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マッドライバル

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第三章

「それでじゃ」
「倉田博士も空ですか」
「それで来るわ」
「いつも通りですね」
「そうじゃ、空と空の対決じゃ」
 今度はそうなるというのだ。
「今度こそ勝つぞ」
「頑張って下さいね。ただ」
 坂上君は言っても無駄だと思っていた、だがそれでもあえて言ったのである。
「周りに迷惑はかけないで下さいね」
「迷惑?そんなものは気にせぬわ」
 これもどうでもいいというのだ。
「そもそも巻き添えにしている人間はおらんぞ」
「その都度あちこち破壊してますから」
「戦場は選んでおる」
 だから何の問題もないというのだ、周りに迷惑をかけても。
「東京ドームなり多摩川グラウンドなりな」
「巨人関係ですか」
「あのチームの寮も戦場にしたわ」
 それで寮を破壊して寮生、巨人の若手選手の家を失くさせたのだ。選手達はホテルに逃げたがそれでも巨人に災厄を与えたのだ、善行である。
「他には変態記事を載せた新聞社の本社もな」
「戦場にされたんですね」
 そして建物を完全に破壊したというのだ
「そうした場所を戦場に選んでるからですか」
「そうじゃ、わし等はあくまで迷惑千万な相手の場所のみ戦場に選ぶ」
 そして巻き添えにしているというのだ。
「だからよいのじゃ」
「いいとは思えないですが」
「気にするな、それで今度じゃが」
 その空での戦いの話に戻る、それはというと。
「早速造っておるわ」
「空飛ぶ戦艦ですか」
「完成は三日後じゃな」
 マッドサイエンティストの発明や開発は速い、一週間で大抵のものは完成させてしまう。それは池上もなのだ。
「では食事の後で再開するぞ」
「わかりました」
 坂上君も何だかんだで池上の仕事を手伝う、助手としての責は全うしていた、そしてそれは倉田の方でもだった。
 倉田も自身の海中基地の中で次の兵器の開発に勤しんでいた、それで己の後ろにいる黒髪のポニーテールに眼鏡に白衣の娘に言うのだった。
「いい?安曇さん」
「はい、次はですね」
 そのポニーテールの娘が答える、見ればその顔は高校の学級委員長みたいな感じである。生徒会長でもいいかも知れない、白衣からも胸がはっきりと出ている。 
 しかしそれは倉田もだ、その胸、白衣の下の青いセーターを突き出させている。そして黒のミニのタイトからは黒ストッキングに覆われた長い美脚がある。靴は黒のハイヒールだ。
 安曇と呼ばれた娘はそのプロポーションも見事な彼女にこう応えたのである。
「空ですね」
「そうよ、あの男はそれで来るわ」
 それがわかっているという言葉だった。
「だからね」
「博士もですね」
「空には空よ」
 倉田は整った目を燃え上がらせて言った。
「だからそれでいくわ」
「こちらは何を開発しますか?」
「そうね、空といえば飛行機よね」
「はい」
 その通りだとだ、安曇さんも答える。
「まさにそうですね」
「若しくは飛行船か」
「グラーフ=ツェッペリンの様な」 
 ドイツの飛行船だ、安曇さんはあえてこれを話に出したのだ。
「そういうものですね」
「そうよ、それでね」
「今回は飛行船ですか」
「クラシックに行くわ」
 古典的にだというのだ。 
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