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魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~

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A's編 その想いを力に変えて
  42話:フルボッコだどん!!

 
前書き
 
毎回毎回あれ聞くと、友人の誰かが必ず言うんですよね、これ。
  

 
 

「…管理者権限発動」
『防衛プログラムの進行に、割り込みをかけました。数分程度ですが、暴走開始の遅延ができます』
「うん…それだけあったら、十分や」

白い空間に浮かぶはやては、“夜天の書”の管制人格―――リインフォースの説明を受け、目の前にある夜天の書を開く。
パラパラと捲られていき、あるページでそれが止まる。ずらりと文字が書かれる中、不自然な余白がそこにはあった。

「リンカーコア復帰。守護騎士システム、破損修復」

その余白をはやてがなぞると、そこに文字が刻まれる。そしてはやての周りに赤、ピンク、緑、青の光が現れる。

「おいで……私の騎士達…」








場所は海鳴海上。

なのは達が見つめる中、白く光る球体の周りに四つの魔法陣が展開され、次の瞬間には白い球体を中心に白い光の柱が海に突き刺さった。
その眩しさになのはやフェイト、ユーノ達は目を腕で覆い、光が収まるのを待つ。
そして腕をどかして見えたのは、白い魔法陣の上にある球体を囲むようにそれぞれの魔法陣に立つ、夜天の書の守護騎士―――ヴォルケンリッターの面々だった。

「―――我ら、夜天の主の元に集いし騎士」

最初に口を開いたのは、八神家一の戦闘狂(バトルジャンキー)であり、ヴォルケンリッターの将である、ピンクのポニーテイルが特徴の女性―――シグナム。

「―――主ある限り、我らの魂尽きる事無し」

次に言葉を発したのは、八神家一のダークマターの製作者であり、ヴォルケンリッターのバックアップの要、湖の騎士と呼ばれる金髪ショートヘアーの女性―――シャマル。

「―――この身に命ある限り、我らは御身の元にあり」

三番手は八神家一の無口であり、唯一の男、盾の守護獣と呼ばれる銀髪犬耳―――ザフィーラ。

「―――我らが主、“夜天の王”…八神はやての名の下に!」

最後は八神家一のろr(ゾクッ)…もとい、八神家の現末っ子、はやてのハンバーグが大好物である、ヴォルケンリッターの鉄槌の騎士、赤毛の少女―――ヴィータ。








「リインフォース、私の杖と甲冑を」
『はい』

リインフォースの返事と共に、はやてに黒い服が纏われ、目の前には先が剣十字となっている杖が現れる。





そしてそれをはやてが掴むと同時に、白い世界は砕け散り、海鳴海上にはやての姿が黙視される。

「はやてちゃん!」
「はやて!」

声を上げるなのはとフェイトにはやては微笑み、杖を高々と掲げる。

「夜天の光よ、我が手に集え。祝福の風・リインフォース、セーット・アップ!」

はやてのかけ声と共に、はやての騎士甲冑が展開される。
ヴォルケンリッターのそれぞれの甲冑の一部を取り入れ、騎士と墮天使をモチーフとした色合いに変化。腰のあたりからはリインフォースも使っていた黒い羽根、“スレイプニール”が羽ばたく。さらにリインフォースとユニゾンしている為、髪の色も白く、瞳は澄んだ青に変化する。

ヴォルケンリッターの面々は自分達の魔法陣を消し、はやてが展開する白い魔法陣に既に乗り移っている。

「…はやて……」
「……うん…」
「すみません…」
「あの、はやてちゃん…私達……」

四人の守護騎士はそれぞれ、かける言葉を見つけられずに言いよどんでしまう。シグナムやザフィーラに至っては、既に罰を受ける態度でいた。

「えぇよ、皆わかってる。リインフォースが教えてくれた。そやけど、細かい事は後や。取りあえず今は……」


―――おかえり、皆。


だがはやてはそんな事は一切気にせず、笑顔で四人を…自分の家族を、優しく迎え入れた。

「……うあぁああぁあぁぁぁぁ!!はやて、はやてぇぇぇぇぇぇ!!」

その一言でヴィータは完全に耐えきれなくなり、はやてに泣きながら抱きついた。はやてはそれを咎める事もなく、ただ優しく、ヴィータの体を受け入れる。
それを見ていたなのはとフェイトも、はやての白い魔法陣に降り立つ。

