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lineage もうひとつの物語

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旅立
  ゲラド

シルバーナイトタウン東口から出発しようとしたとき自分を呼び止める人物がいた。
この街では知らない者はいないゲラドだ。

なんかやらかしたか?

と身構え呼ばれた方向へ向き直る。
ゲラドの表情は穏和な雰囲気を纏っており怒られる訳ではなさそうだが油断できない。

「お初に直接お目にかかります。どうして私を?」

ナイトとして恭しく礼をし訊ねると

「アレン君を我が家の夕食に招待したくての」

やっぱり何かやらかしてしまったのか

ゲラドの微笑みが悪魔の笑みに見え何とか断ろうとすると

「ナターシャのこと、と言えばわかるかの?」

なるほど、

確かにこの人物とナターシャが繋がっていてもおかしくはないがまだ味方と決まったわけではない。
ナターシャの名前がでてくるということは普通の会食ではないだろう。
覚悟を決め決意するアレン。

「わかりました。私のような者でよければ」

にこりとゲラドは微笑み着いてくるよう促す。
アレンはその後を着いていく。
ゲラドの歩く後ろ姿を見てこの老人はやはり自分より強いと感じ敵だった場合どう対処するか考えていた。

応接室に通されたアレンは落ち着きを無くしていた。
隅々まで手入れが行き届いており埃ひとつ落ちていない。
自分の身なりを見るとここにいるのが恥ずかしい。
ゲラドに椅子を勧められ礼をし座る。
テーブルをはさんで反対側にゲラドが座り口を開いた

「そう固くなるな。取って食うつもりはない。」

そう言われてもアレンは益々緊張するばかり。
ゲラドはアレンの様子を無視し告げた。

「今回の件、誠に感謝しておる。」

そう言うとゲラドは頭を下げた。

今回の件?
ああ、あれか

アレンは戸惑いつつ礼には及びませんからと言いゲラドに頭を上げるよう頼んだ。

「そなたは国の宝を救ったのだ。それに比べればワシの頭など安いもの。ほんとうに有り難う。」

またまた頭を下げるゲラドに困り果てたアレンは話を変えることにした

「ナターシャ様はお元気でしたか?」

「もちろんじゃ。ワシがお会いしたときは明るく笑顔でおられたぞ。」

「それはよかった。それが気になっていたのです。聞けてよかった。」

心の底からの言葉だ。
それを感じとったゲラドは笑みを崩すことなくアレンに言った。

「おまえさんが無事とわかるまで元気がなかったそうじゃがの。泣いてたようじゃぞ。」

「まさか。私はただのナイトという駒です。駒を一つ失うだけのこと。覇業を成すために駒一つ一つ気にかけてはおられませんよ。」

真っ直ぐ目をそらさずゲラドを見詰める

「それはそなたの本心ではなかろう?丸二日。たったそれだけだが一緒におれば姫君のお心が理解できたのではないか?」

そう。本心ではない。
気にかけてくれていたことはたまらなく嬉しい。
むしろそれが足枷になるのを恐れていた。
ナターシャは優しすぎるのだ。
しかしそれを認めてしまえば、言葉にしてしまえば特別な感情が生まれそうで怖かった。
アレンは沈黙してしまう。

「ふむ。まぁよいわい。そなたは恩人にかわりない。で、これを渡そうかと思っての」

ゲラドが手元にあったハンドベルを鳴らすと従者が四人がかりでテーブルよりは少し小さいが大きめの木箱を運んできた。
テーブルの横に置き恭しく頭を下げ出ていく従者を眺めながら敵方じゃなくてよかったと心底思い箱に興味は抱かなかった。
ゲラドは立ち上がり蓋を開けるとアレンを呼ぶ

「アレン殿、こちらにきて着けてみてはくれんか」

名を呼ばれ我に返ったアレンは近寄り箱の中を覗いてみる。
そこにあったのは金属でできたグローブとブーツ。そして立派な装飾の施された鎧。
アイアングローブとアイアンブーツ、エルブンブレストプレートである。
3つとも多少古さは感じられるものの手入れが行き届いており歴戦の防具という印象を受けた。

「これらはワシが若い頃使っていたものでな。今では体力的にもう装備できん。」

とゲラドは右のグローブを取りだしアレンに手渡す

「これらを使ってもらえぬか。もちろん自分に見あった防具が見つかるまででかまわん。」

「ほんとうによいのですか?このような立派なものを」

「なに、ワシも若い頃は大剣使いでな。そなたのような大剣使いが纏うための防具となっておる。着けてみるか?」

アレンは頷き両腕にグローブを装着する。

「どうじゃ?それで得物を掴んでみい。」

愛刀であるツーハンドソードを握り構えれば邪魔にならない。
初めてのはずなのに以前より着けていたような感覚。
レザーグローブ(ブラックナイト戦で壊れてしまった)よりは重いものの全く苦にならない。

「素晴らしい」

感嘆とともに吐き出す言葉。
次にブーツを履いてみるがこちらもアレンに合わせて作られたようにピッタリだ。
そして鎧。
胸と腹の部分を守る作りになっており大剣を扱う際に動きを妨げることなく戦える。

「ほう。似合っておるではないか。まるでそなたの為に作られたように見えるのぉ。」

「たしかに、そう感じるくらいピッタリです。」

そしてゲラドはマントを手渡す。

「その防具には小さいがナタリシア様のデューク王家の紋章が刻まれておる。」

グローブをよく見てみるとたしかに紋章らしきものがある。

「たしかにあります。これがデューク王家の・・・」

「この時世じゃ。堂々とその紋章を見せて歩くわけにはいくまい。これをもって隠すがいい」

アレンは頷きマントを羽織ると感激しお礼を述べた。

「このような私に勿体ない物だとは思いますが有り難く使わせていたただ来ます。」

「うむ。しかるべき時、姫様の力となってくれればそれでよい。その為に旅立つんじゃろう?」

ゲラドは椅子に腰掛けながらアレンに問う

「はい。まだまだ自分は弱く足手まといにしかならないでしょう。旅先で経験を積み強くなって少しでも手助けできればと思っております。」

「そうか。その時は必ず来るであろう。宜しく頼むぞ。騎士アレンよ。」

「その時は必ず。」

強い意思を込めた目でゲラドを見詰め約束する。
強くなって駆けつけると。

その後は夕食を馳走になりアレンはゲラド家を離れた。
ゲラドと様々な会話を交わし色々な情報を知ることができた有意義な時間だった。
一番の収穫はナターシャの旅の目的
であり随伴している仲間のことだった。
ナイトが一人加わったらしくバランスのとれたパーティーのようだ。
それにエルフ、ウィザードはかなりの使い手らしく以前のようなことがない限り安心と言えた。
アレンは呟く

「強くなってナターシャを驚かせてやる」
と、

アレンは暗闇の中そのままシルバーナイトタウンを後にした。 
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