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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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TEAR


朝日が昇る。
チュンチュン、と悪魔のような角が生えた鳥が鳴き声を上げる。
月明かり照らすガルナ島の村。

「ん~・・・」

ルーシィは体を寄せ、口を尖らせていた。
その視線の先にあったのは、グレイの額のぱっくりと割れた傷跡。
リオンとの「久しぶりの手合わせ」の際に付けられたものだ。

「傷・・・残っちゃいそうね」
「あ?別にかまわねーよ」
「顔よ?」
「傷なんてどこに増えようが構わねぇんだ、目に見える方はな」
「お、上手い事言うじゃん」

それを聞いたナツが口を開く。
・・・いや、正確には炎を食べている為、開いているかどうかよく解らないのだが。

「はぁ?見えない傷って何?」
「うるせーよ、カッコイイ事言ってんだからほっとけよ」
「今のが?」

どうやらナツがグレイの言葉を理解できなかったようだ。
そんな2人をルーシィは溜息をつきながら、ルーは呆れた様な困ったような笑みを浮かべながら見ていた。

「な、何と!報酬は受け取れない・・・と?」

ナツ達がそんな会話をしている間に、エルザとティアは村人達と報酬について話していた。

「あぁ・・・気持ちだけで結構だ、感謝する」
「ほが・・・しかし・・・」
「昨夜も話したけれど、今回の件はギルド側で正式に受理された依頼ではないの。一部の愚者共が先走って遂行した仕事よ」

エルザとティアがそう言うが、モカは笑顔で返す。

「ほがぁ・・・それでも我々が救われた事にはかわりません。これはギルドの報酬ではなく、友人へのお礼という形で受け取ってくれませぬかの?」

その言葉にエルザは観念したように首を振り、ティアは溜息をついた。

「そう言われてしまうと・・・」
「拒みづらいな」

おおおおっと村人から声が上がる。

「700万J!」
「おおお!」
「やったぁ!」

それを聞いたグレイ、ナツ、ルーも喜びの声を上げる。
が、2人の言葉は終わらない。

「しかしこれを受け取ってしまうと、ギルドの理念に反する」
「えぇ。追加報酬の鍵だけ、ありがたく頂く事にするわ」

それを聞いた村人達はおおっ・・・と若干残念そうな声を出す。

「「いらねーっ!」」
「いるいる!」
「得するのルーシィだけじゃん・・・」

結局、追加報酬の鍵だけを貰う事になった。
それに対しナツとグレイは同時に叫び、ルーシィは嬉しそうに叫び、ルーは呆れたように肩を竦めた。

「では、せめてハルジオンまで送りますよ」
「いや・・・船は用意出来てる」









村を出て、目に飛び込んできたのは穂に髑髏マークの書かれた海賊船だった。
島に来るのにエルザとティアが乗って来たものである。

「海賊船!?」
「まさか強奪したの!?」
「さすが・・・」
「強奪なんて人聞きの悪い事言わないでくれるかしら、借りただけよ。まぁ、タダで貸してくれなかったから少しばかり痛い目を見てもらったけれど」