「なのはちゃんもフェイトちゃんもごめんな。家の子達が色々迷惑かけてもうて」
「ううん」
「平気」

「すまない、水を差してしまうんだが。時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ」

その時、黒いマントと服をなびかせて飛来したのは、アースラが誇る切り札、クロノ・ハラオウンだった。

「時間がないから簡潔に説明する。あそこの黒いよどみ…闇の書の防衛プログラムが、後数分で暴走を開始する。僕らはそれを、何らかの方法で止めなければならない。停止のプランは現在二つ」

真剣な面持ちで話すクロノが提案してきたプラン。

一つ目は、超強力な凍結魔法による停止。
そして二つ目は、軌道上に待機されているアースラが持つ魔導砲、アルカンシェルによって蒸発させる。

それをクロノは、いつの間にかやってきていたユーノやアルフも含め、計九人に聞いていたのだが、

「え~っと、最初のは多分難しいと思います。主のない防衛プログラムは、魔力の塊みたいなものですから」
「凍結させても、コアがある限り再生機能が止まらん」
「アルカンシェルも絶対にダメ!こんなとこでアルカンシェル撃ったら、はやての家までぶっ飛んじゃうじゃんか!」

とまぁ、あっさりと二つともボツにされてしまいました。哀れなり、クロノ。

「あの、私それ反対!」
「私も同じく、絶対反対!」

その横でアルカンシェルの規模を聞いたなのはとフェイトの二人は、どっかの反対運動よろしくクロノに抗議する。

「僕も艦長も使いたくないよ。でも、アレの暴走が本格化してきたら、被害はそれより遥かに大きくなる」
「暴走が始まると、触れたものを浸食していって、無限に広がっていくから……」

ユーノの説明からすれば、最悪の場合惑星規模の被害になりかねない、ということだ。

『は~い皆!暴走臨界点まで、後15分切ったよ!会議の結論は、お早めに!』

さらに急かすようにエイミィの通信が届く。皆も頭をひねるが、中々案が出て来ない。


―――そんな時だ。


[何難しい事考えてんだよ、そんだけ頭数いるんだからもうちょい頭捻れねぇのかよ]


その場にいる全員に念話が届き、全員が目を丸くする。だがすぐにその言葉の主を知って喜ぶ者がいれば、その言葉の意味を理解し憤怒する者も出てくる。

「士k「誰だ貴様!我らにそのような口を聞いて、何様のつもりだ!」」
[え?俺様、的な?]
「何だと貴様ぁぁぁ!!」
[まぁ一旦落ち着けよシグナム。今のはネタで言っただけだ]
「っ、貴様何故私の名を…!?」

なのはの声を遮る程、怒りを爆発させるシグナムだったが、自分の事を知っているとわかると、一気に冷静さを取り戻していく。

「……士、そこまで言うんだったら何か案があるんだろうな?なかったら後で君を凍結させるぞ」
「「「「「士(君)…?」」」」」
[お~恐い恐い。そんなことされたら流石の俺もジ・エンドだぜボーイ]
「誰がボーイだ、誰が」

しびれを切らしたクロノが口を開く。その途中で出て来たある固有名詞にはやて+ヴォルケンズが反応。いつも無口なザフィーラも小さく声を漏らしていた。

[そこの困ってる八神家ファミリーに簡単に説明するとだな……俺、ディケイド]
「「「「「っ!?」」」」」
[てな訳で俺の案だが…]
「ちょい待ち!なんで士君がディケイドって名乗るの!?」
「ディケイド、貴様今何処にいる!ここにも顔を出さないとは、どういうことだ!?」

確かに簡単に説明されたが、その説明は逆に疑問が色々増やしてしまった。

[まぁ落ち着けよお二人さん、こっちの話を聞いて―――うわっぷ、冷たっ!]

叫んでくる二人をなだめようとする声に、変な感想が伴ってくる。さすがにこれは九人全員が疑問符を頭の上に浮べた。

「士、今どこなの?冷たい、ってまさかとは思うけど…」
「う、海の中とか言うんじゃないだろうな」
[ば、バァロー!んなこたぁどうでもいいんだよ!]

