらしいわ。魔女になったあなたの許してもらうために教皇様に直談判までしたそうよ?」



…驚いた。


最初に気づいた時からまったく目線も合わせようとしなかったから、てっきり魔女になったアーシアとは関わりあいになりたくないからそうしてると思ったのに。


まさか、アーシアをそんなに心配してたなんて。


「シオン君…」


おお…、アーシアが感動したような目でシオンのやつを見ている。


それもしょうがないだろう。もう嫌われたと思っていた幼なじみが、自分のためにいろいろ駆け回ってくれたというのだから。


しかし、そんなアーシアの嬉しそうな表情は、次に発したゼノヴィアの言葉で凍りついた。


「しかし、まさかシオンの探し人が悪魔になっていたとはね。シオンも報われない。あんな死にかけ(…)の状態になってまで、彼女を戻そうとしたのに」

「………へ?」

アーシアはその言葉に呆けたような声をだす。

今、死にかけたって…?

「ゼノヴィア、余計なことをいうな!!」

「おっと失礼」


ゼノヴィアの言葉に声を荒げるシオンだったが、ゼノヴィアはあまり悪びれた様子はなかった。その口調はどこか楽しんでるようで、どこか棘がある感じだった。

「…シオン君、それっていったい」

「…………」

アーシアはシオンに問いただそうとするが、シオンは苦虫を潰したような顔をして、沈黙を保ったままだ。


しばらく気まずい空気が続いたが、そんな空気を読まずにアーシアにゼノヴィアが話しかける。…この状況で話しかけるなんて、ある意味すごい度胸だ。


「そういえばアーシア・アルジェント。君は未だに我らの神を信仰しているのか?」

そのゼノヴィアの言葉にイリナは呆れたようにいう。

「ゼノヴィア。悪魔になった彼女が主を信仰してるわけないでしょう?」

「いや、その子からは信仰の匂い―――――香りがする。抽象的な表現だが、私はそういうのに敏感でね。背信行為をする輩でも罪の意識を感じながら、信仰心を忘れない者もいる」

ゼノヴィアが目を細めながらいうと、イリナは興味深そうにまじまじとアーシアを見る。

「そうなの?アーシアさんは悪魔になったその身でも主を信じてるのかしら?」

その問いかけにアーシアは悲しそうな表情でいう。

「捨てきれないだけです。ずっと信じてきたのですから…」

それを聞き、ゼノヴィアは布に包まれたものを突きだす。

「そうか。それならば、いますぐ私たちに斬られるといい。いまなら神の名の下に断罪しよう。罪深くとも、我らの神ならば救いの手を差し伸べてくださるはずだ」

―――っ。

俺の腹のなかでたとえようのないものがこみ上げてきていた。

アーシアに近づくゼノヴィア。俺はアーシアをかばうように前に立とうとしたが、





「そこまでだ、ゼノヴィア」


その前にアーシアをかばった人物が居た。


「シオン…」


シオン・ラザフォードだった。


「今日俺たちがここに来たのはリアス・グレモリーに忠告するためであって、揉め事をおこすためではない。それに悪魔だろうと、誰であろうと他者の信仰に対してとやかくいう権利は俺たちにはないはずだ」

ゼノヴィアはシオンの諭すような言葉に、しかし目を細めるだけだった。

「それは、その娘が君の幼なじみだからかい?シオン」

そのゼノヴィアの言葉にシオンは眉根を寄せるが、あくまで冷静にゼノヴィアの言葉に反論する。

「俺はただ自分の思ったことを口にだしただけだ。――――――それに彼女は自分で悪魔となったんだ。なら俺にはもうなんの関係もない」

「!?」

その言葉に、アーシアは先程魔女といわれた時よりショックを受けたような表情になった。

いま、こいつなんていった…?

俺は自分の中から湧き上がってくる気持ちを抑えきれずにシオンの肩を掴む。


「お前!今のは本気でいったのか!」

俺は無理矢理シオンの顔を自分のほうへむける。

「…なんだ、お前は」

「俺は兵藤一誠。アーシアの家族だ!」

「(ぴく)…そうか。それでその家族がいったいなんの話だ」


シオンが俺の言葉を聞いて、僅かに眉を動かすが、そんなもの知ったことではない。

俺はシオンの胸倉をつかんだ。

「やめなさい、イッセー!」

「やめてください、イッセーさん!」

部長とアーシアが俺のことを止めようとするが、俺はもうそんなことでは止まらない。

俺はこいつのことを楽しそうに語るアーシアのことを見ていた。

アーシアがこいつのことをどれだけ大切に思っているかがそれでわかるほどだった。

だから、

「さっきの言葉は本気でいったのかって聞いてんだ!!」

だからこそさっきの言葉は許さねえ!!

「…だとしたら?」

こいつっ!?

あんまりなその言葉に俺は頭に血が上って、拳をふりかぶり、シオンを殴りつけようとするが、突如体が軽くなり、浮遊感が俺を襲う。

ガッシャアアアアン!!

「がっ!?」

「イッセー!」


いつの間にか地面にたたきつけられていた。なんだいまのは!全く気づかなかったぞ!?

気づいたら俺は無表情に佇むシオンに見下ろされていた。その顔からは全く感情が読めなかった。


「…なぜそこまで熱くなる。君とアーシアは元は他人のはずだ」

そのシオンの言葉に俺はやつを睨みつけながら答える。

「初めにいっただろ!アーシアは俺の家族だ。友達だ。仲間だ。そんなアーシアを悲しませるやつは許さねえ!おまえらがアーシアになにかしようってんならまとめて俺が相手してやる!」

そうだ、こいつは。こいつらはアーシアを悲しませた!いくらこいつが強くても絶対に許さねえ!!

しかし俺の言葉に反応したのは俺を見下ろしていたシオンではなく、横で見ていたゼノヴィアだった。

俺の言葉にこんどはゼノヴィアが目を細める。

「それは私たち―――我ら教会すべてへの挑戦か?一介の悪魔にすぎないものが大きな口を叩くね。グレモリー、教育不足では?」

どうやら俺のまとめて相手してやるという言葉が気に食わなかったらしい。その口調はどこか苛立っていた。

上等だ、やってやる!

「イッセー、お止め―――」

俺を落ち着かせようとした部長だったが、そんな俺の前に木場が介入する。

「ちょうどいい。僕が相手になろう」

特大の殺気を体から発して、木場は剣を携えていた。いつもの爽やかな笑みは、なりを潜めている。

こいつは本当に木場なのか…?

「誰だ、君は?」

そのゼノヴィアの問いかけに木場は不敵に笑った。

「君たちの先輩だよ。――――――失敗だったそうだけどね」

その瞬間、この部室内に無数の魔剣が出現した。

その瞳は、憎悪の念一色だった。






その時の俺たちは気づかなかった。


「……………」


アーシアを見るシオンの瞳には、悲しみの感情が込められていたことを。


 
 

 
後書き
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