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魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~

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A's編 その想いを力に変えて
  40話:エクセリオンとザンバー

 
前書き
 
風邪をこじらせている間に、お気に入り登録200人越えしているという、ね…
  

 
 

場所は海鳴、その海上へと移り変わる。

〈Schwarze wirkung(シュヴァルツェ・ヴィルクング)〉
「っ!?」

拳に纏われた魔力が、その拳ごとなのはを襲う。なのははレイジングハートでそれを防ぐが、そのまま吹き飛ばされ、海面を何度も跳ねる。
しかしその途中で体勢を立て直し、再びレイジングハートを構えながら浮上する。

「(マガジン残り三本。カートリッジ十八発…)スターライト・ブレイカー、打てるチャンスあるかな…?」

レイジングハートのマガジンを取り替え、カートリッジをリロードするなのは。ここまでシューター等を放ってはいるが、それすらも牽制ぐらいにしかならず、これといったダメージを与えられずにいた。

〈 I have a method(手段はあります)〉
「…?」

〈 Call me, "Exelion mode" 〉

「っ、ダメだよ!あれは本体の補強をするまで、使っちゃダメだって…!」

そのときレイジングハートが提示してきた案は、自身のフルドライブである“エクセリオンモード”を使用する、という物だった。
だがなのはの言った通り、それを使い、万が一の事があったら…レイジングハートが壊れるという危険性を伴った、いわば諸刃の剣。ちゃんとした準備ができてからではないと使用が難しい、危険度の高いものだ。

〈 Call me. Call me, my master 〉

だがレイジングハートも主人に似てきたのか、一歩も引かない。なのはにエクセリオンモードを使うよう、求めてくる。
それを聞いたなのはは、一回目を瞑り、そして今度は決意を持った表情で、管制人格を見上げた。








「私は……何を望んでたんやっけ…」
「夢を見る事。悲しい現実は…全て夢となる。安らかな眠りを……」

その声を聞いたはやては、背中を車いすに預ける。

「私の…ほんとの願い…」







「お前も、もう眠れ…」
「いつかは眠るよ。だけどそれは…今じゃない!」

管制人格の言葉に、なのははそう返しながら、レイジングハートの切っ先をまっすぐ向ける。

「今はフェイトちゃんや士君、はやてちゃんを……それから、あなたも!皆…助けるんだ!」

そしてレイジングハートはカートリッジを一発使用し、準備を整える。

「レイジングハート、エクセリオンモード!ドライブ!!」
〈 Ignition 〉

そしてレイジングハートのコールと共に、レイジングハートの先端部分は大きく変形し始める。バスターモードでU字のようになっていた先端は細く、大きく伸び、金色の機械部分は形状を槍のように変えていく。
レイジングハートのフルドライブモード、エクセリオンモードだ。

「繰り返される悲しみも、悪い夢も…終わらせてみせる!」
「………」
〈 Photon lancer, genocide shift 〉

涙を流しながら見ていた管制人格は片手を広げ、魔道書に記録させている魔法を発動する。
管制人格となのはの周辺には、電気を帯びた黄色のスフィアが無数に展開される。

それを見たなのははレイジングハートを握りしめ、足下に魔法陣を展開し、魔力を放出する。


















場所はまた戻り、フェイトの夢の世界。
大きな木の下で、アリシアは仰向けになりながら足をパタパタさせ、本を読む。フェイトはその側で、木に寄りかかりながら枝の合間から見える空を眺めていた。