色々とキャラが壊れ始めている念話の主は、一拍置いて再び口を開いた。

[ていうかクロノ、もう少し頭柔らかくしたらどうだ?さてはお前、なぞなぞとか苦手だろ]
「そんな事はどうでもいい!!もったいつけずに、さっさと教えろ!!」

ここにきてさらにもったいぶる念話の主。いつも冷静なクロノもさすがに怒りの声を上げてしまう。

[おぉっと、そう怒るなよ。何、少し考えればすぐ出る答えだ。なのは、例えばお前が図書館で、車いすに乗るはやてが本棚の前にいるのを見かけたとしよう]
「え…あ、うん…」
「おい士、いい加減に」
[いいから聞いてろ。はやては本棚の高い場所にある本を取ろうとしてる。友達を見捨てられないお前だったら、どうする?]
「勿論、私が取ってはやてちゃんに渡して上げるの!」

念話の主がなのはに問いかけると、なのははすぐに答えを口にする。
その側では、「友達、か…」と呟きながら、はやてが嬉しそうに微笑んでいた。

[だったらもうわかるよな。上にはアースラ、このままアルカンシェルを撃てば海鳴にも被害が出る。だが撃てば蒸発させる事が可能。と来れば…?]

そこまで聞いたなのはは、こちらに目線を向けて来たフェイトとはやてと目を合わせる。

「「「そうだ!!」」」
[お、答えが出たな。三人揃えば文殊の知恵、ってやつかな?]
「うん、ありがとう士君!」

なのはは喜び全開で念話の主にお礼を言い、今度はクロノに向き合う。

「クロノ君!アルカンシェルって、何処でも撃てるの!?」
「何処でもって…例えば?」
「今、アースラのいる場所…」

そこで三人はそれぞれ指や杖を上に指す。

「「「宇宙空間で!!」」」


















海にドーム状に存在する黒い塊。それを海岸の少し手前の道路で見る、すずかとアリサ。

「アリサちゃん、ここまで来るの、危なくないかな?」
「確かにそうかもしれないけど、あのボロボロだった士が戦ってるかもしれないのよ!?なんかもう…じっとしてられなくて…」

とまぁ、動機はどうであれ、二人は原作よりも近い場所まで来ていた。

「…?アリサちゃん、あれ…」
「どうしたの、すずか?」

そのとき、何かに気づいたすずかがある場所を指差す。
アリサもその指が指す場所を見てみると、そこには一つの人影があった。大体成人男性程の体格をしているそれは、真っすぐ海の方を見つめていた。

「―――……フフ、フハハハハ…」

人がいる。その事に疑問を覚えながら見ていると、人影は手を顔に当てて静かに笑い出した。

「アレが闇の書の防衛プログラム……すばらしい!アレがあれば、世界を無に還せる…新たな世界を作り出せる!」

人影は笑いながら独り言のようにしゃべる。目の前の光景が愉快なのか、次第にその笑い声は大きくなっていく。

「さぁ…破壊しろ…この世界の、全てを…!」


「―――だ~っ!やっぱ冬の海は冷たすぎる…死ぬかと思った…!」


そこへ突如新たな声が聞こえてくる。その声は笑う男の数メートル横の波打ち際。そこには海の水でずぶ濡れになっている少年―――アリサが心配していた、士の姿があった。

「……またあなたですか…」
「おうよ。お前との決着も、そろそろつけておかねぇとな」

男の質問に答えながら、士はおもむろに上着とシャツも脱ぐ。バサバサと仰いでから、雑巾のように水を搾り取り、もう一度仰ぐ。

「ですがいいのですか、あの防衛プログラムを止めにいかなくて?もうすぐ暴走しますよ、アレは」
「んなもん、百も承知だ。確かに、止めなきゃマズいだろうが……」

士はシャツや上着を着直し、その冷たさに体を一回振るわせてから、再び口を開く。

「俺がいなくても、暴走は止められるからな」

それを聞いた男は、再び笑い出した。

「フハハハハ!何をバカな事を言っているのですか?あれ程のモノを、たった九人の女、子供に止められると思っているのですか?」
「あぁ、止められるね、アイツらなら」

―――そう信じてるから、な。

男の言葉に、士は逆に笑みを浮かべながら即座に言い返す。
言われた瞬間、男は笑うのを止める。一度なのは達がいる場所を見つめると、今度は体の向きごと、なのは達の方へ向ける。

「ならば今ここで―――あの小娘らを消せば、いい訳だ」

そう言うと共に、男の姿が変わる。禍々しい黒い体に、左腕に盾、右手には剣。士が前々から戦っていた、プロトWだ。
男の体が変わったのを見たアリサとすずかは、驚きで声が出なかった。

