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魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~

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A's編 その想いを力に変えて
  43話:新たな力 ファイナルコンプリート

 
前書き
 
じ、時間掛かった〜…。
大変遅くなりました。結構長いです。

個人的な理想を詰め込んでみました。なんか気に食わなかったら、ごめんなさい。
  

 
 

吹き荒れる爆煙。そこから一つの影が転がり出てくる。

「ぐあぁっ!」

マゼンダを基本としたその姿は、勿論ディケイド―――門寺士のものだ。
煙から出て来た士は、ゆっくりと立ち上がり、煙の中にいる筈の人物を見据える。

「バカな…あれ程の力を、たったあれだけの人間だけで……!」

驚きの声を上げながら、煙の中で立ち尽くすのは、禍々しい姿をもった人影―――プロトW。

「お前には人を見る目がなかった、ってだけだろ…」

ま、これでお前らの計画も台無しだな…、とはっきり言い放つ士。
それを聞いたプロトWはギロリと士を睨み、剣を構える。

「ふざけるなぁっ!」
「っ、ぐああぁぁっ!?」

エネルギーを纏った剣が振り払われ、斬撃が士を襲う。

「何故貴様は…貴様らはこの世界を守ろうとする!矛盾だらけのこの世界を…愚かで不完全な人間を、何故救おうとするのだ!?」

怒りと憎悪で歪むプロトWの表情。それを見ただけでも、この世界に…人間に異常な程の憎しみを抱いていることがわかる。

「環境破壊、戦争、人種差別……これらは全て人の手によって作り出された人の罪!人が今のままでは解消しえない、罪深き傷跡だ!だからこそ、今の世界を無に還し、完全なる新たな世界を作りだそうというのに……何故貴様らにはわからんのだ!?」

まるで心の奥底に溜め込んでいたものを、一気に吐き出すかのように、世界や人間への憎悪をぶちまける。
丁度その時、なのは達〝闇の書の闇〟撃退組が、二人の近くに到着する。

「あれは…ディケイドさん!?」
「はやてちゃん、知ってるの!?」
「一回助けてもらったことのある人や。もしかして…あの人が士君なの?」
「う、うん…」
「そうなんだ」
「う~ん…どうにも実感がわかへん…」

上空でそんな会話をする三人。ディケイドの正体を知らず、士の事は知っていたヴォルケンズも、頭を悩ませていた。

「あれが士君…?」
「なるほど、それならディケイドが我らの事を知っているような口ぶりをするのはわかる。だが……それなら何故管理局の連中に知られなかったのだろうか」
「………」
「…士…なのか…?」

