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【ネタ】 戦記風伝説のプリンセスバトル (伝説のオウガバトル)

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11 女王陛下の凱旋

 リヒトフロス王国の国旗が王都ゼノビアに翻る。
 あれが、自慢のレンジャー部隊か。
 魔法も使えてブーメラン系で攻撃とあったが、名前から連想した通り弓持ちかよ。
 元々アーチャーが女性クラスみたいなものだったから、男性はこれからこっちを目指すかもしれない。
 このあたりのクラスの統廃合もいずれしないといけないな。
 で、先頭ででかい図体晒してリヒトフロス王国の国旗を持っているのがトロールか。
 防具与えられて盾になったらゴーレム並みに硬くなるな。こいつ。
 中央はトルーパーとクレセントという見栄えの良い部隊でその中央に真紅のプリンセスドレスを来たクイーンが一人トリスタン陛下に向けて笑顔を見せる。

「トリスタン!
 そなたを助けに来たぞ!!」

 屈託の無い女王陛下の笑顔とその後ろに連なる軍勢を見ながら、私は頭を抱えるのを我慢してため息をつく事にした。
 それは、この戦いが反乱・独立という次元ではなく他国介入という新たなステージに移ったことを明確に示していたのだから。

「そなたがエリーか。
 もうトリスタンには抱かれたのか?」

 うわぁ。
 むっちゃストレート。この人。
 私が白色のプリンセス衣装で挨拶すると、ナーナ女王陛下が赤色のプリンセス衣装でぶっちゃけやがる。
 あ、クラスはデボネアと同じだ。さすが女王陛下。

「いいえ。女王陛下。
 私は宰相の任を受けており、公務だけでなく後宮の差配までとてもとても」

 はっきりと女王陛下の目が光る。
 こっちが公務を取って、後宮の権限を全て渡す事に気づいたからに他ならない。

「ならば、トリスタンの身の回りはわらわとアクエリアスが取り仕切るとしよう。
 宰相。構わぬな?」

「どうぞ。
 お好きなように。
 ですが、一つだけお約束を」

「何じゃ?」

 敵ではないらしいが、気を許してはいけないという評価がどうもトリスタン国王陛下側近連中にもたれている気がする。
 カオスフレーム考えたら自業自得なのは仕方ないが。
 そんな事を考えながら、ナーナ女王陛下にぶっとい釘を刺す。

「陛下との間にできた子について。
 リヒトフロス王国の王位継承権についてはお約束できます」

 はっきりと女王陛下の目に敵意が点る。
 新生ゼノビアの王位については渡さないと言っているに等しいからな。これは。

「わらわの子では継げぬと?」
「リヒトフロスの名前はどうするので?」
「ゼノビアと一つになればよかろう」
「元々属国だったリヒトフロスが新生ゼノビアに吸収される。
 リヒトフロスの民は納得するとお思いで?」
「……」

 短い言葉の殴り合いの後女王陛下は口を閉じる。
 これはリヒトフロスに対する保険でもあるのだ。
 名前は残すことで、吸収される訳ではないという理由付けの。

「お子を成す事については私から申し上げるつもりはございません。
 ですが、誰が新生ゼノビアを継ぐかについてはトリスタン陛下のお心しだいかと」

「なるほど。
 お主の子が継ぐ可能性を残す腹か」

 あえて黙ることで、女王陛下を間違った答えに誘導する。
 あんたが戦うのは私じゃない。
 わたしよりもっと厄介なハイランドの聖騎士ラウニィーなんだって事を。
 とはいえ、ここで敵意を下げるようにナーナ女王陛下の思考を誘導する。

「むしろ共闘する事になると思いますよ。
 この国はとにかく大きすぎる」

 その一言で察してくれたらしい。
 旧ゼノビア貴族層という共通の敵に。
 ゼノビア王国は大国だった。
 その為滅亡後も旧貴族がそれなりに力を持って生き残っていたのである。
 彼らは新生ゼノビア王国に参画する条件で、彼らの地位と権力の復権を求めてくるのは間違いが無い。
 そして、国家運営において彼らゼノビア旧臣の取り込みは国家運営上決定事項である。

