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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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その涙を見ない為に


「そろそろ逃げた方がいいんじゃ・・・」
「あの魔法陣・・・完成しそうだぞ」

ギルドメンバーの誰かが呟く。

「ギルドを置いて逃げるのか?」
「あ、いや・・・」
「あの中で戦っている奴等もいる。信じるんだ」

クロスは弱音を吐くメンバーに対し、そう言い放つ。
と、その近くにいたミラに大きく暗い影が差した。

「きゃっ!」
「ミラ!」
「ミラちゃん!」

突然ファントムMk2の腕が伸びてきて、ミラを捕まえた。
そのまま腕は上がっていく。

『我々を欺こうとは気に入らん小娘だ。潰してしまえ』

ジョゼの言葉に応える様に、その手は徐々に力を加えていく。
ミラは苦しそうに呻き声を上げる。

「ミラジェーン!今助けにっ・・・!?」

ミラを助けに行こうとするクロスを大勢の幽兵(シェイド)が囲む。

「早くあの巨人を止めろ!ドラグニル!フルバスター!ストラウス!シュトラスキー!イレイザー!」





一方、ファントムギルドの中では、エルフマンとアルカが『大地のソル』と戦おうとしていた。

「私の名はソル。『ムッシュ・ソル』とお呼びください」
「丁度いい」
「この巨人の止め方を吐かせてやる」

アルカが戦闘態勢を取り、エルフマンが上着を脱ぎ捨てる。

「ビーストアーム『黒牛』!」

エルフマンの右腕が四角く分裂していき、その腕が獣と化す。
それを見たソルはゆっくり口を開いた。

「おや?()()だけでよいので?」
「む」
「あの噂は本当だったのですかな?あなたの事は知っていますよ・・・いや、最も妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士の情報は全て頭の中にあるのですよ」
「ごちゃごちゃうるさいんじゃい!」

エルフマンが拳を振るう。
ソルはそれをひらりと避け、再び口を開いた。

「あなた・・・妹様がいたでしょう?」
「!」
砂の舞(サーブルダンス)!」
「ぐっ」

ソルから発せられた『妹』という言葉にエルフマンは反応し、ソルの手から砂が吹き荒れ、砂嵐のような状況を作る。

「どこだ!?」

きょろきょろ辺りを見回すエルフマン。
ソルはくるくると回転し、着地した。

岩の協奏曲(ロッシュコンセルト)!」
「ぐぁあっ!がっ、ぎっ!」

岩がエルフマンに直撃し、よろめきながらも着地する。

「あなたは昔全身接収(テイクオーバー)に失敗し・・・暴走を起こした・・・妹様はそれを止める為に命を落としてしまった・・・違いますか?あなたはその時のトラウマで全身接収(テイクオーバー)が使えなくなってしまった・・・」

エルフマンは何も言わない。
そしてソルの背後から、アルカが高く跳躍する。

「ウォォオオラァァァァッ!大火大槌(レオハンマー)!」

炎で構成されたハンマーがソルの頭上に現れ、落下する。
が、当たる直前でソルは地面に逃げ、アルカの背後に姿を現した。

「おや?あなたも()()だけでいいので?」
「うっせぇ!大火協奏曲(レオコンセルト)!」
「私の魔法ですかな?では・・・岩の協奏曲(ロッシュコンセルト)!」

ソルの魔法を見様見真似で使う。
ソルも同じ魔法を使い、炎と岩が直撃し、小規模の爆発を起こした。

「ちっ・・・」
「余所見などしている場合ですかな?」
「!しまっ・・・ぐおあっ!」

が、ソルの岩はアルカの炎より数が多かったらしく、アルカに岩が直撃する。

「あなたは昔、エルフマン様を止めようとして止められず・・・目の前でリサーナ様を失ってしまった・・・あなたはその事がトラウマとなり、『あの魔法』が使えなくなってしまった・・・」