とまぁ、色々な反響を呼んでいる訳だが……今はそれどころではなく。

「……貴様らぁ…」
「「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」」

目的の物を、直接じゃないにしろ倒した人物達に、プロトWが黙っている訳がない。明らかに怒りの雰囲気をぶつけてくる。

「おいおい…今のお前の相手は俺だろうが…」
「……ならば貴様を倒してから、じっくりといたぶってやるさ…」

そう言いながらゆっくりと切っ先を士に向ける。その背後からは禍々しい黒いオーラが放出されている。

「貴様らを葬って…この不完全な世界を無に還す…!」
「……不完全な世界、か…」

プロトWの言葉を繰り返すように呟く士。

「そうだ。だからこそ、この世界は変わらなければならない!」
「…そうだな、確かにそうだ。この世界は不完全だよ」

そう言い返しながらプロトWをまっすぐ見据える。その仮面の下にある目は、ただ相手の姿だけを捉えていた。

「世界とは人が作り出すもの。人が不完全ならば、世界もまた不完全だ」


〝環境破壊〟……人が利便性のみを追求し続けたが故の問題。

〝戦争〟……人が人を憎み、傷つけ合う事で生まれる衝突。

〝人種差別〟……人が自身と別の生まれの人との少しの違いを受け入れられず、起こってしまう差別。

それら全ては、人の心が決め手となるものばかりだ。

「お前の言う通り、人は皆愚かだよ。矛盾だらけだし、不完全だ」

―――ある奴は自分の母親の笑顔の為に、自分を犠牲にしてでも戦おうとしたり。

―――ある奴は自身が助かる方法があるとしても、人を傷つけるのを拒み、家族と同じ時間を過ごすことを選んだり。

―――ある奴は自分の心を押し殺して、表面では笑顔でいて、皆を安心させようとしたり。

「だけど人間には…俺達には!前に向かって歩こうとする意思がある!今の自分を変えようとする決意が!」

士は右手で拳を作り、胸にドンッと当てる。

「それだけの思いを、俺達人間は(ここ)に持てるんだ!その思いは、人間に力を与える。未来(さき)へ向かう為の一歩を、踏み出す為の力と勇気を!」

「人間、愚かでもいいじゃねぇか!矛盾だらけでも、不完全でも構わねぇ!!愚かな自分を、不完全な自分を変える為に…どんなに転んでも、道を間違いたりしても、人は前に進んでいくんだ!!」

そして胸に当てた拳で今度はプロトWをビシッと指差し、大きな声で告げる。

「未来への可能性を捨てて、今の自分を変えようともしないてめぇは、根本から俺達に負けてるんだよ!!」

それを聞いたプロトWの体から、さらに多くの闇が吹き出してくる。

「―――…ふざけるな……ふざけるなぁぁぁぁぁぁ!!!」

「何が未来への可能性だ!そんな物を信じるから、世界は滅びていくんだ!今の人類に、世界を変えていく力はない!ただ滅びを自身の手で進めていくのみだ!
 ならば人類を滅ぼせばいい!そして作り替えるのだ!完全なる世界に…我らが〝大ショッカー〟が……この私がぁぁ!!」

プロトWの咆哮が、海鳴の海岸に響き渡る。彼の体から吹き出す闇が、彼自身を包み込んでいく。

『クロノ君!大変だよ!』
「っ?どうしたエイミィ?」
『海鳴の海上で、巨大なエネルギー反応を感知!さっきまで〝闇の書の闇〟がいたポイントだよ!』
「何っ!?」

その時、エイミィの連絡を受けたクロノは、慌てて振り向きながら先程まで戦闘を行っていた場所を見る。それに釣られた数人も、クロノと同じようにその場所を見る。

するとそこには、紫色の光を発しながら宙に浮かぶ、“闇の書の闇”の残骸があった。

「なっ!?」
「〝闇の書〟の残骸!?」

それらが全て宙に浮くと、こちらに向かって飛んできた。慌てて空中にいるメンバー全員が避け、残骸の行き先を見つめる。

そこにいたのは、先程から禍々しい闇を放つ、プロトWだった。
プロトWの付近に到達した残骸は、数回彼の周りを周回すると、紫色の粒子となって、プロトWの体へと入り込んでいく。

「うおおおおおぉぉぉォォォォォオオオオオオオ!!」

全ての粒子が彼の体に入り込んだ瞬間、彼の体に異変が起こった。
両腕、両足は肥大化していき、それに合わせてか、体自体も大きくなっていく。体に走っていた多色のラインはどす黒く濁り、体の装飾もいっそう禍々しくなる。しまいには、腕がさらに二本生え、背中に六枚の黒い羽が現れる。

「GAAAAAaaaaaaaaaaa!!!」

その姿は既に怪人を通り越し―――まさに、怪物。

「全テヲ滅ボス…コノ世界ノ全テヲ……滅ボス!!」
「くっ…!」

体から発せられるエネルギーは、まさに狂気。その圧迫感に、士は腕をガードするように前に構えるしかなかった。

「ダークスピリッツ!!」
「ぐあああぁぁぁぁぁっ!?」

プロトWは六枚の羽の先を前へ運び、エネルギーを固め、黒い球体として四本となった手に与え、それを士に向けて投げ放つ。
それらが地面に当たってできた爆発や衝撃に呑まれ、士は吹き飛ばされた。

「ぐっ、あぁ……うぅ…ぐぅ…」
「士君!」
「士!」
「ディケイドさん!…って士君!?」

爆発から転がり出た士は、そのダメージで変身が解けてしまう。それを見て、ようやく士がディケイドだという確固たる証拠を得たはやてとヴォルケンズは、目を丸くして驚いた。