「なるほどの。
 お主もわらわも外の人間。
 中の掃除をせねば喧嘩もできぬか」

「ご推察のとおりで。
 どうか女王陛下とアクエリアス様で陛下をお守りください」

 この時点でアクエリアスの子が王位継承権について考えられていないのには理由がある。
 彼女の子はロシュフォル教会にいれる事をアクエリアス自身が言っているからだ。
 ロシュフォル教会は基本的に女性司祭優位の宗教である。
 そのあたりがあって、男性優位(向こうは男性教皇)のローディス教ができたのかもしれない。
 話がそれた。 
 私の言葉に女王陛下が眉を潜める。

「わらわは王妃とは呼ばれぬのか」

 あえて私が女王陛下と呼んでいるのに気づいたらしい。
 トリスタン陛下の妻になるのならば、王妃様と呼ばないといけないからだ。

「今は。
 最終的には国王陛下のお心しだいかと。
 その為には、一つ抑えねばならぬ場所があります」

 気に入らないだろうが共闘は可能だと判断したらしい。
 女王陛下の言葉から敵意が消える。

「アヴァロン島。
 ロシュフォル教会か」

「はい。
 王都を奪還し、新生ゼノビア王国の設立を宣言しましたが、まだ帝国側から見ると反乱軍の域を出ていないのです。
 その為にも、ロシュフォル教会にてノルン大神官より戴冠をしていただかないと」

「なるほどの。
 そこまで見据えてのノルン擁立か。
 ケインやアクエリアスが信用できぬと言った理由がようわかったわ」

「褒め言葉と受け取っておきましょう」

 アヴァロン島は現在緊張の度合いを増している。
 大神官ノルン擁立の資金源が反乱軍から出ている事を暴露し、さっき言った戴冠要求を公表したからだ。
 この暴露にこけにされたと感じた黒騎士ガレスは激怒し、再度アヴァロン島に攻め込む準備をしているとか。
 それを大義名分に『ノルン大神官を守る為』王国軍が遠征準備中である。
 なお、デボネア将軍は帝国への忠義と恋人への愛情で板ばさみになっていたが、恋人を守る決意を固めたらしい。
 彼が送り出してくれた王国への使者が彼の決意を伝えていた。
 アイーシャ。
 前大神官フォーリスの娘でガレスに殺されたフォーリスの敵を討ちたがっている彼女を使者に出したという事は、二つのメッセージがある。
 一つは、こちらに対して何だかの支援を行う用意があるというメッセージ。
 もう一つは、そんな良い条件を用意しないといけないぐらいガレスの侵攻の規模は大きく、アヴァロン島単独で守りきれないという隠れた伝言だ。

「国王陛下にはゼノビアに居てもらい、指揮を執ってもらいます。
 というか、お子を成すまでナーナ様ともども後宮から出ないでください」

「そして全てを宰相が差配すると?
 わらわとて一国の差配をする身。
 少しはおぬしの負担を背負わせよ」

 さて、この言葉にはどんな意味があるのやら。
 言葉から敵意は消えている。
 その上で、負担を背負うというのならば、どれぐらいできるかこちらから試して見るか。

「ならばお任せしましょう。
 私は大将軍と共にアヴァロン島に渡ります。
 その間の留守とディアスボラ方面の出兵をお願いしたく」

 ゲームでは一方通行だったけど、こうした現実では陸続きな訳で。
 王都ゼノビアを抑える事ができるディアスボラ地方の制圧は早急の課題でもあったのだ。
 アヴァロン島に派遣するのが3000。
 ディアスボラに出す兵力も3000。
 残りは訓練及び休養という形で待機する事になっている。

「心得た。
 連れてきた部隊のよき初陣となってくれようぞ。
 ハヤト、パーキン、ゴールディを借りるが構わぬか?」

 女王陛下が先にあげた隊長は元々、リヒトフロス組である。
 こちらとしても依存はない。

「問題ありません。
 ですが、フィガロ将軍の本隊が出てきた時はお下がりください。
 敵は強大で、こちらは兵も少ないので」

 黒騎士ガレスとフィガロ将軍の兵を合わせたら30000近くに帝国軍は膨れ上がる。
 それに対して王国軍は数こそ急増したが、烏合の衆でしかない。
 正面から戦えば負ける。
 それを伝えようとした時に女王陛下はニヤリと笑みを浮かべた。

