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シャワールーム

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第五章


第五章

 そしてそこに入ってだ。彼は右から二番目のそのシャワールームに入った。そのうえで、であった。
「ここのシャワーにこそ秘密があったんだよ」
「シャワーに!?」
「というと」
「このシャワーのホースの中にお湯で溶ける睡眠薬を入れていたんだよ」
 ホースを手に取って役と警官達に話す。
「それは調べればわかるさ。ホースの中をな」
「ホースの中をですか」
「そこから」
「ついでに管理人さんのいる管理人室、それに自分の家かな」
 その睡眠薬がある場所も言うのだった。
「そこもだな」
「そこもですか」
「では」
「話はこれで終わりだな」
 今度は前迫を見ての言葉であった。
「後は細かい事情はじっくりとわかることだ」
「よし、それでは」
「今から」
 こんな話をしてであった。その後でだ。
 前迫は連続殺人犯として逮捕された。事件はその猟奇性によってネットやマスコミを賑わせた。あるサイトではサイコ殺人として扱われ人々の心に嫌な記憶として残った。 
 その騒ぎが終わってからだ。本郷は役に対してだ。こう話す。
 今二人は昼食を食べていた。ラーメンを食べている。京都ラーメンを食べながらだ。そのうえで役に対して言うのであった。
 店は何処にでもある普通の店である。というよりかは古典的ですらある。品書きは手書きで壁にあり丼は中華風の渦がある。しかもナルトにも渦がある。ラーメンまで古典的であった。
 その中でだ。彼は役に対して言うのだった。
「しかしあれですね」
「あれか」
「美人が憎いですか」
 こう彼に言うのだった。ラーメンを食べながらだ。
「そしてそれと共に」
「陵辱したい存在でもあった」
「憎いのに、ですか」
 本郷は首を傾げさせた。そうしながらラーメンの麺をすすっている。
 味はかなりいい。卵麺でありながらコシもしっかりしている。内装はあまり派手ではないがその味はだ。派手ではないが見事なものだった。
「それでも欲情するんですね」
「憎いからこそ汚したくなる」
 役はラーメンの中のもやしを箸に取っていた。
「そういうことだな」
「それで、ですか」
「あの女は昔からああした顔に態度だったらしい」
「成程」
 それを聞いてだ。また話す彼だった。
「それじゃあもてませんね」
「そう思うか」
「ええ、絶対に」
 本郷は断言さえした。
「顔ならまだいいですがね」
「性格か」
「陰気で何か陰険でしたし」
 要するに暗いというのである。
「それじゃあとても」
「そうだな。それでだ」
「皆から相手にされずにですね」
「それで性格がさらに捻じれてだ」
「ああなった、ですね」
 本郷は冷めた調子で述べた。
「そういうことですね」
「冷静だな」
「こうした事件の常ですからね」
 今度は顔を顰めさせての言葉だった。
「犯人の」
「そうだな。常だな」
「それでああした殺人を犯しますか」
「それもだ。そうした殺人鬼はだ」
「俺達の中にいる」
 本郷の言葉はここでは剣呑なものになった。
 
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