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遊戯王GX ~水と氷の交響曲~

作者:久本誠一
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ターン28 蘇った少年と不死を目指した男

 
前書き
遅れて申し訳ない。つぶやきにこの話の裏事情が載ってますので、もしよろしければそちらもどうぞ。本編読了後に見ることをお勧めします。 

 
 とある朝。のんびり朝ご飯を食べながら、なんだかこの数日間はずいぶんとイベント盛りだくさんだったなあ、なんてことをぼんやり考えていた。なにせ黒蠍団の面々に鍵を盗まれそうになったけど最終的には万丈目、もとい名探偵万丈目サンダーの活躍によってレッド寮に住みついてもらったり、アビドス三世とかいう正直聞いたことない名前の昔の王様がスピリッツ・オブ・ファラオを引き連れて十代と戦ったり、コスプレデュエル大会にブラマジガールが出てきたり。ちなみに僕はジョーズマンのコスプレで出てました。

「よう、清明」
「あ、おはよ万丈目。十代たちはまだ?」

 寝てるのか、という意味を込めて軽く上を指さすと、無言でうなずいて肯定する万丈目。まったく、こっちは最近始めたレッド寮すぐそこの土地で(勝手に)始めた畑の世話とかようやく直った投網の練習とかで忙しいってのに。

「………なんか理不尽。とゆーことでこれはもらってこっと」

 言いながら、盆の一つから焼き魚を一匹くすねる。いっただきまーす。

「ふむ、じゃあ俺も」

 万丈目が取ったのは、味噌汁と納豆。それぞれ別のトレイからとってある程度のバランスをとるあたり、こいつもなんだかんだ言っていいやつだと思う。
 それからしばらくの間、特にこれといった会話もせずに無言でむしゃむしゃと朝ご飯をほおばった。普段なら僕ら二人でもなにがしかの会話があるもんなんだけど、何せ今日はいつもとは勝手が違う。僕ら全員が隠してはいるけど、正直不安でいっぱいなのだ。

「ごちそうさまでした。ねえ、万丈目」
「なんだ」
「大徳寺先生、どこにいるんだろうね」
「……さあな。ほら、早く出発しないと遅刻するぞ」
「そう、だね」

 昨日から姿を見せない、大徳寺先生。夕飯も朝ごはんも食べに来てないけどもしかしたら、授業の準備をしてて朝早くから学校にいるのかもしれないし。まさかあの先生に限って、誰にも何も言わずにセブンスターズにケンカを売るなんてありえない……はず。

「よし、今日も行ってきます!」
『おー、行って来い』

 とりあえず僕に今できることなんて、ユーノの声を後ろに聞きながら、一時間目の錬金術の授業に大徳寺先生が出ることを願いつつ遅刻しないように校舎まで急ぐことだけだ。……あ、十代起こすの忘れてた。ごめんね。





「やっぱダメ、か」
「来ないね、だってさ」
「別にお前のことを疑ってるわけじゃないが、本当に昨日から大徳寺先生のことは見てないのか?」

 三沢、その質問はこれで3回目だよ。まあ、その気持ちもわからないではないので素直に同じことを言うだけにしておくけど。

「うん、昨夜からいないんだよ。昼までは間違いなくいたのに」

 昼間購買に行ったときにトメさんにもりそば頼んでるのが電話越しに聞こえたから間違いない。しかしお蕎麦も取り扱ってるって、無駄にレパートリー広いねこの学校。まあ海の中にぽつんと浮かぶ離れ島だし、それぐらいなきゃやってらんないけど。そうやって教壇に誰もいない教室で座りながらむなしくだべってると、なぜかクロノス先生が入ってきた。行方不明の大徳寺先生の代わりに錬金術の授業をすることになった、とのこと。あのオカルト嫌いの人がねえ、ちゃんとした錬金術の授業なんてできるんだろうか。
 ………結果?なんだかよくわかんないぐだぐだな流れで終わったよ!錬金術のマークとかいうのは覚えたけど。あんな『丸書いてちょん』で終わるようなマークなら僕だって書けるな。そしてそのままの流れで今日の授業は終わり。土曜日だからね、午前中で授業はなくなるのだ。いつもだったら寮でゴロゴロしたりデュエルしたりするところだけど………、

「わかってるな、お前ら」
「「「「もちろん!」」」」

 万丈目隊長(仮)の言葉に合わせて返事を返す、我らオシリスレッドのいつもの4人。何があったかは知らないけど大徳寺先生ひとりで行ける場所なんて限られてるんだ、絶対僕らで探し出してやる!

「それで隊長、質問でーす!」
「なんだ、清明隊員」
「まずどこを探すんでありますか!」
「…………そうだな、まずはヒントになるものがあるかもしれんし、大徳寺先生の部屋からあたってみるか」

 というわけで、意外とまともだった名探偵?なサンダーの言葉に従って大徳寺先生の部屋の前まで来てみたのはいいのだが。

「で、結局これだもんなー。なんでこうこの寮はすることなすこと全部犯罪チックなのかね。あ、ご苦労様サッカー」
「うるさい!そもそも実行犯はお前らだろうが」

 なんのことはない。鍵がかかっていた部屋の扉を開けるために精霊体のシャーク・サッカーを先に中に入れ、そのまま中で実体化して鍵を解除してもらったのだ。まあ非常時だからしょうがないね。怒られたらその時は万丈目がやれって言った、とでも言っておこう。どれ、なにかあるといいなー。
 そして1時間後。ある地図を囲んでその周りに座っていた僕らは、一斉にその地図のある一点を指さした。

「森だな」
「森だね」
「森ッスね」
「森が怪しいな」
「森っぽいんだな~」
『…………』

 それは、このデュエルアカデミアのある島全体の地図。見慣れた校舎、火山などの地形の中に一か所だけ、ついさっきの授業で覚えた錬金術マークが手書きで書かれていたのだ。そしてその場所が、今言った森の中。正確に言うと、この位置は洞窟かなんかがあるんだっけか。

「よし、これから俺たちはこの位置に向かう!大徳寺先生をなんとしても探し出すぞ!」
「「「「おー!」」」」

 なんか妙にしゃべらないユーノが気になるけど、今はそれより先生優先!レッツゴー!





