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ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?

作者:あさつき
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
  九十四話:それぞれの役目

 ラーの鏡を入手して、修道院で一泊した翌朝。
 身嗜みを整え、朝食を頂いて準備を済ませ、こちらも準備を整え終えたマリアさんと改めて顔を合わせます。

「マリアさん。私たちがお守りするとは言え、危険なことには変わりありませんが。本当に、いいんですね?」

 今後の活動をやり易くするために、鏡の入手に尽力した恩人として、王様に面通ししておいたほうがいいとは思うんですけど。
 危険な場所に無理矢理引っ張って行くつもりは無いから、行くかどうかはちゃんとマリアさんに決めてもらわないと。

 私の問いに、マリアさんが力強く頷きます。

「はい。私も、最後まで見届けたいのです。あの教団に魔物が関わっていたことと、ヘンリーさんのお国に魔物が入り込んでいることと。時期を考えても、お二人が教団の奴隷にされたことからも、無関係とは思えません。鏡を手に入れた今、私がお役に立てることはもうありませんが。どうか、私も連れて行ってください。お願いします」

 マリアさんには、大まかな事情とヘンリーの身分を伝えてあります。
 昨日のうちに、同行したい意思表示は受けていましたが、一晩経っても気持ちは揺らがなかったようです。

 私は元からそのつもりだったし、マリアさんがそう言うなら異論は無い。

「わかりました。私も、マリアさんには見届ける権利があると思います。勿論、私たちがお守りしますが、今日は守る相手がマリアさんだけではありませんから。私から離れないでくださいね」
「はい!よろしくお願いいたします!」

 昨日と同様に私が守りに徹して、攻撃は他の仲間たちに任せる予定なんですけれども。
 今日は太后様と、太后様を取り巻く人間たちも守らないといけないからね!
 護衛対象にも、協力して頂かないとね!

 マリアさんと微笑み頷き合う私を他所に、ヘンリーたちも気合いを入れています。

「いいか、先手必勝だ。攻撃は鏡で正体を暴いてからだが、気配で最初からわかってるわけだから。暴いた瞬間に、当てるつもりで行け。絶対に、後ろに抜けさせるな」
「当然にござる。拙者らが取り逃がしただけ、ドーラ様を危険に晒すゆえ。どうあっても、見逃しはしませぬ」
「太后のおばちゃんはともかく、おっさんたちまで守るとか気がのらねーけど、ドーラちゃんとマリアちゃんのためだからね!おいらも頑張るよ!」
「ピキー!ピキー!」

 気合いが入ってるのはいいが、なんか方向性を間違ってる気がする。
 まあ結果として上手くいくなら、なんでもいいか。


「おうじさまー!みんなー!がんばってねー!」
「ドーラさん、みなさん、お気を付けて!マリアを、よろしくお願いします!」

 修道院のみなさんに見送られて、出発します。


 今日もマリアさんにはコドランと一緒に馬車に入ってもらい、魔物を倒しつつ南の祠に到着して。

 マリアさんとコドランも馬車から降りて旅の扉を抜けて、ラインハット城内に戻ります。

「こんな抜け道を使えるだなんて……。ヘンリーさんは本当に、この国の王子様だったのですね。気軽にお話ししてしまって、まずかったでしょうか」

 城内の豪華な内装を見回しながら、マリアさんが気後れしたように呟きます。

 ここは、そんなことないよ!的なフォローを当人がすべきところであろうに、またヘンリーが特に反応しないので。

 仕方ないので、私がそれらしくフォローしてみます。

「そうですね……。もう王宮に入りましたし、ここからはヘンリー様とお呼びしたほうがいいかもしれませんね。勿論、私も」

 常識的に考えて、本人が言うのでなければそっち側だよね!
 別にいいよとか、私が許可する権利なんて無いからね!

 真面目くさった私の提案に、マリアさんも神妙に頷きます。

「やはり、そうですよね」
「あ、でも。まだ、正体を明かすわけにはいきませんから。やはり、名前自体を呼ばない方向で」
「わかりました」
「おい。待て」

 ヘンリーがとうとう口を挟んできました。
 後から文句を付けるくらいなら、初めから自分で言えばいいのに。

「なんでそうなる。よくある名前なんだから、普通に呼ぶなら問題無いだろ。いいよ、今まで通りで。この先も」
「あ、そう。ならいいね、今まで通りで。マリアさんも」

 もうちょっと弄ってみてもいいんですが、そんな場合でも無いし。
 引っ張り過ぎてこの先の具体的な話なんて進められた日にはヤブヘビもいいところなので、この辺でやめておきます。

 軽く返す私の態度から冗談であったことは伝わったようで、マリアさんも緊張が解けた様子で微笑みます。

「お二人は本当に、仲がよろしいですね。わかりました。それなら私も、そのようにします」
「ヘンリー様!なーんて、似合わねーよな!おいらもそう呼ばなきゃいけないかと思ったよ、よかったー」