アルカはどこか悔しげな顔をする。
そしてエルフマンが行動を起こした。

「ビーストアーム『鉄牛』!」

が、それをソルは地面に潜って避け、にゅるんっとエルフマンの獣の腕に巻きつく。

やぁ(サリュ)
「キモチの悪い奴め!」
「ノンノンノン、3つのNO(ノン)でお話になりません」
「離れんか!ムッ()ュ・ソル!」
「ムッ()ュにございます」

エルフマンは力任せにソルを取ろうとするが、全然取れない。
ソルは器用に足を動かしてエルフマンの顔辺りを蹴り、回し蹴りの様に蹴り飛ばす。

「もう終わり(フィナーレ)ですかな?」

エルフマンは何とか起き上がり、真剣な顔で構えを取る。
それを見たアルカは驚いたように目を見開いた。

「エルフマン、お前・・・!」
「んふ?」

ソルが首を傾げる。
エルフマンの身体が四角く分裂していく。
自分より相手の方が強い・・・それを悟ったエルフマンは『全身接収』をしようとしているのだ。
先ほどの腕のように四角く分裂していく体。
が、そんなエルフマンの脳裏に1人の少女が浮かぶ。
銀髪のショートヘアの青がかった瞳、元気そうな笑顔を浮かべる少女。

(リサーナ・・・)

その少女こそ、エルフマンの妹『リサーナ』だった。
すると魔法が止まり、エルフマンは膝をつく。

「くっ」
「エルフマン!」
「ん~っ!出来ない事はやるもんではありませんなぁ。今のであなたの魔力は大幅にダウンしてしまったようですぞ」

そう言うとソルはエルフマンに向かって伸び、腹に蹴りを決める。

そうれ(ヴォワラ)っ!」
「うぁああっ!」
「ん~・・・紳士たるもの、とどめは最大の魔法でさしてあげましょう」

そう言うとソルは何やら手を動かし、魔法を発動させた。

石膏の奏鳴曲(プラトールソナート)!」
「がはあああっ!」

巨大な拳がエルフマンを殴り、巨人の壁ごと壊す。

「エルフマン!」
「あなたにも最大の魔法でとどめをさしましょうか・・・」

先ほどの様にソルが手を動かし、アルカは構える。

石膏の奏鳴曲(プラトールソナート)!」
「ちっ・・・大火奏鳴曲(レオソナート)!」

それを見様見真似で発動するアルカ。
が、所詮は見様見真似。本家に敵うはずもなく。

「ぐああああっ!」

一応防御の体勢はとったものの、巨大な拳に殴られる。

「これがエレメント4でございます」

ソルが呟く。
エルフマンは薄く目を開き、アルカは痛みを堪えながら起き上ろうとし・・・ほぼ同時にその光景を見て目を見開いた。

「な・・・何だ・・・アレは・・・」
「ミ・・・ラ・・・?」

その視線の先にいたのは、巨人の手に捕まって辛そうに呻くミラの姿。

「エ・・・エルフマン・・・アルカ・・・」

その様子を見た2人は口を開き、叫ぶ。

()()()()!」
「ミラ!」

そう。
ミラとエルフマン、リサーナは3兄弟なのだ。
ちなみにクロスがミラの事を『ミラジェーン』と呼ぶのは、エルフマンの『ストラウス』と区別がつかなくなるから、である。

「ほう・・・姉上・・・というと・・・あの方がかつて『魔人』と恐れられたミラジェーン様ですかな?おやおや・・・すっかり魔力は衰えてしまって・・・可哀想に・・・」
「テメェ等・・・ミラに何しやがる!」
「彼女には我々を欺いた罰を受けてもらってます。じきに潰れてしまうでしょう・・・」
「に・・・逃げて・・・」

ミラが苦しそうに呟く。

「姉ちゃん・・・何だよ・・・コレ・・・!姉ちゃんを放せぇっ!・・・ぐぁあっ!」

ソルがエルフマンの頭を踏みつける。

「やめて!私はどうなってもいいから!エルフマンとアルカだけは・・・!」

ミラが叫ぶ。

「また繰り返すのかね?妹様の次は姉上を目の前で失うとは・・・あなたにとっては恋人様を失うとは、何とも可哀想に・・・」
「エルフマン!アルカ!逃げてっ!お願いっ!」

