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『もしも門が1941年の大日本帝国に開いたら……』

作者:零戦
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第三十八話

 
前書き
遅れた理由?
……艦これしてました。 

 



「イヤッホォォォーーーッ!!」
「ちょ、ちゃんと運転しろやァァァーーーッ!!」

 アルヌスからイタリカへ向かう道で一台のくろがね四起が暴走行為に近い運転していた。
 くろがね四起の後ろでは車列を組んだ九四式六輪自動貨車群が走行していた。

「……まぁたヒルダちゃんが暴走したかな?」
「……それしか無いでしょ」

 後方の九四式六輪自動貨車で運転している片瀬と水野はそう呟いた。

「ふむ、君達が私を自動貨車に乗せたのはこのためだったのかね?」
「はい、そうです大田隊長」

 運転する片瀬に声をかけたのは外交使節団守備隊隊長の大田実大佐である。
 このほど、漸くイタリカ経由で交渉が行われていたのだが本格的に帝都で交渉する事になり、特地方面大使の吉田茂を筆頭に十数人の外交官を帝都に派遣した。
 今村司令官は外交官を守るために上海事変等で活躍した海軍陸戦隊を派遣する事にしてその隊長を大田実大佐に任命したのだ。
 吉田や菅原達も九四式六輪自動貨車の布で覆われた荷台に乗っていた。
 なお、特地にて自動貨車等車で移動する際は予備のタイヤが備えられていた。特地でも不毛な土地は多く、タイヤがパンクする事が暫しあった。
 この報告により、大本営では半装軌式の貨車や装甲兵員輸送車の開発が急ピッチで行われるのであった。それまでの間はアメリカから支援物資で来たトラック等で凌ぐ事になる。
 交渉により守備隊は外交官を守る事が出来、今村司令官は陸戦隊一個中隊を派遣した。
 一個中隊と書類には明記されているが、実際には一個中隊と九四式山砲二門、九四式三七ミリ速射砲三門、九二式重機関銃十二丁が派遣されている。(通信機も複数あり)
 これは念のためと今村司令官がコッソリと書類から外させていた。多すぎると大本営から苦情を来ないようにするためでもあった。

「……この交渉、上手く成功してくれればいいがな……」
『………』

 大田隊長の呟いた言葉に片瀬と水野の二人は何も言わなかった。

「それはそうと……水野兵曹長、エルザさんの事はどうする気だ?」
「そ、それは……」

 大田大佐の呟きに水野は口をつぐんだ。実は水野とエルザの交際は特地派遣軍の上層部にバレる事はなかったのだが、炎龍を退治してアルヌスに帰還した時にエルザは水野を出迎えてそのままキスまで突入したのである。
 しかもそれを今村司令官も見てしまい余計に混乱してしまったが、今村司令官は「構わん。愛に国境や人種等関係無い」と言って二人の交際を認めたのである。

「……両親に手紙を送りました。それから判断してみようと思います」
「成る程な……まぁ頑張ってこい。一発必中で出来たら私が一本奢ってやろう」

 大田大佐はハッハッハと笑うのであった。



――イタリカ――

「……おぇ……」
「……済まん、大丈夫か?」

 イタリカで小休止する事になり、樹はふらふらとくろがね四起から降りて城壁のところで胃の中身を出していた。
 既に十分も出しており、胃の中は空である。それでも樹は胃液を出していた。
 その後ろではヒルダが申し訳なさそうに背中を擦っていた。

「中尉、水です」
「す、済まん……」

 樹は片瀬から水筒を受け取って水をゴクゴクと飲んで深い息を吐くのであった。

「……九六式(九六式艦上戦闘機)で慣れてるはずなんだが……これはキツいわ……」
「ほ、本当に済まない……」

 樹はそう呟くのが精一杯だった。イタリカには特地派遣軍から整備部隊、工兵部隊、補給部隊、歩兵部隊と合わせて二個大隊ほどがイタリカに駐屯していた。
 これは無理矢理の駐屯ではなく、イタリカからの要請であった。
 イタリカ当主のミュイ自身ではなく、側近達が会議をして決めたのだ。
 彼等は帝国と日本との取引所としてイタリカを利用しようとしていた。
 イタリカには多数の商人達が集まっておりイタリカは以前よりかは増して栄えていた。
 そのため、使節団は滞る事なく燃料の補給をして帝都へ出発するのであった。
 ちなみに運転は樹が代わったらしい。

「(ヒルダの奴、車のレースがあれば優勝しそうだな……)」
「(……何をやっているのだ私は……折角ロゥリィがいないのだから頑張ろうと思っていたのに……)」

 両者はそのように考えていた。なお、伊丹はレレイ達と共にロンデルという学問の都へ向かっていた。
 そのため、ヒルダは異様に燃えていた。

「……ロゥリィに負けてたまるかッ!!」
「うぉッ!? な、何だ急に……」
「す、済まん……」

 二人の仲が深まるかどうかはまだ分からないのであった。
 そして使節団一行と守備隊はアルヌスから三日目で帝国の帝都へと到着した。

「日本外交使節団とその護衛だ」
「はい、上から聞いております。私が案内します」

 門の守衛がそう言って馬に乗って先頭を行き出した。使節団はそれに従うように車をゆっくりと走らせる。
 程なく到着したのは正門を構えた大きな館だった。

「此方は翡翠宮と呼ばれています。此方を使って下さい」
「そうですか。ありがとうございます」

 代表で吉田が言うのであった。使節団が到着したのは皇城にいるピニャの耳に届いていた。

「そうか、来たか……」
「姫様、どちらへ?」
「翡翠宮だ。シャンディー、付いて参れ」

 ピニャはそう言って騎士団の一人を連れて翡翠宮へお出向くのであった。


 
 

 
後書き
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