そんな時、空から前触れもなく雷の音が聞こえてくる。少し向こうには、普通より黒い雲が広がっていた。その雲によって日差しは遮られ、一気に暗くなる。

「フェイト、帰ろう……フェイトってば」

アリシアは急いで立ち上がり、フェイトに声をかける。だがフェイトは、動こうとはしなかった。

「ごめんアリシア…私はもう少し、ここにいる」
「そうなの?…じゃ、私も一緒に、雨・宿・り♪」

そう言いながら、アリシアはフェイトの隣に座り、フェイトの肩に頭を預ける。
しばらくの間、雨の音だけが周りに響く。

「ねぇ、アリシア……これは、夢なんだよね…?」

すると、フェイトは唐突にアリシアに尋ねる。

「アリシアと私は、同じ時間を生きられない。あなたが生きていたら、私は生まれなかった」
「…そう、だね」

元の世界のプレシアは、亡くなったアリシアを生き返らせる為、プロジェクトFを使い、フェイトを生み出した。
ただ一途に、アリシアと再び過ごす時間を求めて。ただひたすらに、我が娘ともう一度合う為に。

「ねぇフェイト、夢でもいいじゃない。ここにいよう、ずっと一緒に」

アリシアは顔をのぞかせて、フェイトに語りかける。その目には少し、怯えのようなものが感じられた。

「ここでなら、私はフェイトのお姉ちゃんでいられる。ママやリニスだって、フェイトにうんと優しくしてくれる。家族皆で、楽しい事、いっぱいある。
 フェイトが欲しかった幸せ、全部…上げられるよ?」








「私が…欲しかった、幸せ…」
「健康な体、愛する者達との日々。眠ってください。そうすれば、夢の中であなたはずっと、そんな世界にいられます」

優しく、温かい声。それは、強い眠気に襲われているはやてにとって、子守唄のようで。

「誰もあなたを傷つけない。悲しみも痛みも、何もない…そんな世界に」
「あぁ、そんなん…あったら、えぇなぁ…」








空中でいくつも炸裂する閃光と金属音に似た音。なのはと管制人格が何度もぶつかり合っている光と音だ。
一旦距離ができ、なのははレイジングハートを構え直す。対する管制人格は、両手に魔力を用意する。

「一つ覚えの砲撃。通ると思ってか?」
「通す!レイジングハートが力をくれてる…命と心をかけて応えてくれてる!泣いてる子を救ってあげてって!」

そう言うとカートリッジが二発ロードされ、先端の一部から桃色の羽根を四枚はためかせる。

「だから、諦めない!絶対に…助け出すまで!!」
〈 A.C.S. , standby 〉

魔法陣を足下に展開し、魔力をレイジングハートへ送り込む。

「アクセルチャージャー起動…ストライクフレーム!」
〈 Open 〉

そして先端の二本の金属部分から、桃色の槍が飛び出す。
なのはの周りで逆巻く風は、次第に大きく、強くうねりだしていく。

「エクセリオンバスターA.C.S!―――ドライブ!!」

一気に飛び出すなのは。それを見た管制人格は片手の魔力を防壁へと変え、防御に出る。
管制人格の盾となのはの矛が激しくぶつかり合い、火花を散らす。

「…届いて!」

だがなのはの言葉が叶ったのか、その均衡もレイジングハートのストライクフレームが盾を突き抜ける事で一変する。
カートリッジがさらに四発ロードされ、ストライクフレームの先端に、魔力が集まり始める。桃色の羽根は、さらに大きくその翼を広げる。

「ブレイク―――」
「まさか…!?」
「シューーーートッ!」

そして放たれるなのはの砲撃。桃色の光が二人を包み込み、大きな音を立てて爆ぜる。
閃光が消えていき、その少し距離を置いたところでなのはは肩を抑えながら浮いていた。

(ほぼゼロ距離…バリア抜いてのバスター直撃…これでダメなら…)
〈 Master!〉
「っ!?」

だが、管制人格もまた、なのはとは別の方向に距離を取って浮いていた。その姿は、バスターの直撃を食らったようには到底見えないものだった。

「……もう少し、頑張らないとだね…」
〈 Yes 〉








遠くの空で一つの雷が落ち、雷鳴が聞こえてくる。
雨も次第に強くなる中、フェイトは一人、雨宿りしていた木の下から出る。

「ありがとう、アリシア。ごめんね……だけど私は、行かなくちゃ…」
「………」

後ろで木に寄りかかっているアリシアを見ながら言うフェイト。

「私には、確かに母さんやアリシアと、一緒に過ごしたいって思うところもあるかもしれない。
 でも私は……母さんと約束したんだ。母さんと…あなたの分も…私は……皆と一緒に生きていく。それがどんなに大変でも、辛い事があっても……

