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とある星の力を使いし者

作者:wawa
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第95話

海原と結標はスラム街を走っていた。
何度か食屍鬼(グール)が襲い掛かってきたが、結標の能力、「座標移動(ムーブポイント)」のおかげで何とか撃退していた。

「それで私達は何を目指して走っているのかしら?」

食屍鬼(グール)の姿にも見慣れたのか、少し顔色が戻りつつある結標が前で走っている海原に話しかける。

「自分達は拉致された生徒達を探しましょう。」

「でも、このスラム街って結構広い筈よ。
 その中をどうやって探すつもり。」

「気づきませんか?
 先程から食屍鬼(グール)の襲撃回数が少なくなっている事を。」

海原に言われて結標は気付いた。
最初此処に来た時と比べると明らかに襲撃回数が減っている事に。

「おそらく拉致された生徒達が近くにいるのでしょう。
 食屍鬼(グール)達が周りにいないのはその為ですね。
 何かの拍子で生徒達が食屍鬼(グール)に襲われると大変だからでしょう。」

すると、前方に二体の食屍鬼(グール)が現れる。

「ですが、あのように拉致した生徒達に近づきつつ食屍鬼(グール)もいます。
 早めに行動した方が良いでしょう。
 結標さん、あなたの能力で上にあるカーテンを取り除いてくれませんか。」

海原に言われ、結標は上にひいてあるカーテンをどこかへ転移させる。
胸の内ポケットから海原は黒曜石のナイフを取り出す。
勢いよく海原達に向かって来ていた食屍鬼(グール)の足が突然止まる。
どうやら、太陽の光に怯えているようだ。
それを見た海原は笑みを浮かべる。

「なるほど、太陽の光が苦手なのですね。
 と、なると此処にいれば攻撃もしてこないようですね。
 なら、ずっと自分のターンという訳ですね。」

金星の光を黒曜石のナイフの側面を使い、光を反射させる。
光を浴びた食屍鬼(グール)の一体の身体の肉と骨がバラバラになる。

「あなたの能力ってあの怪物に負けず劣らずグロテスクね。」

「少し目に毒かもしれませんので、席を外しても良いですよ。」

「心配しなくてもあの怪物を見慣れたせいか大丈夫よ。
 さっさと片付けて生徒達を探すわよ。」








スラム街の一室。
その部屋には一人の女性と一人の男がいた。
その女性は足元に書かれている魔方陣の真ん中に立ち、男は近くの壁に背中を預けていた。
女性の身長は一六五センチで黒いメガネをかけている。
服装は足首まである黒いワンピースを着て下には白いシャツ、上半身を紫のストールが覆っている。
髪色は黒色でショートヘヤー。
男の方は一八五センチ。
黒いスーツを着ているが下は何も着ておらず肌が丸見え。
前のボタンも二つある内の上ボタンしか留めていない。
その上にトレンチコートを羽織っている。

「此処の居場所を知られたみたいだな。」

壁に背中を預けている男がそう言った。

「そうですね、ですが誤差の範囲です。」

女性はそう言うと魔方陣から離れ、部屋を出て行こうとする。

「どこへ行く?」

「外で暴れている下等な種族達の相手をしてきます。
 超能力(レベル5)もいるようですしマシなデータは取れるはずです。」

「拉致した実験体はどうする?」

「正直もうどうでもいいです。
 必要最低限のデータは採取できましたし、捨てておきましょう。」

「なら、我はどうするか。」

男の発言を聞いた女性は小さく笑みを浮かべて言った。

「そうでした。
 もうすぐ此処に星の守護者が来るみたいですよ。」

その言葉を聞いた男はピクリと反応する。

「私の魔力を逆探知してきたのですからそう時間はかからないでしょう。」

「そうか・・・星の守護者が来るのか・・・そうか・・・くくく・・・そうか。」

先程まで退屈そうな表情から一転、玩具を前にした子供のような笑みを浮かべる。

「貴方も幹部(・・)ですし、相手が星の守護者なら申し分なしでしょう。」

「最近は骨のある人間はいなかったからな。
 久しぶりに血が滾る。」

「頑張ってください。
 それでは、私はこれで。」

女性はそう言って部屋を出て行く。
残った男は依然と笑みを浮かべながら、壁に背中を預けるのだった。









「これで最後。」

放たれる電子線が食屍鬼(グール)の顔面を捉える。
食屍鬼(グール)の身体が数回、痙攣するとそのまま崩れ落ちる。
麦野達の周りには食屍鬼(グール)の死体で溢れ返っていた。

