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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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激熱の戦い


現在、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の裏の湖では、怪我を負ったり本部に乗り込んだりしているメンバーを除いたギルドメンバーが、ジョゼの作り出した兵士・・・幽兵(シェイド)と戦っていた。

「ハアァァァァァァァッ!」

ライアーが自身の槍『フィレーシアン』で向かってくる幽兵(シェイド)を斬り捨てる。
するとすぐさまフィレーシアンは槍から剣へと姿を変え、相手を薙ぎ払っていった。
換装した訳ではない。姿を変えたのだ。
これがライアーの魔法、武器魔法(アームズマジック)だ。

「撃ち負かせ、エウリアレー!」

その横ではスバルが自身の銃『エウリアレー』で確実に幽兵(シェイド)を撃っていく。
この2人、実は同じ武器魔法(アームズマジック)を使う魔導士だ。
が、ライアーは近・中距離、スバルは遠距離攻撃を得意とし、姿を変える武器もそれにあった物にしか姿を変えない。

「力を貸して!召喚!アイゼンフロウ!」
「グガアァァァァァァァァァァッ!」

その2人とは別の場所で、サルディアは飛竜(ワイバーン)を召喚していた。
『アイゼンフロウ』と名付けられた黒地に銀色の模様の飛竜(ワイバーン)は、ギルドに負けないくらいの大きさで、雄叫びを上げる。
そして向かってくる幽兵(シェイド)を・・・『喰った』。

「来るなら来なさいっ!アイゼンフロウにとって、闇系の魔法はご飯なんだから!」
「ルガアアアアアアアアアアアアッ!」
「お願いアイゼンフロウ!相手はあのファントムのギルドから出てくる幽兵(シェイド)よ!」

主であるサルディアに命令され、アイゼンフロウは一気に黒い咆哮を放つ。
それに飲み込まれた幽兵(シェイド)は次々に消えていく。
一方別の場所では、マックスが砂で幽兵(シェイド)を8体ほど同時に倒していた。

