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麦わら海賊団を支えた神(仮)

作者:空手KING
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会合

大海原の上。
白いクジラを模した大きな船モビー・ディック号がそこにはあった。

「オヤジィ〜‼︎
西の方角からこちらにとんでもねぇ速さで何か飛んで来るぞ‼︎」

その船モビー・ディック号のマストの上にいる男が甲板の上の大きなシングルソファーに座る大男に告げる。
鋭い眼光、鼻の下には大きな三日月状の口髭、角張った顎、顔に浮かぶ皺…大男の顔は幾千、幾万の戦いを勝ち抜いてきたであろう精悍な面持ちをしている。
身体も歳に不相応なほどに鍛えられているものの、やはり寄る年波には勝てないのか鼻や身体、腕などにたくさんの管が通っていた。
地肌に白のコートを羽織っていて、頭には黒のバンダナが巻かれている。
オヤジと呼ばれた大男はシングルソファーの上で胸の前で腕組みしたまま首だけを西の方角に向け空を仰ぎ見る。
空にはこちらにまっすぐと向かってくる閃光があった。
大男はニヤッと口角をあげて口を開いた。

「グララララ…‼︎‼︎
構わん!敵意はない‼︎」

大男がそう告げた時には閃光はモビー・ディック号の真上で停滞していた。
何百といる船員と大男が見守る中、空に黄金色の軌跡を残しながら現れた閃光は船の上で黄金色の球体になったまま動かない。
だがその球体はみるみると小さくなっていき、終いには凝縮したかと思うと辺り一面を暖かな光で満たし、キラキラと花火のように広がる。
そしてその黄金色の球体からは背中に6対計12枚の白い羽を持ち、頭には先程の空に描いていた軌跡を円状にしたかのような輪っかが浮いている少年が佇んでいた。
その美しさと圧倒的な存在感、威圧感に大男以外の船員が皆息を呑む。
そしてその少年が指をパチンと鳴らすと、モビー・ディック号の甲板、大男の前へと光の粒子でできた螺旋状の階段が出来上がり、その少年が階段を1歩1歩と踏みしめながら船の甲板へと乗り込む。
船に乗り込む頃には少年の背中にあった翼も輪っかも消えていた。
そして少年は大男の前にくると右手を上げて口を開く。

「久しぶりだなぁ、ニューゲート。
【世界最強の男】…だいぶ老けたな?」

エドワード・ニューゲート。
白ひげ海賊団船長。
船員約1600名と新世界で名を馳せる43の海賊団を傘下に従えており、傘下含めた兵力は5万人に及ぶ。
エドワード・ニューゲート自身が四皇の1人であり、【世界最強の男】【世界最強の海賊】【白ひげ】と様々な異名で知られ、その怪物的な強さは世界中に轟くように知られている。
悪魔の実『超人系・グラグラの実』の能力者で‘‘地震人間”である。
そして現在『ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)』に最も近い男と言われている。

「グララララ…‼︎
久しいな強敵(とも)よ、ロジャーが死んで以来だぜ…。
てめぇは老けたというよりは…成長したようだなァ…【魔神のルミス】よ。
グララララ‼︎」

【魔神のルミス】と言われた少年は
肌の色は薄い褐色で、髪の色は美しい白とも取れそうな銀色で髪型はソフトモヒカンである。
スッと違和感のないほどに高い鼻。
細筆で書いたかのような左右絶妙なバランス、絶妙な太さの眉。
エドワード・ニューゲートに負けないほどの鋭い眼光の紅い瞳。
絶世の美男子である。
身長は目視で2m00cm〜2m10cmくらい、身体は服越しでも分かるほどに鍛え上げられていて、無駄な肉、脂肪が一切無い、もはや一種の芸術品と言っても過言でないだろう。

「………【魔神のルミス】、か。
そいつはもぅこの世にはいねぇよ‼︎
ロジャーが死んだ時に【魔神】は死んだんだ。
今はしがない旅人さ。」

「旅人ってことァ、ケジメがついたのか?」

「あぁ…。
そろそろ俺も動き出そうかと思ってな。
また面白そうな奴の下につく、か…ハハッ、ハーレム海賊団っていうのも面白そうだ‼︎」

エドワード・ニューゲート…白ひげは一瞬目を見開いたが、すぐに元に戻し、ニヤッと口角を上げて口を開く。

「グララララ…‼︎
ハーレム海賊団…相変わらず女好きは変わってねぇようだな【美女狩りのルミス】。
てめぇが動き出すとなったらァ、また海が騒がしくなる‼︎
なんせてめぇはかつて俺に勝った男だからなァ!」