 コドランも話に加わり、茶化してきます。
 王子様ぶってる時はそれなりだし、似合わないってことも無いとは思いますが。
 まあ、今さらではあるよね。


 という感じに、妙な緊張感を滲ませることも無く、和やかな雰囲気を保って国王デールくんの待つ玉座の間にたどり着きます。

 衛兵さんがヘンリーに目を留め、声をかけてきます。

「貴方は!陛下より、お話は伺っております。どうぞお通りください」

 ヘンリーの正体や詳しい事情まで知ってる風ではありませんが、何らかの説明は受けていたようですぐに御前に通され、デールくんの指示を待つまでも無く速やかに衛兵さんたちが退出して行きます。


 デールくんが、待ちかねたように玉座から立ち上がります。

「兄上!お待ちしていました!それで、鏡は」
「ああ。取ってきた」
「本当に、あったのですね……!良かった、これで被害を少しでも抑えることが出来ます!それで、この後ですが」
「ああ。俺たちは、このまま義母上のところに向かう。お前は、ここで待て」
「……はい」

 少し間を置きながらもヘンリーの言葉に頷き、悔しそうに俯くデールくん。

 その姿を真っ直ぐに見据え、ヘンリーが言葉を続けます。

「デール。わかっていると思うが」
「はい。僕の役目は、兄上のように前に立って戦うことではありませんね。国王として何としても生き残り、戦いが済んだ後に全てを収めること。……元々、自分で奴らを排除出来る程の力を持たないからこそ、これまで助けを待つしか無かったのですから。今も僕に出来るのは、待つことでしかありません」

 俯いたまま無力感を噛み締めるように言うデールくんに、更にヘンリーが言葉を続けます。

「そうだ。国王が一介の戦士や兵士のように、自らの身を危険に晒して戦う必要は無い。戦いが終わったその先にあることこそ、お前にしか出来ないことだ。今は、守られるのがお前の仕事だ。魔物のことは、俺たちに任せろ。その先のことは、頼む」

 デールくんが顔を上げ、ヘンリーを見詰め返します。

「……兄上。その先は……」
「言うな。俺は、国王には相応しく無い」
「……そうでしょうか」
「そうだ。俺は、この国のことを第一には考えられない」
「……兄上。それは……」

 しばしヘンリーの瞳を物問いたげに見詰めた後、なぜかこちらを見てくるデールくん。

 え?なんですか?
 私に、ヘンリーを説得しろとでも?

 この国の王位とか別に私に関係無いし、兄弟二人で話し合って決めればいいと思うんですけれども。
 見たところ、どっちもそれなりに出来そうではあるし。
 どっちが頭でももう片方が支えるんだろうから、どっちが王でも実質関係無い気もするし。

 そんなことを思いつつ黙ってる私からデールくんがまたヘンリーに視線を戻し、諦めたように微笑みます。

「……わかりました。王位のことは、それでもいいです。元々、十年前から覚悟していたことですから。ただ……後で少し、話をさせてください。この十年のことも、この先のことも」
「……わかった」

 よくわかりませんが、なんだか話がまとまったようです。
 ……まあ、十年前の時点で洗脳工作はほぼ完了していたわけだし。
 兄弟だけで通じ合う、何かがあったんだろう!

 一人納得する私を他所に、デールくんが今度はマリアさんに視線を向けます。

「ところで、そちらの女性は?見たところ、荒事に向くような方では無いようですが」
「ああ。こちらはマリアさん。見ての通り、シスターだ。詳しい事情は後で話すが、彼女の兄上は俺たちがここに戻るのを助けてくれた恩人で、彼女自身は鏡を手に入れる助けになってくれた恩人だ。彼女がいなければ、鏡は手に入らなかった」
「そうでしたか。ご兄妹で、兄とこの国を助けてくださるとは。ありがとうございます」

 ヘンリーの紹介を受けてマリアさんに向き直り、微笑みながらお礼を言うデールくん。
 マリアさんも、微笑み返して答えます。

「いいえ。私のほうこそ、お二人には随分助けて頂いたのです。少しでもお役に立てたなら、嬉しく思います」
「そうなのですか。そのお話も、後でゆっくり伺いたいものです。……ところで、鏡を手に入れても同行されているということは。まさかとは思いますが」
「はい。私も、みなさんと共に太后様の元に向かうつもりです」

 はっきりと言い切るマリアさんに、表情を曇らせるデールくん。

 私としても、デールくんに引き合わせられた以上、あとは無理に着いて来ないで待っててもらってもいいとは思うんですけど。
 ここまで言い切るからには、マリアさんにも何か考えがあるのか。

 ひとまずマリアさんの意見を聞いてから、対応は考えよう。 
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