ボソッと呟いたティアの言葉に、ルーは少し寒気を感じた。

「イヤよ!こんなの乗りたくない!」
「泳ぐなら付き合うぞ」
「無理!」

まぁ、確かに海賊船に乗りたがる女なんていないだろう。

「ティアさーん!」

すると、村人の1人が走ってきた。
その手には、箱。
何の変哲もない、どこにでもありそうな普通の箱だ。

「何」
「これ・・・さっき若い男の人が来て、ティアさんに渡す様にと」

若い男、と聞き、ティアの眉がピクッと上がる。

「これ、ティアの救急箱じゃない?」
「あい」
「・・・アイツ」
「どうかしたのか?」
「別に」

中身を確認する為、救急箱の蓋を開く。
すると、二つ折りの紙が中に入っていた。
それを右手人差し指と中指で摘み、救急箱をルーに持たせ、紙を開く。

『礼は言わんぞ』

それだけが書かれていた。
それを見たティアはすさまじい速さでその紙を握りつぶす。

「・・・帰るわよ」
「え?ティア、それって誰から?」
「どうでもいいでしょ」

どこか声色が不機嫌だ。
まぁとりあえず、エルザ達が強奪・・・ではなく、借りた海賊船に乗る。

「皆さん!ありがとうございます!」

ボボが叫んだ。

「元気でねーっ!」

ルーシィも叫び返し、手を振る。
その足元でナツがグロッキー状態と化していた。

「また悪魔のフリフリダンスを踊りましょー!」
「仕事がんばれよー!」
妖精の尻尾(フェアリーテイル)サイコー!」
「いつでも遊びに来いよー!」

村人から様々な声援を受け、船は遠ざかっていく。
そしてそれを遠くから眺めている集団がいた。

「行っちまったな」
「な、泣いてなんかないモンね!おおーん!」
「てか・・・何故泣く・・・?」

その集団とは・・・零帝リオンのその手下のユウカ、トビー、シェリー、シェリーのネズミのアンジェリカだった。
泣いてなんかない、と言いながら、トビーは大号泣している。

「いいんですの?せっかく解り合えた弟弟子さんに久々に会えた幼馴染さん・・・すなわち、愛」
「いいんだ」

シェリーが「愛」と完全に言い切る前に、リオンが呟く。
その表情は、どこか清々しさを感じさせた。

「なぁ・・・ギルドって楽しいか?」











所変わって、ここは魔法評議会会場、ERA。

「デリオラの件は残念だったわ」

図書室だろうか。
壁中にびっしり本が並んでいる。
その部屋にいたジークレインに、ウルティアが声を掛ける。

「まぁ仕方ねぇさ・・・さすがに死んでいるとは思いもしなかった」

パタッと本を閉じる。

「デリオラが手に入ればまた一歩、理想(ゆめ)に近づけると思ったんだがな」

本が自然に宙を舞い、元あるべき場所へと戻って行く。

「ごめんなさいね、ジークレイン様。あの女の魔力があそこまで強大だとは・・・」
「そんな言い方するもんじゃねぇぞ」

カツ、カツ、と靴を鳴らし、ウルティアがジークレインに近づいていく。

「ウルの涙、ウルティアよ・・・俺はお前の母を尊敬している。生きていれば、間違いなく聖十大魔道の1人となっていただろう」

そう。
グレイとリオンの師匠ウルは、ウルティアにとっての母親なのだ。

「かいかぶりすぎよ。母は魔の道に取りつかれ過ぎて父に捨てられた惨めな女」
「失うものが大きければ大きいほど、手に入る力は強大なものとなるんだぜ」
「私は(ウル)の中では小さな存在よ」

そう呟くウルティアは、どこか悲しそうだった。

「どうかな。幼い弟子を育てたのもお前への未練にも」
「その話はおしまい♪それより次の段階へ進みましょ」

ピト、とウルティアが右人差し指をジークレインの唇へ当てる。

「てか・・・お前・・・」

ジークレインが少し目を見開いた。
その目線の先には・・・。

「きゃあああっ!何コレェ!?」
「はっはっはっ、今頃ハレてきやがった」

「ザルティ」としてナツに殴られた左頬が見事にぷっくぅ、とハレているのだ。
それを見たジークレインは大爆笑する。

「そういえば、ナツと戦った感想は?」
「私は半分も力を出してないとはいえ、見事だったわ。あの子はもっともっと強くなるわよ」

そのウルティアの言葉に、ジークレインは満足そうに微笑む。

「だろうな・・・あのイグニールの子だ。俺の理想(ゆめ)の為に・・・燃え続けるがいい・・・」









「帰って来たぞー!」
「来たぞー!」
「たぞー!」

ナツが高らかに言い、ハッピーとルーが続く。
彼等は先ほど、マグノリアの街に到着したばかりだ。

「しっかし、あれだけ苦労して報酬は鍵1個か・・・」
「せっかくのS級クエストなのにね」
「正式な仕事ではなかったんだ。これくらいが丁度いい」
「そうそう、文句言わないの!」