「ねえ万丈目」
「サンダー」
「……ねえサンダー」
「なんだ」
「迷った………よね」
「ノーコメントだ」

 そう言って、話は終わりだといわんばかりにそっと目をそらす万丈目。迷ってるな。これまではまだもしかしたら迷ってないんじゃないかっていう希望もあったけど間違いない。完全に迷子になってやがる。

「まったく……」
「キャーーーーー!!」

 そのまま文句の一つでも言ってやろうとした時、いきなり悲鳴が響いた。あの声……明日香!?慌てて声の方向に駈け出そうとしたその瞬間、ポケットにねじ込んでおいた僕のPDLが鳴り響いた。相手は……夢想だ!

「はいこちら清明、もしもしどうしたの!?今ちょっと忙し…!」
『お願い清明!今森の中にいるんだけど、明日香とはぐれちゃった、だって!それで探してたら悲鳴が聞こえてきて………細かいことは後で話すから、とにかく森まで来て、だって……さ?』
「あれ。えっと、やあ、夢想」

 歩きながら話してたら案外すぐ近くにいた夢想に話を聞いてみると、なんでも明日香の部屋が誰かに荒らされて犯人が森に駆け込むのが見えたから追いかけてきたらしい。ふむ、大徳寺先生がいないのと何か関係が……まさかね。

「ちょうどいるなら話は早いね、だってさ。明日香っ!」

 そう言って走っていくのを慌てて追いかける。と、いきなり前を行く夢想の足がぴたりと止まった。そのままぶつかりそうになるのをなんとかストップし、背中越しに何があるのかを見てみる。するとそこに落ちていたのは、誰かのデュエルディスクと散らばったカード。恐る恐るそのなかの何枚かをひっくり返してみると、それは案の定『エトワール・サイバー』『サイバー・チュチュ』『スケープ・ゴート』『プリマの光』『ドゥーブルバッセ』等々、明日香のカードばかりだった。

「一体、明日香に何が……」

 大徳寺先生の行方不明に加え、明日香の身にデッキを放り出してどこかへ行くほどの何かが起きた。これにはさすがの十代も警戒の色を強くし、翔に隼人も不安そうにあたりを見回している。あれ?

「ねえ十代、万丈目、見なかった?」

 一人足りない。ついさっきまでいたはずの万丈目までどこかに行ってしまった。万丈目は、普段の言動とは裏腹に面倒見がかなりいい。すぐ近くで悲鳴が聞こえたのを無視したり逃げ出したりするような男じゃあないはずなんだけど。

「うわあああーーーっ!」

 ってまた悲鳴!?しかも今度は万丈目の声だ!

「行くよ、みんな!はぐれないでね!」

 本当は一人で突っ走って様子を見に行きたいところだけど、さすがに二回目だからある程度警戒する。一人でいるのは論外。助けに行ってこっちがやられました、じゃああんまりすぎる。もうすぐそっちまで行くから、それまで何やってんのか知らないけど何とか持ちこたえてよ万丈目!

「っ!遅かった……」

 駆け付けた湖のほとりに散らばっていたのは、これまたデュエルディスクに『アームド・ドラゴン LV7』『レベルの絆』『おじゃマンダラ』『おジャマ・デルタブリーフ!』『X-ヘッド・キャノン』………ああこれ間違いない、万丈目のカードだ。アームドとVWXYZは別のデッキに分けてたはずだから、デッキ二つが混ざって散らばってるんだろう。

「な、何か二人の手がかりは……」
『そこだ。こっからでも見えるだろ、アムナエルのマーク』

 またいつの間にかそばに来ていたユーノが指差した方を見ると、確かにどういう原理なのか、空中に浮かぶ黄色い丸書いてちょんのマークがひとつ。それを僕が見た瞬間、激しい音とともに海からこの島を囲むように計3本の光の柱が立ち上がった。え、ちょ、もうどうなってんの!?

『三幻魔……ふん、若輩者が粋がった演出を』
「あれ、いたのチャクチャルさん?」
『最初からだ。それはどうでもいいが、今三幻魔の封印は7つ中3つが解放された。あの光はその目印だろう。……私がいつだって貴方にはついているが、ゆめゆめ油断しないように』

 なるほど、つまり万丈目と明日香の鍵はもう取られちゃったと。あと一本はカイザーの分だろうし。だけど今は、そんな悠長なことを考えてる場合じゃない。光の柱を見て一番早く行動を起こしたのは、いつも通り十代だった。

「清明、こうなったら俺らで行ってみようぜ!きっと大徳寺先生もあの中にいるはずだし、こうなると万丈目や明日香もあの中にいる可能性が高い!」
「う、うん!」

 僕らが決意を固めると、まるでそれに反応するかのように錬金術師アムナエルのマークが空中を明滅しながら移動していった。

「ついて来い、ってことなのかな?だってさ」
「上等さ、最後のセブンスターズも返り討ちにしてやる!」





「しっかし、まーたこの廃寮に戻ってくるとはねぇ」
「くっそー、中に入ったらマークが消えちまった。そういやお前、ついこの間ここで幽霊に会ったんだってな」
「うん。いい人だったんだけどねー」
「初耳。だってさ。あとで教えてね、清明」
「へえ、彼女さんかい?それにしても今度はずいぶん大所帯じゃないの。自分びっくりしちゃったよ」
「ちなみにその時の幽霊って、どういう奴だったんだな~………うん?」

 あれ、この声ってもしかして?