 母さんとの、最初で最後の―――約束だから」

それを聞いたアリシアは一回視線を落とすと、フェイトと同じように木から離れ、フェイトの元へと歩み寄る。

「…『ごめんね』は、私の方…」

そう言って差し出してきた手を開くと、そこには黄色い三角形の物があった。フェイトの相棒(デバイス)、バルディッシュだ。
それを見たフェイトは目を見開き、視線を上げてアリシアを見る。

「ほんとはわかってた……だけど、少しでも…夢の中でも…一緒に居たかったの…」

アリシアはそう言ってバルディッシュをフェイトの手に置く。涙を流しながら受け取ったフェイトは、アリシアを抱きしめた。

「ごめん…ごめんね、アリシア…」
「いいよ…私はフェイトのお姉ちゃんだもん。待ってるんでしょ?大切な友達と、優しい人達が」
「……うん…」
「じゃあ…いってらっしゃい、フェイト」
「…ありがとう…お姉ちゃん…大好き…!」

フェイトの頬をポロポロと伝う涙が、アリシアの頬に落ちる。

「…私も……大好きだよ、フェイト…。ずっとずっと…元気でね…」

アリシアがそう言うと、アリシアの体は段々と光になって消え始めた。

『現実でも…こんな風にいたかったな…』

そして最後にそう言い残し、アリシアはフェイトの前から消えていった。





また場所は変わり、時の庭園中心部。

「…行こう、バルディッシュ」
〈 Yes, sir 〉

その声を聞いたフェイトは、バルディッシュを横へ振るいバリアジャケットを展開する。

〈 Zamber form 〉

そしてバルディッシュを縦に構え、カートリッジを二発使い、変形させる。

バルディッシュにある斧の部分が三叉槍のように変形し、さらにその先から半実体化した巨大な黄色い魔力刃を作り出す。
バルディッシュ・アサルトのフルドライブフォーム、ザンバーフォームだ。

「母さん、リニス…お姉ちゃん……会えて嬉しかった」

そして大剣化したバルディッシュを横へ振るう。放出される魔力によって、庭園の柱が崩壊し始める。

「…行ってきます。私が今…居るべき場所へ!」

「―――疾風迅雷!!」

フェイトの叫びに呼応するように、持ち上げられた大剣は次第に自身を大きくしていき、庭園をも貫く。

〈 Sprite zamber 〉
「スプライト、ザンバーーー!!」

フェイトは勢いよくバルディッシュを振り下ろす。その斬撃は閃光へと変わり、フェイトがいた世界を白く塗り替えていく。








「―――っ!?」

そしてその衝撃は、はやての眠る場所にも影響を及ぼす。黒い世界に、ガラスのように無数のヒビが走る。








「きゃぁあっ!」

管制人格から蹴りを食らい、海面を跳ねるなのは。だがそれも管制人格が新たに発動したバインドによって止められる。

「うっ、くぅ!」

海面近くで強制的に止められたなのはは、バインドによる苦痛に耐えながら、それを解除しようともがく。
その間に管制人格は闇の書を開き、新たに魔法を行使する。

〈 Impact blaster 〉

闇の書の音声と共に魔法陣が展開され、管制人格の周りに五つの紫色のスフィアが浮かぶ。スフィアは彼女の伸ばした手の先で、円を描くように回転し始め、一つの大きなスフィアへと変わっていく。