「……ほんとバカ野郎だなお前は」

だがただ一人…士だけは、平然としたまま声を出す。それには流石のプロトWも、少し苛立ちながら士へと顔を向ける。

「それをさせない為に……今ここに俺がいるんだろうが」

士はそう言いながら、右腕を自分の前に持ってくる。そこで露になる士の相棒―――トリスが光に包まれ、収まった頃には士の手にディケイドライバーとして存在していた。
それを士は腰に当て、ベルトへと変える。そして一枚のカードを取り出し、掲げる。

「変身!」
〈 KAMEN RIDE・DECADE 〉

複数の影が現れ、士と一つになる。背丈は大きくなり、それはプロトWとほぼ同じぐらいになる。トリスの宝石部分から出た数枚の板が仮面に突き刺さり、複眼は緑に変わる。

「「っ!?」」

それを見たアリサとすずかは、プロトWが変身する時よりも驚いていた。何せ自分の友人が、変な人に変わってしまったのだから、仕方がない。

「あいつらの元には…行かせねぇ…」
「……邪魔なんだよ、貴様ら仮面ライダーはいつもいつも…」
「それが俺達(仮面ライダー)の主な仕事だからな」

士とプロトW、それぞれが武器を静かに構える。
二人が構えたまま、動かないとアリサとすずかが思った瞬間―――二人の影がブレて、その丁度真ん中で二人がぶつかり合った。


















暴走前の防衛プログラムの周りを取り囲むように準備を進める九人。
そのうち、シャマルは自身の本領である回復魔法でなのはとフェイトの傷を癒したり、アルフとユーノ、ザフィーラのサポート役三人が話し合ったり。

そうこうしている内に、海面から黒い柱が何本も立ち上がる。

「……始まる…」
「“夜天の魔道書”を、呪われた闇の書と呼ばせたプログラム…」


―――“闇の書の”…“闇”


はやてがそう呟くとほぼ同時に、半球状の膜が破れ、“闇の書の闇”がその姿を現す。
いくつもの生物が混じり合い、海面に立つ生物は、六本足と六枚の黒い羽根を持ち、禍々しい口とその上部に女性の上半身が乗っかった、ギリシャ神話のスキュラを連想させるものだった。

「チェーンバインド!」
「ストラグルバインド!」

すかさずアルフとユーノが手をかざし、魔法陣を展開。そこから出た鎖と綱は、“闇の書の闇”の周囲にある触手に絡まり、切断する。

「縛れ、鋼の軛!」

雄叫びと共にザフィーラもベルカ式の魔法陣を展開し、自身の魔力光の鞭が残りの触手を両断する。

「■■■■■■■■ーーー!!」

それに伴ってか、“闇の書の闇”が奇声を発する。女性の歌声のように高い声だが、本体がアレでは何も感じられない。

「ちゃんと合わせろよ!高町なのは!」
「っ…ヴィータちゃんもね!」

そこへ魔力を高めていくヴィータとなのは。
ヴィータに始めてちゃんと名前を呼ばれた事に驚きと嬉しさを感じるなのはだが、すぐに気持ちを切り替える。

「“鉄槌の騎士”ヴィータと、“鉄の伯爵”グラーフアイゼン!」
〈 Gigantform 〉

ヴィータは自身の相棒、グラーフアイゼンを掲げ、高々と宣言する。カートリッジを二発使用し、グラーフアイゼンはその姿を変える。
丸みを帯びていたハンマー部分が外れ、入れ替わる形で巨大な角柱状のものに変形する。

グラーフアイゼンのフルドライブ、“ギガントフォルム”だ。

「轟、天…爆砕!ギガント、シュラークッ!!」

変形時一度引かれたアイゼンを再び振り上げると、その大きさは質量保存の法則を完全に無視するかのように巨大になっていき、そのサイズはかの“仮面ライダーJ”が持ちそうな程のサイズへと変わる。
それを目一杯振り下ろし、“闇の書の闇”へとぶつける。一枚目のバリアに防がれるが、ヴィータの一撃は、それすらも粉砕した。