『む、出たな幽霊』
「君に言われたくないけどね。みんなの期待にお応えして、自分の率いるゴーストリック軍団ただいま参上ー♪なんちって」
「い、いいいい稲石さんっ!?」

 いつの間にかナチュラルに僕らに紛れ込んでいて、やっほーと明るく手を振るのは身元も経歴も不明だけどデュエル脳では一級品、謎の廃寮に住むゴーストリック使いの幽霊、稲石さん。びっくりすんなあもう。

「えっと、どしたんですかこんなところで」
「なーに言ってんの。ここ自分が住み着いてるんだよ?むしろいない方がおかしいっしょ。あ、清明以外の人には初めましてだね。廃寮住込みの幽霊、稲石です。どもよろしく」
「えーと……初めまして、なんだって」
「ど、どうもなんだな」
「初めましてッス」

 ぎこちないなりに自己紹介を終える夢想たち。相手が幽霊だからある程度ぎこちなくなるのは仕方ないんだろう。僕も最初に気づいたときは本気で怖かったから人のことは言えないし。

「それで君たち、いったい何しに来たんだい?」

 セブンスターズとかのことも全部ばらしちゃっていいんだろうか、と素早くアイコンタクトをかわす。いいのかなあっさり言っちゃって、まあいいんじゃない悪い人じゃないし。

「実はかくかくしかじか、ってわけ。ねえ稲石さん、何か知ってない?」
「まるまるうまうま。なるほど、そういうことか。ねえ君たち、実は自分に心当たりが一つあるんだ。つい昨日のことなんだけどいきなり地下通路の一部が何者かに爆破されて、その向こう側に隠し通路が見つかったんだよ。いかにも怪しいからスルーしてたんだけど、たぶんそこが怪しいと思う。案内するからついてきて」

 そういうが早いが、ひらりと体を反転させて相変わらず足音ひとつ立てず、もっと言うと足すら動かさずにすうっと床の上を滑るように先頭に立つ稲石さん。願ったりかなったりだ、ここは迷わずついてくしかないね。と、そんな僕の服の襟をぐっとつかんだ隼人が、稲石さんに聞こえないようにそっと耳打ちしてきた。

「(いいのか、清明?なんか話ができすぎてる気がするけど、本当に信用して大丈夫なのか~?)」

 なんだ、何かと思えばそんなことか。

「大丈夫、僕は稲石さんを信じてるよ。だって、僕はあの人とデュエルして友達になった………かどうかは向こうがどう思ってるかわかんないけど、あの人が信用できるってことはわかったんだ。十代のいつも言ってる『デュエルすれば分かり合える』ってのも、あながち間違いじゃないのかもね」





「ここ、さ。ここから先には自分もまだ入ったことがないんだけどね」
「なるほど、じゃあ……」

 ここから先は僕らだけで、と言おうとしたのを遮るようにして、素早く言葉を続ける稲石さん。

「だから、自分もついてくよ。そもそも、ここは自分の家なんだ。勝手に荒らされていい気はしないしね」
「あー、はい。そですか。じゃあ行きましょ」

 この人の性格からいって、何言ったって勝手についてくるだろう。こっちだって急いでるんだし、無駄に言い争ってる暇はない。覚悟を決めて、僕らはゆっくりとその通路に足を踏み入れた。

「と思ったらすぐ出口だった」
「まだ3分も歩いてないね。待てよ、さっきの通路のあの位置からこの向きに直線で3分弱………駄目だ、どうしても計算が合わない。こんな位置に部屋があるはずないのに」

 いぶかしむ稲石さんだけど、前に僕が来たとき存在するはずない場所の部屋に案内してデュエルしたどっかの誰かとはどっこいどっこいの不気味っぷりだと思う。少なくともお前が言うな。

「ね、ねえ、あれ見てよ」

 部屋の中をきょろきょろと見回していると、翔が何かを見つけたようだ。そっちの方を向いてみると、そこにはいかにもな棺桶が壁に立てかけてあった。………ここって一応は学校の一部だよね。もうなんでもありだなデュエルアカデミア。いまさらといえばその通りだけど。

「入ってますかー、失礼しますよ、っと」

 とりあえず開けてみる。いやだってほら、これがお約束ってもんでしょ。まーたカミューラみたいなのが入ってたら速攻で閉めるつもりだったけど、そこに横たわっていたのはスーツ姿でメガネをかけたミイラ。ミイラぁ!?

「なんじゃこりゃー!?ってあれ、この顔もしかして、大徳寺先生?」
「よく来たな、七星門の鍵の守護者よ」

 そのミイラについてはいろいろ考えたいこともあったが、どうやらその時間はないらしい。コツ、コツ、と静かに足音を立てながら近寄ってきたフードにマスクの男、こいつが最後のセブンスターズだろう。

「一応確認させてもらうよ。お前が明日香や万丈目をさらって大徳寺先生をこんな姿にしたのか!」
「最後の一つは間違っている。そのミイラは、はるか昔からここにあったものだ。だが、彼らを襲ったのは確かに私だ。返してほしければ、私と闇のデュエルだ!」
「上等っ!セブンスターズ、また返り討ちにしてやる!」
「自己紹介がまだだったな。私の名はアムナエル、そして私こそが最後のセブンスターズ!」

「「デュエル!」」

「先行は私がもらう!ドロー、錬金生物 ホムンクルスを召喚!カードを2枚伏せてターンエンドだ」

 錬金生物 ホムンクルス 攻1800

 アムナエルがまず出したのは、黒い目隠しをつけた片腕と片足が金属のようになっているほぼ全らの人間型モンスター。攻撃力1800はなかなか大きいけど、このまま押し切る!