「ぐっ、ぅぅ……く、そぉ…!」
「滅ボスノダ…不完全ナ世界ヲ…愚カナ人間達ヲ……新タナ世界ヲ創リ出スノダ!!完全ナル…完璧ナル世界ヲォォォォォ!!」

体中の闇をまき散らしながら、雄叫びを上げるプロトW。その声と気迫に、その場にいる全員が圧迫される。

(これ程の気迫…今まで味わった事があるだろうか…!?)
(これが士が戦う怪人の力…正しく脅威的だ…)
(恐い…こんな力、見た事ない…)

シグナム、クロノ、シャマルだけでなく、皆がそれぞれ心の内でプロトWの脅威に驚く中、ただ三人だけ…他の全員とは違う事を考えている者がいた。

(士君……信じてる…)
(士は諦めない。どんなに力が強くたって…)
(士、君……!)

なのは、フェイト、はやて。この三人は、確かにプロトWに脅威を、怯えを感じながらも、それ以上に……士への想いが強かった。

己の相棒(デバイス)を握りしめ……
真っすぐ視線を士へ向け……
両手を繋ぎ合わせ……

その想いが届いたのか…倒れていた士は、足を少しもたつかせながらも、ゆっくりと立ち上がる。

「残念だが…この世に、完璧とか…完全なものなんて存在しねぇよ」

既にボロボロになった上着を脱ぎ捨て、肩を抑えながら見据える士。

「何故ダ……何故ソウマデシテオ前ハ立チ上ガルノダ…」
「そんなの決まってんだろ。人が戦うのは、失いたくないもんがあるから…守りたいもんがあるからだ…!」

プロトWの言葉にそう返しながら、士はしっかりと立ち上がる。その両手は、力強い拳を作っている。

「てめぇが人の…〝未来への可能性〟を信じられねぇ、っていうんなら…俺が証明してやる」
〈 Stand by, Ready 〉

そして右手にあるトリスをディケイドライバーへと変え、腰に当てる。

「俺達はこの手で未来を掴むまで走り続ける!いや…未来を掴んでも、走り続ける!この身が衰えようと、命つきるその時まで、あがき続ける!」

士のその言葉に答えるように、ライドブッカーが光を放ち始める。
そして次の瞬間、ライドブッカーが勝手に開き、一枚のカードを吐き出す。

それは、〝神〟から渡された、真っ黒に塗られたカード。そのカードは渡された時とは違い、淡く光り輝いていた。

「………」

士はそれを見て、黙ったままゆっくりと手を伸ばす。

(―――俺は守りたい…)

手を伸ばす中、士は心の中で黒いカードに語りかける。

(大切なもんを…失いたくないから…。あいつらが悲しむ顔を、見たくないから…)

士の頭に浮かぶのは…家族、友人、仲間。今でこそわかり合える、最高の繋がり。

(だから…応えろ。俺の心に……俺の思いに…!)


―――――応えろっ!!


そしてカードは、士の思いに応えるように、光をさらに強くする。
その眩しさに、その場にいる全員が目を瞑る。

「グオオォォォォ!?」
「うわっ!?」
「うぅ…!?」
「くっ…!?」

そして光が段々と収まっていき、光り輝くカードは、士の手の中にあった。

「これが…俺だけの力…」

そしてまた別の場所から、同じ光が漏れる。そこへ手を伸ばし、手に取ると…それは、ケータッチだった。

士の手の中で、呼応するかのように光るカードとケータッチ。そして、ケータッチも一瞬強く光り、その姿を変える。
マゼンダ色だった部分は金色へと変わり、その大きさも一回り大きくなる。

「……さぁ、見せてやるよ。人の可能性を…思いの力を!!」

士はそう言うと、光るカードをケータッチに挿入する。光が収まりその画面に映るのは、円状に配置された、十三ものライダーレクストだった。
そして士は、躊躇いなく画面へと指を伸ばす。

〈 KUUGA AGITO RYUKI FAIZ BLADE HIBIKI KABUTO DEN-O KIVA W OOO FORZE WIZERD 〉


〈 FINAL KAMEN RIDE・DECADE FINAL COMPLETE 〉


十三のライダーレクストをタッチし、最後に〝F〟の文字をタッチ。ケータッチをディケイドライバーのバックルと取り替える。
士の周りに数体のホログラムが現れ、士をディケイドへと変える。