「しかし、これだけ死体が転がっていると匂いが超臭いですね。」

「うぇ~、私、当分ご飯食べれないかも。」

死体の中には臓物などが出ている死体もある。
フレンダはそれを見て、気分が悪くなったようだ。

「とりあえず、場所を変えるわよ。
 こんな死体がごろごろ転がっている所じゃあ気分悪いし。」

「超賛成です。」

場所を移動しようとした時だった。
ドドン!!という爆発音が聞こえた。
三人はすぐさま後ろを振り向く。
スラム街の壁が内側から凄い衝撃が加わったのか、粉々に吹き飛んでいた。
その家から出てきたのは女性だった。
身長は一六五センチで黒いメガネをかけている。
服装は足首まである黒いワンピースを着て下には白いシャツ、上半身を紫のストールが覆っている。

「あら、あれだけの食屍鬼(グール)を殺すなんて。
 さすがは超能力者(レベル5)というべきでしょうか。
 これはいいデータがとれそうですね。」

麦野達はその女性の声に聞き覚えがあった。
それはあの時、触手から聞こえた女性と同じ声だ。

「アンタか、こんな回りくどい事件を起こした張本人は。」

「そうですね。
 だとすると、どうするんですか?」

「そんな事は簡単。
 お前をぶち殺せばいいだけ。
 そこら辺に転がっている死体と一緒にな!!」

麦野は右手の人差し指を女性に向ける。
指先に電子が集まり、一本の電子線が女性に向かって放たれる。
だが、女性に当たる直前で電子線は何かにぶつかったかのように直前で止まり拡散していく。
その光景を見た、麦野は眉をひそめ、女性は笑みを浮かべる。

「あんな電子線で私を殺せると思ったのですか?」

「それなら、超接近するまでです。」

女性が視線を向けた時には既に絹旗は女性の目前まで迫っていた。
窒素装甲(オフェンスアーマー)」で強化された右手が女性の顔面に向かって突き出される。
しかし、拳が直撃する直前に突如、地面から水が湧きあがり絹旗の拳を受け止める。
拳サイズの水の玉が絹旗の腹の辺りに四つ出現し、そのまま絹旗に向かって放たれる。
直撃した絹旗は後ろのスラム街の壁にぶつかり、さらにはその壁も破壊して部屋の中まで吹き飛ぶ。

「絹旗!?」

フレンダは驚きながらも、絹旗のもとに駆け寄る。

「わ、私は超大丈夫です。」

そう言ってゆっくりと立ち上がる絹旗だが。

(やられたのは四か所、それも重度の打撲。
 能力を使ってこれだけのダメージ、超やばい相手です。)

絹旗に嫌な汗が流れる。
麦野も視線を女性から外す事なく、警戒を強める。

「さて、少しはいいデータを取らせてくださいね。」

周りに水玉を浮かべながら、女性は楽しそうに言うのだった。











そして、麻生もある男と遭遇していた。
逆探知した部屋に辿り着くと、そこには男が一人だけ立っているだけで他には誰もいない。

「お前の探している女ならつい先程出て行ったぞ。」

まるで、麻生の疑問に答えるかのように言う。

「拉致した生徒達はどこだ。」

「此処にはいない。
 別の所に幽閉している。」

「その口ぶり、お前もあの女の仲間か。」

「まぁ、そういう事だ。
 さて、星の守護者の実力を我に見せてもらおうか。」

男は両手を握り、拳を作り、構えをとる。
戦いは避けれないと判断した麻生も、拳を作る。

「では、参る。」

その言葉を聞いた瞬間、男の身体が消えた。
次の瞬間には麻生の横方面からとてつもない衝撃が襲い掛かった。
その衝撃はとてつもなく、横にある壁をぶち抜き、さらには隣にある建物も貫通する。
男がした事は至って単純。
常人では捉えられない速度で移動して、拳を突き出したに過ぎない。

(こんなものか。)

星の守護者と聞いて期待していた男だったが、明らかに失望した表情を浮かべる。
だが、ドン!!という音が聞こえたと同時に麻生が男に向かって突進してくる。
その際に左手に拳を作り、男の顔面に向かって突き出す。
男はそれをかわすと、カウンターのように右足で麻生の脇腹を蹴る。
この蹴りも凄まじい威力を持っているのだが、麻生は能力を使い衝撃を拡散して威力を最小限まで下げる。

「あの拳を受けて生きているとはな。
 少し見直したぞ、やはりこうでなくてはな。」

麻生の実力を再認識したのか、嬉しそうな笑みを浮かべる。
しかし、麻生は笑う事が出来なかった。

(こいつ、めちゃくちゃ強い。
 それも神裂なんかとは比べ物にならないくらいだぞ。)

もし最初に喰らった一撃。
あれがもし頭に喰らっていたら麻生は死んでいた。
先程の攻撃は右肩を殴られ、その衝撃は内部まで伝わり、肺などの臓器などにダメージを負った。
能力がなければ確実に意識を失っていた。

(こいつは、マジでやらないとまずい。) 
 

 
後書き
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