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lineage もうひとつの物語

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動乱
  ダークエルフとエルフ

ケントの街。
ここはグルーディン領地最北端に位置し西へいけばエルフの森があり北東へいけばアデン最大の商業都市ギランへ通じている。
城下町でもありかつては冒険者で溢れ賑わいを見せたがグルーディン戦争のおり多くの住人は戦火から避難し寂れた印象をもつ街になってしまっていた。

そんな街ではあるがここにはグルーディン領のレジスタンス本部がある。
城に近いうえに余りにも減った税収によりラウヘルの関心が薄れ監視が甘いというメリットがあるためだ。
グルーディン領地の税収のほとんどがグルーディオからでありラウヘルの目はそちらに向かっている。

アレン達はケントに滞在しレジスタンスであるアーニャ、エレナは本部へ戻っている。
アレンは相変わらず暇があれば自分を磨き夢中になれば2,3日は戻らない等は普通になりつつあった。

「馬鹿じゃないの」

アーニャにいつも言われるがアレンはさらりと笑って返すのみである。

アレンはいつもの修練のためエルフの森より南へいったところにある森へきていた。
ここはオーク部族の領地でありケントより移り住んだ人間とオークの争いが絶えない場所である。
ここのオーク達は他方のと違いとても強く数が多い。
槍、剣、弓、拳、魔法と多彩な武器を自由自在に操り連携を組んで攻撃を加えてくるオークはアレンにとって修練相手として丁度よく時間を忘れてしまうのだった。
そして今日も夢中になっていた。
槍をかわし剣を籠手で受け拳を振るうオークにツーハンドソードを突き刺しそのまま横凪ぎに斬りつける。
剣を持ったオーク、ロバ族はツーハンドソードに捲き込まれ倒れる。
リーダーであるアトゥバ族を真っ先に倒したため統制はさほどとれていない。
しかし油断はできず次々と現れるオークを倒していく。
オーク達が全て倒れ静寂が訪れる。
聞こえるのはアレンの荒い息遣いのみ。

そこにエルフが顔を出した。
無表情で弓を構える。
アレンは警戒するもののエルフと敵対する理由がない。
夢中になってエルフの森まで入ってしまったのか

「すまない。すぐにここから離れるから弓を収めてくれ」

そう伝えるも無表情のままだ。

「避けろ!」

背後から声がかかり咄嗟に横へ飛ぶ。
無表情なエルフが弓を放ったようだ。
声のしたほうを振り返るとこっちにもエルフ。

なにがなんだか

「助かった。ありがとう。あの人は何故?」

「ダークエルフ、闇に落ちたもののエルフの森に未練があり地下へ行けなかった者達だ」

なるほど
だが見た目が似ているためややこしい。

「敵、で間違いないな?」

アレンは再確認する。

エルフは弓を構えながら返答する。

「そうだ。自信がないなら下がっていたほうがいい。強いぞ」

アレンはにこやかに

「大丈夫。なんとかなるさ」

とツーハンドソードを手に突進していく。
エルフは矢を放ちダークエルフを牽制しアレンの援護に入る。
ツーハンドソードを降り下ろすもバックステップで避けられるが
それも想定済み!
ツーハンドソードを地面に突き刺し瞬時に持ち変え高跳びの要領で飛び上がる。
そして右拳をダークエルフの顔面に叩きつける。
アレンの全体重の乗った拳はダークエルフの鼻をへし折りこれ以上ないくらい吹き飛ばした。
暇をおくことなく離さなかった左手でツーハンドソードを引き寄せ間合いを一気に詰める。
ダークエルフは魔法で対抗しようとするも矢が肩に刺さり詠唱が途中でとまる。
エルフの援護だ。
そのままの勢いでアレンが首を撥ね飛ばした。


「お見事です。ナイト殿」

エルフは手を叩きながら近付いてくる。

「あなたの援護があったお陰です」

アレンは剣を収めエルフに向き直る。

「私はハスランというものです。あなたは?」

「私はアレンといいます。しかし凄い弓の腕ですね。あの距離で肩を狙うとは」

「いやいや急所を狙ったのですが僅かにズレたようです」

ハスランは内心驚いていた。
アレン。
ナターシャの命の恩人であるのは間違いないだろう。
籠手に紋章があるのが見えたのだ。
このような場所で出会おうとは。
今の彼ならブラックナイト隊を相手にしても何ら問題はないだろう。
あれから二ヶ月半。たったの二ヶ月半。
恐ろしいまでの成長速度。
先程述べた急所を狙ったというのは嘘だ。
見知らぬ人物の実力を測るためやったことだがまさか倒しきるとは思いもよらなかった。
まだまだ強くなるであろう。
あのときのお礼を言いたいがまだ言うわけにはいかない。
まだそのときではないのだ。

「それにしてもたいしたもんです。まさかあそこで勝負を決めてしまうとはなかなかできませんよ」

「何の魔法かわかりませんが油断していました。エルフなら魔法があって当然なのに弓だけと思ってしまっていた自分が情けないですよ」

アレンは心底思う。
ハスランという手練れがいなかったら今頃どうなっていたのかわからない。

「十分ですよ。そういうときのために仲間がいらのですから。あなたにもいるのでしょう?」

ハスランは心底今の段階では十分だと感じているのは言うまでもない。

アレンはハっとする。
その通りだ、あの二人がいたのならもっとうまくできたはずだ。

「仰る通りです。自分は急ぎすぎていたようです。」

そして頭を下げる

「お言葉感謝します。自分のダメな部分が一つわかりました」

ハスランは思う。
これがこの男の強さだと。
そしてすぐに修正してしまうのだろう。
強くもなるはずだ。

「お力になれて幸いですよ」

アレンとハスランは握手をかわし

「私はこれからエルフの森に用事があるので失礼します」

「私はケントに戻ろうと思います」

それではどこかでまた

と二人は別れた。


アレンは思う。
まだまだ自分は未熟だと。
そして自分はまだまだ強くなれると。

絶対にナターシャに政権を戻すと。

心に誓う。 
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