不満げなグレイとハッピーとは対照的に、ルーシィはニコニコと嬉しそうな笑みを浮かべている。

「得したのルーシィだけじゃないか~」
「売ろうよそれ」
「なんて事言うドラネコかしら!」

ハッピーの売ろうよ発言に驚くルーシィ。

「前にも言ったけど、金色の鍵『黄道十二門の鍵』は世界中にたった12個しかないの。めちゃくちゃレアなんだからね」
「あの牛やメイドが?」
「あたしがもっと修行したら、星霊の方が絶対アンタより強いんだから!」

バカにしたように言うナツに負けじとルーシィが反論する。

「で・・・今回貰った鍵はどんなのなんだ?」
「人馬宮のサジタリウス♪」
「人馬だと!?」

グレイが想像したのは、顔が馬、身体は人間の人馬だった。

「いや・・・こうじゃない?」

ルーシィが想像したのは、上半身人間、下半身馬の人馬だった。

「馬でも人でもないよ、それ」

ナツが想像した顔のついた花にタコの足の謎生物にルーシィがツッコむ。

「さて・・・早速だが、ギルドに戻ってお前達の処分を決定する」
「うお!」
「!」
「うっ!」
「忘れかけてた!」

エルザの言葉に全員反応する。

「私は今回の件について、概ね海容してもいいと思っている」
「言っておくけど、私はアンタ達を許してなどいないわ。今の私から見て、アンタ達は罪人よ」

ティアは若干不機嫌そうな口調で言い放つ。
どうやら先ほどの『礼は言わんぞ』に対し、何か不機嫌になるポイントがあったようだ。

「しかし判断を下すのはマスターだ。私もティアも弁護するつもりはない。それなりの罰は覚悟しておけ」

その言葉に、グレイとハッピーとルーの顔が青くなる。
・・・ハッピーは元々青いが。

「まさか『アレ』をやらされるんじゃ!?」
「ちょっと待て!『アレ』だけはもう2度やりたくねぇ!」
「うわーん!生き地獄だぁー!」
「『アレ』って何ーーーーー!?」

3人の言う『アレ』に不安を覚えるルーシィ。
だが、ナツは余裕の笑みを浮かべていた。

「気にすんな。「よくやった」って褒めてくれるさ。じっちゃんなら」
「すこぶるポジティブね」
「いや・・・『アレ』はほぼ決定だろう。ふふ・・・腕が鳴るな」

エルザの言葉に、ナツの余裕の笑みが徐々に崩れ、最終的に驚くほどの汗が流れる。

「いやだぁー!『アレ』だけはいやだー!」
「さぁ行くぞ」
「だから『アレ』って何ー!?」

エルザにマフラーを掴まれ引き摺られるナツ。
とぼとぼ、ぐうたら~と暗いオーラを背負って歩くグレイとハッピーとルー。
自業自得よ、と明らかに5人を見放したように腕を組んで歩くティア。
全員の言う『アレ』が解らず恐怖するルーシィがギルドまで歩いていく。
1名、引き摺られているが。

「?」

・・・なのだが、妙に周りの人たちがざわざわ、ひそひそとナツ達を見て小声で会話している。

「何だ・・・?ギルドの様子がおかしい・・・」
「ん?」

全員の足が止まる。

「な・・・何?え?」
「これは・・・」

ギルドを見る目が見開かれる。
そこにあったのは。

「俺達のギルドが!」

書いてあった文字が辛うじて読める程度に砕かれたギルドの看板。
何本もの巨大な鉄の棒が突き刺さったギルド。
蛇に似た模様が壁に残っている。

ナツ達を待っていたのは、無残にもボロボロになったギルドであった。

「誰が・・・!」
「こんな事を・・・!」

ナツとルーの目にうっすら涙が浮かぶ。
ルーシィは目を背け、グレイはボロボロのギルドを軽く睨み、ティアは相変わらずの冷たい目でギルドを見ていた。

「何があったというのだ・・・」 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
漫画を参考にしてるので、チェンジリングはナシです。
オリジナルキャラ多いんでやろうかとも思ったんですけどね。

感想・批評、お待ちしてます。 
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