しかし、ここでコンプリートとの違いが現れる。
ライドブッカーから十三枚のカードが飛び出し、士の周囲を囲む。頭部はディケイドクラウンへ変わり、両肩のラインは開き、胸の装甲はコンプリートフォームとは違う変化をし、胸部が突き出る形になる。

そして宙をさまよう十三枚のカードがそれぞれディケイドの装甲へ追加されていく。両肩に二枚ずつ、胸部は上に五枚、下に四枚の形で分かれる。ディケイドクラウンには、新たなカードが表示される。

色合いはコンプリートフォームのものに、銀の部分にマゼンダと金色のラインが加わる。

「これが……俺だけの力……」


―――――〝ディケイド・ファイナルコンプリートフォーム〟だ!!


解放された新たな力。その姿になのは達は驚きを見せる。

「GAAAaaaaaa!!」

そこへ遂に動き出したプロトW。暗黒のエネルギーを右側の二本の拳に纏わせながら、士に向けて突撃を始める。

「っ!士君!」

それを見たなのはは、士に向けて声をかける。

〈 KUUGA!〉
〈 FINAL KAMEN RIDE・RAIZING ULTIMATE 〉

だが士はそれに返答せずに、無言のままケータッチに触れる。するとディケイドの装甲に表示されていた一枚が光り、士の前にホログラムとなり現れ、士に向かってスライドしていく。
士は足を少し開きしっかりと身構える。

そして士の鼻先にホログラムが到達するのと同時に、プロトWが士に向けて拳を突き出した。

「UGAAAaaaaaaa!」

―――ズシィィ……ン…!

聞こえて来たのは重い音。しかし、誰かが殴られた訳ではない。

「―――…何ィ…!」

拳を突き出した状態のプロトWが声を上げる。その拳の先には……


「まだ…甘いな…!」


先程までのディケイドの姿ではなく、黒い装甲に金色の装飾が施された、別のライダーの姿。

古代の超戦士が、新たの力を得た事によって誕生した、最強フォーム〝クウガ・ライジングアルティメット〟だ。

士はその姿の状態で、プロトWの二つの拳を両手で受け止めていた。

「ナ、何ダソノ姿ハ!?」
「ぅぉぉぉおおおおおおおおおっ!!」
「ッ!?」

プロトWが驚く中、士はその強靭な力で、プロトWの拳をはね除ける。

「だああぁぁぁ!!」
「GUOOOoooooooooo!?」

数歩下がって無防備になったプロトWへ、飛び蹴りを放つ。
プロトWはその破壊力に負け、地面に背をつける。

「な、なんて威力だ…!」
「あの巨体を倒すなんて…!」
「すごい…!」

なのは達はその光景に驚き、声を漏らす。

「グッ、ヌゥゥゥ…!」

倒されたプロトWは、両腕に力を込め、ゆっくり立ち上がる。

「アリ得ナイ……コノ私ガ、人間ナドニ倒サレルナド…アリ得ナイ!アリ得ナイノダァァァァ!!」

立ち上がったプロトWは、その背中にある羽根を大きくはためかせ、闇のエネルギーを一カ所に集め始める。

『すごい数値……エネルギー量、半端ない事になってるよ!!』

その闇がもの凄い力を持っている事が、エイミィの口から語られる。

「なら、俺も…いや、〝俺達〟もいこうか…」
〈 RYUKI!FAIZ!KABUTO!〉
〈 FINAL KAMEN RIDE・SURVIVE, BLASTER, HYPER 〉

士はケータッチを一度外し、マークをタッチする。そして再び戻すと、三枚のカードがホログラム状になり、今度は士の横を通過する。

士の右横には〝SURVIVE・烈火〟のカードをドラグバイザーから変化した〝ドラグバイザーツバイ〟に装填し発動した、龍騎の最終形態〝龍騎サバイブ〟が。

士の左には、強化ツール〝ファイズブラスター〟を使い、基本色を赤へと変え、背部にはマルチユニット〝フォトン・フィールド・フローター〟を装備した、ファイズの最終形態〝ファイズ・ブラスターフォーム〟が。