『っ‼︎⁉︎』

白ひげのまさかの告白に船員達が驚愕の表情を浮かべる。

「【美女狩り】、か…確かに数え切れねぇ程の人数美女を抱いてきたが…俺から堕としに掛かった女は20人いるかいないかだぜ⁇
勝手にフラグがたちやがる…まぁ女は大好きだから良い思いはしてるけど。」

「勝手に、か…余計に質が悪い。
グララララ…‼︎」

ちょっとした巨人と朗らかに話す少年の姿はかなりシュールだ。
しかし2人が話していると横から声がかかった。

「ちょ、ちょっと待ってくれよい親父。
親父がそんな奴に負けるとは俺は思えねんだよい‼︎」

その言葉とともに横槍を入れてきたのは白ひげ海賊団1番隊隊長のマルコである。
パイナップルのような髪型をしており、顔はいかにもダルそうな感じの細身の男だ。
胸から腹にかけてよく分からない刺青をしている。
彼も悪魔の実『動物系・トリトリの実・幻獣種・モデル‘‘フェニックス”』の能力者であり、【不死鳥】の異名を持つ、白ひげ海賊団の主力の1人である。
そしてマルコの言葉に同意なのか船員達が全員首を縦に振る。

「そんな奴、か…ハハッ!
確かに見た目は若いがこれでも62歳で数々の戦闘を生き抜いて来た猛者だと俺自身は思っているだがなぁ。
なぁ、ニューゲート⁇」

「グララララ…‼︎
おめぇらもガキの頃に聞いたことぐらいあるだろう『裏でゴール・D・ロジャーを支え続けた男【支神ルミス】』、『ある時はバカでけぇハリケーンに襲われかけた街をハリケーンを相殺して街を救い、またある時は国を荒らしまくっていた20000人の海賊団を1人で滅ぼして国を救った【英雄神ルミス】』、『過去にタイヨウの海賊団船長フィッシャー・タイガーと共に天竜人の奴隷解放に力を振るった【大罪神ルミス】』…まだまだあるが大きなものはこれくれェだなァ。
嘗ては‘‘ルミス教’’ってのまでできたくれェに有名だった。
そのルミスってのがァ、ここにいるシャルディーニ・D・ルミスだぜ。
マルコ、てめぇの力じゃァ足下にも及ばねぇよ。」

白ひげの言葉に船員達が口をOの字に開け、目を見開いて驚愕の表情を浮かべる。
それは仕方のないことだ。
自分達より見た目が年下、17、18歳くらいの少年が自分達が少年の頃に憧れた、かの有名な海賊の1人なのだから…。
そう、ルミスは嘗ていろんな異名を世界に轟かせたことから【魔神】と総称された。
しかし彼は有名だったのだが手配書は配布される事無く、伝記や言い伝えでしか一般人に知られていない。
何故なら彼が存在自体をあまり認識させなかったからだ。
海軍でも嘗て、彼を実際に見たことがある者は中将でも数人しかいなかった。
彼の存在が広まったのもゴール・D・ロジャーの元クルーが書いた冒険記に名前が出てきたり、彼に救われた街の住人、彼によって奴隷から解放された元奴隷の人々の言い伝えなどがあげられる。
そして彼の容姿は先ほどから言うように美しく、獣化、獣人化した姿はまさに神、天使の言葉に相応しかった。
‘‘ルミス教”ができたのも彼が巨大ハリケーンを相殺して救った街から始まったと言われている。
なんでも巨大ハリケーンを相殺した後に空一帯を覆っていたドス黒い雨雲が割れて覗かせた眩しい太陽が、空を白い6対計12枚の羽根で飛んでいた彼の後ろで爛々と輝いていた様が美しく、本物の神、神の使いに見えたことから始まったそうだ。
国家宗教にした国もあったとか、なかったとか…。
話しが逸れたが彼の手配書が配布されなかった理由…それは海軍がわざと配布しなかったからだ。
海軍は彼の存在が伝説に近いほどあやふやだった事を利用し、彼を本当の伝説上の人物に仕立て上げた。
彼を指名手配すれば彼に救われた多くの者やルミス教の教徒が海軍に不満を持つ、最悪の場合戦争になる。
海軍が勿論勝つのが目に見えているが海軍もただでは済まない。
それならばゴール・D・ロジャーの元クルーが書いた伝記をただの夢物語、ルミス教の信仰対象を空想上のもの、奴隷から解放された者の戯言ということにしてしまえばいいと海軍が動いたのだ。
こうして彼、シャルディーニ・D・ルミスは空想上の人物であるという虚実が出来上がった。
極少数ではあるが未だにルミス教は存在する。
しかし教徒の者は笑われ、相手にされないほどのものへとなっている。
ゴール・D・ロジャーを支えたと言われていた彼がゴール・D・ロジャーの公開処刑の場に助けに現れなかったことがトドメに近いほど彼の存在を霞めさせたのだった。

