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深き者

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第二十七章


第二十七章

「遊び場でしょうね、連中にとっちゃ」
「そうか、遊び場か」
「それだけに戦うとなっちゃ自信があるんでしょうね。ただ」
「ただ。何だ」
「そこが狙い目ですね」
 また言う本郷だった。
「遊び場っていうだけで俺達には楽勝でいけるって思ってるんでしょう。策も仕掛けていますしね」
「そうだな。それも狙い目だな」
「思う存分やってやりますよ」
 海に向かって歩きながら楽しそうに笑っている本郷だった。そしてその横には役がいる。二人は並んで海に向かっていくのであった。そうしてここで。
「それではだ」
「先手を打ちますか」
「海にいるならばだ」
 既に戦いははじまっている、それをわかっている今の役の目であった。
「空だ」
「そうですね。まずは空から」
「使うといい」
 すぐに白い札を本郷に投げた。そして彼もまたその白い札を備える。すると二人の背にそれぞれ一対の翼が生えたのであった。
「翼ですか」
「まずは飛ぶ」
 役はまた言った。
「そして空から仕掛けるとしよう」
「奴等は俺達がそのまま海に入って来るって思ってるでしょうね」
「間違いない」
 役の今の言葉は確信そのものであった。
「それはな」
「ですね。じゃあそこを衝いて」
「先んずればだ」
 まずはこの言葉を出す役だった。
「そしてだ。敵の虚を衝く」
「孫子ですね」
「数が多いならばそれはそれで戦い方はある」
 言いながら二人海の上にあがった。そこから見えるものは。
 海の中に隠れている無数の異形の者達であった。空からはどういった姿かは詳しくは見えない。しかし鱗の身体に魚そのままの巨大かつグロテスクな顔はそこからでもはっきりと見えるものであった。それは明らかに人のものではない、そうしたものだった。
「あの連中ですね」
「上から見る限りだとあれは」
「ええ、思っていた通りですね」
 鋭い目で隣に飛ぶ役の言葉に答えたのだった。
「あいつ等ですね」
「そうだな。それではだ」
「早速やっていいですか?」
 こう役に問うたのだった。上を飛びながら。
「分身使ってそのうえで」
「忍術を使うか」
「それならあの連中一気に減らせますけれど」
 下に集まっている彼等を見ての言葉である。
「それこそね」
「なら使うといい」
 役も言いながら既に何かを出していた。見ればそれは剣であった。
「私もこれを使う」
「剣ですか」
「ただの剣ではない」
 既に右手に持っている。それは緑色の刀身を持っている。
「この剣がな」
「成程、連中の為ですね」
「そうだ。水の中は確かに奴等の遊び場だ」
 それはよくわかっているのだった。最早言うまでもないことであった。
「しかしだ。だからといって」
「奴等にとって危険なものがないわけじゃない」
「過信は禁物だ」
 役はここでこうも言った。
「そこを付け込まれるからな」
「俺達みたな連中にってことですね」
「そういうことだ。さて」
 ここまで話して、であった。
「ではやるとするか」
「そうですね。見たところ連中は」
 本郷は一旦海を見た。上を見上げている影は一つもなかった。それを見てまずはにやりとするのであった。
「気付いていませんしね」
「そうだな。誰も上から来るとは思っていない」
「精々あれですね」
 本郷はまだ彼等を見ていた。様子を窺い続けている。
 
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