「ドロー、アームズ・シーハンターを召喚!そして手札から爆征竜―タイダルの効果発動、このカードと水属性を墓地に送ることでデッキのモンスターを一体墓地に落とすことができる。この効果で僕が手札とデッキからそれぞれ落とすのは、手札がオイスターマイスターでデッキからがハリマンボウだよ。その効果を受けて、ホムンクルスの攻撃力は500ダウンしてもらう」

 アームズ・シーハンター 攻1800

 ハリマンボウ
効果モンスター
星3/水属性/魚族/攻1500/守 100
このカードが墓地へ送られた時、
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
選択した相手モンスターの攻撃力は500ポイントダウンする。

 錬金生物 ホムンクルス 攻1800→1300

「そこにそのまま攻撃!」

 狙い澄まして放たれた必殺の矢が、大量の針を受けて弱体化したホムンクルスめがけて一直線に迫っていく。が、命中する寸前にアムナエルの前に怪しく音を立てる機械のような何かが出現し、その一撃を止めてしまう。

「永続トラップ発動、エレメンタル・アブソーバー!私は手札の水属性モンスター、水の精霊 アクエリアを除外することでその攻撃を無効にする!」
「なっ!?」

 エレメンタル・アブソーバー
永続罠
手札のモンスターカード1枚をゲームから除外する。
この効果によって除外したモンスターと同じ属性を持つ相手モンスターは、
このカードがフィールド上に存在する限り攻撃宣言をする事ができない。

「さあ、どうするかね?」
「だったらしょうがない。カードを2枚セット、これで僕はターンエンド」

 アムナエル LP4000 手札:2 モンスター:錬金生物 ホムンクルス(攻) 魔法・罠:エレメンタル・アブソーバー(水)、1(伏せ)
 清明 LP4000 手札:1 モンスター:アームズ・シーハンター(攻) 魔法・罠:2(伏せ)

「ならば私のターン。この伏せカード、マクロコスモスを発動!そしてその効果により、デッキから原始太陽ヘリオスを特殊召喚する!見るがいい、これが私のたどり着いた錬金術の力だ!」

 アムナエルがマクロコスモスを発動した瞬間、不思議なことが起こった。さっきまで洞窟の中の部屋にいたはずなのに、いきなり周りの風景が宇宙になったのだ。ソリッドビジョンでもなさそうだし、一体何が起こってるってのさ!

「今、我々のデュエルは人間の世界を飛び越え、宇宙へと転換した。大宇宙(マクロコスモス)…………このカードがある限り、お互いの墓地へ行くカードはすべてゲームから除外される。そして先ほども言ったがこのカードの発動時、私は原始太陽ヘリオスを特殊召喚できるのだよ」

 原始太陽ヘリオス
効果モンスター
星4/光属性/炎族/攻 ?/守 ?
このカードの攻撃力・守備力は、
ゲームから除外されているモンスターの数×100ポイントになる。

 原始太陽ヘリオス 攻0→100

「だ、だけど攻撃力100ならこのまま」
「まあそう慌てるな、悪い癖だぞ。手札からマジックカード、闇の誘惑を発動!カードを2枚ドローし、手札のネクロフェイスを除外!」

 闇の誘惑
通常魔法(制限カード)
デッキからカードを2枚ドローし、
その後手札の闇属性モンスター1体を選んでゲームから除外する。
手札に闇属性モンスターが無い場合、手札を全て墓地へ送る。

 ネクロフェイス
効果モンスター(制限カード)
星4/闇属性/アンデット族/攻1200/守1800
このカードが召喚に成功した時、
ゲームから除外されているカード全てをデッキに戻してシャッフルする。
このカードの攻撃力は、この効果でデッキに戻したカードの枚数×100ポイントアップする。
このカードがゲームから除外された時、
お互いはデッキの上からカードを5枚ゲームから除外する。

「この効果で、お互いはデッキの上からカードを5枚除外する。私の除外するカードの中のモンスターカードは4枚だ」

 デッキの上から5枚………ウミノタウルス、氷霊神ムーラングレイス、ジョーズマン、竜宮の白タウナギ、グリズリーマザー。ってちょっと待てぇ!全部、よりにもよって全部モンスターって。そんなにデッキバランス悪くした覚えはないよ!

