| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百六十話 謀略の花道

 
前書き
お待たせしました。テレーゼが非常に嫌らしい謀略を仕込みます。 

 
帝国暦485年4月11日

■銀河帝国 帝都オーディン ノイエ・サンスーシ

「そう、フレーゲルが又やった訳なのね」
「御意、ケスラー提督の艦隊運動を邪魔した挙げ句、壊走したとの事にございます」
「それで損害は?」

「レーテル艦隊では5割を越える損害が出ております。又全体では2割近い損害を生じています」
侍従武官長ヴィッツレーベン大佐の報告にテレーゼは左手で目を隠しながら呟く。
「そう、戦死者はどの程度なの?」
「はっ、78万近いとの報告が入っております」

「そう、78万人か……」
そう呟くテレーゼの目にはきらりと光る物が見えていた。

「はっ」
ヴィッツレーベンもそれ以上言えなかった。
「ヴィッツレーベン御苦労様でした、暫く一人にさせて下さい」

「御意」
ヴィッツレーベンはテレーゼに最敬礼をした後、退室した。

目の涙を擦りながら、テレーゼは独り言を言う。
「78万の家族が泣く事になるか、因果な商売ね皇族って、人前で泣く事すら許されないなんて、フレーゲル貴方のした事は何れ数万倍にして返してもらうからね、それまでは精々足掻くがいいわ、そしてこの犠牲を無駄にしないわ」

そう言いながらテレーゼは更なる謀を考え始めた。彼等犠牲者が少しでも浮かばれるようにと。



帝国暦485年4月30日

■銀河帝国 帝都オーディン ノイエ・サンスーシ

犠牲者に対する黙祷を捧げたテレーゼは、早速精力的に動き始めた。

ノイエ・サンスーシの日本庭園でお茶会を行うとの触れ込みで、クラリッサ・フォン・ケルトリング、ブリギッテ・フォン・エーレンベルク、ヴィクトーリア・フォン・メクレンブルク、エルフリーデ・フォン・リヒテンラーデ、カロリーネ・フォン・グリンメルスハウゼンの御学友組。

妹分のサビーネ・フォン・リッテンハイム、マルガレータ・フォン・ヘルクスハイマー、カーテローゼ・フォン・クロイツェル、そして護衛役としてズザンナ・フォン・オフレッサーがあつまった。

そしてGIO48総監督マリア・マナリーナ、イリス・シャトーブリアン、レニ・ミルヒシュトラーセ、グリシーヌ・ブルーメール、ラチェット・アルタイアがゲストとして、招待されていた。

「本日は皇女殿下を始め、皆々様への拝謁をさせて頂き真に恐悦至極に存じます」
GIO48を代表して、マリア・マナリーナが挨拶をし、それに呼応して残りの4人も頭を下げる。

「良いのよ、今日はみんなでお茶会をしようと言うだけですから、そんなに畏まらないで下さいね」
テレーゼが屈託のない笑みでマリア達を労う。

マリアにしても、このお茶会が壮大な謀略の一環だと聴かされているために、一回は遠慮してから受ける事としていた。
「お言葉でございますが、殿下、我々は卑しき役者にございますれば、皆様と同じ席に立つ事すら恐れ多い事にございます」

マリアの意図を知っているテレーゼは最上の笑顔で答える。
「そんな事はないわ、貴方達は帝国の皆に笑みを与えているのですから、卑しいなぞとんでも無いわ、ねえ、マルガレータ」

聡明なマルガレータはテレーゼがこの場雰囲気を良くして、平民と貴族との垣根を低くしようとしていると素早く考え、相づちを打つ。
「ええ、御姉様、私もGIO48は大好きですから、卑しいなんて思いません」

それを切っ掛けにみんながGIO48は大好きだと口々に話し出した。これにより場の雰囲気が和らぎ、お茶会が和気藹々と始まった。

お茶会の最中には、テレーゼ、マルガレータ、カーテローゼの3人でGIO48の真似をしてみんなを驚かせたりした。

「みんな今日は私達のライブに来てくれてありがとう」
「みんなのアイドルテレーゼちゃん」
「とっても元気なカリンちゃん」
「みんなの妹マルガレータちゃん」
「私達、チェックメイトシスターズ」

その結果、それに入りたいと、サビーネが参加してりして、今まではリッテンハイム侯の影響で自分に対等の友達がおらずに、傅くような取り巻きしかおらず、歪みが出てきていたサビーネが素直で優しい性格になり、カリンやマルガレータと仲良く遊ぶようになり、母親のクリステーネからもテレーゼが感謝される事となり、益々姉妹仲が良くなっていく。

その後お茶会の最中に、ヴァンフリート星域会戦の話題がテレーゼの何気ない一言から始まった。これも先にテレーゼが仕込んでいた事である。

「そう言えば、オフレッサーは未だ帰ってこないの?」
「はい、父は今、ヴァンフリート星域からの帰途にありますので」
「ヴァンフリート星域会戦か、あれはもう少しで完勝できたって、軍務尚書が父上に話していたわ」

「殿下、この様な場所での話題ではないと存じますが」
侍従武官のマルティナ・フォン・バウマイスター中佐が知っていながら苦言を述べる。
「マルティナ、良いじゃない、昨今では女性も士官学校へ入校できるようになったんだし、たまにはこんな話題も良いと思うのよ」