「そんなァことより、どうだルミス‼︎
行く当てがねぇなら俺の息子になるァ気はねぇか⁇」

「62のジジイが72のジジイの息子になれって⁇冗談はよしてくれよ、ハハッ!
確かにニューゲートの下もそれはそれで楽しめそうだが…出来上がり過ぎちまってる。」

白ひげの勧誘に苦笑いで答えるルミス。

「出来上がり過ぎちまってる?
てめぇは下について何が見たいんだァ、ルミス?」

「成長だよ!
ロジャーもそうだった、才能のある奴が成長していく姿は最高にワクワクする‼︎
別にそいつを育てて自分の好みの海賊団に作り上げていきたい訳じゃねぇ‼︎
間違えたり悩んだりしながらどんどん成長していく、そんな奴をすぐ隣で見ていたいんだよ‼︎」

ルミスは興奮で声を震わせ、手を天に大きく広げながら演説する。
しかし、話しを一度区切ると今度は顔を俯かせながら、低い声で口を開いた。

「それに…ニューゲート、お前の『仲間』を『家族』と呼ぶやり方を否定する気は無いんだが…俺には『家族』は無理なんだ。
『仲間』はいけるんだが…俺を昔、奴隷商に売った『家族』となると、また捨てられるんじゃないかとか、また見放されるんじゃないかとか考えちまうんだ。
お前がそんな事をしないのは長い付き合いだ、絶対無いと胸を張って言える……だけどやっぱり怖くて怖くて仕方がないんだ。
だからお前の船には乗れねぇわ。
すまんな、ニューゲート…。」

ルミスは俯き気味に声と身体を少し震わせながら語った。
その姿からは本当に過去に味わった家族のトラウマが消えてないことを誰もが容易に理解できた。

「別に構わん…。」

2人の間に静寂が訪れる。
その静寂を気まずく思い断ち切ったのはルミスだった。

「そうだニューゲート!
ルーキーで面白そうな奴と言ったらお前のところにいる【火拳】の異名を持つポートガス・D・エース?だったっけか…あいつくれよw」

「っ!⁉︎あいつはダメだ‼︎‼︎‼︎」

ルミスの軽い冗談に白ひげは顔を驚愕の表情に染めたあとに地を震わせるのではないかというほどの大声でルミスに怒鳴った。
白ひげの突然の怒鳴りに船員達も驚愕している様だった。

「お、オイオイ…。
どうしたんだニューゲート?
今のが俺の冗談だと分からないお前ではないだろう⁇」

「……あぁァ、だがあいつはダメだ‼︎
それに今あいつはこの船にいねぇェんだ。
ある奴を追いかけて飛び出てっちまった。
なぁァ、ルミス。」

「ん⁇」

「もしだ、もしもの話だが…ロジャーに息子が存在したとしたら、てめぇはどうする。」

白ひげの質問にルミスは目を見開いた。

「(息子がいる⁉︎そんなはずはねぇ‼︎
あいつは一度もそんな事は言わなかった…。
そうだ、もしもの話だ!
ロジャーに息子か…。
そうだなぁ、居たとすれば俺は…)」

「俺は…そいつのために全てを捨てて、どんな夢も叶えてやろうとするだろうな…そう、全てを懸けて…。」

ルミスは女性ならば…いや、男性でも見惚れてしまうほどの優しげな顔で、強く意思の篭った口調で言い遂げた。

「そうか…。」

「(自分の全て、か…。
やはりルミスには言えねぇェなぁァ。
てめぇは1人の人間のために終わるような奴じゃァねぇ!)」

「なぁニューゲート、久々に一緒に飲まねぇか?
思い出話にでも花を咲かそうや。」

それから夜になる頃まで2人の笑い声は静かな海の上にひっそりと佇む船の上から終始絶えることはなかった。







 
 

 
後書き
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