 原始太陽ヘリオス 攻100→1000

「そして私は、カオス・グリードを発動。カードをもう2枚ドローする」

 カオス・グリード
通常魔法
自分のカードが4枚以上ゲームから除外されており、
自分の墓地にカードが存在しない場合に発動する事ができる。
自分のデッキからカードを2枚ドローする。

「そして私はこのターン、まだ通常召喚を行っていない。錬金生物 ホムンクルスをリリースし、黄金のホムンクルスをアドバンス召喚!そして錬金生物がリリースされ除外されたことで、ヘリオスの攻撃力もまた上がる」

 同じホムンクルスと名がついてはいるが、さっきのホムンクルスは割と人間に近かった。服着てなかったけど。だけど今度は違う、金色に光り輝くゴーレムだ。

 黄金のホムンクルス
効果モンスター
星6/光属性/戦士族/攻1500/守1500
このカードの攻撃力・守備力は、
ゲームから除外されている自分のカードの数×300ポイントアップする。

 黄金のホムンクルス 攻1500→4500 守1500→4500
 原始太陽ヘリオス 攻1000→1100

「そして速攻魔法、ダブル・サイクロンを発動!私のエレメンタル・アブソーバーと君の伏せカード1枚を破壊する」

 2本の竜巻がフィールドを駆け抜け、それぞれ1枚ずつカードに襲い掛かる。だけど、それはむしろラッキーだった。なにせ、ノーコストで厄介なエレメンタル・アブソーバーがなくなってくれたのと同じだからだ。

「チェーンしてトラップ発動、八咫烏の骸!残念ながらスピリットモンスターはいないから、一つ目の効果でカードをドロー!」

 ダブル・サイクロン
速攻魔法
自分フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚と、
相手フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を選択して発動する。
選択したカードを破壊する。

 八咫烏の骸
通常罠
次の効果から1つを選択して発動する。
●自分のデッキからカードを1枚ドローする。
●相手フィールド上にスピリットモンスターが表側表示で
存在する場合に発動する事ができる。
自分のデッキからカードを2枚ドローする。

「まあいい。ダブル・サイクロンの発動により、除外ゾーンに送られた私のカードは2枚増えた。ホムンクルスの攻守がもう600ポイントアップする」

 黄金のホムンクルス 攻4500→5100 守4500→5100

「行け、黄金のホムンクルス!ゴールデン・ハーヴェスト!」
「トラップ発動、ポセイドン・ウェーブ!その攻撃を止めて、800のダメージを受けてもらう!」

 ポセイドン・ウェーブ
通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。
相手モンスター1体の攻撃を無効にする。
自分フィールド上に魚族・海竜族・水族モンスターが表側表示で存在する場合、
その数×800ポイントダメージを相手ライフに与える。

 アムナエル LP4000→3200

「むっ……」

 大津波の一撃を受けて返り討ちにあった黄金のホムンクルスの巨体がバランスを崩して倒れ、その衝撃でアムナエルがかぶっていたマスクがポロリととれる。

「ちょうどいい、その素顔を見せてもらおうか!って、そんな、まさか………」

 そこから見えた顔は、まぎれもなく大徳寺先生のもの。そんな、でも、さっきのミイラが大徳寺先生ってことは。

「偽物!?」
「いや、違う。そこでミイラになっている男と、今こうして君とデュエルしている私は同一人物だ。私の名はアムナエルであり、大徳寺でもある。詳しい説明は省くが、私のこの体はホムンクルス、の一種、平たく言えば人造人間だ。もっとも、もう長く持ちそうもないがな」
「そんな、大徳寺先生、ずっと嘘ついて裏切ってたっての!?」
「今はそう思ってくれて構わない。君の性格上、その方がデュエルに熱が入るだろうからな。さあ、これは私からの最後の試験だ!落第したくなければ、私を倒してみろ!」
「先生、いやアムナエル、僕にはもう何が何だか分かんないよ……」

 これは紛れもない本音。今日一日で、色々なことがありすぎた。そんな、いくらなんでも話が急すぎる。

「だからどうした。私は君の準備が整うのを待つつもりはないぞ!」
「………わかってる、それはわかってるよ。だから僕は、難しいことは考えない。今の僕にできることは、せめて万丈目たちを助け出すこと!そのためにアムナエル、お前はここで絶対倒す!ドロー!マジックカード、アクア・ジェット発動!シーハンターの攻撃力は、この効果で1000ポイントアップ!」

 アクア・ジェット
通常魔法
自分フィールド上の
魚族・海竜族・水族モンスター1体を選択して発動できる。
選択したモンスターの攻撃力は1000ポイントアップする。

 アームズ・シーハンター 攻1800→2800

「そんな程度では、私のホムンクルスを倒すことなどできないぞ!」
「わかってらい!僕はここで手札のモンスター、BF-疾風のゲイルを通常召喚!」

 前にサンダー四天王最強の男、鎧田からもらったBFの名前を持つ鳥のモンスター。この子の力なら、ホムンクルスだって倒すことができる!

 BF(ブラックフェザー)-疾風のゲイル
チューナー(効果モンスター)(制限カード)
星3/闇属性/鳥獣族/攻1300/守 400
自分フィールド上に「BF-疾風のゲイル」以外の
「BF」と名のついたモンスターが存在する場合、
このカードは手札から特殊召喚できる。
1ターンに1度、相手フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。
選択した相手モンスターの攻撃力・守備力を半分にする。

「そしてゲイルの効果発動、黄金のホムンクルスの攻守を半分にする!これで黄金のホムンクルスの攻守は2250だ!」
「何!?」

 ゲイルがその翼をはためかせ、名前通りの黒い疾風を巻き起こすとその風を受けたゴーレムの体の光沢が徐々に弱くなっていき、すっかりくすんだ色になっていった。

 黄金のホムンクルス 攻4500→2250 守4500→2250

「今だ、シーハンター!」

 アームズ・シーハンター 攻2800→黄金のホムンクルス 攻2250(破壊)
 アムナエル LP3200→2650

「黄金のホムンクルスが除外されたことで、ヘリオスの攻撃力もまた上がるが……」
「無論、そのままゲイルで攻撃!ブラック・スクラッチ!」

 BF-疾風のゲイル 攻1300→原始太陽ヘリオス 攻1100→1200(破壊)
 アムナエル LP2850→2750

「どうだ!これでターンエンド!」

 アムナエル LP2750 手札:2 モンスター:なし 魔法・罠:マクロコスモス
 清明 LP4000 手札:1 モンスター:アームズ・シーハンター(攻)、BF-疾風のゲイル(攻) 魔法・罠:なし

「私のターン!手札からもう1枚のカオス・グリードを発動して2枚ドロー、そして速攻魔法、グランドクロスを発動!場のモンスターをすべて破壊し、300ポイントのダメージを与える!」

 周りをふわふわと漂っていた星がまるで十字状に並んだかのような形になり、ぐにゃり、と空間がゆがんでシーハンターとゲイルの体が爆発した。まずい、これでモンスターは一気に全滅だ!