「高町なのはと、レイジングハート・エクセリオン!行きます!」

前に倣ってか、なのはも自身と相棒の名を宣言し、魔法陣を展開する。

〈 Load cartridge 〉

レイジングハートは四発ものカートリッジを使用し、再びピンクの羽根を大きく羽ばたかせる。
高く掲げた相棒を、なのはは真っすぐ標的へと向ける。

「エクセリオンバスター、フォースバースト!!」
〈 Barrel shot 〉

なのはの砲撃を阻もうと触手が迫るが、そこへ不可視のバインドを放ち、触手の動きを止める。

「ブレイク―――――シューーートッ!!」

レイジングハートの先端に発生させた光球から四つのバスターを放ち、さらにそれを巻き込むように中央からフルパワーの砲撃が放たれる。
なのはの砲撃は見事“闇の書の闇”のバリアを捉え、打ち砕いた。

「“剣の騎士”シグナムが魂、“炎の魔剣”レヴァンティン。刃と連結刃に続く、もう一つの姿……」
〈 Bogenform 〉

“闇の書の闇”の後方で、剣を振り上げるシグナム。レヴァンティンの刃を返し、その鞘と繋げる。
すると鞘が持ち手で繋がれる形でレヴァンティンに姿を変え、シグナムが再び刃を返すとその姿はさらに、まるで翼のような弓へと変形する。

シグナムの相棒、レヴァンティンの遠距離戦闘形態、“ボーゲンフォルム”。

(かけ)よ、隼!」
〈 Sturmfalken(シュツルムファルケン)〉

シグナムはレヴァンティンの一部を流用して生成した矢を構え、魔力を集積。“闇の書の闇”に狙いを定め、放つ。シグナムの魔力を纏った矢はその姿を鳥のように変わり、三枚目のバリアを打ち抜く。

「フェイト・テスタロッサ、バルディッシュ・ザンバー…行きます!」

次は“闇の書の闇”の正面に位置するフェイト。魔法陣を展開し、カートリッジを三発使用する。
そして自身の身の丈以上のバルディッシュを振り上げ、物理的破壊力を持つ衝撃波を放ち、触手を両断する。

フェイトが再びバルディッシュを掲げると、その刀身に紫色の雷が落ちる。

「撃ち抜け、雷神!!」
〈 Jet zamber 〉

そしてかけ声を出して“闇の書の闇”に向けて振るう。バルディッシュの魔力刃は、振るわれると同時に伸び、バリアに衝突、粉砕し、遂に本体を切り裂いた。

「■■■■■■■■ーーー!!」

体の一部を切り裂かれた“闇の書の闇”は、海面から新たな触手を出し、そこからなのは達に向け砲撃を放とうとする。

「盾の守護獣、ザフィーラ!砲撃なんぞ、撃たせん!!」

それを見て黙ってはいない男が一人。ヴォルケンリッターの一人、ザフィーラがベルカ式の魔法陣を再び展開し、魔法を発動する。
海面から彼の銀に近い白い魔力でできた槍が出現し、次々と触手に突き刺さっていき、砲撃の発射を阻止した。

「はやてちゃん!」

シャマルの声に反応するのは、今回魔法初挑戦である、八神はやて。
左手で夜天の魔道書を開き、詠唱を始める。

「彼方より来れ、やどり木の枝…」
『銀月の槍となりて、撃ち貫け…』

魔法陣を展開し、それを中心に六つの光を生み出す。

「石化の槍―――」
「『ミストルティン!!』」

掲げた杖を振りかざし、六つの光と魔法陣にもあった光、計七つの光を“闇の書の闇”へ向けて発射。七つの光は槍へと変わり、“闇の書の闇”に突き刺さり、生体細胞を凝固させ、石化させていく。

「■■■■■■■ーーー…」

ほぼ全体が石化し、その一部が崩れ落ちていく中、“闇の書の闇”はその自慢の再生能力で、即座に新たな体を作り出す。

「行くぞ、デュランダル…!」
〈 OK, Boss 〉
「悠久なる凍土、凍てつく棺のうちにて、永遠の眠りを与えよ……」

そこへ詠唱を開始し、両手を広げながら魔法陣を展開するのは、黒服のバリアジャケットを着るクロノ。その周りから冷気が発生し、“闇の書の闇”周辺の海をも凍らせる。

「凍てつけ!!」
〈 Eternal coffin 〉

そしてその周囲の冷気は一気に“闇の書の闇”を凍らせ、その動きを止める。
だがやはりというべきが、“闇の書の闇”の再生能力はその凍結魔法をも超え、再び活動を開始する。だがそれでもクロノの魔法が効いているのか、その動きは大分鈍くなっていた。