マルティナは諦めた様な顔をして返答した。
「御意」

「でね、聞いた話では、今回の叛乱軍基地の情報は向こうに潜入させたスパイの手柄だそうよ」
「へー、優秀なスパイがいるんだね」
軍事貴族のクラリッサが早速興味を示す。

「ええ、一人は通称ダージリン、亡命を装った貴族令嬢と結婚してスパイになったそうよ」

「へー、亡命者を装い汚名を背負ってでも、帝国の為に情報を寄越すなんて、頭が下がるね」
「ですね、其処までしてくれるとは、何時か帰国してもらって報いたいですね」
クラリッサの言葉にカロリーネが返答する。

「そうよね、叛徒を撃滅したら、召還するようにお父様に話してみるわ」
「それは宜しいかと」

「他にも居るらしいんだけど」
「へーどんな人なのですか?」
エルフリーデも興味を示し始める。

「何でも元々は独立商人出身らしいんだけど、両親の失った為に、生活とかの面倒を見てその後、士官学校へ入校して以来、此方との情報の遣り取りをしているらしいわ」

「けど独立商人出身者など信用できるのかしら?」
オットリタイプのヴィクトーリアが疑問を示す。

「その点は心配要らないらしいわ、第5次イゼルローン攻略戦でも、敵が平行追撃を行う事を知らせてきてるし、今回のヴァンフリート4=2後方基地の存在も知らしてきているわ」

「まあ、それなら安心ですわね」
「他にもいるんだって」
「どんな方なんですか?」

皆が興味を示す中、その言葉を一字一句忘れないように記憶するラチェット・アルタイアの姿があった。彼女は誰も気が付いていないと思っていたが、完全にスパイと知られていてテレーゼの謀略に利用されていたのである。

彼女は寄宿舎へ帰舎後、今回の情報を纏めてフェザーンへと報告した。近年まれに見る重大情報だと喜びながら。





宇宙暦794年 帝国暦485年5月10日

■フェザーン自治領 自治領主オフィス

フェザーン自治領では自治領主アドリアン・ルビンスキーが補佐官ニコラス・ボルテックからGIO48に潜り込ませたスパイからの重大情報に付いて報告を受けていた。尤もボルテックに伝わる前に既にルビンスキーは事態を知っていたのであるが。

「ほう、帝国は同盟にスパイを送り込んでいると言うのか」
「はい、自治領主閣下、過日の皇女主催の宴に参加した107号から皇女自らが皇帝と軍務尚書の話を聞いたと話していたそうです」

どんなもんだとばかりにボルテックが報告するが、既に事実を知っているルビンスキーは始めて聴いた風に演技する。

「なるほど、それは重要な情報だが、裏付けは取れたのか?」
「はい、相当な迂回をしていますが、数名の人物に同盟が作戦を行う前と作戦後に相当な額の資金が振り込まれています」
「ふむ、でその人物は?」

ルビンスキーは非常に興味が有るように演技をする。それを真に受けたボルテックは益々熱心に説明する。

「はい、一人は、ミンツ大尉と申しまして、亡命貴族の妻を持って以来、資金の振り込みが始まりました。この男、統合作戦本部長シトレ元帥の部下であるキャゼルヌ准将の副官をしていましたが、790年に最前戦へ移動の上、戦死しています」

「謀殺の可能性も有るわけだな」
「はい、本来軍政畑の人材がいきなり最前戦へ移動させられていますので、その可能性もなきにしもあらずです」

「ふむ、他には?」
「後方勤務本部所属のアーリントン大佐が、先頃亡命していますが、これもスパイであった様です」

ルビンスキーは少し考える振りをして思い出したかのようにボルテックに話しかける。

「そうか、部下の女性士官を誑かして、横流しをしていた男か」
「はい、どうも横流しだけではなく、情報も流していたようです」
「成るほどな、他には?」

「はい、情報部所属の人物で通称、北斗(グローサーベーア)或いはハンターと呼ばれている者、宇宙艦隊参謀で通称マダムと呼ばれている者が居るようですが」
「人物を特定できなかった訳か」
「はい、真に申し訳ありませんが、この2名はよほど重要らしく、尻尾すら掴めません」

ルビンスキーも調べたが全く判らなった為、この点でボルテックを責める事はしなかった。
「致し方ないな、ボルテック、残りのスパイも早いうちに特定する事だ、我々以外に同盟の情報を帝国に流されては困るのだから」
「はい、帝国同盟にいるスパイを動員して探らせます」

「うむ、それと既に死んだ者と亡命した者がスパイだったと同盟に知らせてやれ」
「しかし、そうしますと混乱が起こるのでは?」
「疑心暗鬼になるほど我等フェザーンの情報が重要になってくるのだ。スパイの事を知らせれば奴等は我等を更に信用し、益々我等思い通りに動かす事が出来るというものだ」

「なるほど、判りました一両日中にも高等弁務官事務所に連絡を入れます」
「うむ」



 
 

 
後書き
次の回で同盟側の混乱が。

渾名は判る人なら判るキャラ。銀英伝の世界じゃ誰も判らないだろうな。



 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