 グランドクロス
速攻魔法
自分フィールド上に「マクロコスモス」が
存在する時に発動する事ができる。
相手ライフに300ポイントダメージを与え、
フィールド上のモンスターを全て破壊する。

 清明 LP4000→3700

「そして次元の歪みを発動!今私の墓地にカードはない、よって除外された原始太陽ヘリオスを特殊召喚する!」

 次元の(ひず)
通常魔法
自分の墓地にカードが存在しない場合に発動する事ができる。
除外された自分のモンスター1体を選択し、
自分のフィールド上に特殊召喚する。

 原始太陽ヘリオス 攻0→1400

「ヘリオス?黄金のホムンクルスじゃなくて?」
「ふ、あのカードは所詮錬金術を完成させる過程での試験体にすぎない。私がたどりついた錬金術の究極の形こそがこのカード、ヘリオスシリーズだ!自分の場の原始太陽ヘリオス1体をリリースすることで、このカードは特殊召喚できる!来い、ヘリオス・デュオ・メギストス!」

 ヘリオスの体が光に包まれて頭の太陽がより大きく赤くなり、その下の胴体はむしろずんぐりむっくりした体系へと進化していった。

 ヘリオス・デュオ・メギストス
効果モンスター
星6/光属性/炎族/攻 ?/守 ?
このカードは自分フィールド上の「原始太陽ヘリオス」1体を
生け贄に捧げる事で特殊召喚する事ができる。
このカードの攻撃力と守備力は、
ゲームから除外されているモンスターカードの数×200ポイントになる。
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた場合、
エンドフェイズ時に攻撃力・守備力を300ポイントアップさせて特殊召喚される。

 ヘリオス・デュオ・メギストス 攻0→2800 守0→2800

「やっぱホムンクルスのほうが攻撃力高いんじゃ……」
「わからないか、私は君自身に興味があるんだよ」

 はい?いきなり何を言ってるんだこの人は。そんな思いが顔に出ていたのだろう、やれやれと息をついて説明してくれた。

「正確に言うと、君自身の体に、だ。一度死んでおきながら遠い異国の地で伝説とされた邪神の力により再び蘇り、さらにその力の一部を秘めた人間の体というのはいったいどれほどの変化があるのか。死人を復活させることと不死の人間を作ること、この二つはとてもよく似ている。つまり遊野清明、君という存在はある意味錬金術がずっと追い求めてきたものの一つの形というわけだ」
『……私のことか。誤魔化すのは無理そうだな』

 うーん、チャクチャルさんがそう言うんなら無理なんだろう。とはいえさすがに参ったな、できれば後ろの夢想たちに教えたい話じゃなかったんだけど。………怖がられたり怯えられたりするのは、寂しいから、嫌だ。

「したがって私は、私の見つけた私なりの錬金術最高の答えをもってして君とデュエルがしたい。それが錬金術師としての私の、つまらないちっぽけな意地だ。ヘリオス・デュオ・メギストスで攻撃!ウルカヌスの炎!」

 ヘリオス・デュオ・メギストス 攻2800→清明(直接攻撃)
 清明 LP3700→900

「あ……熱っ!」

 闇のデュエルならではの強烈な痛みと熱さに、ライフの余裕も一気になくなり立っているのもやっとの状態になる。でも、ここで僕が負けたら万丈目たちがどうなるかもわからない。まだ倒れるわけにはいかないんだよねっ!

「さあアムナエル、続きと行こうか!」
「ほう、目つきが変わったな。だが、私とて君に関してはいろいろ研究している。具体的に言うと、君はこういう状況に追い込まれるとかなり高い確率で極端に堅い守りを固めるか、一気に反撃に出るかの2択をとる。そこで私は、一時休戦を発動する。これでターンエンドだ」

 一時休戦
通常魔法(制限カード)
お互いに自分のデッキからカードを1枚ドローする。
次の相手ターン終了時まで、お互いが受ける全てのダメージは0になる。

「一気に押し切られるよりは守りを固められる方がましってわけね。僕のターン!シャクトパスを守備表示で召喚、さらにこっちも一時休戦返し。カードをセットしてターンエンド!」

 シャクトパス
効果モンスター
星4/水属性/魚族/攻1600/守 800
このカードが相手モンスターとの戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
このカードを装備カード扱いとしてその相手モンスターに装備できる。
この効果によってこのカードを装備したモンスターは
攻撃力が0になり、表示形式を変更できない。

 シャクトパス 守800

 アムナエル LP2750 手札:0 モンスター:ヘリオス・デュオ・メギストス(攻) 魔法・罠:マクロコスモス
 清明 LP900 手札:1 モンスター:シャクトパス(守) 魔法・罠:1(伏せ)