「くっ、外れない…!」

なのはも必死になってもがくが、強固なバインドの解除に手間取ってしまう。
そして遂に一つとなったスフィアに、管制人格はゆっくりと手を引く。

「眠れぇ!」

彼女はそう叫び、手の平を勢いよくスフィアに向ける。それと同時に紫色の魔力が放たれ、一直線になのはの元へと向かう。

「っ!?」

その間でもバインドが外れず、なのはは目をつぶる。



―――しかしそこへ、一筋の黄色い閃光が現れる。



管制人格が放った砲撃は海面に直撃し、爆ぜる。海水が柱のように吹き出し、それが収まったところには……なのはの姿はなかった。
彼女はゆっくりと振り向き見下ろすと、そこには少しぐったりとしているなのはと、彼女を抱えるフェイトがいた。

「ふぇ、フェイトちゃん…助けてくれたのは、ありがたいんだけど……ちょっと、速すぎ…」
「な、なのは!?大丈夫!?」
「ダイジョブじゃ…ない、かも…」

そういいながらヨロヨロとフェイトから離れるなのは。背中を摩りながら心配そうに見るフェイト。この様子からは先程まで苦戦していたことは伺えない程に、二人の雰囲気は和やかだった。

症状が収まってきたのか、なのははフェイトと目を合わせ、一回頷く。
そしてお互いに管制人格の方へと向き直し、足下に桃色と黄色の、二重の魔法陣を展開する。


















「何、さすがに見過ごせない物が出てきてしまったものでな……これを期にちゃんと説明せねば、と思って来た訳だ」

時間は少々さかのぼり…未だなのはが管制人格と戦い、フェイトがまだ自身の夢の中にいた頃。場所は時の止まった、士の夢の世界。

何度も自分のその長いヒゲをなぞりながら、笑いつつそう言う只のじい……もとい、“神”。その行動を見ながら、言葉を聞いていた士は顔をしかめる。

「見過ごせない物?説明?何の話だ。別にあんたが関わった方がいい程のよっぽどの事なんて、起きてないと思うが?」
「いやいや、お主ぐらい頭がキレていればわかるだろう?お主が今置かれている状況の不可解さに」

その言葉に、士はさらに眉をひそめる。ここまで言われても何故か遠回しに言われている事と……どこか図星を付かれたような気分になった為だ。

「そんな顔しおって……なら、今のお主の状況を自分の口で言えるか?」

なんか気に食わない、と思いつつも、今わかっている事と予想できている事を口にする。

「ここはおそらく闇の書の中。そこで作られた別の世界。俺の心の内にある強い願いを具現化した…俺の望んだ世界。だから母がいて、父がいて……なのは達の存在もある」

そこで言葉を切り、士は“神”を見据える。“神”は呆れたように息を吐き、面倒くさそうに手を叩く。

「そうさな、確かにそうだ。よくこんな混乱しそうな世界で、そこまでの思考ができるものだ」

だが、と拍手を止め、先程までとは違う雰囲気を纏い、士を見る。その睨みつけるような目に士は一瞬驚くが、すぐに平静を保ち表情を固くする。

「それでは……彼女の存在に説明がつかんだろう」

そう言って“神”が指差す先には、先程まで士の手伝いをしていた真希がいた。
士は真希を指しているのを見ると、明らかにマズいといった表情に変わる。

「…………」
「……まぁ仕方あるまい。そもそも今のお主の記憶にも、存在しないのだからな。急に現れれば、さすがに困るだろう」
「…じゃあアンタは説明できるっていうのか?」
「当たり前だろう?儂は“神”なのだぞ?」

そこで一息入れ、“神”は微笑みながら両手を広げた。

「では、少し昔話でもしようかのう…」

  
 

 
後書き
 
中身としてはアニメの方だったり、劇場版のも入れてたり、オリジナルのところがあったり、はしょったのもあったり、場面がコロコロと変わったり、相変わらず命名が雑だったり…
こんな小説ですが、これからもよろしくお願いします。
  
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