そのさらに左には、ハイパーゼクターを使用し、カブトホーンを大型化、全身のアーマーが以前の二倍以上の強度を誇る〝カブトテクター〟へと変わった、カブトの第三形態にして最強形態〝ハイパーフォーム〟が並ぶ。

「いくぜ、トリス!」
〈 All right, Sword mode 〉

そしてライドブッカーをソードモードへ変え、その切っ先をプロトWへ向ける。
それと同時に、士の横に並ぶ三人がそれぞれ行動を起こす。

〈 Exceed charge 〉

ファイズはファイズブラスターをエクシードチャージし、その銃口にフォトンブラットを溜め始める。

〈 シュートベント 〉

龍騎はドラグバイザーツバイにカードを差し込み発動。後ろにドラグランザーが現れると同時に、銃口を向ける。

〈 All zecter combine. Maximum Hyper Cyclone 〉

カブトはパーフェクトゼクターを、異次元から現れたザビー、ドレイク、サソードのゼクターと合体させ、パーフェクトモードへと変え、銃口を向ける。さらにその反動を相殺させるため、カブテクターを展開する。

「消エ去レェェェ!!カオス・フレアァァァァァ!!」

そして遂に、エネルギーを溜めきったプロトWがその力を解放する。暗黒に染まる砲撃が、真っすぐに士の元へ向かう。

「うおおおおぉぉぉぉぉ!!」
〈 Dimention stream!〉

対する士は、ディメンションバスターを超える魔力砲、〝ディメンションストリーム〟を放つ。
それと同時に龍騎、ファイズ、カブトの技も放たれる。四つの攻撃が一つとなり、プロトWの攻撃と衝突する。

そして士達の攻撃が、プロトWの砲撃を突き破る。

「何ィ!グアアアァァァァ!?」

士達の攻撃は、さらにプロトWをも飲み込み、その巨体にダメージを与える。

「バ、バカナ……!」

プロトWは煙を上げながら、後退する。士はライドブッカーを担ぎ、プロトWを見つめている。

「どうした?その程度か?」
「コノ……コノオオォォォォォォ!!」

士の言葉に、プロトWの咆哮が飛ぶ。
するとプロトWの背後に、三枚の灰色のオーロラが出現する。それが動くと、その場に大量の怪人達が現れる。

「う、うわ…」
「うじゃうじゃいる…」
「まるでアリみたいだな…」

クロノの言ってた言葉に、なんともまぁ違和感があまりなく。しかしこの集団にはマスカレイドドーパントやクズヤミー、グールのような雑魚の部類の怪人だけでなく、より上級の怪人もかなり混ざっている。
まず普通の人間は勿論、それなりに強いというだけの魔導師では勝てないだろう。

「ハハハ!コレダケノ数ヲ、貴様ハ相手ニデキルカ!?」
「……はぁ…」

プロトWの愉快そうな笑いに、士はため息をつく。
そして再び視線をその怪人の集団に向け、ケータッチをベルトから外す。

〈 AGITO!BLADE!HIBIKI!DEN-O!KIVA!FORZE!〉
〈 FINAL KAMEN RIDE・SHINING, KING, ARMED, CYO CLIMAX, ENPEROR, METEO FUSION 〉

六つのライダーレクストを選択し、ベルトへ戻すと、胸部の装甲にあった六枚のカードがホログラムとして士の横と前に現れる。

士自身がホログラムをくぐると、スペードのK(キング)をラウズすることで、全てのスペードのストーのアンデットと融合した事で誕生した、ブレイド最強形態〝キングフォーム〟に。

その横には、音撃増幅剣〝装甲声刃(アームドセイバー)〟を用いて、体をディスクアニマルでできた装甲で包んだ、響鬼の最強形態〝装甲響鬼(アームドヒビキ)〟と……

四十人の絆の力で生成されたフュージョンスイッチを使いフォーゼとメテオの力を融合させた、紫を基調としたコズミックやメテオストームを合わせた姿をした特殊強化形態〝フォーゼ・メテオフュージョンステイツ〟が並ぶ。