ミラの目に涙が浮かんでいる。
そしてエルフマンは踏まれている頭をゆっくりと上げた。

「な・・・何でだよ・・・もう姉ちゃんの涙は見ねぇって誓ったのに、何で泣いてんだよ!」
「エルフマン・・・」
「誰が泣かしたんだ!」

そう叫ぶとエルフマンは立ち上がり、先ほどの全身接収の構えを取る。

(クワ)!?」
「ああああああああ・・・!」
「ダメよ!あなた・・・片腕しか使えないじゃない!」
「そうそう・・・!?」

ソルは笑みを浮かべてミラの言葉に同意し・・・寒気を感じた。
慌てて振り返り、その寒気の正体を探す。
正体はすぐに判明した。

「・・・れだ・・・」

フラフラと立ち上がるアルカだった。
傷を負い、黒いジャケットはボロボロになっているが、しっかりと立つ。

「ミラを泣かせてんのは誰だ・・・何でミラが泣かねぇといけねぇんだよ!」
「アルカ・・・」
「もう十分すぎるほど・・・ミラは泣いただろうがァァァッ!」

アルカの叫びに反応するかのように、突然地面が揺れ始める。
そんな2人の脳裏に、同じ光景が浮かぶ。
在りし日、机に地図を広げてそれを見るミラ、エルフマン、リサーナ、アルカ・・・。

「俺が弱かったばかりに・・・リサーナは死んだ・・・」
「俺がエルフマンを止められてたら・・・リサーナは死ななかった・・・」
「それは違うわ!」
「「あんな想いは2度としたくねぇっ!」」

2人の声が重なる。
その間にも巨人の手に力が加わっていく。

「俺は姉ちゃんを守れる、強い漢になりたいんだっ!」
「もうミラを2度と泣かせねぇ・・・俺はリサーナに誓ったんだっ!」
「う・・・あ・・・」

ミラが呻く。

「姉ちゃんを・・・」
「ミラを・・・」
「「放せぇぇぇぇぇぇっ!」」

2人の声が再び重なる。
エルフマンの身体が徐々に変わっていく。

「お・・・おや?」

ソルが戸惑ったような声を上げる。
その間にもエルフマンは獣へと姿を変えていく。

「こ・・・これは・・・」

小刻みに震えながらミラが目を開き、ソルがモノクルから手を離す。



「全身接収、獣王の魂(ビーストソウル)!?」







外では、突如揺れた地面に対し、ギルドメンバーが戸惑っていた。

「な、何だぁ!?」
「地面が・・・揺れて・・・」

スバルとサルディアが戸惑った声を上げる。
すると、ヒルダが叫んだ。

「見ろ、あれは!」

ヒルダの指の先には・・・

「・・・土で構成された、拳?」

ライアーの言葉通り、土や砂で構成された3つの拳が地面から生えていた。
それを見たクロスは若干震えた声を出す。

「これは・・・かつて地火の威武(テールフラム・フォルテ)の異名で恐れられた・・・イレイザーの第二の魔法・・・復活したのか・・・土・砂を操る4つ目の元素魔法(エレメントマジック)・・・」

そしてティアは薄い笑みを浮かべ、呟いた。



大地(スコーピオン)・・・」









2つの魔法の復活に、ソルもミラも驚いていた。

「ノンノンノンノンノンノン!ノン・・・」

ソルの身体が吹っ飛ぶ。

「ノォーン!」

エルフマンの拳とアルカの土で構成された拳がソルを襲う。
最後にエルフマンが一撃加え、顔がパンパンに腫れた状態のソルがガクッと倒れた。
そしてそのままエルフマンは巨人の腕に向かっていく。
アルカは広げた拳の1つに乗り、ミラに向かって伸びていった。

「エルフマン・・・ねぇ・・・私の声・・・聞こえてる!?」

かつてリサーナを失った時、エルフマンは理性を失くしていた。
ミラは必死で呼びかけるが、エルフマンは答えない。

「あなた・・・まさか、また理性を失くして・・・」

ガッと獣と化したエルフマンが巨人の手に乗る。
アルカもミラに近づく。

「エルフマン・・・」

がばっと獣の手がミラに向かい、ミラはビクッと体を震わせる。
が、次の瞬間ミラは獣の腕の中にいた。
エルフマンはミラを抱えていない方の腕と両足で巨人の手を無理矢理開き、それを手伝うようにアルカの残った2つの拳が巨人の手を広げる。

「ごめんな、姉ちゃん・・・こんな姿、2度と見たくなかっただろ?コイツをうまく操れなかったせいで、リサーナは・・・」
「あなた・・・理性が・・・」
「でも・・・これしかねぇと思ったんだ。姉ちゃんや妖精の尻尾(フェアリーテイル)を守るには、俺が強くなるしか・・・」
「あぁ・・・俺もだ。ミラやギルドを守るには、強くなるしか・・・」

