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ソードアート・オンライン~ニ人目の双剣使い~

作者:蕾姫
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戦士達への鎮魂歌

吸血鬼の姫はそのまま地面に降り立つと軽く一礼する

「ようこそ、私の館である紅魔館へ。私はこの紅魔館の当主、レミリア=スカーレットと申します。せっかく来ていただいて悪いのですが、生憎と歓迎の準備はできていませんの。血の華ならば御用意できますが?」

「へっ、それじゃあ用意してもらおうじゃねェか! お前の血でなァ!!」

どっちが悪役かわかったもんではない

「血気盛んね。まあ、その方が良い血が取れるわ」

多少いらついたのか口調が幾分か荒くなる。被っていたカリスマの仮面がひび割れ、中から幼くも残酷な獣性が顔を覗かせる

そして、レミリアは窓から見える月を見ると熱っぽく呟く

「こんなに月も紅いから……本気で殺すわよ」

そう言うレミリアの手にはいつの間にか紅く染まる槍が存在した

「上等だァ! 行くぜぇぇぇ!!」

手の包帯を解きつつクラインがレミリアに向かって突っ走る
レミリアの意識がクラインに集中している間に素早くスペルを唱える。属性は闇。効果は隠蔽

そして俺は地面を蹴った

その間にも各自動き始めている。近接組がクラインに追随し、後衛組が様々な魔法を放つ
対してレミリアは翼をはためかせ、魔法を器用に交わしていく。そしてこちらの魔法が途切れた瞬間、手に持った槍をクラインに向かって投げつけた

「小手調べよ!」

そう言うレミリアの背後に魔法陣が発生。その数、16

クラインの振った包帯が槍を捕らえる
それにより槍の軌道がズレ、クラインがダメージを受けることはなかった

「ぬぉぉぉぁぁあああ!?」

しかし、槍に包帯が絡まっていたのか、そのまま包帯の先を持っていかれてしまい、包帯を解きながらクラインが後方へ飛んでいった。クルクルと翻筋斗(もんどり)をうちながら

そんなクラインを尻目に前に出たのキリト。爪を精一杯伸ばすと、その爪にソードスキルの光を纏わせる

先程気づいたことなのだが、爪を最大サイズまで伸ばせば、片手剣とシステムが認識してくれるらしい。またそれと同じようにユウキのしっぽも槍と認識されたり、わけがわからないことにアスナの箒がレイピアと認識されたり……全く、わけがわからない

そして、キリトの爪が16の魔法陣から放たれた16の魔力弾を縦横無尽に斬り裂いた

「す、少しはやるようね。なら!」

さすがに魔法を斬り裂いたのには驚いたのか、少し動きを止めたあと、手を上に挙げる。そして発生する先程の倍、32の魔法陣

その光景を上から(・・・)見ていた俺は翼を折り畳み、鋭角に落下していく。もちろん、俺が向かう先にいるのはレミリアがいた

「これでも……くらッ!?」

腕を振り下ろそうとしたレミリアに上から落下スピードを乗せた蹴りを放つ。キリトたちに意識を集中していたレミリアにかわせるはずもなく、宙を舞っていたレミリアは地面に縫い付けられた

「チャンス!!」

いつの間にか復活していたクラインが包帯を動かし、レミリアを縛り上げる
地面に衝突した衝撃で意識が朦朧としていたレミリアは無抵抗に縛られてしまう

「くっ、解きなさい!」

「敵なのに解くわけねェだろ。ぐふふ……」

「くっ、来るなっ!」

目を爛々と輝かせ手をワキワキさせながら見た目少女のレミリアに近づくクラインの姿はまさしく、レミリアの瞳に浮かぶ涙も相まって性犯罪者そのもの。女性陣からの冷たい視線もなんのその、クラインは己の欲望のためにレミリアに近づいていった

「バカか、お前は」

「さすがにやり過ぎ」

シノンがそのサイスでクラインとレミリアの間の包帯を断ち切る
それと同時に俺が横から回し蹴りを撃ち込んだ
再び吹き飛んでいくクライン
誰も心配どころか見向きもしないのに可哀相だとは……全く思われなかった。確実に自業自得である

「さて、なんで襲って来なかったんだ?」

ちなみにレミリアを捕縛していた包帯はその役目を失い、そこら辺に転がっていた

「私は誇り高きヴァンパイアの一族よ。負けが認められないほど子供ではいわ。さすがに最後のは許容範囲外だったけれども」

互いに苦笑いをかわす

「それで、クエストのクリア条件はレミリアを倒すことだったのだが?」

「そうよ。まあ、私が降参しているから、それでその条件は満たしているはず」

もっと激戦を期待していたギャラリーには悪いけどね、そう言ってレミリアはふわりと笑った

「そういえばギャラリーがいたんだったな……」

「ということはクラインの痴態がしっかりと見られていたってことか?」

キリトが今思い出した、という感じで呟いたので、俺はそれに便乗し、わざと(・・・)クラインに聞こえるような音量でレミリアに問い質す
俺の意図に気づいたのか、レミリアは愉しげに口を歪め……