そしてその少し前に、バーニングフォームが太陽の光を浴びて、外皮が割れて誕生した、アギトの最終形態〝アギト・シャイニングフォーム〟と……

モモタロス、ウラタロス、キンタロス、リュウタロス、そしてジーク。計五体のイマジンのオーラを一挙にフリーエネルギーに変換し変身する、クライマックスフォームの強化形態にして、電王の究極形態〝電王・超クライマックスフォーム〟……

そしてタツロットの力で拘束を解き放ち、ファイナルウェイクアップして変身する、キバの本来の形態・真の「黄金のキバ」と呼ばれる、最強形態〝キバ・エンペラーフォーム〟の三体が並ぶ。

「ナッ、五体ノライダーヲ召還シテ…自身モ変身シタダト!?」
「これで問題ないだろ?」

士は驚くプロトWを見て、小さく笑みを浮かべながら左手を持ち上げる。

「ヌゥゥ…ヤレェェェェェェェェェ!!」
『ウオオオォォォォォォォォォォ!!』

プロトWは背後にいる怪人の集団に号令をかけ、集団は一気に動きだす。大地を駆ける怪人達の足音は、地鳴りのようになる。

「さぁ……アタックといこうか!」

そして士が左手でパチンと指を鳴らすと、前にいるアギト、電王、キバの三人が武器を構える。

アギトは専用武器・シャイニングカリバーのツインモードを……

「俺達の必殺技……ディケイド・ファイナルコンプリートバージョン!」
〈 Charg And Up 〉

電王はベルトに接続されているケータロスのチャージアンドアップスイッチを押し、ケータッチを展開してセタッチする。そして音声と共にフリーエネルギーがフルチャージされ、デンガッシャー・ソードモードへ注がれる。

「キバット!」
『ウェイクアップ!』

キバはファンガイアの王の為に作られた魔剣・ザンバットソードからウェイクアップフエッスルを取り、キバットに吹かせる。インペリアルブレードを研ぎ澄ませ、刀身が赤く輝くザンバットを構える。

そして三人のライダーは一斉に飛び出し……怪人の大群へ突っ込んでいく。

「オラオラオラオラオラオラ!!」
「はああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「だあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

三人はそれぞれ一撃必殺の威力を誇る斬撃を放っていき、怪人達をなぎ倒していく。

「ナッ、バカナ…!三人ダケデコレダケノ数ノ怪人ヲ…薙ギ払ッテイルダト!?」

正確には全員仕留めきれている訳ではないが、漏れた数体が士の方へやってきても、一瞬で斬り捨てられるだけなのだから、はっきり言って影響はない。

「コノォ…ナラバコイツラ共貴様ラモ葬ッテクレル!」

そう言って再び闇のエネルギーを作り出すプロトW。それを遠目で確認した士は、横にいる二人のライダーにアイコンタクトを送り、二人はそれを見て一回頷く。

すると二人は士より数歩前に出て、それぞれ行動し始める。

〈 Limite Blake 〉

フォーゼは取り出したコズミックスイッチをバリズンソード・スラッシュモードに差し込む。その刀身には青いコズミックエナジーが灯される。

「鬼神覚声!」

響鬼は装甲声刃を、鉤状の鍔を180度折り畳み音撃モードへと変え、自身の声を増幅させて、音撃の波動として刀身に纏わせ始めた。

「「「っ!」」」
「ライダー…超銀河フィーーニッシュッ!!」
「はぁぁぁあああああああっ!!」

前方で怪人をなぎ倒していた三人は何かを察し、ほぼ同時に飛び上がる。
それを見たフォーゼと響鬼はそれぞれ、必殺の斬撃を放つ。青く三日月状の斬撃が怪人を両断し、響鬼の音撃が敵を一閃する。

飛ぶ斬撃と超巨大化された刃での攻撃は、その場にいた全ての怪人を消し去った。

「ナッ…!?」

その光景に、プロトWは絶句する。あれだけの数の怪人が、ものの数分で亡き者となったのだ。それを見て驚かない人物など、早々いないだろう。その所為か、プロトWは攻撃の手を止めてしまう。