3人は巨人の手の3本ある指の1本に立つ。

「リサーナはあなた達のせいで死んだんじゃないのよ・・・あの時だってあなた達は必死に私達を守ろうとして・・・」

ミラは笑みを浮かべる。

「守れなかったんだ・・・」
「リサーナは死んじまった」
「私は生きてるわ」

ミラがエルフマンに手を当て、寄り添う。

「姉ちゃん・・・」
「ミラ・・・」
「3人で決めたじゃない。あの子の分まで生きようって・・・」

それを聞いたエルフマンは目を潤ませ、堪える様に目を閉じ、だけど堪えられずに涙を流した。
アルカは堪えず涙を流し、無事を確認するようにミラを抱きしめる。

「姉ちゃあぁん・・・無事でよかったぁぅぁあぁぅぁあっ!」
「良かった・・・無事で・・・ホント良かった・・・!」

エルフマンは男泣き・・・ではなく、漢泣きし、アルカは静かに涙を流す。

「もう・・・2人が泣いてどうするの!」

ミラは困ったように言い、笑みを浮かべた。

「ありがとね・・・エルフマン、アルカ」

そう呟いた。
その時、ミラは何かに気づいたように目を見開く。

「ど、どうした!?姉ちゃん!」
「魔法陣を書く速度が・・・遅くなってるわ」
「マジか!?」
「なぜかしら・・・」

ミラの言う通り、ファントムMk2が禁忌魔法、煉獄砕破(アビスブレイク)の魔法陣を書く速度が落ちている。

(四元素魔法の禁忌・・・煉獄砕破(アビスブレイク)・・・四元素・・・火・・・水・・・風・・・土・・・)

そこまで考え、ミラは結論に辿り着いた。

「エルフマン!アルカ!残ってるエレメント4は何人!?」
「え!?えーと・・・」
「大火の兎兎丸はナツが倒したから・・・あと2人だな」

突然の質問に慌てながらも、しっかりと答える。

「やっぱり・・・アイツがやられて巨人の動きが遅くなってるのよ」
「何だって!?」
「この巨人の動力は4つの元素(エレメント)!エレメント4を全員倒せばこの魔法は阻止できるわ!」

ミラの言いたい事をすぐさま察知し、アルカが口を開いた。

「つー事は、この巨人の中にいるであろうエレメント4を倒すって事だな?」
「そうよ!急ぎましょ!」
「う、うん!」

3人は急いでエレメント4を探し始めた。







「良かった。ミラは無事みたいだね」

カナがそう呟き、ガクッと倒れ込む。

「カナ!」
「だ、大丈夫だ・・・それより目の前の敵を・・・妖精の尻尾(フェアリーテイル)を守るんだよっ!」

スバルが慌てて振り返るが、カナは再び立ち上がる。

「・・・たく、無理しやがって・・・」

はぁ、と溜息と共にスバルが呟く。

(にしても・・・どうしてウチのギルドは、女どもが強ェんだろうな・・・)







一方、そんな2人とは少し離れた場所で、ティアとクロス、ヒルダ達が次々に敵を倒していた。

大海槍騎兵(アクエリアスランス)!」

ティアの右手に展開された魔法陣から水の槍が放たれ、幽兵(シェイド)に突き刺さる。
更に鞭を撓らせ相手を殲滅する勢いで相手を倒していった。

「姉さん」
「何よクロス、今は相手に集中・・・」
「行きたいんだろ?」

ティアの言葉を遮り、クロスが言い放つ。
一瞬口を閉じ、溜息をついた。

「・・・よく解ったわね」
「双子の弟だからな、それくらい顔を見ればわかる」

クロスは小さい笑みを浮かべ、剣を一振りした。

「行ってこいよ」
「!」
「もう怪我も大丈夫そうだし・・・ここは俺達だけで何とかするから」

その弟の言葉にティアは一瞬戸惑い色を瞳に映す。
が、すぐに口を開いた。

「任せたわよ」
「あぁ、任せておけ」

そしてティアは一瞬で水の羽を生やし、巨人へと向かっていった。 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
次回、遂にグレイVSジュビアの戦い!
ずっと楽しみにしていた一戦が、遂に・・・!

感想・批評、お待ちしてます。 
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