「ええ、それはもう、はっきりと」

「よかったな、クライン。有名人だぞ」

元からそうだったとは思うが、意味は逆転する
今までの名声は地に墜ち、変わりにペドや変態として名を馳せることだろう

「違う! これは何かの間違いなんだ! 信じてくれ!」

クラインが弁明するように虚空に向かって叫ぶが……

「残念ながら私が負けを認めた時点で放送は終わってるわよ?」

「ノォォォォォ!?」

レミリアが止めを刺し、クラインがムンクの叫びのような顔になったので放置することにした
もちろん、慰めるやつなんていない

「それで、クリア報酬ってのはなんなんだ?」

「お菓子アイテムとお金ね。今、渡すわ」

レミリアが手を振ると、俺達のパーティ用ストレージに結構な額の金と様々な菓子が入ってきた。菓子の名前が有名菓子メーカーのものであるところから察するに、このイベント、企業からの金集めが目的なんだろうな、と菓子でワイワイ盛り上がる女性陣を見ながら思った
裏を勘繰るこの性格、我ながら擦れてやがる

「それと特別報酬があるわ。あなたに」

「俺?」

レミリアが指を差したのは俺だった。特別報酬?

「ええ、特別報酬は私自身よ」

「そうか」

「……少しくらい動揺してくれてもいいじゃない……」

少々不機嫌な雰囲気を纏うレミリア。仕方ない、これが俺の性格だから
ちなみに約一名(クライン)程が過剰反応しているが気にしない

「そうね……立場的にはナビゲーションピクシーということになるかしら。それに戦闘能力はすべて失われる。方法がかなり裏技みたいなものになるから……」

「ちょっと聞いてもいいかね」

今まで黙っていたクリスハイトが急に前に出てきた

「何かしら?」

「君は一体どういう存在なんだい? マスターシステムに逆らう付随システムなど……ユイ君を除いて聞いたことがない」

「……そうね。私はリンのナビゲーションピクシー。それ以上でもそれ以下でもないわ」

「……」

納得してはいないが、レミリアの口が堅いことを悟るとすごすごと引き下がる
後ほど聞いた話になるが、レミリアは元SAOの人工知能の一人らしい。ユイとは違い、90層以降の敵として出現するらしかったのだが……学習し、成長する敵とか恐怖でしかない

ハロウィンはケルト人が一年の終わりに帰ってくる死んだ家族の霊と共にやってくる有害な精霊や魔女から身を守るために仮面を被り、魔よけの焚火を焚いたのが起源とされる
SAOの死者の霊、彼等が安らかに眠れたかどうかは神のみぞ知るところだろうが、こういう行事を通じて、またSAOにおける死者について想ってみるのもよいだろう
精霊や魔女ではないが、あの世界が原因で生まれてしまった悪意は確かに存在する
おそらく、俺達の行く末に立ちはだかることもあるだろう
故に今は騒ごう
そんな災厄が降りかからないことを祈りながら 
 

 
後書き
全三話、ハロウィン特別閑話は終了!
なぜかレミィがユイと同じポジに納まっている件について
本当に、わけがわからないよ……

あと激しい戦闘になると前話で言ってたな?あれは嘘だ
七人でも精一杯なのに十一人とか……無理だよ、明らかにキャパシティーオーバーだよ!
そして謝罪。何人か空気でした。せっかく仮装したのに……
元から戦闘ではなく、ギャグを重視するつもりでしたが、それにしても酷いですね、ゴメンナサイ

さて、レミィの処遇はどうするか。本編レギュラー化するか、それとも閑話だけの存在にするか悩んでます、はい

ちなみにレミィが弱かったのは戦闘経験がなかったからです。その場に留まっての固定砲台とか信頼できる前衛か、絶対無比な防御性能がないと不可能なのに……
あと制空権の取得が甘すぎる、戦場の認識が甘すぎる、受け身を取ってない、速さが足りない!などかなりミスしています
槍も投げたあと、さらに造ればリンの攻撃を防御できたと思いますね

次回から本編に戻ります
では皆さん

Trick or Treat!
訳:お菓子(感想)くれないと悪戯(更新不定期)しちゃうぞ☆ 
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