〈 FINAL ATACK RIDE・bu bu bu BLADE!〉
「ッ!?」

そこへ、プロトWを現実に呼び戻すかのようにある音声が響く。プロトWがその音声が聞こえた方向へ視線を向けると……

〈 ♠10, J, Q, K, A. Royal strate slash 〉
「うおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

そこには光り輝く大剣〝重醒剣キングラウザー〟を掲げた士の姿があった。さらにその前には、士とプロトWのいる間の直線上に、五枚のカードが現れていた。
士はそのカードを突っ切るように飛び出し、プロトW目がけて一直線に突進してくる。

「はぁぁああっ!!」
「GYAAAAaaaaaaaaaaaaaa!?」

そしてプロトWの目の前までやってきた士は、キングラウザーを一閃。プロトWの左肩から斜めに斬撃を当て、その脇を通過する

「ガッ、ガァァ……ヌゥゥ!!」

その激痛にプロトWは悶え後ずさりをするが、なんとか踏みとどまり右拳にエネルギーを込める。

「コノォォォォ!!」

黒く染まった拳で裏拳を放つプロトW。

〈 Metal 〉
―――ギィィンッ!
「ナッ!?」

だが士はカードを使用する事なく、その体に宿すアンデットの力を使い、左腕一本で防いでみせる。
そして士の剣には……未だ光が灯ったままだった。

「フンッ!」
「ッ!?」

士は左腕に力を込め、振り返りながら左腕を振り、プロトWの拳をはね除ける。

「はぁぁぁあああっ!!」
「GUAAAAAaaaaaa!?」

そしてまだ力を残していたキングラウザーを振り上げ、今度は右肩を目指す形で傷を負わせる。

「コ、…コンナバカナ話ガ…アッテ、タマルカァ…!」

体に罰印を負わされたプロトWは、闇のエネルギーを再び作り出し、そのエネルギーを四本の腕に集め始める。

「そんじゃま、こっちも出血大サービスといこっか」
〈 W!OOO!WIZERD!〉
〈 FINAL KAMEN RIDE・GOLD EXTREM, SURPER TATOBA, INFINITI DRAGON 〉

ブレイドからディケイドへ戻った士はそう言って、再びケータッチを外しライダーレクストを押す。そして胸部の装甲の三枚が光り、士の前でスライドする。

そこには、〝仮面ライダー〟の勝利を願う風都の人達の祈りを乗せた風をエクスタイフーンに吸収し、さらなる進化と覚醒を遂げたサイクロンジョーカーエクストリームの強化形態〝W・サイクロンジョーカーゴールドエクストリーム〟と……

未来で開発された〝スーパータカ〟・〝スーパートラ〟・〝スーパーバッタ〟のメダルを使用して変身するタトバコンボの強化形態〝オーズ・スーパータトバコンボ〟……

そして“フィニッシュストライクウィザードリング”を使って変身する、インフィニティースタイルにウィザードラゴンの能力を宿したインフィニティースタイルの強化形態〝ウィザード・インフィニティードラゴン〟の三人が佇んでいた。

「クソガァァァ!!」

プロトWはそれを見て、闇のエネルギーを再び球体にして三人目掛けて投げ飛ばす。

「「「ハッ!!」」」

しかし三人に易々と当たるつもりがある筈もなく、それぞれ自分の羽根を広げ空を飛ぶ。

〈 Extrem, Maximum Drive 〉

大きな三対の羽根をはためかせながら、エクストリームメモリを閉じ、再び展開させ、マキシマムドライブを発動。両足をそろえてプロトWに照準を合わせる。

〈スキャニングチャージ!〉

オーズは背中に出現した紅いオーラ状の翼で飛行しながら、空中に赤・黄・緑の三つのオーリングとその先にいるプロトWを見据える。

「はぁああっ!」

ウィザードは右足にドラゴスカルを具現化させ、ドラゴウィングで飛翔しながらその右足をプロトWに向ける。

「小癪ナァァァァ!!」

そのプロトWはというと、四本の腕に闇のエネルギーを纏わせて、迎撃態勢を整えていた。

「たああああああああああ!!」
「せいやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「はああああああああああ!!」

