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神器持ちの魔法使い

作者:リリック
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ディアボロス
  第10話 再会し、準備する

「アーシア……」

部長たちに助けられて学校に戻った俺。
あのクソ神父から受けた怪我を治療してもらいながら部長がエクソシストについて教えてくれた。
正規かはぐれか。
あのクソ神父がヤバい感じがした。
猟奇的快楽殺人者。
そういった言葉がピッタリなんだろう。
だからこそ部長はこれ以上関わるな、アーシアのことは忘れろ、って。

俺が悪魔でアーシアがシスターだから、アーシアを掴んでいるそれが堕天使の陣営だから。
自分の中で部長たちかアーシアか、どちらかを選ぶなんて……選べねえっ!
そんな矮小な自分自身がどうしようもなく悲しい。
それと同様に女の子一人救えない自分が情けない!

「はぁ……」

治療してもらい、帰ろうとすると俺指名の依頼が舞い込んできた。
部長からは休めと言ってたけど、首を横に振った。
アーシアのことが離れないまま、まだ癒えない怪我を抱え依頼者の家に向かう。

「ここ、か」

こんな湿気た顔じゃダメだ!
呼び出し人の自宅に到着して早々、パシンッ! と顔面を叩き、気を引き締める。
そしていつものように自転車を停め、玄関に備え付けられているインターホンを押そうと腕を伸ばす。
が、押す寸前、それに気がついた。
見慣れた玄関に見慣れた庭先。
ギギギという効果音が相応く恐る恐るこの家の表札に目をやると……

やっぱり秋人ん家じゃねえか!?
ちょっと待て待て待て!
おおおお落ち着け俺!
深呼吸だ。

「すぅー…はぁー……。よし」

よし、多分落ち着いた。
まさか依頼人があいつだったっは。
あいつの依頼って何なんだ?
考えても仕方ないか。

「ええい、ままよ!」

インターホンを鳴らす。
それで思い出した。

「あ、俺が悪魔だってこと知らなくね?」

なんとも言えない感覚が体を駆け巡る。
焦る俺に追い討ちをかけるかのように足音が近づいてくる。

心臓はバクバク鳴ってうるさい。
秋人に何て言おうか、それを考えるのが精一杯。
ここに来るまでの思いを忘れるくらいに。

家の中からはーい、という返事が聞こえる。

だから気づかなかった。
悪魔になって高くなった聴力にもかかわらず、足音が秋人の足音じゃないことに。
その声が秋人の声じゃないことに。

そして、ドアが開けられる。
ドアの向こうにいたのは、俺を出迎えてくれたのは、

「アー、シア……?」

「一誠さん!」

「アーシア!」

目が合うと感極まった表情で飛びついてくるアーシアと受け止める。
涙を流しながら喜ぶアーシアに無事でよかったと抱きしめる。
煩悩云々関係なくただただ互いの無事を喜んだ。

「ほうほう。なるほどなるほど。一誠とアルジェントさんはそういう関係だったのか」

「「っ!?」」

いつの間にか現れた秋人。
ニヤニヤしながら時間と場所を忘れていら俺とアーシアを眺める。
ハッと自分たちの格好を思い出してあわてて離れるけど時すでに遅く、

「おーおー、息もピッタリだな」

「秋人!?」

「ま、上がれよ。いろいろ聞きたいことあるんだろ?」

そう言われ、促されるままにアーシアと家に入った。


◆――――――――――――――――――――◆


「さて、質問タイムといこうか。答えられる範囲で答えるから」

「どうしてアーシアがここにいるんだ? あのあとクソ神父に連れていかれたんじゃ……」

アルジェントさんも私気になりますといった様子でこちらを見てくる。
まあ、なんでと言われても、

「俺がちょちょいと拉致ってきたからな」

「拉致った!?」

「そそ。嫌な空気が流れてるなと町を回ってたらお前とエクソシストを見つけて、映画のワンシーンよろしくな感じだったからな。いやー、一誠のあんな顔久々見たな。アルジェントさんから見てどうだったよ」