「!」

そんなマックスの背後から、1体の幽兵(シェイド)が襲い掛かる。
マックスは気づくが、間に合わない。

「ブラッティブレイカー!」

と、その時、1本の杖『セルリヒュール』を構えたヒルダの攻撃が・・・その名の通り、血のように真っ赤な砲撃が、その幽兵(シェイド)に直撃した。

「すまねぇ、ヒルダ」
「気を抜くな。相手は無数に出てくる」

そう呟きながら、更に砲撃を撃っていく。

「そうだ、ギルドは何としても守るんだ!」

その近くにいたクロスは自分の持っていた剣『雷光の剣』を空に掲げた。

「轟け!黒き稲妻よ!」

その言葉に反応するかのように、黒い稲妻が一気に幽兵(シェイド)に落ちる。
そこから一気に斬撃を放ち、斬り裂いた。

「こいつ等は仲間をやられる悲しみも、ギルドを壊される悔しさも持っていない!そんな奴等にギルドはとらせんぞ!」

クロスが剣を掲げて叫ぶと、ギルドメンバー達はそれに応える様に『オオオオオオオオッ!』と高らかに雄叫びを上げたのだった。


次のジュピターまで、あと9分。








一方、こちらはジュピターの砲台から繋がる一室。
ここではナツとエレメント4の『大火の兎兎丸』の戦いが始まろうとしていた。

「どけ!俺はその大砲ぶっ壊すんだ!」
「あのラクリマを壊せば、ジュピターは撃てないはずだよ」

兎兎丸の後ろには巨大なラクリマが1つ。

「そうは・・・させない・・・と言ったろ?」
「時間がねぇんだ!モタモタ喋ってんじゃねぇ!うらああっ!」

兎兎丸の喋り方にイラつきながら、ナツは左拳に炎を纏って兎兎丸に向かっていく、が。

「おっ!?」
「ナツ!」
「おおおお!?」

なぜかその拳は兎兎丸ではなくナツを殴り、ナツの身体はゴロゴロと床を転がっていった。
すぐさま起き上がり、自分の左手をグーパーと閉じたり開いたりしてみる。

「いってぇ・・・またかよ、何だコレ・・・」
「ナツ!こんなの相手にしてる場合じゃないよ!早くジュピターを壊さなきゃ!」

ハッピーの意見が御尤もなのだが、そんなのがナツに通用する訳が無い。

「このヤロォ!」
「ナツってば!」

今度は右拳に炎を纏い、兎兎丸に向かっていった。
兎兎丸はカッと目を見開く、と。

「どぅおっ!」

右拳の炎がナツの全身を包み、そこに兎兎丸の膝蹴りが決まった。
ナツの身体がコーンに直撃する。

「私は火のエレメントを操りし兎兎丸・・・全ての炎は私によって制御される」
「何だとォ!?アルカと同じじゃねーか!」
「敵であろうと自然であろうと、全ての火は私のものだ!」
「俺の炎は俺のモンだ!」
「ナツ!そんな事はどうでもいいから、まずはコレ壊そうよ!」

ハッピーが慌てる。

「相性が悪かったね・・・火の魔導士君」

兎兎丸が笑みを浮かべて呟く。
すると、ジュピターのラクリマが動き始めた。

「ジュピターが動き出したー!」

ジュピター発射まであと5分。

青い炎(ブルーファイア)!」

兎兎丸の手から真っ青な炎が放たれる。
が、兎兎丸に炎が効かないのと同じように・・・

「んがっ!」

ナツにも炎は効かないのだ。
もしゃもしゃもしゃ・・・と凄い勢いで炎を喰っていく。

「うほっ、冷てぇ!こんな火は初めて食ったぞ!」
「なるほど・・・君が噂の炎の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)だったのか。相性の悪さはお互い様、という訳か」
「はァ?」
「お互いに炎が効かないのだからね」
「勝手に決めんなよ。まだくらってもねぇだろ」
「だから私に炎は当たらないのだよ」

それを聞いたナツは、何かを思いついたようにニカッと笑った。
そして頬を膨らませる。

「この魔法ならどうかな?」
「どんな魔法でも『炎』である限り、私は制御できる」
「火竜の・・・」
「効かんぞ!」

そう言うと、兎兎丸は両手を前に突き出した。

(解っているぞ!口から炎を吐き出す魔法だ・・・)

そしてナツは魔法を放つ

「つば!」

・・・事はせず、プッと唾を兎兎丸に向かって吐いた。

「あっはっはっはっはっ!」
「・・・」
「ナツ!ヤバいよ!ジュピターが発射する!」

ナツが笑い、兎兎丸の顔に怒りが浮かび、ハッピーが更に慌てる。

「おのれ!騙したな!橙の炎(オレンジファイア)!」
「火の魔法は俺の食いモンだ!今度は何味かなっ!」

オレンジ色の炎がナツを包む。
そしてそれをナツはいつもの様に食い・・・

「!な、何だコレぁ!くせぇ!」

・・・はしなかった。
否、出来なかった。

「うおおおっ!鼻がもげるゥゥ!」
「はははっ!クソの臭いの炎さ!」
「下品な奴だな、てめぇ!」
「さ、先にやったのは君だろ!」

ジュピター発射まであと2分30秒。

「あったまきたぞ!」
「ナツ!もういいって!落ち着いてよー!」
「黙ってろ!」

ナツは叫び、炎を纏わずただの拳で兎兎丸に殴りかかる。
それを兎兎丸はバッと避けた。

「魔法は諦めて素手か?ならば刀を持つ私の方が有利」

兎兎丸は刀を抜き、シュバッと空を斬る音と共に振りかざす。
が、身体能力抜群のナツはその刀を蝶のように、とはいかないが、上手く避け続けた。

「ちっ」

そして右拳に炎を纏う。

「学習能力のない人だね・・・」
「ぬうぅ・・・」

当然、その炎は兎兎丸によって制御される。
ぐぐぐっと炎の拳がナツに当たる・・・と同時に、ナツは行動を起こした。

「がっ!」
「うぉあ!」








一方、ファントムギルド外では。

「何モタモタしてんだよ!ナツのヤロー!」

スバルが叫びながら銃を的確に撃っていた。


ジュピター発射まであと2分。







「へへっ」

先ほどのナツの炎は、兎兎丸にも当たっていた。

(コイツ・・・私に届く距離まで炎を範囲をでかくした!)