「ヌゥオオォォォォ!!」

Wの〝ゴールデンエクストリーム〟、オーズの〝スーパータトバキック〟、ウィザードの〝インフィニティーエンド〟と、プロトWの四つの拳が激突し、その衝撃は突風となり周囲に吹き荒れる。
だがそれも少し均衡するだけで、すぐに三人のライダーがプロトWの拳の壁を突き破り、本体へダメージを与える。

「GYAAAAAAAAAAAA!!」

三人のライダーキックを受けながら、尚も立ち続けるプロトWだが、その様子が先程よりも激変し始める。
ブレイドでの攻撃や、三人のライダーキックによって傷つけられた部分から、黒い煙が吹き出し始めたのだ。

『マズい…マズいよ、クロノ君!』
「今度はどうした!?」
『奴の体内にあるエネルギーが膨張し始めてる!これ以上時間をかけたら、エネルギーが暴発して……そこら一帯が消えちゃうかも!!』

そこでまたもエイミィから重大なお知らせが。プロトWが吸収した闇の書の力が暴走し始めていたのだ。

「士!早く決めてしまえ!」
「慌てなさんな、もうそのつもりだからよ」

クロノは焦りながら大声をかけると、士は冷静に返事を返す。そしてライドブッカーから一枚のカードを取り出す。

「これで…ラストだ!」
〈 FINAL ATACK RIDE・di di di DECADE!〉

そのカードをバックルへ挿入し、発動する。

―――ガギィン!
「ッ!?」

するとディケイドの黄金のライダーマークが、プロトWの両脇に二つに割れた状態で現れる。そしてそれがプロトWを挟んで、その動きを止める。

さらにはプロトWの目の前に、ディケイドを抜いたウィザードからクウガまでの十三の黄金のライダーマークが出現する。

「フッ!」
〈 Final dimention kick!〉
「はあああああああああああああああああ!!」
「GAAAAAAAAAAAAAAAA!!?」

クウガのライダーマークの前まで飛び上がった士は、プロトW目掛けて飛び蹴りを放つ。
士の蹴りとプロトWの体がぶつかり、周囲は閃光に包まれる。その眩しさに、なのは達は視界を腕で遮る。

そして……閃光が消えた場所には、士と、その背後にプロトWが立っていた。

「……フ、フフフ…」

不意にプロトWが笑みを浮かべて小さく笑い出した。ゆっくりと士に振り向いていくが、その体から所々火花が散っていた。

「今回ハ、アナタノ勝チデスガ……コレデ終ワッタト、思ワナイコトデス…。私ハ所詮…ショッカーノ実験、ノ〝試作品〟。コレカラ先ハ…ドウナルカ、判リ…マセンヨ…?」
「…………」

口調も最初の頃のものに戻り、笑いながらそういうプロトW。
だが士は、背中を向けたまま、口を開かなかった。

「フフフ、ハハハハハ………」


―――大ショッカーに、栄光あれぇぇぇぇぇぇぇ!!


後ろ向きに倒れていったプロトWは、そう叫んで爆発の炎に包まれた。

「…………」

士はそれを顔を少し向けて、高々と立ち上がる炎を見据えていた。

「……やった…?」
「…だよ、ね?」
「…やったんだ……」

それを見ていた観戦組は、それぞれ声を漏らしていた。

「「「士(君)!!」」」

そしてなのは、フェイト、はやての三人はすぐさま士の元へやって来た。

「…なのは、フェイト…それにはやても…」

士はそこでようやく口を開いた。砂浜に着地した三人は、真っすぐ士へと走っていく。

「……悪い…」

その時…士の口から小さく言葉が漏れた。それを聞いた三人は止まりはしなかったが、走る速さが少し落ちた。

「…もう……限界、だわ…」

そう言いながら、士の体は前のめりに倒れ始める。変身も解け、膝から崩れるように砂の上に倒れた。

「士君!?」
「士!」
「士君!」

三人の呼び声を聞いたのを最後に、士は意識を手放した。

  
 

 
後書き
 
自分の理想をつぎ込んで、うまく立ち回らせて…これでいいのだろうか?
いや、疑っちゃダメですよね。うん、疑っちゃダメだ。

ディケイド・ファイナルコンプリートの胸部の形は、ディエンド・コンプリートのを想像していただければ、と。

感想、待ってます。
  
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