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第四章

「あと加山雄三さんのお父さんもね」
「ああ、上原謙さんだね」
「あの人達は特別なのかな」
「昔は何歳でも大丈夫だと思ってたよ」
 新島は若き日に考えていたことを苦い顔で言った。
「もう収めるので大変だったよ」
「十代二十代の頃はね」
「だから子供も出来たんだ」
 先立たれた妻との間にだというのだ。
「それがね、けれどね」
「今はだね」
「そうだよ、こんなに苦労するなんて」
 十代の頃のことを考えれば本当に信じられなかった。老いというものを何よりも実感してさえいた。
 それでだ、新島はこう言うのだった。
「若しかしたら」
「無理だっていうんだね」
「そうかもと思ってるよ」
 実際に、というのだ。
「僕はね」
「いや、諦めたらそれで終わりだから」
「続けるべきかな」
「そうしないかい?どちらにしても健康にはなってるんだろ?」
「そのことはね」
 そうだというのだ、このことは。
「間違いなくね」
「じゃあどちらにしても続けていけば」
 精のつくものを食べていけばというのだ。
「いいんだね」
「そうしたらいいよ、とにかくね」
「諦めることは駄目だね」
「続けるんだよ、仕事だってそうじゃないか」
 諦めればそれで終わりだとだ、間宮は新島に仕事のことからも話した。
「だからやっていこう」
「うん、じゃあ」
「そういうことでね。それと」
 ここで間宮は話題を変えた、その話題はというと。
「君の奥さんだけれど」
「うん」
「どういう人かはわかってるつもりだよ」
「性格も凄くいいよ」
「そうだね、外見だけじゃないね」
 その新妻となる南野喜久子の話もするのだった。
「いや、あそこまでの人はね」
「いないね」
「そうした奥さんを迎えられるという意味でもね」
「僕は幸せだね」
「そう思うよ、多分あの人は」
 喜久子はだ、どうかというと。
「僕の妻と同じだけ素晴らしいね」
「ははは、そこでそう言うんだね」
「言うよ、浮気とかの心配はないね」
「それもないね」
 確信してだ、新島も答える。
「彼女に限ってはね」
「そうだね、けれどね」
「満足させられないと駄目なんだね、夜も」
「妻を何事でも満足させる」
 間宮はここでは強い声で語った。
「このことは夫として絶対のことじゃないか」
「だからだね」
「そう、夜のこともね」
 それもだというのだ。
「絶対に何とかしないとね」
「駄目だよね、けれど」
「何を食べても駄目なんだ」
「精のつくもの、身体にいいものを食べてもね」
 全体としてはかなり健康になった、元気もみなぎっているというのである。しかしそれでもある部分だけは。
「駄目なんだよ」
「一番肝心の部分がね」
「何ともないと」
 起きないというのだ。 
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