「行くよ、フェイトちゃん、はやてちゃん!」
「うん!」
「…うん…!」

そして“闇の書の闇”の上空。そこに三人の少女が、自身の最強の技を準備し始める。

〈 Starlight breaker 〉
「全力…全開!」

なのはの周囲から全員が使った魔力が、流れ星のように集束されていき、カートリッジを消費しながら、魔力を固めていく。

「雷光、一閃!」

フェイトは高速の儀式魔法で雷を発生させ、そのエネルギーをバルディッシュを魔力刃に乗せる。さらになのは同様、カートリッジを使用し、魔力を上乗せする。

「……ごめんな……おやすみな…」

はやては魔力を高めながら、氷の中今ものたうち回る“闇の書の闇”を見ながら、謝罪の言葉を述べる。
しかしその表情もすぐに決意あるものへと変え、詠唱を始める。

「響け、終焉の笛!」

そして足下にミッド式、目の前にベルカ式の魔法陣を展開し、ベルカ式の魔法陣の三つの頂点に、それぞれ魔力を溜める。


「スターライトーーー…!!」
「プラズマザンバー…!!」
「ラグナロク…!!」


「「「ブレイカァァァァァーーーー!!!」」」


そして同時に放たれるピンク、黄、白の閃光。その光は“闇の書の闇”の巨体すら飲み込み、大きな爆音と共に爆ぜた。

「本体コア、露出…」

そんな中シャマルは、クラールヴィントのペンダルフォルムを使用し、特殊魔法“旅の鏡”を発動する。
クラールヴィントの輪の間に、黒い光が出現する。

「捕まえ、たっ!」

それこそ、“闇の書の闇”の本体コア。

「長距離転送!」
「目標、軌道上!」

「「「転送!!」」」

さらにそこへユーノとアルフが魔法陣を展開。シャマルとの三人でコアをアースラ前へ転送する。








「コアの転送、来ます!」
「転送されながら、生体部品を修復中!は、速い!?」

アースラクルーのアレックスとランディが、“闇の書の闇”の現状を報告。それの通り、“闇の書の闇”は転送される中でも、再び自身の体を作り出そうともがいている。

「アルカンシェル、バレル展開!」

管制室で操作を始めるエイミィ。アースラの先端に三つの巨大環状魔法陣が展開され、その中心に光が集束される。

「ファイアリングロックシステム、オープン」

リンディが言うと同時に、目の前に三つの環状魔法陣と、立方体の形をしたものが現れる。

「命中確認後、反応前に安全距離まで退避します。準備を!」
「「了解!!」」

立方体の形をしたものにある鍵穴へ、リンディは赤い鍵を差し込む。それと同時に、立方体も赤く染まる。

そしてアースラの数キロ先に、“闇の書の闇”の本体コアが転送される。宇宙空間にいるにも関わらず、その動きは止まる様子ではない。

「アルカンシェル…発射!!」

リンディが鍵を捻り、アルカンシェルが始動する。アースラの先にあった光の球は、レンズのようなものを通し、本体コアへと放たれる。

その光は見事本体コアに命中し、宇宙空間にド派手な花火を打ち上げた。








『―――効果空間内の物体、完全消滅……再生反応…ありません!!』
「…ふぅ…準警戒態勢を維持。もうしばらく、反応空域を観測します」
『…了解…』

一先ず安心。それを感じられたエイミィは、息を吐きながら背もたれに体を預け、一気に力を抜いた。








『という訳で、現場の皆!お疲れさまでしたぁ!!状況、無事に終了しました!』

“闇の書の闇”の本体コア、消滅。その吉報は地上で奮闘した九人にも伝えられ、それぞれ仲間と喜びを共に表現する。
ある者は顔を合わせながら微笑み、ある者は自身の武器を仕舞い、ある者は深く息を吐きながら安堵し、ある者は友とハイタッチをして喜び……

その次の瞬間、突如として大きな爆音が響き渡る。

「っ!?」
「な、なんや!?」
「海岸の方から聞こえて来たけど…!?」

なのは、はやて、フェイトも含め、そこにいる全員がその音に驚き、発生源を探す。場所は大きな煙が立つ、海鳴の浜辺。

「この状況で戦闘を行うとしたら…」
「きっと士だ!」

即座にクロノとユーノがそう判断して、浜辺に向かって飛行する。その後を追うように、全員が浜辺を目指し飛んでいった。

  
 

 
後書き
 
士のキャラが一時崩壊してますが、気にしないでくださいね?
次回は士とプロトWとの最終決戦。早速アレを使います。
  
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