「案ずるな。
 わらわとて、屋敷の奥で蝶よ花よと育てられた訳ではない。
 トリスタンと共に、戦場の空気を吸っておったのじゃ」

 ああ。
 この人ならばトリスタン陛下の隣を任せられるなとなんとなく思った。
 事実、私の不在時に軍事・政治を大過なく処理してみせ、以後新生ゼノビアの復興は加速してゆく事になる。




「女王陛下の謁見お疲れ様でございます。
 宰相閣下」

「ありがとうございます。大臣。
 で、その箱はいりませんよ。
 賄賂の類は十分味わいましたので」

 いつの間にか私の後ろに立っていた財務大臣のトードが箱を差し出すのを手に持っていた扇子で押し留める。
 権力を握って実感したが、モラルの低い状況で、新しい権力者が現れたら商人というのは即座に賄賂を持ってくるものらしい。
 帝国軍がいる状況で送られた金銀宝石を愛でる余裕もないので、『送り主からの寄付』という形でスラム復興資金に使わしてもらっているが。
 力こそが全てというこの世界の毒はかなり深い。

「賄賂というのも、頭を使うものなのですよ。
 ただ高価な物を送るだけでは三流。
 相手が欲しがる物を送って二流。
 相手が驚いて欲しがるものを送って、やっと一流という所でしょうか」

「で、あなたは一流だとそう自慢している訳ね。
 そう言われるならば、箱の中を見てあげようじゃないの」

 トードから箱を受け取って中を開けて体の動きが止まる。
 なんて綺麗なんだろう。
 なんて美しいんだろう。
 そして、なんて力強いんだろう。

「こ、これ。
 何?」

「竜玉石。古代高等竜人族が作りだした魔法のオーブでドラゴンとの交信に用いられるとか。
 宰相閣下は大層ドラゴンを可愛がっておいでだ。
 それならば、こういう品をと」

 負けた。
 たしかにあんたは一流だよ。トード。
 これ、むちゃくちゃ欲しい。
 しかも、ネックレス形式にしてドレスとの兼ね合いも合わせているし、ネックレスのほうにも高価な宝石を散りばめてやがる。

「お見事。
 受け取るしかないじゃない。
 で、悪徳商人さんは私に何をさせたい訳?」

 箱から竜玉石のネックレスを取り出して胸に着けながらトードに尋ねる。
 それを眺めながら、トードはただ苦笑するのみ。

「そこで要求をだすような三流ではありませんよ。
 何かあった時に、閣下の方からお力添えがいただけたらと。
 そんな事がないのが一番なのですがね」

 なるほど。
 ナーナ女王陛下のド派手なゼノビアデビューで、トリスタン陛下の派閥が動き出したか。
 トードは私が抜擢したから、私の後ろ盾がなければ簡単に失脚する訳で。
 私がどう動くか探りを入れるのと、このネックレスで釘を刺しにきた訳だ。
 さすが悪徳商人。

「そうね。
 ただ、あなたがやっている仕事が成功したら、私は国王陛下に貴方を伯爵に推挙する用意があるわ。
 私の領内で、貴方がほしい街を考えておいて。
 あげるから」

 トードの顔色が渋いものになった。
 王国内派閥力学の変化、国王派の存在感の上昇と旧開放軍派の影響力低下を私が諭したからだ。
 トードを一本釣りした時に御用商人という言葉で引っ張ったのに、街一つと伯爵位と下がっている事に彼が気づかない訳がない。
 そんなトードの渋い顔が面白くて、思わず笑ってしまう。

「何がおかしいので?」

「いえね、寝返り考えているかなって?
 いいわよ。
 貴方は貴方の損得勘定で旗印を変えて頂戴。
 とはいえ、ぎりぎりまで損はさせないつもりだけどね」

 話は終わりとトードの元から去ろうとした私に、トードが声をかけた。
 その声から察するに冗談を言ったらしい。

「宰相閣下。
 あなたも一流ですよ。きっと」 
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