「私のターン!ヘリオス・デュオ・メギストスでシャクトパスに攻撃、ウルカヌスの炎!」
「そこでトラップ発動、フィッシャーチャージ!!魚族のシャクトパスをリリースして破壊するのは、マクロコスモス!」
「しまった!」

 飛んできた炎を身をよじって避けたシャクトパスが、ずっと大徳寺先生の場にあったマクロコスモスのカードをそののこぎりのような形をした頭の先で串刺しにする。その瞬間、ついさっきまで広がっていた宇宙にひびが入り、そのまま崩れていった。

 フィッシャーチャージ
通常罠
自分フィールド上の魚族モンスター1体をリリースし、
フィールド上のカード1枚を選択して発動できる。
選択したカードを破壊し、デッキからカードを1枚ドローする。

「一時休戦の効果でダメージは通らない、か。流石にしぶといな、だがそれでこそ面白い!私はこのヘリオス・デュオ・メギストスをリリースする!これこそが私のたどり着いた錬金術の究極の答え、ヘリオス・トリス・メギストス!」

 ヘリオス・デュオ・メギストスの姿がまたしても光に包まれ、その姿が3つに分かれる。一体一体の太陽と体はこれまでと比べてずっと小さくなったが、その熱量は明らかに跳ね上がっている。

 ヘリオス・トリス・メギストス 攻0→4200 守0→4200

「さあ、私はこれでターンエンドだ」
「だいぶきついけど、とにかくこのターンは耐えきった……僕のターン!オイスターマイスターを守備表示で召喚、さらにカードを伏せてターンエンド」

 オイスターマイスター 守200

 アムナエル LP2750 手札:1 モンスター:ヘリオス・トリス・メギストス(攻) 魔法・罠:なし
 清明 LP900 手札:1 モンスター:オイスターマイスター(守) 魔法・罠:1(伏せ)

「私のターン、流星の弓―シールをヘリオス・トリス・メギストスに装備する!」

 流星の弓―シール
装備魔法
装備モンスターの攻撃力は1000ポイントダウンする。
装備モンスターは相手プレイヤーに直接攻撃をする事ができる。

 ヘリオス・トリス・メギストス 攻4200→3200

「ヘリオス・トリス・メギストスで直接攻撃!フェニックス・プロミネンス!」

 3つの太陽から立ち上った炎の柱が上で合体し、巨大な不死鳥の姿になって襲い掛かってくる。ううむ、弓の要素がかけらもない。

「なんてこと言ってる場合じゃなくて!トラップ発動、バブル・ブリンガー!」

 不死鳥の突撃は、僕に命中する寸前に無数の泡の壁によって消えさった。

 バブル・ブリンガー
永続罠
このカードがフィールド上に存在する限り、
レベル4以上のモンスターは直接攻撃できない。
自分のターンにフィールド上に表側表示で存在するこのカードを墓地へ送る事で、
自分の墓地の水属性・レベル3以下の
同名モンスター2体を選択して特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。

「ならば、モンスターを攻撃すればいいだけの話!改めて攻撃、フェニックス・プロミネンス!」

 ヘリオス・トリス・メギストス 攻3200→オイスターマイスター 守200(破壊)

「カードを伏せてターンエンドだ。この土壇場での勝負強さ、それがお前の一番の力なのかもしれないな」
「褒め言葉として受け取っとくよ、ドロー!来た来た来た!バブル・ブリンガー第2の効果を使って、このカードを墓地に送って2体のオイスターマイスターを特殊召喚!そしてそのままリリースしてマイフェイバリットカード、霧の王をアドバンス召喚!」

 霧の王(キングミスト)
効果モンスター
星7/水属性/魔法使い族/攻 0/守 0
このカードを召喚する場合、生け贄1体
または生け贄なしで召喚する事ができる。
このカードの攻撃力は、生け贄召喚時に生け贄に捧げた
モンスターの元々の攻撃力を合計した数値になる。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
いかなる場合による生け贄も行う事ができなくなる。

 霧の王 攻3200

「さらにオイスターマイスターが戦闘以外の方法でフィールドから墓地に送られたことで、オイスタートークンを2体特殊召喚!」

 オイスタートークン×2 守0

「攻撃力3200か。相打ちでも狙っているのか?」
「とんでもない。装備魔法、団結の力を霧の王に装備!僕の場にモンスターは計3体、だから攻撃力2400アップだ!」

 言わずと知れた有名装備魔法、団結の力。自分の場のモンスター1体につき装備モンスターの攻守を800上げる単純ながら強力な効果は、ヘリオス・トリス・メギストスと霧の王の互角だった攻撃力に一気に差をつけた。

 霧の王 攻3200→5600 守0→2400

「なるほど、団結の力………それが君の見つけた答え、というわけか」
「さらに、墓地から爆征竜―タイダルの効果発動、水属性のオイスターマイスター2体を除外して特殊しょう
「だが、私もまだ負けるわけにはいかないのだよ!トラップ発動、転生の予言!このカードは発動時、お互いの墓地から合計2枚のカードを選択して持ち主のデッキに戻す。この効果で選ぶのはマクロコスモスと爆征竜―タイダルだ!」
「そんな!」

 タイダルを復活させれば霧の王の攻撃力はさらに上がってもっとダメージを増やすこともできたんだけど、見通しが甘かったか。

「だけど、霧の王の攻撃力が上なことには変わりない!ミスト・ストラングル!」

 霧の王 攻5600→ヘリオス・トリス・メギストス 攻3200(破壊)
 アムナエル LP2750→350

 霧の王がひと振りした大剣が、一気に3つの太陽を横一文字に両断した。よし、このターンで倒しきれなかったのは残念だけど、さすがに、これ、で………?