そう。
あの時兎兎丸はナツの近くにいた。
その為、ナツは炎の範囲を大きくし、自分と兎兎丸の両方に攻撃したのだ。

「ナツーーーー!」

ハッピーが叫んだ。







発射まで残り1分30秒・・・。

「エネルギーが溜まってきている・・・」
「まだなのか、ドラグニル!」
「もう時間が無いよ!」

クロスとライアーとサルディアも、相手を確実に倒しながら、ジュピター崩壊を待っていた。








「ぬぉおおっ!」

ナツは先ほど同様、炎の範囲を大きくする。

「同じ手は2度とくわんぞ!」

兎兎丸はタッと床を短く蹴り、後ろに下がっていく。
そして左手を炎に向ける、が。

「ぐぬぬぬ!」
「!何!?う、動かんぞ、あの炎!」
「ぬぉおぉぉおぁああぁあ!」
(ま、まさか制御返しだと!?戦いの途中に会得したというのか!?)
「ナツーーー!」







発射まであと32秒・・・。

「何やってるのよバカナツ!アンタの破壊癖があれば、簡単に壊せるでしょ!早くなさいな!」
「ちっ・・・もしも発射されてしまったら・・・私の魔法で・・・!」

怪我を負いながらも幽兵(シェイド)を倒すティアが叫び、ヒルダが苦し紛れに呟く。






「俺の炎だ!勝手に動かすな!」

叫び、一気に炎を発射させる。
が、兎兎丸はさっと身を下げ、避けた。

「はっはーっ!当たらなければ意味があるまい!」

ジュピター発射まであと10秒。
兎兎丸は避けたが、ナツはちっとも慌てない。
何故なら・・・。


「ハナっからお前なんか狙ってねぇよ!」


ナツの狙いは兎兎丸を倒す事ではなく、ジュピターを破壊する事だったからだ。

「な!」
「わあっ!」

ジュピターは音を立てて崩れていく。






それは外にも聞こえ、見えていた。

「見ろ!」
「おお!」
「砲台が崩れてく!」
「やったぞーっ!」

それを見て歓喜の声を上げるギルドメンバー。

「っしゃあ!」
「ジュピターの破壊に成功したのね!」
「さすがはドラグニルだ」
「ふぅ・・・」

スバル、サルディア、ライアーがナツに賞賛の言葉を口にし、ヒルダは安心からか溜息をつく。

「ま、これくらい出来て当然よね。アイツは・・・少しだけ、褒めてあげる」

ティアは口を緩ませるだけの薄い笑みを浮かべ、「よしっ」と小さく意気込んだ。
そんな(ティア)をクロスは見つめ、再び幽兵(シェイド)へと向かっていった。







(考えてみたらアイツ倒すか制御を克服しなきゃ、ここを壊すのは無理だったんだ・・・冷静さを欠いてたのはオイラの方か・・・)

破壊されたジュピターの砲台は湖に落ちていく。
煙が晴れ、そこからナツの怒りの顔が覗いた。

「次はお前達を潰す番だ、ファントム!」

それを見た兎兎丸は目を見開く。

(オ、オイオイ・・・マスター、話が違くないか!?妖精の尻尾(フェアリーテイル)にはまだ・・・こんなヤバい奴がいたなんてさァ!)

 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
珍しくナツが1人戦闘・・・実は「ナツ1人の戦いが少ない」という意見を貰ったので、本当はアルカも入れるつもりだったんですが、1人にしました。

感想・批評、お待ちしてます。 
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