「すごく嬉しかったです! ……こんな私を友達とおっしゃってくれて、イッセーさんも危ないはずなのに自身のことよりも気を使ってくれました。……いままでそんな方がいませんでしたから……。だから嬉しかったです。イッセーさん、ありがとうございます!」

「お、おう……」

一誠が口を開く前にアルジェントさんに振った。
彼女の言葉に一誠は照れ、たぶん言おうとしてた言葉とは違う言葉が出ただろう。

ま、いままでこんなに真っ直ぐで純粋な好意を異性から向けられたことがないからだろうな。

「動機はそんなもん。で、いつまで照れてるんだ?」

「べ、べべ別にそんなことないぞ!? そ、それよりもだ!」

露骨に話をそらす一誠。

「あー…その、なんだ。秋人はなんとも思わないのか? 俺が悪魔になったこと……」

ああ、そのことか。
つか、思い付いた話題をすぐに口に出して変にやっちまった感出すのやめい。

「特にないな。もともと悪魔やらの人外の存在を知っていたからな。今も交流あるし、俺、魔法使いだし」

一誠は一誠だ。
今まで積み重ねてきたものが変わるわけでもない。

「はいいいいい!?」

「悪魔や堕天使がいるんだ。魔法使いがいてもおかしくないだろ?」

「ま、まあそうだけどよ……」

つい最近まで普通の生活してたんだから仕方ないといえば仕方ない。
そういったファンタジーな存在はゲームやアニメの中だけで存在すると思ってもな。

「まあ、話はこれくらいにしてここからが本題だ」

話をひと段落つける。

「今回一誠を呼び出したのは依頼……というより誘いだな」

そう言って一枚の紙を渡す。

手紙を手に取って目を通すが首を捻る。
一誠の横から覗くアルジェントさんも同じく首を捻る。

「なんだよこれ?」

悪魔文字で書かれてあるため、内容を読み取ることができない二人に要約して伝える。

「簡単に言ったら、お前を殺し、アルジェントさんを利用しようとする堕天使たちを殺っちゃっていいよーって書いてあるルシファー様からの正式な書面」

「はいいいいい!?」

まあ、驚くのも無理はないか。
アルジェントさんも声を上げていないが、開いた口が塞がらない状態だ。

一誠が襲われている時にルシファー様にこの町で起こっていることを報告し、確認をとってもらったところ、そういった書面が送られてきた。

今回の件は、下の者の暴走であり、こちらの総意ではない。
そいつらの処遇はそっちの好きにしても構わない。
煮るなり焼くなり好きにしてくれ。
と、堕天使総督のアザゼルから返答があったとか。

というか一誠、ちゃんと教わってたんだな、お偉いさんのこと。

「そんなわけでちょっと教会にカチ込み行くが、一誠も来るか?」

「……いいのか?」

「おう。でもその前に一誠、神器出してくれ」

「は? 何でだ?「いいから」お、おう! 神器(セイクリット・ギア)!!」

訳もわからず言われた通りに神器を出す一誠。
光が瞬き終わると左手に赤い籠手が装着されていた。

「ふぅん、龍の籠手(トゥワイス・クリティカル)か」

「ああ。部長が言うにはよくある神器だってさ。それがどうしたんだ?」

よくある神器、ね。
確かにそうだが気になるのは兵士の駒を八つも消費したこと。
ただの龍の籠手にそんなに消費しないし、しても多くて二つ。
ということは、

「秋人?」

疑惑を確かめるべく龍の籠手に触れる。
そして、静かに八雲立つ紫を呼び起こす。

―――香霖堂店主

外界からの漂流物を主に扱う雑貨屋の半妖の青年。
その目で見た物を鑑定し、未知の物であろうと名称や用途などといったことを理解する。

……赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)か。
そりゃそうだ、ただの龍の籠手で兵士八つも消費するわけがない。
このことをグレモリーさんは知っていながら事実を伝えなかった?
……なんか考えがあるんだろうが知らん。

「一誠、それは赤龍帝の籠手だ」

「ぶ、赤龍帝の籠手?」

「ああ。神滅具の一つ。使い方次第で神をも滅ばす神器だ」

カチコミ行く前にちょっくら勉強の時間だ、一誠。 
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