 ヘリオス・トリス・メギストス 攻4700 守4700

「そ、そんな、どうして!?」
「ヘリオス・トリス・メギストスはたとえ戦闘で破壊されても、その能力を上げて蘇る不死の太陽。残念だったな、清明」

 ヘリオス・トリス・メギストス
効果モンスター
星8/光属性/炎族/攻 ?/守 ?
このカードは自分フィールド上の「ヘリオス・デュオ・メギストス」1体を
生け贄に捧げる事で特殊召喚する事ができる。
このカードの攻撃力と守備力は、ゲームから除外されている
モンスターカードの数×300ポイントになる。
このカードが戦闘によって破壊され墓地に送られた場合、
エンドフェイズ時に攻撃力・守備力を500ポイントアップさせて特殊召喚される。
相手フィールド上にモンスターが存在する場合、
もう1度だけ続けて攻撃を行う事ができる。

 アムナエル LP2750 手札:0 モンスター:ヘリオス・トリス・メギストス(攻) 魔法・罠:なし
 清明 LP900 手札:1 モンスター:霧の王(攻・団)、オイスタートークン×2(守) 魔法・罠:団結の力(霧)

「私のターン、ドロー。ヘリオス・トリス・メギストスでオイスタートークンに攻撃、フェニックス・プロミネンス!」

 ヘリオス・トリス・メギストス 攻4700→オイスタートークン 守0(破壊)
 霧の王 攻5600→4800 守2400→1600

「だ、だけど僕が次のターンにまたモンスターを出しさえすればまだチャンスはあるはず」
「いいや、ヘリオス・トリス・メギストスは相手の場にモンスターがいる場合にもう一度だけ攻撃できる!もう一体のオイスタートークンにも攻撃だ、フェニックス・プロミネンス!」

 ヘリオス・トリス・メギストス 攻4700→オイスタートークン 守0(破壊)
 霧の王 攻4800→4000 守1600→800

「また形勢逆転、だな。これでターンエンドだ」

 僕の手札にモンスターは今、いない。というか手札そのものがもうない。うまくモンスターが引けるとは限らないし、引けたとしてもそれが下級モンスターの保証もない。

「このドローに、このデュエルの、僕らの全部がかかってるわけか……おお、責任重大」
『ったく、まじめにやるっつー選択肢はねーのかよ』
『思い起こせば初めに話しかけた時も同じことを言った気がするが………少しは緊張感を持ってくれ。私らがシリアスやってるのに、肝心要の貴方がそんな調子ではこちらの立つ瀬がない』
「えっと、確かあのときはこう答えたんだっけ?緊張感がないんじゃなくて色々吹っ切れただけ。だいたい、ここに入学してから僕がどんだけ濃い人生送ってると思ってんのさ、ってね。これが最後だ、アムナエル!このドローで全部決めてみせる!ドローっ!!!」

 気合を込めて、最後のドローをする。さあて、引いたカードは?

「っ!僕は手札の、ダブルフィン・シャークを召喚!そして召喚時の効果で、墓地からハリマンボウを特殊召喚!」

 ダブルフィン・シャーク
効果モンスター
星4/水属性/魚族/攻1000/守1200
このカードが召喚に成功した時、
自分の墓地からレベル3またはレベル4の
魚族・水属性モンスター1体を選択して表側守備表示で特殊召喚できる。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。
この効果を発動するターン、自分は水属性以外のモンスターを特殊召喚できない。

 ハリマンボウ 守100

「手札1枚から2体のモンスターの展開…………」
「ある意味、これも錬金術の一種なのかな?まあなんだっていいさ、場に2体のモンスターが出たことで、霧の王の攻撃力もまた1600ポイントアップ!」

 霧の王 攻4000→5600 守800→2400

「ミスト・ストラングル!…………先生、最後の試験の結果は合格ですか?」

 そう言うと、アムナエルはちょっと驚いた顔をした後でふっと笑い一言、

「期待以上の満点なんだニャ」

 そう言った顔は、僕らがよく知っている大徳寺先生のものだった。

 霧の王 攻5600→ヘリオス・トリス・メギストス 攻4700(破壊)
 アムナエル LP400→0





 デュエルが終了し、ソリッドビジョンがふっと消えていく。それと同時に、アムナエルと棺桶のミイラが同時に床に崩れ落ちた。慌ててアムナエルのほうに駆け寄ると、体が文字通りボロボロになって床に叩き付けたゆで卵の殻みたいなひび割れが全身に走っていた。そういえば、デュエル中にもこの体は長くない、みたいなことを言ってた気がする。

「アムナエル……」
「よく聞いてくれ、清明。私は確かにセブンスターズでは最後の一人だが、これで三幻魔の件がすべて片付いたわけではない」
「え…?」
「ちょっと待て、それどういうことだよ!まだ他にもいるってのかよ!?」
「その通りだ、十代。私の上にもう一人、三幻魔を復活させようとする者がいる。私はそれを止める力を持つものを見極めるために清明、君と戦った。君ならばきっと、三幻魔の復活を阻止できるはずだ!後のことは、任せた」

 本当は、まだ何か言おうとしていたのかもしれない。だけど、その声が言葉になる前に、アムナエルの体は限界を迎えて砂の山になった。

「大徳寺先生ー!!」

 本音を言うと、ちょっと泣きたい。だけどアムナエルは最期に言っていた、まだすべてが終わったわけじゃないって。だから、そういうのは全部後回し。いまはただ、その最後の敵とやらの企みを止めてやることだけを考えるんだ! 
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